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ワーキングプアの「派遣」先は戦場〜『ルポ 貧困大国アメリカ』--日経NBONLINE
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2008 年 3 月 29 日 10:43:50: syFUAx3Wc1pTw
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080326/151245/?P=2

ワーキングプアの「派遣」先は戦場〜『ルポ 貧困大国アメリカ』--日経NBONLINE

堤未果著(評:栗原裕一郎)岩波新書、700円(税別)
2008年3月28日 金曜日 栗原 裕一郎


『ルポ 貧困大国アメリカ』堤未果著、岩波新書、700円(税別)

 衝撃的な本である。二重の意味で。

 本書は、アメリカという国全体がもはや「貧困ビジネス」で回っているおそるべき実態を、現地の取材をメインに伝えたものである。

 著者の堤未果は、ワールド・トレード・センターにほどちかい米野村證券に勤めていたときに9・11テロに遭遇、イラク戦争に突き進んでいくアメリカの姿に疑問を抱きジャーナリストに転身したそうだ。
つい先日、薬害エイズ被害者で現在は参議院議員の川田龍平との結婚が報道されたので、名前をご記憶の読者も多いだろう。

 レーガン大統領の採った経済政策、いわゆる「レーガノミックス」以降、アメリカは市場原理主義をひた走り、福祉や教育にまで民営化を推し進めてきた。その結果、「格差」と「貧困」が深刻化しているわけだが、かの国の現状は想像をはるかに超えており日本の比ではない。

 その重篤な“症例”が、本書を構成する5つの章で問題別にレポートされている。
 具体的には、貧困により児童に肥満が蔓延していること(第1章)、ハリケーン・カトリーナによる被害が実質民営化された連邦緊急事態管理庁(FEMA)のもたらした“人災”だったこと(第2章)、マイケル・ムーアの映画「シッコ」でも取り上げられた医療崩壊の現状(第3章)、貧困層の学生と軍のリクルート・システム(第4章)、民営化された戦争と戦地へ派遣されるワーキングプア(第5章)という内容である。

 どれもこれも酷い話ばかりで気が滅入ってくるのだが、貧困と肥満の相関、カトリーナの被害、医療問題については比較的知られていると思うので、本書の特色でもある第4章と5章、アメリカ格差社会と軍および戦争の問題を少し詳しく見てみたい。

○「落ちこぼれゼロ法」を施行したブッシュの狙い

 ブッシュ大統領の肝いりで2002年「落ちこぼれゼロ法」が施行された。全国一斉学力テストを義務づけ教育に競争を導入することで高等学校における学力の低下に歯止めをかける、というのが表向きの目標として掲げられていたが、この法律の本当の狙いは生徒たちの個人情報にあったという。

 全高校に生徒の個人情報の提出が要請されており、拒否した学校は助成金をカットされるという条項が織り込まれていたのだ。裕福な子女が通う高校にとっては助成金などどうということもないが、貧しい地域の高校は存続にかかわるため提出せざるをえない。つまり貧困層がターゲットだったわけだ。

 個人情報収集の目的は何か? 軍へのリクルートを効率的におこなうための素地づくりである。

〈米軍はこの膨大な高校生のリストをさらにふるいにかけて、なるべく貧しく将来の見通しが暗い生徒たちのリストを作り直す。そして七週間の営業研修を受けた軍のリクルーターたちがリストにある生徒たちの携帯に電話をかけて直接勧誘をするしくみだ〉

 入隊すると、大学の学費負担や家族までふくめた医療保険といった特典が得られるのだが、なかでも市民権を取得できることが大きな魅力として高校生を惹きつけているという。
 07年に交付された「夢の法律2007」では、これまで合法的移民に限られていた市民権取得が、不法移民にも適応された。
 軍にとって〈国内に約七五万人いる不法移民はまさに「宝の山」だ〉と著者は表現している。

 狙われているのは高校生だけではない。

 教育予算削減にともない、大学の学費が高騰し、学資ローンの民営化も急速に進んだ。就職難にくわえ初任給も低下しているため、卒業するや返しきれない借金を抱えたままワーキングプアになる大卒、院卒が大量に発生している。

 ロクな職もなく借金まみれになった卒業生たちの行き先は、といえば、もちろん軍だ。学資ローン返済の肩代わりをしてくれるのである。

 が、入隊してもやっぱり貧困からは抜け出せないのだ。安い給料からあれこれ天引きされるためカネはほとんど残らない。戦地で患ったPTSDが原因でホームレスになってしまう者も少なくない。アメリカには350万人以上のホームレスがいるが、その3分の1は帰還兵だという。

○「憲法第九条をどう思いますか?」

 イラク戦争は初の「民営化された戦争」といわれる。1990年代後半以降急成長した、民間軍事会社(PMC)や民営軍(PMF)に依存しているためだ。大雑把には、PMFはいわゆる「傭兵」の現代版、PMCのほうは非戦闘業務一般を請け負う業者である。

