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【日経BP】株暴落の真相――サブプライムではなかった(経営コンサルタント 大前 研一氏)
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投稿者 passenger 日時 2008 年 2 月 13 日 17:27:30: eZ/Nw96TErl1Y
 


【日経BP】株暴落の真相――サブプライムではなかった(経営コンサルタント 大前 研一氏)

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http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/118/index.html?cd=sjm

第115回
株暴落の真相――サブプライムではなかった

経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年2月13日

 2008年1月、世界の株式市場が突然暴落した。日経平均も1万3000円を割り込み、米国ではFRB(米連邦準備理事会)が緊急利下げを実施した。

 当節、こういうニュースを目にすると、すぐに「暴落の原因はサブプライムローン問題だ」と考える人も多いだろう。しかし、どうやらそうではないらしいということが分かってきた。本当の理由は、たった一人のトレーダーの不正取引だったようだ。

 詳しく経緯を説明しよう。

 今回の暴落劇の舞台になったのは、フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルだ。不正取引の容疑がかけられているのは、この銀行の元トレーダー、ジェローム・ケルビエル氏である。彼は2000年から勤務し、欧州の株価指数や先物などのデリバティブ取引にかかわっていた。

 ケルビエル氏は2007年から2008年1月にかけて、不正取引をしたと見られている。その損害は49億ユーロ、日本円にして約7600億円にも達する。ソシエテ・ジェネラルがそれに気づいたのが1月18日。翌19日にはジェローム・ケルビエルは不正取引を認め、その段階で15億ユーロの損失が判明した(24日には損失計上した額は49億ユーロにふくれあがるのだが)。そしてソシエテ・ジェネラルはフランスの中央銀行に報告した。

 21日には、ソシエテ・ジェネラルは、株式の持ち高を解消するために、株を売却し始めた。今回の世界同時株安は、ここから始まった。その日、アジアと欧州の株式は全面安に突入した。米国はその日、たまたま株式市場が休みだったので、下落したのは翌日だった。

 22日には、同時株安に対応するため、米国のFRBが緊急利下げを実施した。驚くべきことに、フランスの中央銀行がFRBに事件の経緯を説明したのは、その後の23日になってからだ。もしフランス中央銀行が迅速にこの経緯を公表していたのなら、この世界同時株安はここまで広がらなかったかもしれないし、FRBも緊急利下げを実施しなかったかもしれない。

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●一人の損失が引き金になる神経質な市場

 というわけで今回の暴落の原因は、サブプライムローン問題ではなく、ある一人のデリバティブ取引の失敗だった可能性が高い。

 では、なぜたった一人の不正取引が世界同時株安を招いたのか。

 ちょうど世界はサブプライムローン問題問題で神経質になっていたからである。そういう状況下に、たまたま理解できない株価の下落が起こり、それが引き金となり世界中の市場が暴落することになったのだ。きわめて偶発的に起こったのだ。

 したがってFRBが緊急利下げをした後は、買いが戻ってきている。というのも、世界では金がだぶついているのだから、市場が暴落したときには「買いたい」という人が出てくるのだ。そのため、いつまでも落ち続ける心配は不要なのである。

 こういうときの政府の対応は、「落ちないように」と我慢することではない。繰り返しになるが、株価が安くなったら、買う人が集まってきてまた上がってくるものなのだ。いつまでも低いままにはならない。だから、政府は余計なことをしないで早く落ちるところまで落としてしまうのが一番なのだ。売りと買いが出会うのが相場、と割り切ってしまえば、買いが入らないのは不用意に高止まりしているからだ、と考えるべきなのだ。

 ところで、この経緯の中でわたしが気になっているのは、大損害を受けたソシエテ・ジェネラルの株価だ。この事件のよって株価が急落しているのだが、実は下落は昨年から始まっている。だから、銀行内に前から真相を知っていた人物がいたのではないかと懸念しているのだ。ことが公になる前に売ってしまおうとした人がいたのではないかと。もしかするとインサイダー取引とのからみで、このあたりから再度火の手が上がるかもしれない。

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●サブプライム問題の解決方法を改めて考える

 いつまでも尾を引いているサブプライムローン問題だが、解決のためには何をすればいいのか。当コラムでも何度か俎上に上げているが、サブプライムローンは低所得者向けの住宅ローンのことだ。信用力の低い人に最初は安い金利で貸して、住宅価格が上昇して担保余力が出た後で借り換えをするか、金利を上げる、という仕組みだ。

 サブプライムローンがなぜこれほどまでに大きな被害を出したかと言えば、小口債券化されたからにほかならない。単なる住宅ローンとして扱われていれば、仮に全額焦げ付いたとしても、30兆円程度で済んだはずなのだ。それが小口債権化して、優良なローンまで混ぜてさらに金利部分などを仕組み債として世界中で売りまくった。買った方は当然「Global Equity Opportunities(ゴールドマンサックスの商品)」などという名前でしか知らないわけで、そこにサブプライムローンの金利部分が埋め込まれている、ということなど夢にも思っていないはずである。その拡散の仕組みを説明するために用意したのが、下の図だ。

