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JMM [Japan Mail Media]  「個人の犯罪」に企業・組織トップの責任はあるか?
http://www.asyura2.com/08/hasan56/msg/397.html
投稿者 愚民党 日時 2008 年 5 月 05 日 21:45:18: ogcGl0q1DMbpk
 

                             2008年5月5日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.478 Monday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
▼INDEX▼

 ■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』

  ◆編集長から

   【Q:909】
    ◇回答(寄稿順)
      □真壁昭夫  :信州大学経済学部教授
      □水牛健太郎 :評論家、会社員
      □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
      □山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
      □三ツ谷誠  :三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレク
              ター
      □杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務
      □津田栄   :経済評論家

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        ■■ 編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:909への回答ありがとうございました。DVDで、スティーブン・ソダーバ
ーグ監督の『オーシャンズ13』という映画を見ました。ジョージ・クルーニー、ブ
ラッド・ピット、マット・デイモン、アル・パチーノ、アンディ・ガルシア、エリ
オット・グールドなど、豪華な配役です。リメイクの3作目で、オリジナルはフラン
ク・シナトラやサミー・デイビスJr、ディーン・マーチンなどが出演していました。
映画そのものはスタイリッシュな娯楽作品ですが、いくつか印象に残るディテールが
ありました。

 アル・パチーノ扮するホテル王から、ジョージ・クルーニーたちが金を「だまし取
る」というお話で、偽物の「ものすごい富豪」が登場します。広東省を牛耳る「中国
人の不動産王」という設定でした。また、アル・パチーノが欲しがる純金製の携帯電
話が小道具として出てきますが、メーカーはサムスンでした。そして、アル・パチー
ノのホテルの完成披露パーティでのショーが「相撲」で、振る舞われる酒は日本酒の
「久保田」でした。

 日本、韓国、中国のそれぞれの役割の変化をアメリカの映画人はよくわかっている
と思いました。乱暴に区分けすれば、資金は中国、技術は韓国、文化は日本というこ
とでしょう。以前だったら、資金も技術も日本だったかも知れません。そう言えば、
ワインショップを経営する友人から、ユーロ高をものともせず中国のバイヤーたちが
フランスワインを買いまくっているという話を聞きました。ただし、フランス料理へ
の和食の影響が、近年強くなっているようです。日本は、否応なく経済力から文化力
への移行を迫られているのかも知れません。

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■次回の質問【Q:910】

Q:910
 4月から「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」が始まり、いろいろな混乱が起
こっているようです。後期高齢者医療制度ですが、高齢化社会の医療制度として、合
理的なものだと言えるのでしょうか。

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                                  村上龍

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■ 村上龍、金融経済の専門家たちに聞く 
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 ■Q:909

 先週、野村證券の社員がインサイダー取引で逮捕され、社長が謝罪しました。その
犯罪の種類にもよると思いますが、社員・構成員による「個人の犯罪」に関して、そ
もそも企業・組織のトップには責任があるのでしょうか。責任があるとしたら、どの
ような責任なのでしょうか。

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※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

 野村證券のインサイダー取引に関する事件は、証券会社として、最もしてはいけな
い行為ですから、経営者の責任については疑問の余地のないことです。一般的に、企
業の構成員がごく個人的に行った行為、例えば、帰り道で酒に酔って喧嘩をしてしま
うなどの行為は別ですが、個人であろうが組織であろうが、当該企業の業務に関連し
て行った行為についての責任は、基本的に、すべて最終責任は経営者にあると考えま
す。

 経営者という存在を神格化するつもりはありませんが、組織にとって、そのリーダ
ーである経営者の役割は大きく、当該組織のカルチャーにとても大きな影響を与える
ことが出来ると思います。カルチャーという言葉は文化と訳されることが多いと思い
ます。コーポレート・カルチャーは、企業文化と称されています。イギリス人にカル
チャーという言葉について尋ねたことがあります。彼は、カルチャーとは、ウエイ・
オブ・ライフ、つまり生き方というほうが、彼等の感覚に近いと教えてくれました。

 そう考えると、コーポレート・カルチャーは、当該企業の生き方、つまり、業務の
進め方、仕事の仕方、職場の雰囲気など様々な要素を総合した、企業内の空気といっ
た意味なのだと思います。経営者は、企業内の空気に大きな影響を与えることが出来
ます。実際、営業中心の人物が経営者に座ると、その企業全体の空気は営業中心に変
わることがあります。

