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金融安定化法案が可決されても市場が評価しなかった理由を考える。
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投稿者 Ddog 日時 2008 年 10 月 05 日 12:09:42: ZR5JcjFY1l.PQ
 

紆余曲折のすえ金融安定化法案が下院でも可決成立した。かといってこれで世界恐慌が回避できたわけではない。その証拠に13日NYダウは157.47安の10325.38ドルで終わった。

約75兆円の公的資金を投入する金融安定化法案は万能ではないとマーケットが判断したといっていいだろう。

80年代末の米国のS&Lの金融危機でも日本のバブル崩壊でも、米国の整理信託公社(RTC)と日本の整理回収機構(RCC)が不良債権買い取ったことにより、金融システムが回復した。日本のバブル崩壊に比べ10倍以上のスピードで対処するバーナンキ・ポールソンの迅速・適切かつ大胆な不良債権買い取り案は神業にちかい。日本のバブル崩壊などの過去の経験則からいえば、不良債権を公的資金によって買い取れば、金融機関が健全性を回復し、金融システムも回復するはずである。

ところがマーケットは問題ありとしている。
政府が金融機関から買い取る不良資産の価格は投売り価格ではなく、別途算定するとのことだが、S&PやMoody’sなど格付け機関の機能が機能しなかったことが原因であるのに適正な買取価格など算定できようはずがない。CDSやCDOなどの証券に実際どれほどの価値をつけていいのか実務面で問題があり、私は疑問に思う。

金融機関救済は、モラルハザードであり、日本に散々言ってきた時価会計の原則も捻じ曲げようとしているのは、けして醜くないものではない。しかしながら、下院で否決した後、米国の世論は法案可決へ急速に傾いた。この点が日本よりアメリカの賢明な点ではないかと思う。

新整理信託公社(新RTC)が不良債権を買い取っても、現行の金融システムの根本的な構造改革をしたわけではない。マーケットの最大の不安点は当にここにあるのかもしれない。

今回のリーマンショックによる金融危機が何時収束するかについて考察する場合、ブラックマンデーやロシア危機、ITバブル崩壊と同類の金融危機なのか、1930年代の世界恐慌と同等の危機なのか判断を下すことが難しい。

しかし、金融危機の結果、ゴールドマンサックスとモルガンスタンレー投資銀行の銀行持ち株会社化して、米国の金融システムから投資銀行が消えた。とにもかくにも、21世紀型の新たな米国の金融システムの模索が始まったことだけは確かだ。

21世紀最初の世界的な経済危機は、東西冷戦が終結し、世界がフラット化して溜まった最初の大きな歪みの開放であると思う。いわば経済における地震みたいなものではないかと思う。

第二次世界大戦後、1930年代の世界恐慌から完全に立ち上がったかに見えた米英は、1970年代の石油危機に端を発したスタグフレーションに陥っていた、それを克服したのは傑出した指導者レーガン大統領と鉄の女サッチャーの登場によるところがおおきかった。大経済学者シュンペーターの資本主義の滅亡過程を逆転させることに成功させたのである。

シュンペーター曰く、「資本主義はその成功故に没落する」。
小室直樹「経済学をめぐる巨匠達」P168〜170
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社会主義化する資本主義

森嶋教授が「大綱では致命的な誤りはない」と評したシュンペーターの未来予測とは、一体どのようなものだったのか。極々簡単に言えば、資本主義は社会主義化する、という事である。実際、世の中はその通りに進行している。

シュンペーター日く、資本主義にとって最も大切なものは革新(innovation)である、革新こそが資本主義の本懐。これが絶えてなくなれば、自由市場は活カを失い、資本主義は衰退して、遂には滅亡する。

この「革新」の担い手として資本主義発展の原動力となるのが企業者(entrepreneur)の存在である。シュンペンターの言う企業者とは、単なる会社経営者ではない。日く、旧きを破壊し、新しきを創造して、絶えず内部から経済構造を革命化する産業止の突然変異―この創造的破壊(creative destruction)を担う主体こそが「企業者」である。創業者であっても、経営の主体であっても、創造的破壊を止めてしまえば、最早企業者ではない。

ところが、である。シュンペーターは、ここで一つ重要な事を発見した。革新に次ぐ革新に依って資本主義が発展し、小企業の時代から大企業、巨大企業の時代へと移行する中で、企業経営や企業者の機能は日常化し、革新までもが日常化してしまう、というのである。

シュンペーターは「革新が日常業務化」してゆく様子を、ナポレオンの指揮官としての責務や機能に喩えて説明している。成功に依って肥大化した組織は、天才的な閃きや冒険心よりも合理化・自動化されたシステムを求め、集団的な意思決定に依ってその躯体(くたい)を維持運営するようになる。簡単に言えば、一人の天才的英雄が、その企業者精神、先見性や独創性、決断力や実行力に依って牽引してきた魅力溢れる革新的企業も、大きくなるとすっかり官僚化してしまう、という訳だ。

そうなると、新しい方法で仕事を行う筈のイノベーション活動も「官僚化された専門家」の合議により粛々と決定されるようになる。企業が官僚化してゆくと、創業者のような「俺が作った会社」という思いは消えてゆき、資本主義の根本原理である「私有財産制度」も「私企業制度」も骨抜きにされる。資本主義の生命線とも言える革命の担い手が、真の「企業者」から「官僚化された専門家」へと移行・変貌する事に依って、資本主義の精神は次第に萎縮し、本来の姿を失って社会主義化してゆくのである。

