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Re: デフォルト後のアルゼンチン経済の行方
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投稿者 そのまんま西 日時 2008 年 9 月 26 日 23:39:19: sypgvaaYz82Hc
 

(回答先: アメリカのジャンク債は税金で救済されるのに、なぜ最貧国の債務は帳消しならないのだろう(本文なし) 投稿者 平和屋 日時 2008 年 9 月 26 日 22:53:31)

デフォルト後のアルゼンチン経済の行方

神戸大学副学長・経済経営研究所教授 西島章次

近年のアルゼンチン経済は高成長を維持している。2001年末からの金融危機の影響を受けた2002年は実にマイナス10.9%の実質成長率であったが、2003年は8.8%、2004年は9.0%と様変わりした。輸出も2002年の257億ドルから2004年の345億ドルへと急増している。

 いうまでもなく、こうした好調な経済は、2001年末からのデフォルトによって政府債務の返済負担を免れていることを背景としている。しかし、今年2月にはデフォルトとなっている債務を新債務に転換する債務再編を実現し、いわば軽減された債務負担の下で新たな成長戦略を追求することとなった。

 だが、こうした戦略によって長期的な経済成長を実現するには多くの課題が待ち受けている。


デフォルト債務の一方的な処理

 アルゼンチン政府が2003年9月にドバイのIMF総会で発表した債務再建案は、対民間部門への債務818億ドルに関し、元本の75%削減と、元本にかかわる延滞金利を支払わないとする一方的なもので、当然、民間債権者は一斉に拒否するものであった。

 以後、アルゼンチン政府は一貫して債権者との交渉を拒否し続けていたが、2004年6月には返済不履行となったアルゼンチン国債と新債券のスワップを提案。交換の条件は、元本が70%近く削減され、償還期限が2033年となるなど、極めてアルゼンチンに有利なものであった。

 こうした国際金融市場のルールを無視した債務再編の強引なやり方に対し、ほとんどの債権者が拒否するものと予想されていたが、今年2月から開始された交換受付では債権者の76%、622億ドルが債務交換に応じたとされる。

 対民間部門の債務818億ドルの国別保有は、アルゼンチンが34.8%、イタリアが15.6%、スイスが10.3%、米国が9.1%、ドイツ、日本がそれぞれ3.1%となっているが、サムライ債として保有する日本の投資家も多くが交換に応じたようである。

 アルゼンチン政府の一方的な債務再編の正否はともかく、その後、アルゼンチン債の格付けが急激に改善しており、EMBI+は2002年のピーク時の7000から現在は400近い水準となっている。また、自動車産業などへの投資も復活し始め、例えばトヨタ自動車はアルゼンチン工場に210億円を投入し、国際戦略車IMVの生産を開始している。

今後の課題

 しかし、政府債務は再編されたものの、経済構造やその特質自体が変化したわけではない。一時的ではなく長期的な成長を実現するためには、多くの課題がある。

 第1は、アルゼンチンの輸出は、石油・エネルギー・一次産品が全体の4分の3を占めており、対外的な景気の動向に大きく依存していることである。今後、米国の景気後退、中国リスク、世界利子率の上昇、交易条件悪化などが生じた場合、その影響は大きい。

 とくに、ブラジルなどの近隣諸国が同様の構造にあり、ラテンアメリカ全体で景気の後退となれば、アルゼンチンへの影響は増幅されることになる。また、ブラジル、メキシコ、ペルーなどで2006年に大統領選挙を控えており、こうした諸国の政治的混乱も無視できない要素である。

 第2は、いっそうのマクロ的安定が要求されていることである。2004年はGDP比で5.1%のプライマリーバランスの黒字を実現したが、IMF(国際通貨基金)は2005年の目標である3.8%は不十分であり、いっそうの財政引き締めを要求している。なぜなら、需要拡大のスピードに生産能力の拡大が追いついておらず、インフレ圧力を強めつつあるからだ。

 また、国際競争力を高めるために為替レートの過小評価が続けられているが、このための為替市場介入がインフレ上昇圧力となるというディレンマに直面している。これらの意味で、生産能力拡大と生産性改善のための民間投資と構造調整の更なる進展が必要である。

 第3は社会的安定の確保の問題である。失業率は通貨危機直後に19.7%と極めて深刻となったが、2004年末には13.6%にまで改善している。貧困世帯の割合も同時期に53%から44.3%へと低下したとされる。しかし、失業率の改善の内、4%程度は緊急社会支援プログラムによるものであり、政府財政の観点から長期的に継続できるものではない。社会的不安定化が政治と経済の不安定化に直結していることを忘れてはならない。

 第4にもっとも重要な課題として、諸外国からの信任の回復の問題がある。結局、歴史的に何度もデフォルトした国家をマーケットがどれだけ信頼するかにかかっている。そのためには、まずはマクロ経済の安定化と構造調整をいっそう進展させなければならない。

 さらに、依然としてデフォルト状態のままである200億ドルの対民間債務の協調的な解決が必要である。最大の債権者団体である「アルゼンチン債務者世界委員会(GCAB)」は交換に応じておらず、国際機関に仲裁を求めると伝えられている。また、2国間政府債務についても協議がなされておらず、早急な解決が望まれている。

 今年7月には、デフォルト以後初めてドル建てボーデン債(2012年満期のドル建て変動利付債)を5億ドル発行すると伝えられたが、資源に恵まれ、潜在的に魅力ある投資先国であるアルゼンチンが、今後いっそうの国際金融市場への復帰を果たすためには、いかにその信頼を回復するかにかかっているといえる。

http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/~nisijima/ww20050906.htm  

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