 また、企画や管理中心の考え方をする経営者の下では、どうしても、構成員である
社員の意識は、そうした方向に向かいがちだと思います。知らず知らずのうちに、経
営者のスタンスが、企業の構成員に浸透するのでしょう。企業の毎日の業務は、そう
した企業の空気や考え方に影響される可能性が高いと思います。少し長い目で見ると、
経営者が作り出すカルチャーが、企業行動の多くを方向付けすることになると考えま
す。だからこそ、経営者は大切であり、重要であるからこそ、相応の報酬を受け取る
ことが出来ると考えます。

 昔、銀行にいた頃、ある先輩が、「日に向かって経営者が立っていると陰が出来る。
それが組織=企業だ」と言っていました。当時は、経営者とは、それほど大げさなも
のではないと考えていました。経営者の存在をよく理解していなかったのだと思いま
す。しかし、最近、企業は、最終的に経営者次第なのではないかと考えるようになり
ました。

 少し前、大阪の老舗有名料亭で食材についての不正行為が発覚し、それに関して経
営陣が会見を行ったことがあります。その会見での経営陣の多くは、いかにも自分で
判断が出来ない、優柔不断な人たちに見えました。その中で、一人高齢の女性が、他
の人たちを仕切るような構図だったことが印象に残っています。それを見て、こうし
た経営者の組織では、不正行為が起きるのは無理のないことだと感じました。

 あるいは、北海道の食肉会社の経営者は、息子たちの諫言に耳を貸さずに、最初の
うちは自分たちの正当性を主張していました。しかし、最終的に、本人が不正行為に
直接関与していたことを認めました。これも、経営者自信が短期的な収益を重視する
あまり、企業の破局を招くような事態に至った例といえるでしょう。つまり、経営者
が、本来の機能を果たしていなかったということだと思います

 組織の大小に関係なく、経営者の機能はとても重要だと考えます。最近、証券会社
のアナリストから、経営者の交代によって、ある電機メーカーが変化しつつあるとい
う話を聞きました。新経営者は、今までのわが国の大手企業では考えられないような
バックグランドを持ち、従来の日本企業の枠を超えた意思決定を行っているといいま
す。こうした経営者の下で、若い技術者が自由に、思い切った行動をとるようになっ
ているようです。少なくとも、そのアナリストには、そのように写ったようです。こ
うしたケースも、経営者の重要性=経営者の責任を象徴する事例だと思います。

 確かに、経営のトップに立つ経営者が、末端の従業員一人一人に、どれだけの影響
力を駆使できるかには疑問もあるでしょう。そして、そうした人たちが行う行為、一
つ一つに責任を持てというのは、必ずしもフェアーではないという議論があります。
しかし、中・長期的には、経営者は、企業のカルチャーを作り出す存在であり、その
カルチャーが、企業行動に大きく影響するファクターだと思います。経営者は、基本
的に、企業で起きるすべてのことに重大な責任を持っていると考えて行動すべきだと
考えます。

  信州大学経済学部教授:真壁昭夫

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 ■ 水牛健太郎 :評論家、会社員

 責任にはいくつかの段階があります。分類の仕方は色々あるでしょうが、私が考え
る限りでも、「道義的な責任」「実質的な責任」「直接的な責任」の三種類があり、
同心円状に重なっていると思います。それにより、不祥事を受けてトップの取るべき
行動も変わってくると思います。

 いちばん広いのは「道義的な責任」であり、これは、トップがコーポレートカル
チャーを左右しうる存在である以上、幅広く及んでくると思います。

 その内側に「実質的な責任」があり、これは組織内の制度の作り方や社員の指導の
あり方などが社員・構成員個人の犯罪に間接的に関わりがある場合だと思います。例
えば、横領をチェックする体制が整っていないなど、業務上の犯罪の発生を防ぐよう
な措置がなされていなかったような場合。そのような場合には、トップの経営いかん
によっては犯罪の発生を防ぐことができたと見られるので、トップには少なくとも犯
罪に対する間接的な責任があることになります。

