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「規制緩和はその限界に到達」戦後最大の金融破綻に発展(かけはし)
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投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 7 月 04 日 22:46:36: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/frame080707f.html

食糧と石油価格の急騰―世界経済と信用危機

30年にわたった新自由主義の動揺と危機

アンディ・キルミスター

グローバル金融市場の動揺

 現在の信用危機は、新自由主義と自由市場の秩序全体――一九七〇年代半ばに戦後好況が危機に陥った時、結果として一九八〇年代に新しい経済秩序である新自由主義によって解決されることになった秩序――に疑問を投げ込んでいる。その主要な柱――低インフレ、低商品価格、国際金融市場の安定――が崩壊するにつれ、この秩序に疑問符が打たれたのである。
 今日のグローバル金融市場の動揺の特徴は、ファイナンシャル・タイムズ」のチーフ経済コメンテーターであるマーチン・ウォルフが書いた「ベア・スターンズの救済は自由化の限界を画すもの」と題する以下の文章に鋭角的な形で見ることができる。ウォルフは決してラディカル派ではない。その彼が「二〇〇八年三月十四日を忘れるな。それは、グローバルな自由市場資本主義の夢が死んだ日だった」と書いたのだ。
 「われわれは三十年間にわたって、市場主導の金融システムに向かって動いてきた。米国の通貨政策に責任を持つ機関であり、自由市場資本主義の中心的主唱者でもある連邦準備制度が、ベア・スターンズを救済する決定を下すことによって、その時代が終わったことを宣言したのである。そのことはドイツ銀行最高執行責任者のヨゼフ・アッカーマンの『私はもはや、市場の自己治癒能力を信じない。規制緩和はその限界に到達した。……最近起こったことは、外国での話だったとしてもだ』とする評価への同意を行動で示すものだった」(「ファイナンシャル・タイムズ」08年4月26日)。
 今日の危機は一九二九年の大恐慌と比較されてきた。これは何の助けにもならない。より有益なのは、一九八〇年代半ば以後のグローバル資本主義を支配し、その十年前に起こった長期にわたる戦後好況の崩壊への回答として登場した制度的配置の失敗として見ることである。

70年代と80年代の差異

 安定した資本主義的蓄積は、二つの条件に依存している。第一にそれは、生産過程における十分な利潤の抽出を必要とする。第二に、それは市場での販売を通じた利潤の実現を必要とする。これは重要な矛盾を引き起こす。この二つの条件は相互に対立しあうのである。
 利潤の抽出の成功は賃金の引き下げに依存するが、他方、利潤の実現は十分な需要があることに依存する。次にそれは賃金を引き下げる資本の能力を限界づけるのである。この対立は、資本主義の成長の周期的危機の中心的原因となる。
 危機に関する二つのマルクス主義理論は、この対立の一方にのみ焦点を当てる見解を採用することからもたらされる。過少消費説(たとえば米国の「マンスリー・レビュー」学派)は、利潤の実現を妨げる需要の欠如に集中する。他方、アンドリュー・グリンやボブ・サトクリフなど利潤圧縮理論の著作家たちは、生産における利潤創出を妨げる労働力コストの上昇に焦点を当てる。
 危機に関する適切な理論は、両方の展望にまたがるものでなければならず、資本がこの矛盾の一時的な解決を達成できる方法を勘定に入れるものでなければならない。しかしそれは不可避的に将来の蓄積に新しい問題を積み重ねるものなのだが。
 一九五〇年代と一九六〇年代の好況を支えていた矛盾の一時的解決は、三つの主要な要因に依存していた。第一は、追加的需要の中心的源泉であった国家支出である。第二は、世界貿易の急速な成長を可能にした固定交換レートシステムであるブレトン・ウッズ体制が提供した、安定的な国際経済環境である。第三に、新しい消費物資テクノロジーと市場の発展、とりわけ自動車産業や消費者用電化製品の分野の発展である(いわゆる「ホワイト」製品)。
 この好況は、一九七〇年代半ばに崩壊し、経済的混乱と二つの大規模な国際的景気後退――一九七四〜七五年と一九七九〜八二年――の十年間をもたらした。しかし一九八〇年代半ば以後、蓄積の新たな枠組みが形を取りはじめた。