 このPMCが、高額なペイをエサにワーキングプアを続々と戦地へ“派遣”しているのだ。しかし、勤務の実態は悲惨で、丸腰で戦場に立つにちかい状況も珍しくなく、米軍が使用した劣化ウラン弾の影響で放射能に汚染された現地の水を飲むことを実質的に強要されるため身体も壊す。
 当然ヘタしたら死ぬわけだが、派遣社員は民間人扱いになるので戦死者には数えられない。

 戦地に“派遣”されるのはアメリカ人とはかぎらない。途上国からの出稼ぎ社員も少なくなく、賃金のダンピングが起きている。民間軍事会社はいまや全世界に500社以上あるそうだ。

 第5章は、日本人ながら米軍に入隊しイラク戦争へ行った加藤さん(仮名)へのインタビューで締められている。

 月に一回、週末に訓練を受ければあとは自由という「ワンウィークエンド・ア・マンス」に、戦地に行くことにはならないだろうと応募したのだが、9・11後イラクに派兵された。
 暗闇のなか無線機から聞こえてくる爆音や、イラク武装勢力が民間人の自動車や犬猫の死骸に仕掛ける爆弾に接し、ようやく死をリアルに感じるようになったという。

〈マスコミは兵士たちの愛国心やこの戦争の正義について書き立てていたようですが、格差社会の下層部で苦しんでいた多くの兵士たちにとって、この戦争はイデオロギーではなく、単に生きのびるための手段にすぎなかったのです。さっさとやって早く家に帰りたい、怪しい奴がいたらすぐ発砲する、死体は黙って片づける。兵士たちは皆、そうやって機械的に考えていました。僕自身も含めてね〉

 著者は「加藤さんにとって日本の憲法はどんな存在ですか」と尋ねる。いちばん聞いてみたかったことだそうだが、つまり、憲法9条を持つ日本国民として、イラク戦争に参加したことをどう考えているのかという質問である。

〈アメリカ社会が僕から奪ったのは二五条です。人間らしく生きのびるための生存権を失った時、九条の精神より目の前のパンに手が伸びるのは人間として当たり前ですよ。狂っているのはそんな風に追いつめる社会の仕組みのほうです〉

 そう答える加藤さんの姿から、著者は「時代が、世界の構造が変わってしまった事実を知る」。そして、9条が変わるよりはやく、日本の貧困層も戦争ビジネスの市場で売り買いされ使い捨てられる「商品」になるだろう、と予言するのである。

○よりよき世界、実現の道はどちらが近いか

 このくだりを読んでびっくりした。

 といっても、加藤さんの醒めっぷりにではない。唐突に憲法9条を持ち出す著者の思考形態に、である。

 こ、これは……と思いつつエピローグに進むと、案の定、グローバリズム批判が展開されていた。第三国の搾取をはじめ、環境破壊や食糧危機などグローバリゼーションが引き起こしたとされる問題を解決するべく「地球市民」として連帯することを呼びかけ、日本もアメリカの二の舞になるぞ! と脅すという、サヨクの人たちがこれまで繰りひろげてきた基本フォーマットを忠実になぞったものである。

 冒頭に戻って確かめると「世界を覆う巨大な力」というフレーズが見つかる。レーニン以降アントニオ・ネグリまで連綿と受け継がれてきた「帝国主義」史観だ。

 著者のグローバリズム批判はどれも、経済学のほうからすでに(本書の刊行よりずっと以前に)反論が出されている、いわばFAQといっていい。

 たとえば、ノーベル経済学賞のジョセフ・E・スティグリッツの『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(2002年、徳間書店)や、『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』(2006年、同)をひもとけば、本書の批判に対する反論および合理的な処方箋――グローバリゼーションをあるべき姿にちかづけるための――を一通り見つけることができるだろう。

 搾取されてきたはずの国インド出身の経済学者ジャグディシュ・バグワティ『グローバリゼーションを擁護する』(2005年、日本経済新聞社)などには、サヨクな方々がどうしてまるで進歩せず同じ批判をエンエンと繰り返すのか、その理由まで載っている。

 彼らがすべて正しいというつもりはないけれど、彼らは問題のひとつひとつについて解決のための具体的なビジョンを提示している。それに対し、著者(ふくめた左派系文化人知識人)はいつもいつも「もう一つの世界」とかなんとかおそろしく漠然としたイメージしか説くことができないのである。

 どちらがよりよき世界を実現するためにちかいところにいるか、理性的に判断すればあきらかというしかない。

 そうしたことを頭に置き、イデオロギーに染まった部分については読み手がチェックを入れるという前提に立てば、本書はきわめてすぐれたレポートであると思う。

(文/栗原裕一郎、企画・編集/須藤輝&連結社)

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[コメント]
 最後の章の記載は個人的には当たっていると思います。ニポンの左翼は進歩がない。(少なくとも進歩が感じられない)と言う批判に左翼はどう応えていくか。これは大きな課題だと思います・・・・
 もっとも右、左と分ける見方そのものが旧来の思考方法から変わっていないと考える事もできますが。 

 ※日経がよくもこれほど「サヨクな本」の紹介をホームページに掲載したのかも疑問で、掲載する為に最後の章が追加されたと見る事もできますが・・・・真相は不明。

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