 最後にもっとも狭いのが「直接的な責任」で、これはトップが個人の犯罪を何らか
の形で指揮・指導したと見られる場合。社内の営業方針が犯罪すれすれの手法を容認
していた場合もこれに含まれると思います。

 言うまでもなく大まかな分類であり、どれに属するかグレイゾーンも大きいと思い
ます。しかし、すべてを同じ「トップの責任」としてしまうと、大企業のトップは何
万人もの社員の私生活をも含む行動に対し無限に責任を負うことになります。倫理的
な態度としてはいいのですが、現実には無理なので、責任の軽重を考える必要があり
ます。軽重の基準は、トップがその犯罪を防ぐ現実的な可能性があったかどうかとい
うことだと思います。可能性が少なければ、責任は道義的なものに留まります。

「道義的な責任」に対して取るべき行動は、基本的には謝罪の域を出ないと思います。
実際にトップがその犯罪を防ぐすべがなかったと見られるので、辞任等の実質的な責
任を問うことは難しいと思います。

「実質的な責任」に対しては、謝罪だけでなく、減給や、場合によっては辞任など、
文字通り実質的な責任を示す手段が必要になってくると思います。

「直接的な責任」がある場合には、トップが犯罪の発生に何らかの形で関わったとい
うことですから、辞任は最低限必要であり、多くの場合、トップ個人も犯罪に対する
法的な責任を問われることになると思います。

 さて、編集長が挙げられている野村證券社員のインサイダー取引ですが、これは上
記の分類では「道義的な責任」と「実質的な責任」のグレイゾーンではないかと思い
ます。職種にもよりますが、野村證券のキャリア社員にとって、多くの上場企業につ
いて株価の上下に関わるような重要情報を知ることは、業務の欠かせない一部である
と考えられます。ですから、情報漏えいのケースとは違って、制度の作り方や教育指
導等によってこれらの社員が情報を知ることを防ぐことはできなかったわけです。そ
して、社員の行動を24時間監視するわけにはいかないので、いったん知った情報を
インサイダー取引に用いるかどうかは、結局は社員の心得次第であり、社員が確信犯
であった場合、インサイダー取引の実行を防ぐことは極めて難しい。その意味では、
この場合のトップの責任は「道義的な責任」に留まるといえます。

 ただ、それで話は終わりません。証券会社にとってインサイダー取引は、顧客に対
する最大の背信行為であり、信用に大きな傷が付きます。ですから、インサイダー取
引の防止は、経営者にとって大きな関心事でなければならず、その防止に最大限努力
すべきだからです。インサイダー取引が、プライベートの時間を使って秘密のうちに
なされていたとしても、ある社員が常習的にインサイダー取引をしていたのなら、そ
の社員が関わった銘柄の株価の動きを見るなどの手段により、そのことを察知するこ
とも可能でしょう。そうした厳重な内部管理体制を備えることは、経営者の実質的な
責任の範囲内だと考えられます。

 ですから、この場合に野村證券の社長がどの程度の責任を負っているかは、どの程
度インサイダー取引を防ぐべく、チェック体制を整えるなどの策を打ってきたかとい
うことにかかってくると思います。それなりの厳重な体制を備えていたのであれば責
任は軽く、「道義的な責任」に留まりますが、十分な防止策を整えていなかったり、
まして社員の上司にまで及ぶ組織的な関与が明らかになったりすれば、「実質的な責
任」を問われることになってくると思います。

    評論家、会社員:水牛健太郎

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 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト

 インサイダー取引は、監視と罰則の両面から強化されています。証券取引等監視委
員会の年次公表によると、2006年事業度(2006年7月─2007年6月)の
検察への刑事告発は13件、金融庁への課徴金納付命令などの勧告は43件と過去最
高を記録しました。うち不公正事件に関する犯則事件では、相場操縦が3件・10名、
インサイダー取引が9件・18名を、証券取引法違反として告発しました。インサイ
ダー取引の摘発件数が年間100件超といわれる米国には追い付かない状況ですが、
日本でも監督体制の強化により、摘発件数が増加傾向にあります。

 インサイダー取引の課徴金を実質的に2倍以上に引き上げる金融商品取引法の改正
案が今国会に提出されており、来春施行される予定です。旧証券取引法の課徴金制度
は2005年4月に導入されました。約6割の課徴金が100万円以下で、インサイ
ダー取引で課させる課徴金が、違反者が実際に得た利益を下回る事例が大半でしたの
で、いわゆるやり得を是正するのが改正の目的です。2006年7月にはインサイダ
ー取引規制の違反者に対する懲役刑の上限が3年から5年に引き上げられています。