一時的解決局面の終焉

 一九八〇年代半ばにおけるこの対立の一時的解決には、三つの主要な要素があった。第一は、債務――家計ならびに企業(より小さい範囲ではあるが)の負債――の爆発的な広がりだった。債務は、利潤の創出と実現の間の矛盾を緩和する上で中心的役割を果たし、賃金が低下し続け、労働組合と組織された労働者への正面からの攻撃が労働者階級の守勢をもたらす中でも、需要の拡大を可能にさせた。しかしここには明白な矛盾がある。すなわち債務は結局は返済しなければならず、低賃金と需要拡大との矛盾はこの点での新たな深刻な問題を再現することになりそうだからである。したがって、以下に挙げる他の二つの要素によってのみ、その役割を果たしたのである。
 第二の要素は、ブレトン・ウッズ協定の終焉が引き起こした一九七〇年代と八〇年代前半の通貨兌換レートの激しい変動後の、国際金融システムの新たな安定だった。
 この安定は国際貿易の強力な成長を可能にしたが、より重要なことは、劇的なまでの金融規制緩和と国際投資の拡大の基礎を据えたことだった。
 この安定をもたらした中心的要因は、インフォーマルではあるが持続的でもある米国と中国(そしてより小規模ではあるが他のアジア諸国)との関係だった。それによって、米国の赤字は黒字諸国の資金で補填され、次にはこれら諸国の輸出推進の基礎を据えることになった。これと結び付き、そして米国と英国の双方にとって重要だったことは、両国が対外投資で稼いだ資金の還流が増大したことであり、それは両国の対外支払い義務の急速な拡大ぬきで大規模な赤字収支の処理を助けることになった。
 第三の要素は、二十年間に及ぶ例外的なまでの低商品価格だった。これは、先進工業諸国、とりわけ米国と英国の中央銀行が、インフレについてそれほど危惧することなく債務の増大を放置し、需要拡大のために金利を低く抑えることを可能にさせた中心的要因だった。
 この枠組みは、ちょうどよい時に一点においてグローバルに根づいたものではなく、より自然発生的に生起したのである。とりわけ世界第二位の資本主義大国である日本は、一九七〇年代と八〇年代の日本資本主義の独特な性格の結果として独自の軌跡をたどり、この二十年間のほとんどの期間を通じて停滞することになった。西欧は米国よりも長期間、不安定のままだった。しかし一九九〇年代半ば以降、欧州は上記に概括した一般的枠組みに加わった。それはこの期間において欧州の資本家階級にとって二つの中心的成功の重要な基礎を提供することになった――それは中・東欧諸国の資本主義世界経済への吸収と、共通通貨ユーロの制度化である。特定の地域、とりわけラテンアメリカ、東南アジア、ロシアは危機を経験し続けたが、それを資本によってローカル化させることに成功し、一九九七〜九八年の不安定がその可能性を垣間みせたにも関わらず、全般的なグローバルな成長の終焉をもたらさなかった。
 以上概括した三つの要素のそれぞれは、相互に強めあうシステムの下で他の二つと不可分に結合している。債務の増大は、低インフレと国際金融の規制緩和を必要としており、それは次には通貨兌換レートの安定を必要とする。中国や他の諸国の輸出ブームは、米国などの諸国における、債務によって促進された需要に依存している。低商品価格は、「グローバリゼーション」のプロセスと、債務処理の規制緩和や安定した通貨レートを必要とした帝国主義経済の拡張によってもたらされたのである。

ドルの下落とインフレの増進

 資本にとっての今日の危機の深さは、上記の三つの要素がすべて疑問視されていることから生じている。債務の増加はそれ自身として極度に深刻であるが、それは部分的には債務の規模のためであり、また部分的にはその「証券化」がシステムの周囲にきわめて広範に広がっているためである。
 しかし米国などの諸国の住宅市場の過大評価にもかかわらず、それがより全般的な資本主義的蓄積の現在のパターンにおける負債の役割でなかったとしたら、市場の諸問題はシステムをグローバルに脅かすものとはならなかったろう。
 資本にとって危険なことは、新たな交換レートの不確実さ、とりわけドルの価値の崩落(また米国と英国の対外投資の収益の急激な低下)、低商品価格の時代の終焉――それは石油その他の燃料や食糧価格の上昇において最も鮮明に示されている――という形で現れている信用市場での重大問題の結び付きである。
 この困難は、資本がこの三十年以上にわたって依存してきた金利のコントロールという重要な政策的武器において最もはっきりと示されている。米国は「危ない債務」に対処するために金利を大幅に引き下げた。しかしこのような引き下げは、ドルの下落をスピードアップさせ、かつインフレを増進させるという二重のリスクをおかすことになる。もしドルが下落すれば次には、インフレが米国で爆発することになる。
 IMFのエコノミスト・ケネス・ロゴフは、ロバート・フロストの詩を引用した。
 「ある者は、いつか世界は火に包まれて終わりを迎える、と言う。ある者は氷に包まれて終わるのだ、と言う」。ロゴフにとって、ここでいう火とは金融的崩壊であり、氷とはインフレである。

