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景気後退が止まらない---【住宅危機で救うべきは誰か、経済全体にとって最善策とは】--BusinessWeek
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2008 年 3 月 24 日 18:54:58: syFUAx3Wc1pTw
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080321/150829/?P=1

景気後退が止まらない---【住宅危機で救うべきは誰か、経済全体にとって最善策とは】--BusinessWeek

2008年3月24日 月曜日

Peter Coy (BusinessWeek誌、経済担当エディター)
Jane Sasseen (ワシントン支局長)

2008年3月24日発行号カバーストーリー

〜〜「 Recession  Time 」〜〜

 3月11日、ウォール街に希望が出てきた。米連邦準備理事会(FRB)が発表した信用収縮の歯止め策が好感されたのだ。ダウ工業株30種平均は400ポイント以上も反発し、この5年間で最大の上げ幅を記録した。

 だが、喜ぶのはまだ早い。この政策が主要銀行の流動性収縮だけに対応するものだということは、FRBの当局者が一番よく分かっている。米国経済が抱える最大のリスクに対しては何も手を打っていない。家計から財産と信用を奪い、銀行制度に多大な負担を強いている“空前の住宅価格暴落”には無策なのだ。

 現在の景気減速がどこまで悪化するのか誰にも分からない。これほどの住宅価格の急落は経験したことがないからだ。しかも、住宅の時価20兆ドルが家庭の保有資産の大部分を占めている状況での暴落なのだ。

 今のところ、今年は短期的で緩やかな景気後退を予測する専門家が多い。だが、急激に景気が後退する可能性もある。そうなると、利下げや赤字公債発行といった財政出動という従来の不況対策では手に負えない。

■3つの選択肢を組み合わせて対応するのが賢明

 では、どんな対策を取るべきだろうか。“確率は低くても最悪の事態に備える”ことが、ベン・S・バーナンキFRB議長、ヘンリー・ポールソン米財務長官や大物議員などワシントンの政策立案者にとって賢明な道である。費用はかかっても景気後退が緩やかなものにとどまるよう“保険”をかけるのだ。

 国際通貨基金(IMF)も、この方向性を支持している。3月12日、ジョン・リプスキーIMF筆頭副専務理事は各国の政策立案者に対し、「不測の事態を想定し、信用下落の悪循環に備える」ことを促した。

 経済のセーフティーネット(安全網)としては3つの選択肢が考えられる。どの選択肢にも利点と欠点があるが、欠点はその政策を極端に推し進めた時に最も強く表れる。そのため、3つを適度に組み合わせた方法が最善だろう。

 第1の選択肢は、FRBが積極的に動くことで経済に対して潤沢に流動性が供給されるよう期待することだ。

 これは既に実行されている。3月11日、FRBは、2000億ドルの高格付けの米国債を主要な商業銀行及び投資銀行に貸し出すという革新的な政策を発表した。トリプルA格付けの住宅ローン担保証券(MBS)など、価値はあっても売買しにくい資産を担保として利用できる。この政策により、銀行は貸し付けや借り入れを再開できるだろう。だが、ローンの借り換えができずに苦しむ住宅所有者を直接救済するわけではない。

 第2の選択肢は、政府主導での住宅所有者救済策だ。重くのしかかる負債と高い金利負担を減らし、担保になっている住宅の差し押さえを制限する。

 第3の選択肢は、貸し手とMBSの保有者に対する支援を行い、冷え切った金融市場を活性化させることだ。

 どちらの選択肢も、問題なのは支援を必要としない人が不公平だと感じる点だ。さらに、住宅関連の損失に関して、住宅所有者、投資家、納税者のうち誰が最も大きな責任を負うべきかまだ結論が出ていない。

 政策を変えても、明らかにどうにもならない問題もある。住宅価格の下落を止める手段がないことだ。今の価格は高すぎる。市場が持ちこたえられると考える水準まで下がらなければ、現在の危機は終わらない。

 景気後退を回避しようとするのも合理的ではない。住宅のように巨大な部門が大きく落ち込めば、ほかの部門も影響を受けるのは避けられないからだ。「住宅価格は100年に1度の急騰をした。今後100年に1度の暴落が待っている。対策を立てるのは非常に難しい」と、ハーバード大学の経済学者ケネス・S・ロゴフ氏は言う。

■「ギャンブラー、嘘つき、いい加減な貸し手」

 世間では、“政府の救済策など必要ない”という声が大きい。借金が作り出した余剰資産はいずれ整理される。今、政府が介入しても、その時期を先送りするだけだというのだ。人気の住宅情報ブログ「Patrick.net(パトリック・ドット・ネット)」には、「提案されている救済策では、責任感のある人が損をする。ギャンブラーや嘘つき、いい加減な貸し手にカネをくれてやることになる」と書かれている。