 バブル崩壊直後の大手証券による損失補填事件は会社ぐるみの事件だったため、経
営者が総退陣に追い込まれました。これに対して、インサイダー取引は組織ぐるみで
行われることはなく、通常、個人犯罪であるため、法人の責任がどこまで問われるか
は時と場合に依ります。2002年の大和証券SMBCの元社員によるインサイダー
取引では、不正取引を見抜く体制の不備、情報管理の甘さ、法令順守意識の低さなど
が指摘されて、金融庁から大和証券に一部業務停止命令が下されました。今回、金融
庁は野村証券に対して、内部管理体制の不備など法人としての責任がないか調査を始
めたと報じられています。

 3月末に相場操縦の責任を取って、丸八証券の島田社長が辞任しましたが、従業員
のインサイダー取引で辞任した社長の事例はあまり聞きません。3月に宝印刷の元社
員が企業の印刷物を公表前に閲覧し、インサイダー取引を行って逮捕されましたが、
堆社長は役員報酬のカットだけで、辞任しませんでした。2007年にホームセンタ
ー最大手のDCMJapanの前田社長が経営統合の情報を漏洩した事件では、さすが社長自
らがインサイダー取引に絡んだため、辞任に追い込まれました。

 インサイダー取引は重大な経済犯罪ですが、インサイダー情報に接することが多い
マスコミ関係者も犯すことがあったため、マスコミも批判し難い面があります。3月
にNHK記者3名がインサイダー取引で懲戒免職になりました。2006年7月には
日経の広告局員がインサイダー取引で逮捕されました。日経は「原点に戻り信頼回復
に全力尽くします」との社説を掲載しました。今年4月には企業の不正会計を見抜く
立場にある新日本監査法人の公認会計士がインサイダー取引で懲戒処分を受けました。

 どの社会、どの組織にも犯罪の誘惑に駆られる人間がいる可能性がありますので、
可能な限り犯罪を防止できるチェック機能を構築する必要があるでしょう。完全な防
犯体制構築は不可能なので、インサイダー取引しても得にならないと思わせるような
企業教育及び法的な罰則規定が必要でしょう。

               メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊

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 ■ 山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

 「個人の犯罪」に関して、企業・組織のトップは何ら責任を負うべきではありませ
ん。これは、仕事の上で組織に属する個人に対して、個人としての独立性を尊重すべ
き事と裏腹の関係にあり、当然のことです。曖昧な責任論と引き替えに、組織が個人
の自由(特に発言や表現の自由)や社会的立場に介入することの不当を警戒すべきで
しょう。但し、今回の野村證券の元社員によるインサイダー取引事件は別です。なぜ
なら、野村證券の会社としての落ち度が明確だからです。

 報道によると、元社員を含む容疑者グループは、王子製紙の北越製紙に対するTO
Bのような、元社員が担当していた案件以外の情報も、インサイダー取引に利用して
いました。この報道が間違いでなければ、野村證券が会社として情報管理に落ち度が
あったことの、言い訳の出来ない事実です。この点は、金融庁も注目するはずのポイ
ントですし、事実なら、当然処分の対象でしょう。

 事件の発覚を受けて、4月22日に記者会見した野村證券の渡部賢一社長は、容疑
者である元社員について、見習い的な、一人前になる前の社員だといった認識を示し
ましたが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングといった理由で、こうした社員に、担当
外の案件の手伝いなどの経験をさせることは、端的に言って杜撰であり、顧客の重要
情報に最善の注意を払ったとはとても言えません。野村證券の情報管理は、この業務
として常識的な水準に達していなかったようです。

 事件発覚後数日の新聞を見るだけでも、たとえば別の金融機関ではM&Aの仲介は
業種別に担当部を分けて、部長でも他部の案件が分からないような情報隔壁を作り、
案件や企業名はコードネームで呼ぶといった情報管理をしていることや、ある監査法
人では幹部社員の不正取引を防ぐために個人の預金口座を会社に公開させるなどの措
置をとっていることが分かります。実際には、誓約書や担保・保証人などのアレンジ
や、報酬の支払い方を含めた人事制度、個人に関するチェックの方法、社員教育まで
含めて、この業界には、さらに多くのノウハウがあるはずです。

