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時価会計「凍結」の愚 【FACTA on line】
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投稿者 きすぐれ真一 日時 2008 年 11 月 09 日 23:56:04: HyQF24IvCTDS6
 

http://facta.co.jp/blog/archives/20081027000771.html
時価会計「凍結」の愚
2008年10月27日 [コラム]
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日経平均株価がバブル後最安値の7100円台に急落したのを受けて、麻生首相は10月27日、関係閣僚と与党に対し緊急市場安定化策の取りまとめを指示しました。

柱はすでに新聞でも報道されているように、銀行株買い取り、会計基準緩和、株式市場規制緩和、金融機関資本注入ですが、当面打てる政策を洗いざらいかき集めただけに、相矛盾する政策が盛り込まれそうです。なかでも筋が悪いのが時価会計の骨抜き。麻生総理も中川財務・金融担当相も時価会計にかねてから疑問を呈していましたが、欧米と歩調を合わせたここでの逆コースは、「失われた10年」で何度も繰り返された光景。企業買収の恐怖に乗じた経営者の保身に利するだけです。

10月26日に新潟日報など環日本海7紙に同時掲載するコラム「時代を読む」を書きましたので、ここに再録します。

*   *   *   *   *

時価会計「凍結」の愚

ヤブ医者ほど罪なものはない。これぞ頓服と銘打ちながら、とんだ劇薬で病人を死地にさまよわせる。全世界を覆う金融危機を封じこめようと、大胆な処方箋がいくつも提示されたが、もっとも筋が悪いのは「時価会計の凍結」だろう。

時価会計とは、企業が保有する金融資産を期末時点の流通価格で再評価するもの。1億円で買った株式が期末に半値に下がったら、5千万円の損を計上する。購入した時点の価格(簿価)で計上していると、時価との差額が常に「含み損」「含み益」になるから、時価会計のほうが実態を反映して企業財務の健全性に資するとされてきた。

ところが、サブプライム関連証券化商品の市場“蒸発”で米国が心変わりする。難産の末に成立した金融安定化法には、証券取引委員会(SEC)に凍結権限を与える条項が盛り込まれ、投げ売りの価格を正常取引とは認めないなど基準緩和の指針を打ち出した。

欧州でも、国際会計基準を採用する欧州金融機関が米国勢に比べて不利にならないよう、国際会計基準審議会(ISAB)が、いったん「売買目的」とした投資有価証券でも満期保有の証券に分類を変更、時価を決算に反映しなくても済むようにした。

米欧のご都合主義にはあきれる。日本がバブル崩壊後の「失われた10年」に時価会計導入の遅れをいやというほど指摘されたことは記憶に新しい。それがいざ我が身に累が及ぶと、あっさり原則を覆す。時価会計は政治の所産か、と疑われてもしかたがない。

しかし、もっと情けないのは日本の経営者だろう。それみたことか、と一斉に時価会計の骨抜きに走りだした。10月15日、中川昭一・財務・金融担当相は金融機関トップと会談、その場で横浜銀行の小川是頭取らから時価会計停止を要望され、金融庁に保有区分の見直しなど基準変更の検討を指示している。

天を仰ぐほかない。経団連はじめ日本の経営者の間で、時価会計は経営のノリシロをなくし、長期安定経営を損なうとの警戒心が強い。うかうかと国際会計基準を採用すれば海外から買収の魔手が伸びてくると、蛇蝎のごとく嫌っている。

だが、これはあくまでも「買われる側」の論理。買われたくないから、本当の姿を見せたくない。しかしサブプライムで傷の浅い日本は今後、叩き売りされる米欧企業を「買う側」に回る。買い物が「ヤミ鍋」では困るのだ。ここは逆手をとって、米欧に時価会計を迫らないと、とんだ高値づかみをさせられる。

いい例が三菱UFJだろう。モルガン・スタンレーの少数株主になるために、資産査定なしで9千億円もはたいた。十年前に破綻した日本長期信用銀行でもわかるとおり、かつてハゲタカに裸にされた日本は、今度は「逆ハゲタカ」で相手を裸にする番なのだ。

でなければ、この千載一遇のチャンスを生かせない。天下りの元大蔵事務次官である小川頭取にはその機微が分からないのだ。

地域経済の沈下とともに優良貸出先が乏しい地方金融機関は、有価証券に資金運用をシフトさせてきた。だが、日経平均が8000円割れ寸前まで一時急落して浮き足立った。地銀などは、地元取引先との持ち合い株を多く保有している。それが軒並み評価損では経営責任に直結するからだ。

たとえば2年前、王子製紙の敵対的買収(TOB)を受けた北越製紙。一株860円のTOB価格だったが、607円での第三者割当増資に応じた三菱商事など持ち合い株主のスクラムで防衛した。いま北越株は300円台。TOBに応じなかった第四銀行などは逸失利益をどう株主に説明するのか。似たような例は全国に無数にある。

金融機能強化法改正による公的資金の資本注入と時価会計凍結、さらに自己資本比率規制緩和という「イチジクの葉」で、地域金融機関は当座をしのごうとしているにすぎない。だが、隠せば隠すほど疑心暗鬼は募る。「直前にOB杭を移動」させた9月中間期決算を、市場の誰が信用するだろうか。

持ち合い株という“塩漬け”リスク資産を圧縮しない限り、地銀の中小企業向け融資の貸し渋りや貸しはがしの根本原因はなくならない。それが「失われた十年」の教訓ではなかったか。その教訓を忘れたヤブ医者ばかりが、中川財務・金融相の耳にエセ療法をささやいている。金融庁よ、しっかりせい!

投稿者 阿部重夫 - 16:00| Permanent link | トラックバック (0)  

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