資本は危機を解決できるか

 危機が何をもたらすかについての議論は、きわめて投機的なリスクに関するものである。しかし社会主義者にとって重要なことは、構想される可能性のある、ありうる危機解決についての議論について考えることである。
 こうした解決のいかなる目論見も、危機のコストの配分を含むものとなるだろう。資本はできるだけ多くのコストを労働者に押しつけようとする。そしてそれが成功するかどうかは、全国的かつ国際的な労働者階級の抵抗に依存するものになるだろう。
 提起されている重要な課題は次のようなものである。
中国やその他の諸国の需要が、米国の需要を代替する。危機解決の一つの可能性は、米国ならびに同様の諸国の経済的停滞が、輸出ではなく国内消費と投資を基盤とした中国や他の黒字経済国家の国内成長に移行するという指摘。グローバルに計画化された経済においては、これが原則として可能であることは明らかだろう。現代資本主義の非計画的・自然発生的世界では、これを実現することはもっと難しい。
危機が、支払い能力の危機ではなく、たんなる流動性の危機であるとする指摘。多くの評論家たちは、信用危機はおもに流動性の問題、金融市場のパニックに起因するのであって、「真の意味で」悪質な債務の額は、依然としてきわめて限定されたものだと主張している。それに加えて、非金融部門での企業利潤は依然として高いとも述べている。この後者のポイントは、現在の情勢においておそらく資本にとって最も楽観的な要素だろう。しかし、この主張は、非金融部門の利潤が、今や持続不可能と見られる負債を基礎にした消費の度合いに依存していたことを無視するものである。
商品価格は、主に投機によって引き起こされたという指摘。おそらく最近の石油価格や天然資源価格の上昇は強力な投機の要素が存在する(投機家たちのドルからの離反を伴って)。しかしエコロジー危機の重大さと、最近の価格騰貴の相対的に長期的な性格は、ここでは投機が小さな役割しか果たしていないことを示唆しているように見える。
ドルとポンドの下落は、米英両国の輸出を増大させるだろうという指摘。交換レートの変動は世界経済の均衡を回復させ、ドルの下落につれて米国の輸出をすでに増加させている、と主張されてきた。たしかにここには、なにがしかの真実がある。しかしこのメカニズムに頼ることは、資本にとってきわめて危険なものである。その理由は、
(a)そこには、近年、米国資産を購入してきた中国などの諸国が実質的損失を被ることが含まれる。
(b)こうした通貨下落が、英国や米国の経済に与えるインフレ的影響。
(c)一九七〇年代や八〇年代に見られたような新たな通貨レートの混乱の可能性。
(d)こうした通貨レートの変化からバランスの取れた成長がもたらされた場合でも、それは近年に見られたよりもはるかに低いレベルになりそうだという事実。
よりよい規制の構造が、こうした問題を解決するという指摘。最近の議論における一つの思想的傾向は、資本主義の規制構造の改善が危機解決の核心だと見なしている。先に引用したマーチン・ウォルフの論文は、その一例である。しかしこれには大いに論争の余地がある。別のアナリストは、規制の強化を通じて危機に対処することに強く反対している。
 この危機を少なくとも短期的には解決しようと試みる、ここに挙げたあらゆる手段は、資本にとって大きな危険を伴ったものである。その結果、この危機は社会主義者にとって重要なチャンスを切り開くことになる。

▼アンディ・キルミスターはオックスフォード・ブルークス大学の経済学の教員で、国際社会主義グループ(ISG、第四インター・イギリス支部)のメンバー。
(「インターナショナルビューポイント」08年6月号)
 

 

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