 悪意のある個人(社員)の犯罪は完全には防ぎようがない、という言い分は、常識
的なレベル以上で、且つ自社にとってベストの不正防御措置をとった企業にしてはじ
めて言えることで、今回の野村證券は論外でしょう。

 しかも、今のところ、野村證券には、監督官庁の調査以前に自ら情報を公開して処
分を下すだけの自浄能力を見せる意志は無いようです。これは、同社が、ことM&A
の案件では顧客企業のアドバイザーとして、インサイダー情報の取り扱いに関するア
ドバイスなどもする立場であることを考えると、甚だ不十分ですが、経営者は、この
問題の悪影響を最小にとどめるためのトラブルシューティングに関する責任を新たに
負ったと考えるべきです。

 容疑者が既に逮捕・拘束されているので、本人に対する事情聴取が出来ないことを
割り引くとしても、野村證券は、自社で可能な調査と体制の点検を速やかに行い、会
社として当然と考える社内処分を、公的な処分に先駆けて示し、自社の問題解決能力
を世間に示すべきではないでしょうか。これが出来ないとすると、外部の第三者(弁
護士その他)による調査委員会を設置して問題をチェックしないのはなぜでしょうか。
会社としてのビジネス判断としては、こうした努力を見せる事が、失礼ながら、渡部
社長の個人的な損得よりもずっと重要でしょう。

 このように考えると、記者会見で「個人の犯罪」という認識を強調し、調査への協
力と言うだけで問題に関する自主的な情報公開を殆ど行わず、社内の処分も発表を見
合わせている渡部社長は、証券会社の社長として必要なレベルのプロフェッショナル
な能力を発揮しているとは、とても思えません。彼にとっては、たぶん、野村全体の
損得よりも、直接的には自分の責任で起きた問題ではないという狭い認識に支えられ
た自己保身の方が大切なのでしょう。

 会社としての野村證券、あるいは野村證券の株主にとっては、会社としてどうする
ことが適切なのでしょうか。

 JMMは野村證券に対して経営のアドバイスをする義理を追っているわけではあり
ませんが、敢えて具体的に考えてみるなら、今回の事件の容疑者の直接的な上司や担
当役員に対して、社内処分を行いこれを公表することは当然として、社長就任から間
が無く幾らか可哀想であるとしても、渡部社長の自主的な降格(副社長以下に)が適
切なのではないでしょうか。社長の処分を減俸で済ませようとすると、顧客や世間は
「どうせもともと高収入なのだし、それに、後からいくらでも調整が利く」と(正し
く)思ってこの措置をポジティブに評価しないでしょう。この際、社長がしばらくの
間恥をかくことが、ビジネス上は有効な投資になるはずです。プロとしてどうすべき
かは、それほど難しいことではないはずです。

              経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元
                 <http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/>
                           
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 ■ 三ツ谷誠  :三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレクター

「清冽な地下水と穢れの問題ほか」

 最初に野村のケースに関してですが、このケースについては組織の責任、経営の責
任が問われてしかるべきであると私は考えます。

 なぜならば、そこで使われた情報は、あくまでも組織に対しての信頼感に基づき、
組織としての顧客が相談を持ちかけ、その信頼関係の中で生まれたという因果関係が
明白であり、この場合、個人はあくまでも組織の構成要素に過ぎず、その構成要素の
個人が(隣のセクションの話を聞きつけたにせよ)行った犯罪は、顧客の信頼を組織
が裏切ったということに他ならないからです。

 勿論、それ以上に問われるべきは犯罪を犯した個人の倫理観ですが、そのように倫
理性の欠落した人間を雇用していたという責任については、残念ながら組織および経
営は責任を回避することはできないと思います。

 仮に自由を尊び、エリートによる富の分配ではなく、自由意志を通じた価格機構の
働きによる調和を良しとするのであれば、我々市場関係者は少なくとも襟をただし、
高い倫理性を持って業務に従事すべきであり、価格機構の働きを歪めるような行為に
ついては厳しくこれを処断する勇気を持つ必要があると思います。