だが、「何もせず、じっとしていろ!」という発想は、あまりに悲観的だ。政府の責務は、景気後退が加速して、1973〜75年のような長く深刻な不況に陥ることがないようにすることだ。事態は切迫している。ローン残高より自宅の価格が低いために家を捨てた方が明らかに有利な者が何百万人もいるのである。

 既に家を捨てるのは恥だという概念は薄れ始めている。自暴自棄になった住宅所有者は、「walkawayplan.com(ウォークアウェイ(自宅の明け渡し)プラン・ドット・コム)」や「youwalkaway.com(ユーウォークアウェイ・ドット・コム)」といったウェブサイトに殺到している。

 「銀行は嫌われ者だ」と、ウォークアウェイプラン(アリゾナ州グレンデール)の共同経営者で上級アナリストでもあるポール・J・ヘルバート氏は話す。もし住宅ローンで債務超過状態にある人すべてがローンの返済をやめて自宅を捨てれば、米国の銀行システムの保有資本は何度でも消えてしまうだろう。

 もちろん社会にも影響が及ぶ。自発的な売却も含めて住宅の差し押さえが集中する地域では、荒廃した家や犯罪が増え、地域社会が崩壊する恐れがある。

 さらに、住宅価格の下落により社会的結束も失われつつある。「住宅価格が高騰している時は、貧富の格差はある程度見えなくなっていた。今は、給料明細とマイナスになった自宅の担保価値を見れば一目瞭然だ」と、シカゴ大学経営大学院の経済学者ラグラム・G・ラジャン教授は心配する。

■FRBがさらに金利を下げる可能性も

 最も緊急の課題は、金融システムが果たす重要な機能である“出し手から借り手への資本の橋渡し”という役割が、今回の損失によっても揺るがないと保証することだ。資産デフレは金融システムを破壊しかねない。証券化とデリバティブ(金融派生商品)がさらに問題を複雑にしている。事が起こるまで、誰が巨額の損失に耐えられないのか特定するのがほぼ不可能となってしまった。

 FRBは既に動き出している。1930年代の大恐慌をもたらした政策の誤りを研究し、学者としての地位を築いてきたバーナンキ議長の指揮の下、大規模な介入を行っているのだ。

 FRBには2つの戦略がある。

 昨年の夏以来、FRBはフェデラルファンド(FF)金利を5.25%から3%まで引き下げてきた。市場は今後2%近くまで下がると予想している(編集部注:21日現在で2.25%)。だが、1.5%まで下げる必要もありそうだ。1%という2003〜2004年の水準に戻す可能性さえある。短期金利の引き下げによって、銀行は保有債務の返済負担が軽くなるため、悪化したバランスシートを立て直せる。さらに、市場金利住宅所有者や企業向けに低利のローンを提供することで、景気を刺激するはずだ。

■利下げだけでは、苦しむ住宅所有者を救済できない

 FRBの第2の戦術は、危険視されている資産にも多少の価値があると市場参加者を納得させ、信用収縮を和らげるということだ。そのためにFRBが用意したのが、商業銀行と投資銀行に対する新しい借り入れ支援策である。

 3月11日に発表されたこの政策は、プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)に認定されている金融機関主要20社の救済を目的としている。金融機関は、民間のトリプルA格付けのMBSなど、従来より多様な担保と引き替えに、優良な米国債を借りることができる。しかも借入期間は1日ではなく28日間だ。

 この政策の恩恵をすぐに受けられるのが米証券大手ベアー・スターンズだろう。米国債が入手しやすくなるうえ、ベアーの返済能力を懸念しているほかの金融機関からの借り入れの担保として利用できるのだ(編集部注:本記事掲載後の14日、ベアーのJPモルガン・チェースへの身売りが発表された)。

 だが、FRB単独では事態の収拾は図れない。利下げでは、自宅の価値が下がりすぎて住宅ローンの借り換えができない住宅所有者を救えない。さらに、金利を下げすぎるとインフレリスクが高まる。逆に長期金利が押し上げられ、政策の効果が薄れてしまう。ブッシュ政権が打ち出した1520億ドルの景気刺激策も多少は効果があると思われるが、その効果は2008年末、11月の選挙が終わってすぐに消えてしまうと専門家は予測する。

 そのため多くのアナリストは、住宅市場への政府の直接介入が必要になると見る。「1〜2カ月前なら、景気を刺激することが最も重要だと発言しただろう。だが今は、金融市場、特に住宅債権市場が機能不全に陥っていることの方がはるかに重要だ」と、ロナルド・レーガン政権で経済諮問委員会委員長を務めたハーバード大学のマーチン・フェルドスタイン教授は述べている。


 ところが、ある人にとって“必要な介入”が、ほかの人にとっては“理不尽な支援”になる。政府が介入すれば、勝ち組と負け組を決める戦いが始まる。住宅ローンは民間の非金融融資の44%を占めており、債券市場の主要な柱の1つとなっている。家計の不動産の価値が25%下落した場合(専門家の多くが妥当だと考える数値)、5兆ドルの財産が失われる。政府の支援策は、住宅所有者と投資家の最終的な損失の配分を変えてしまうだろう。