戦後の英国社会は、正にシュンペーターのシナリオ通りであった。表面的には「資本主義」の体裁を取りつつ、その内実は確実に「社会主義化」していったのである。

「資本主義は成功故に滅びる」

サッチャー以前の英国は、既に多くの産業部門を国有化していた。鉄道、鉄鋼、エネルギーに通信、医療に保険。教育や住宅も大部分が国有化され、序に「銀行も国有化してしまえ」と言う声すらあった。企業の国有化は、即ち社会主義化を意味する。世界に先んじて資本主義社会を形成した英国の社会主義化――それを土壇場で阻止したのが、サッチャーだった。

資本主義の本懐は革新であり不断の革新こそが資本主義の発展を考えるというシユンペーターの言に従い・サッチャーは国有企業の私有化を断行。昔日の光彩を失いつつあつた企業者精神を、少々手荒にではあったが煽り立てる事で、英国社会に資本主義の精神と経済的活力を取り戻させた。

かつてマルクスは「資本主義は、その欠点故に滅びる」と語り、シュンペーターは「資本主義は、その成功故滅びる」と予測した。正しかったのはシュンペーターである。

その成功故に滅亡への道を突進していた英国は、シュンペーターの革新理論に依って再生を果たし・ソ連は・その欠点故に解体を余儀なくされた。皮肉な事に、国際シュンペーター学会が設立されたのは、彼の国がペレストロイカを本格化した一九八六年である。…

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シュンペーターの予測どおり、ウォール街の資本主義経済は滅んだのかもしれない。
企業組織、国家、全てのものは生き物と同じく生老病死を繰り返す。

今回の金融危機が、創造的破壊(creative destruction)にあたるものではないにしても、ある意味では、一つの資本主義が破壊されたことは間違いない。しかし、企業者(entrepreneur)が絶滅したわけではない、彼らがいる限り21世紀型の資本主義が創造されないことはないはずである。

同じく大経済学者コンドラチェフ曰く、『経済の上昇トレンドが生じるのに「新しいマネー」の創造が不可欠である』。コンドラチェフはそれを長期波動仮説において「ゴールドラッシュ」、すなわち新金鉱の発見と呼んだ。経済が新たな成長の波に入るには、新成長貨幣の創出が必要であるという説だ。

ヨーロッパの発展が新大陸やアフリカより金や銀の新な鉱脈を発見したことにより、それまで先進地域であった中東やアジア諸国を凌駕することができた理由の一つである。20世紀前半は金と金に裏付けられた英ポンド、第2次大戦後から1971年は金と金に裏付けられたドルが世界通貨だった。
1971年のニクソンショックでドルと金との交換が停止され、世界経済システムには、通貨不安やインフレ懸念がつきまとうこととなった。

世界は交換可能通貨を持つ主要7カ国(G7)の政策当局が物価、成長、国際収支、為替レート、金利などを勘案しながら、貨幣供給を厳格に管理することにより、米ドルを新たなマネーとして共同で創出したものであると認識しています。

フリードマンのフラット化する世界によれば、1989年11月9日ベルリンの壁が崩壊し、1995年ウインドウズ95の爆発的普及イノヴェーション(技術革新)により一気にフラット化し、誰もが同じグランドで競争をする世界が出現した。東欧と中国が世界経済に加わり、新たな成長核(BRICs)を生み出すに至った。これには新たなマネーが不可欠となった。これが所謂(いわゆる)証券化ビジネスデリバティブでありヘッジファンドであったはずであった。

ところが、その新たなマネーの創造者である投資銀行が消失してしまったのである。

この新たな米金融システムは基底部分には、極めて複雑な金融工学ゆえに、安全装置や厳格なルールが備わっていなかったことが、今回の金融危機の裏側にかくされていた。

過剰なマネーは暴走し株価や地価を高騰させバブル経済におちいった。米国では商業銀行ではなく、投資銀行による直接金融型に傾斜したため、実体経済が、資本市場の動向に大きく依存する社会となってしまっていた。この結果、金融システム内部の「矛盾」がまさに抜き差しならないレベルに達してしまい、リーマンの破綻によって、投資銀行はFRBの監視下に置く必然性が出てきたということであろう。

金融不安への対応の核心として、「個々の金融機関」に焦点が当てられるが、本質的なポイントは「個々の金融機関」の問題ではなく、現行の金融システムの問題であるがゆえに、金融不安の抜本的な解消は難しい。

米国の金融安定化法案が可決されても、一時的な効果はともかく、根本的な金融システムの蘇生にはつながらない恐れがある。それゆえ、マーケットは法案が可決されても、マイナスであった最大の理由となろう。

蛇足:ネット上では、帝国の崩壊を歓迎するような論調、特に昨日批判した副島隆彦など、世界恐慌を歓迎するかのような無責任な論調も多いが、米国は今回の危機で大きな試練を迎えるかもしれないが、けして地球上から消えて無くなるものではない。3億の人口と、豊かな穀倉地帯、アラスカなど未開発の資源を持ち、核兵器を保有し世界一の軍事力と世界一のGDPを占める国であるのだ。

【Ddogのプログレッシブな日々】
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/17888258.html  

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