「清冽な地下水を汚してはならない」という野村證券に伝わる言葉の重みをもう一度
野村のみならず証券関係者全員が噛み締めるべきではないでしょうか。また、理想を
言えばそのような言葉の意味を理解しうる人間の集団を、馬鹿か利巧か、という尺度
ではなく我々は築いていく必要があるのではないでしょうか。

 つい柄にもなく真面目な話になりましたが、しかし、本件のような事例ではなく一
般論として考えれば、個人の犯罪と個人の所属する組織なり経営なりの責任とは明確
に分けて考えるべきでしょう。最近目立つ公的機関での使い込み(横領)のような事
例は、勿論、内部管理体制の未整備や先ほどの事例同様、雇用したという責任の問題
があり、組織および経営の責任は免れませんが、そのような犯罪ではなく、殺人や痴
漢や窃盗などの「個人的な」「私的な」犯罪に関して言えば、それはあくまで個人の
問題であり、所属する機関の問題ではないと考えます。

 企業は教育機関ではなく、しかも未成年ではなく成人であることを前提に暗黙の契
約で(或いは明示的な契約で)その個人を雇用しているので、公的な領域を離れた私
人としての個人の生活についてはあくまでその個人が全ての責任を負うべきでしょう。

 ただ、日本には根深く「穢れ」を嫌うという体に染み込んだ思想があり、なんとな
く事件を起こした(穢れた者を出した)集団を、それだけで忌み嫌う心性が働くとい
うことがあると思います。特に家族の場合、それは致命的だと思いますが、企業にお
いても(学校においても)帰属集団が穢れるという意味で、個人の犯罪は個人だけで
完結しない傾向、それはやはり存在するでしょう。しかし、それは組織や経営の責任
の問題ではないときちんと整理すべきだと思います。昔、大学生の頃、赤軍派の息子
を持つインテリの父親(仲代達也)が毅然と世間に対峙するという映画を鬱屈を抱え
ながら場末の名画館(京一会館だったような気がしますが)で観た記憶がありますが、
そのような毅然さを「私的な領域での犯罪」に関しては、我々は持つ必要があると思
います。

 ただ、もう一方で指摘したいのは、我々はそう言いながら実は個人と集団を峻別し
ていない側面を強く持っていると言うことです。

 例えば、アメリカにおいても9.11以後、中東系の人々は中東系の風貌というだ
けで、警戒されひどく感情を害されたということがあったと思いますし、記号化され
た世界では個人の犯罪ではなく、日本人の犯罪であったり、中国人の犯罪であったり、
帰属集団の名詞がそのまま流通し、その記号に我々自身が敏感に反応するという傾向
があります。

 限りなく個人こそが単位という世界に向かいながら、しかし対峙する世界のその巨
大さに我々自身の意識が着いていけず、個人をとりあえず帰属集団で捉えるという認
識の方法から、我々自身が自由になってはいません。

 それをどう超えていくか、その方法の模索こそ、我々の課題なのかも知れません。

      三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレクター:三ツ谷誠

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 ■ 杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務

 インサイダー取引はなぜ悪いのでしょうか。業務上知り得た、一般投資家の知る前
の非公開情報をつかって売買すれば確実に儲かります。これを許しては、市場の秩序
が崩壊することは明白です。

 証券会社だけでなく新聞社や放送局などメディアも含めて、インサイダー事件に限
らず社員の起こしたわいせつ事件などでも謝罪会見を行う様子が頻繁に報道されます。
後者は完全に個人の事件であるのに対して、前者は会社の起こした事件とみなされま
す。後者に関しては、会社の名刺を出してわいせつ行為をしたのならともかく、責任
をとるという意味では会社の謝罪会見は余計なのにたいして、インサイダー事件に関
しては、個人より会社側の責任が強く問われるべきだとされます。

 インサイダー取引では、ある個人が、雇用されている会社の代理人として業務を行
い、その際に取得した公開前の情報をつかって不正な取引を行います。不正な取引自
体は個人的な金銭的利益を得るためのもので、会社の利益を図ろうしたものではあり
ませんが、そのような行為は会社にも連帯した責任があると、自動的にみなされます。

