が、それぞれ韓美銀行、第一銀行を買収し、銀行システム回復と引き換えに、外国銀行の貸出市場、債券市場におけるマーケットシェアが上昇した。これらの金融機関は、当初は資産サイドに貸出金や債券など、ウォン建て資産を抱え込んでいたが、ウォンレート下落の過程で資産売却を進め始めている。 また、韓国金融監督院が、為替リスクを伴う国内円建てローン増大にたびたび警鐘を鳴らし、かねてより韓国では国内民間債務における円負債の増大が懸念されてきた。これがウォンレートの対円レートでの下落が進むにつれ負債規模が増大、資産サイドのウォン資産売却を後押しした。商業銀行の海外での資金調達困難化も、このウォン建て資産の売却と為替レートの下落に拍車をかけている。
韓国は、公社債3年物の平均レートが、過去5年間、4─5%で推移する高金利国である。海外での低利資金調達、国内の高金利での運用が近年の銀行業の収益回復に貢献してきた。2007年までの高成長時代には、この資産と負債の双方の為替リスクはほとんど問題視されなかったが、実は、全く同様の状況が1990年代半ばにも発生している。
当時は財閥グループが設立した総合金融会社と呼ばれるノンバンクが、海外でドル資金調達を行い、国内グループ企業へ短期融資を増加することで、ドル建ての短期資金が急速に流入した。この点を考えると、韓国の金融システムは、世界の金融グローバル化や金融自由化が進展するとともに、慢性的に為替リスクを抱え込む傾向があると考えてよいだろう。
<チェンマイ・イニシアティブは危機の抑止力となるか>
筆者にとって、9月の米国金融危機で最もセンセーショナルであったのが、日米欧中央銀行によるスワップ協定を通じたドル資金供給である。それまで中央銀行間のスワップ協定は、存在こそ知られていたが、発動を実際に目の当たりにする機会がほとんどなかったため、その実施の迅速性と、市場へのメッセージ力に感嘆した。年々肥大化する市場規模に対して、この協定が一定の成果を収めたことは、中央銀行間のスワップ協定が、今後の短期金融市場安定化の主戦力となりうることを示している。実はこのスワップ協定は、東アジアにおいても「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」という名の下で、1999年以降の10年間、加盟国間で2国間のスワップ協定締結が進められてきた。
今年5月のASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3財務相会合で、830億ドルへの拡大が合意されたチェンマイ・イニシアチブは、いまだ発動の機会がない。現在、韓国に対しては、日本が130億ドル、中国から40億ドル、ASEAN諸国からは60億ドルの計230億ドルの資金融通が可能とされている。
9月19日の日米欧中銀のドル供給額1800億ドルに比べれば、決して大きな額ではないが、ウォン・ドル市場の取引規模を考えると十分な額と考えることもできる。今後の東アジア・マーケットの焦点は、再び混乱の時代を迎えたアジア市場において、チェンマイ・イニシアチブが投機的資金流出の抑止力となるのか否かが注目される。
永野 護 名古屋市立大学大学院教授、三菱総研客員研究員
(10日 東京)
http://special.reuters.co.jp/contents/insight/index_article.html?storyID=2008-10-10T042440Z_01_TK0175379_RTRIDST_0_ZHAESMA09553.XML
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