 もともとのサブプライムローンは、この図の左上の部分だけである。銀行が住宅ローン会社に融資し、消費者はそこからお金を借りて、住宅を買う。このような極めて単純なローンである。

 ところが、住宅ローン会社は、これを証券化して、投資銀行に売る。さらに投資銀行が小口証券化してMBS(モーゲージバック証券)として売る。このようにして単純な住宅ローンは、ほかの証券と組み合わせたりしながら証券化を繰り返した結果、複雑な債券担保証券となり、いろいろなところに潜り込んでいく。こうなってくるとまさに肉の「ミートホープ」状態で、何がどう混ざっているのか、誰にも分からない状態だ。

 最終的には、シニア債、メザニン債、エクイティ債とリスク別に格付けして、リスクに応じて世界中の政府系ファンドやヘッジファンドに売る。日本や欧州でも、ものすごい勢いで売りまくっていたのをわたしは知っている。

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●サブプライムローンという地雷を含む証券はすべてアウト

 サブプライムローンも当初は単純な(しかし金利はやや高い)住宅ローンだった。だから個別の契約ごとに「元金はいくら、金利はいくら」と明確に算出することが可能だった。しかし現在では証券化を繰り返した結果、もともとの住宅ローンの部分がいったいどこにあるのかがさっぱり分からなくなってしまった状態にある。

 ローンの支払い能力に欠ける人が、金利が上がったために支払いを滞らせるのは、こういっては語弊があることは承知しているが、よくあることだ。本来であればその人のみ破産すれば済む話であって、世界を揺るがすような問題にはならないはずなのだ。

 ところがサブプライムローンは、前述の通り「ミートホープ状態」である。だから一人がアウトになるとその証券が混じった他のすべても含めてアウトになってしまう。たとえ善良な債権であったとしても、そうでないものが混じってしまえば、同様にアウトになる。

 本当だったら、細かいルールがしっかりと定められているはずなのだが、そういうことをしっかり確認しないまま、証券化を繰り返した。ために、もうどこまで広がっているのか、把握できないような、惨たんたる有様になっているのだ。

 もはやあらゆる証券のなかに、サブプライムローンという地雷がばらまかれているようなものだ。現在ではもはや純粋な商品など存在しない。商品のなかに地雷が埋め込まれている。もしかしたら今日飲んだ牛乳にも埋め込まれているかもしれない。それが現実なのだ。純粋な商品であれば、「金利」「元本」と分類して、おかしい部分があれば、雷管だけを抜いて爆発しないようにもできるのだが。

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●解決のヒントは1990年代のスウェーデンにあり

 米国政府は、拡散したサブプライムローン問題を解決するために、資本を投入しようとしている。しかし、単なる資本調達では間に合わないのは目に見えている。もともとサブプライム問題は30兆円程度のもの。だから世界中の人が協力して、押さえ込むこともできる規模だったのだ。しかし混合されて販売された債券の総額が300兆円となると、とてもそんなことはできない。

 この解決策としてわたしの頭をよぎったのは、1990年代はじめにスウェーデンが金融危機を乗り切った手法だ。

 当時、英国のポンド危機を発端に北欧全体が金融危機に陥った。スウェーデンの場合には商業用不動産ビルの価格が暴落し、融資をしていた銀行が流動性危機に陥った。スウェーデン政府は銀行の駆け込み先としてエマージェンシールーム(緊急看護室)を用意した。銀行に「おかしい、やばいと思った銀行は自ら名乗り出なさい。エマージェンシールームで保護するから」と言ったのだ。そして名乗り出た銀行には、政府が無限の保証をしたのである。こうして流動性危機がパニックを誘発しないようにした。全国に11あった銀行のうち第4位のハンデルスバンクを除いて全ての銀行が駆け込む、という惨たんたる状況であった。

 次にスウェーデン政府は流動性を確保した上で各銀行の債権、債務を一つずつ解体して、全部整理したのだ。こうして銀行を一つずつ健全化していき、元気になったところからエマージェンシールームの外に送り出していった。90年代の後半にはこの緊急装置そのものも撤去している。

 北欧がその後競争力を回復し、世界経済の時流に乗れたことはこうした徹底的な「膿出し」があったからである。

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●商品の源流をさかのぼりサブプライムを探し出す

 サブプライムローンを解決するには、当時のスウェーデン政府と同じような対策が必要だろう。政府、あるいは複数の政府が、危なくなった金融機関を預かる。そして、小口債券化した債権、債務を解体して、純粋に返却不能になったサブプライムローンはどこにあるのかを調べて、取り出していく。