 喩えるなら、事業会社の業務の契約時に個人的に賄賂を受け取ったといった不正と
よく似ています。このような場合、会社は使用者としての責任を問われることでしょ
う。

 同様に、インサイダー取引も、実際の不正を行った個人が有罪なら、使用者の会社
も自動的に有罪であり、それぞれに制裁をうけることになります。個人には刑事罰が、
会社には行政処分が待ち構えているでしょう。

 起きてしまったら連帯責任なので、会社側はインサイダー行為を防ぐために、部門
間の情報交換を制限したり、情報に接することのできる人間を限定したり、といった
さまざまな方策を導入しています。しかし、24時間監視をつけるのはもちろん不可
能なので、実質的に主体になるのは啓蒙活動で、こういうことをしたらインサイダー
にあたるということ、もし違反したらどのような社内処分や法的処分の対象になると
いうことが、周知徹底されます。そして、個人はそのことを理解し了解したという文
書に署名します。

 報道によると野村側の言い訳は、「悪意のある社員の不正を見抜くのは難しい」と
いうもののようです。この認識は、業務実態の把握としてはそのとおりです。すべて
の役職員に完全な監視をつけるのは難しく、外界と遮断して業務を遂行したり、個人
生活を送るのは不可能である以上、違反をあえて犯す個人の行為を防ぐのは不可能で
あると思われます。

 不可能であるからこそ、不正が明るみに出た場合は、個人同様、会社にも厳しいペ
ナルティが課せられる一罰百戒の原則で、証券業界の秩序が守られているというのが
この世界です。

 自他共に許す業界のリーダーで、常に業界の日本代表選手であることを期待される
野村證券であればこそ、今後下されるであろう行政処分を超えて、自浄能力を何らか
の形で示されることを期待したいと思います。

                       生命保険関連会社勤務:杉岡秋美

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 ■ 津田栄   :経済評論家


 最近、企業の不祥事や社員などの事件が多く、いつも会社の経営陣の謝る姿がマス
メディアに流れています。しかし、不祥事や事件で、すべてが会社や組織の責任なの
か、そして企業のトップがその責任を負うべきものかという点で疑問を持つようなも
のが時々見受けられます。特に、社員や組織の構成員が起こす「個人の犯罪」でトッ
プや経営陣が記者会見で謝る姿に、時には違和感を感じることがあります。

 一般的に、企業や組織に所属している社員や構成員が企業や組織とは全く無関係な
軽犯罪、窃盗や強盗、暴行・傷害や殺人などの個人犯罪を犯した場合は、その社員や
構成員の自己責任の問題であって、企業や組織には責任はないといえましょう。社員
や構成員のなかでそうした問題を起こす人はたまにいますが、彼らの私生活、私的行
為まですべて管理監督することは企業や組織に求められていませんし、するべきでは
ありません。もしどうしても責任がというならば、企業や組織に所属していたという
事実だけでしょうから、遺憾の意を表しても、それで企業や組織のトップが責任を取
るべきとは思いません。

 しかし、社員や構成員が、業務そのものを利用したり、あるいは業務に関する情報
を利用したりして起こす個人犯罪は、その悪用された業務が企業や組織にとってどの
程度重要なのか、そしてその企業や組織がどういった対応をしていたかによっては、
責任が問われる場合があります。今回の野村證券の社員のインサイダー取引は、この
ケースに当たります。つまり、この場合、企業・組織が、重要な業務に関してそうし
た社員や構成員の犯罪を防ぐ内部管理体制およびコンプライアンス(法令遵守)など
の手だてが不十分であったといえます。

 ほとんどすべての証券会社では、規則で社員は株式取引を制限もしくは禁止されて
います。今回の野村證券の場合、友人に情報を提供してインサイダー取引を行ってい
たということで、この規則をすり抜けていて、社内で発見が困難であったといえるか
もしれません。そのため、どんな内部管理体制でも限界があり、これで不備であると
は思っていないということなのか、野村證券のトップは、謝罪はするもののこれは個
人犯罪であることを強調して、会社の責任はないという姿勢をとっています。しかも、
この社員を起訴前に懲戒解雇して「元社員」扱いとし、事件の概要をホームページで
報告せず特別調査委員会の設置と小さな項目があるのみで、会社にはあまり問題がな
いかのように装っています。