■住宅ローン残高を減額する策も

 住宅所有者を救済する純粋な方策は、ローン残高を強制的に減らしてしまうことだ。行政命令によってもそのような“棒引き”はできるだろうが、より可能性が高いのは連邦破産法を改正して、ほかの債務の場合と同様に破産法第13章に基づく再建手続きにより、裁判所に住宅ローンを減額させる権限を与えればよい。破産法の改正案は議会で審議が止まっているが差し押さえ件数が増え続ければ、進展する可能性もある。

 問題なのは、短期的に貸し手の損失が一段と膨らむ可能性があることだ。長期的にも将来の減額を恐れて、金利が高目に設定される恐れがある。ブッシュ政権の国家経済会議委員長であるキース・ヘネシー氏は、2月29日の記者との朝食会で、「裁判所を通して既存のローン契約に政府が介入する」のは、債務調整を遅らせ、住宅価格の暴落を長引かせることになると語った。

 この対極にあるのが、下落する住宅価格を支えることなく貸し手を支援するという案である。

 3月7日、米ウォールストリート・ジャーナル紙に、ハーバード大学のフェルドスタイン教授の私案が掲載された。政府が住宅ローン残高の20%に相当する金額を低利で貸し付ける。融資を受けた個人は、そのカネの全額を既存住宅ローンの返済に充てるというものだ。

 これにより貸し手には多額の現金がまとめて手に入る。借り手は、民間のローン残高が自宅の価値より小額となるため、家を手放すリスクは小さくなる。だが、この方法では納税者がリスクを負うことになる。家計の債務総額も減らない。おとがめなしで厄介払いができた貸し手を“再び安易な貸し付けができる”とつけあがらせかねない。

■「政府にできることはまだ残っており、実行すべき」

 さて、がっかりしただろうか。米ブルッキングス研究所のダグラス・W・エルメンドーフ上級特別研究員は、「多くの人がこの半年間、有効な政府介入の道を探ってきたが、良い選択肢の少なさに落胆している。それでも、私は政府にできることはまだ残っているし、実行すべきだと考える」と言う。同氏が支持するのは、住宅所有者の債務を減らす破産法の改正だ。同時にたとえ額面以下であっても政府が一部債権を買い上げて金融部門を支援すべきだと主張する。

 大統領選では、共和党のジョン・マケイン上院議員が、貸し手、借り手のどちらの救済にも消極的で、当事者間で債務を整理すべきだという立場を取っている。同氏の心情は以下の3月11日の発言に要約される。「投資家や(中略)すべき仕事を怠っているローン会社を支援するのは、政府の役割ではない」。

 民主党のバラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員は、どちらも住宅所有者寄りの立場を取っているが、クリントン議員の方がより積極的だ。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の金利を任意で5年間凍結することや、住宅の差し押さえに90日間の猶予期間を設けることを求めている。

 リベラルと保守の両派から支持を集めている案がある。自家所有者融資公社(HOLC)の現代版を作るというものだ。HOLCは、大恐慌時代に額面以下で住宅ローンを買い取り、新規にもっと手軽な条件の融資を行った機関だ。

■日本の1990年代に陥らないために

 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のアレックス・J・ポロック常勤研究員は、「HOLCのような機関を設けることで、債務不履行、信用収縮、住宅価格の下落という悪循環が絶たれ深刻な景気後退の回避につながる」と主張する。一方、ブッシュ大統領のヘネシー補佐官は、宿題が終わっていない生徒がいるので、クラス全員の締め切りを延長するようなものだと指摘する。「徹夜で宿題を終わらせた生徒は腹を立てるはずだ」と、同補佐官は言う。

 民主・共和両党がこの案に賛成したとしても、対立の余地はまだ多く残っている。

 貸し手やMBSの保有者は、できるだけ額面に近い額を回収しようとする。一方、借り手や納税者は大幅な減額を望む。減額後の新規ローンは自宅価値を十分下回る金額になる。どちらの側も当然、公益のためだと主張するだろう。「貸し手は不良債権を政府に引き取ってもらい、健全なものだけを残そうとする」と、エルメンドーフ氏は指摘する。広範囲を対象とする政策では、救済を必要としない多くの借り手や貸し手まで救うことになってしまう。

 危険なのが、政治的な対立により、経済全体にとって何が最善かが議論されなくなることだ。失敗するのはたやすい。1990年代の日本が好例である。債務超過で苦しむ銀行が、政治的な影響力のある企業を低利の融資で支えたため、新しい事業に資金を供給する余裕がなくなった。その結果、“失われた10年”と呼ばれる悪名高い低成長を招いてしまった。

 すべてを考え合わせると、金融システム全体が破綻するという現実的なリスクを減らせるのなら、効率の悪さや政治的な対立といった多少の犠牲もやむを得ないということだろう。

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