 そうしてミートホープ状態のなかから、健全な部分と返却不能に陥った部分を分離して、区別する。健全な部分はそのままでもいい。返却してくれる人がいるローンなのだから。どうしようもなくなったサブプライムローンが流れている部分を洗い出すのだ。

 現状では返却可能な部分も、返却不能な部分も、すべてアウトとして扱われている。それでは問題は解決しない。証券化の源流をたどって、アウトとセーフとをしっかりと識別しなくてはいけない。

 この作業をおざなりにして資本投入・景気対策をやってもサブプライムローン問題には勝てない。また今のように中近東やシンガポールなどのSWF(官製ファンド)に出資を仰ぐだけでは危機は去らない。米国のほとんどすべての巨大金融機関が政府の保護無くしては立ち行かなくなる、という分析もあるくらいだ。

 これは本質的には金融機関だけの問題なのだ。それは先ほどの図をもう一度見直してもらえば分かるだろう。金融機関の間を通る過程で、証券化が繰り返されただけなのだから。要するに、サブプライムローン問題は、一般消費者のあずかり知らぬところで問題が悪化していったのだ。そう考えれば、ブッシュ大統領の言い出したバラまき型の景気対策や、FRBの利下げは問題解決には役立たないことが分かるだろう。

 政府や中央銀行は、原油や食料などの高騰によるインフレに注意して対応してくれればいい。わたしが提案したスウェーデン方式の対策は、インフレの進行には無力なのだから。しかし、米国当局はそういうことを分かっていないし、金融機関はスウェーデン方式のようなやり方があったこと自体を忘れている。

 さきほど説明したように、サブプライムローンから始まる証券化のメカニズムは複雑怪奇で、よく考えれば考えるほど、調べれば調べるほど危険なシステムになっていたことが分かる。これを考えたベアスターンズは、このメカニズムがどれだけ危ういかを知っていたはずだ。だから今は口を閉ざしているのだろう。

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●手をこまねいていては新たな問題に飛び火する

 嘆くべきことに、サブプライムローン問題が引き起こす新たな被害も見えてきた。ビジネスウィーク誌では、それを「ホームイクイティ」として紹介している。

 米国で住宅の価値が上がっていたころ、家を買った人はその住宅を抵当にしてさらに与信会社からお金を借りていた。しかし、ローンを払えなくなったとき、第一抵当権はローン会社が持っている。だから住宅はローン会社の手に渡る。となると、与信会社には貸したお金も返ってこないし、抵当にしていたはずの住宅も手に入らないことになる。この被害額が急増し、いまでは実に4兆円規模と見られている。

 もう一つの被害は、クレジットカード会社だ。サブプライムローンを借りて破綻した人は、クレジットカードで借りたお金も返すことができない。そうなるとクレジットカード会社にも損害が発生する。こちらの被害額は、300億円とか400億円とかいわれている。

 このようにサブプライムローンを借りて破綻した人を起点にして、住宅の第二抵当権を持つ会社、クレジットカード会社などに被害が広がってきている。今後住宅価格が20%以上下落してくると最近ローンを組んで買った健全な人々(プライム)も担保余力が足りなくなる。そうなると被害は一層広く、かつ80%の掛け目で安全と思われていた人々に波及する。この問題が起こる可能性もゼロではない。何しろ競売に出される案件がカリフォルニアなどでは相当加速しているからだ。いったいぜんたい、サブプライムローン問題はどこまで広がっていくのだろうか。

 これには米国人の気質も関係しているとわたしは見ている。かの国の人たちはちょっとでもゆとりがあると、可能な限り借金をして資金運用する人が多い。資産の半分くらい運用につぎ込む人も珍しくない。だから住宅価格が上がり続ける、などという無理な前提が崩れると運用そのものがつまずき、個人の経済計画がものの見事にひっくりかえってしまう。

 それに対して我が日本は、どんなに金利が安くてもお金を借りてまで運用に使う例はまれである。ひたすらためる。そのため株式市場が暴落しても、本当に困るのは一部のトレーダーだけだ。多くの日本人は株式市場が暴落しても何も困らない。なにしろ1500兆円もの資産のうち、株につぎ込んでいるのは90兆円、5〜6%といったところだ。そのうち暴落で失われた資産は15兆円。つまり暴落したとしても総資産の1%程度の損失に過ぎないのだ。日本人は暴落に強い民族なのである。

 それは良いことなのか、悪いことなのか。わたしは過去の当コラムで、日本人の資産運用への消極的姿勢をしばしば嘆いてみせた。本当に1%以下の資産運用しかできていない現状は何とかしないといけないと思っている。しかし今回の件に限っていえば、日本人の慎重さがプラスに働いたとはいえるだろう。

 ただし、底値が見えたら一斉に買い出動し、こんどこそ「敵失」で得点、というしたたかさを見せて欲しいとは思っているのだが。

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