 確かに、内部管理体制ではこうしたインサイダー取引を防げないかもしれません。
しかし、今回逮捕された社員は、2年ほど前に入社した直後、M&Aなどを扱う企業
情報部に配属され、その数か月後からインサイダー取引を始めています。しかも、自
分の担当以外の銘柄も含めて(報道によると)21銘柄を約1年半の間に取引して4
000万円(あるいは5000万円とも)近い利益を上げていたと言われます。こう
した報道が本当であるならば、株価に重大な影響を与えるM&Aなど重要な極秘の情
報の管理そのものがずさんであったといえます。

 しかも長期にわたってインサイダー取引を見逃し、かつ5年前に社員によるインサ
イダー取引事件を起こしていながら再発を許してしまっています。したがって、野村
證券の内部管理体制に不備があると言われても仕方がありません。また、入社したて
の若い社員に最も情報管理に厳しい部署に配属すること、そうした社員に法令遵守な
どを十分に教育し、指導することもしてこなかったとみられることなどを含めると、
コンプライアンス体制も人事制度にも問題が多いといえましょう。

 一方、今回のインサイダー事件は、顧客を裏切った野村證券だけの問題にとどまら
ない面があります。それは日本の最大の証券会社であり、証券業界をリードしている
野村證券が起こしたという点で、また投資銀行部門という重要な業務においてこうし
たずさんな情報管理が行われていた点で、証券業界だけでなく、投資銀行部門という
ものに対する信用が揺らぎ、株式市場に対する疑いの目が向けられ、かつ海外からも
東京市場に対する信頼を失ったという大きな問題を引き起こしています。そうした点
を考えると、野村證券の企業としての責任は重く、そのトップは企業を十分マネジメ
ントできていなかったという点、業界および市場そのものに疑問を持たれたという点
で責任を負うべきといえましょう。

 ところで、最近パソコンの情報交換ソフトを使った情報流出が相次いでいます。こ
れだけ、情報管理が騒がれていても、依然としてその管理の甘さが公私ともに見受け
られます。やはりそうした企業や組織は情報管理を含めた内部管理体制およびコンプ
ライアンスに不備があり、その不備を放置し、その企業や組織の信用を失わせること
で存続の危険に陥らせようとすることを考えると、そのトップはマネジメントという
観点からその責任を負うべきものといえましょう。

 一方、先日ある商社を舞台に契約社員が起こした詐欺事件については、どこまで企
業の責任があり、そのトップはその責任を負うべきか、難しところです。その事件は、
社員が契約社員でありながら、役職を偽り、信用させるために商社の中で打ち合わせ
などを行って、数社から多額の資金を詐取したという事件です。この事件では、企業
の業務に関するものではなかったことや、取引先が調査もしないで資金を出していた
など、商社に問題はなさそうですが、とはいっても、商社の一室を利用させたことな
ど、全く問題がないとも言えません。そうした管理体制に問題があったとはいえます
が、商社のトップまで責任があるとは言えないように思います。

 こうして考えると、社員や構成員が起こす個人犯罪といえども、それが企業や組織
の業務に関することで、企業や組織の信用や、あるいはその業界自体の信用に関わる
ことについて、その企業や組織は、徹底した管理を行うべきであり、そこに不備があ
れば、そのトップはなんらかの責任を負うべきといえましょう。しかし、そうでない
のであれば、個人犯罪に関して、企業や組織の責任はあるとはいえず、そのトップが
責任を負う必要はあまりないといえましょう。

 最後に、今回の問題を通じて、個人と組織の関係があいまいになっていることに問
題があると感じます。つまり、個人の犯罪でも、所属する組織の問題としてとらえ、
その責任をトップに求めようとするところがあります。それは、特に日本では、個人
と組織を一体的に見て、個人の行為も組織として捉え、その結果は組織に属するもの
として見ることで個人の責任をあいまいにする見方が強いことからきているのではな
いでしょうか。もちろん、個人が組織に所属している限りその組織の業務として行う
行為には組織としての責任が生じます。しかし、個人が組織の業務ではなく私人とし
て行う行為は、組織としての責任ではなく、全くの個人の責任といえます。そして、
組織のトップは、組織に関して何でも責任を負うわけではなく、組織における職務と
してのマネジメントに対して責任を負うべきものといえます。結局、個人と組織の関
係をあいまいにせず、両者の行為と責任を明確に分けることが求められているといえ
ましょう。

                             経済評論家:津田栄

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