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三部会としてのG20サミット − 説明不可能な「不都合な史実」
http://www.asyura2.com/08/hasan59/msg/643.html
投稿者 一般ピープル 日時 2008 年 11 月 14 日 22:58:30: zkY.B9mkzvW4Q
 

昨夜(11/13)の報道ステーションで少しだけG20サミットの話題が触れられたが、一色清の解説はボケきったもので、ムニャムニャと口を動かすだけの冴えない代物だった。本当に経済記者だったのだろうか。隣の古館伊知郎が助け舟を出してやっていたが、本人の頭の中が空っぽで何の言葉も出て来ない。結局、「私は何もわかりません」と言っているに等しかった。何のために解説席に座っているのだろう。早く降板させて加藤千洋を戻した方がいい。ルックスも悪く、見ていて苦痛だ。朝日新聞のレベルの低さを証明するだけの意味しかない。一色清のコメントは論外だが、先日のクローズアップ現代での伊藤隆敏の発言や新聞各紙の論調は、押しなべて日本政府のG20サミット観の代弁と羅列であり、大事な情報は隠して見せず、G20サミットの意義を矮小視し、「何も決まらない儀礼行事」だと決めつけて説明している。これは米国政府の立場からのG20サミット定義であり、ブッシュ政権の願望の表明に他ならない。新興国にカネだけ出させて、規制や機構改革へは踏み込みたくないのだ。

たとえ合意文書に盛り込まれないとしても、メドベージェフやルーラが卓を囲むのだから、これまでの米国の金融モデルとIMFの体制や運営について厳しい批判が出るのは当然だろう。このような前例のないサミットを開催したのは、百年に一度の世界金融危機が発生したからであり、その危機を発生させた原因と責任は米国とIMFにあるのだ。日本の新聞は、米国と欧州の立場については記事に書いているが、新興国、特に中印露伯の立場や主張については何も問題にしていない。まるで新興国をオブザーバーのような低い扱いで済ましている。そしてG20サミットの構図について、規制を求める欧州と規制を拒む米国の二者間の対立でのみ捉えている。この認識は誤りで、対立構図は二項ではなく三項の鼎立で描かれなければならない。真の対立は米国vs新興国であり、欧州はその二者の間に入る調停役に過ぎない。それが真実である。私は10/25の記事の中で、「国際通貨体制の再構築には3つのフェーズがある」と書いたが、この「3つのフェーズ」の観点から今回のG20サミットを押えるのが有効であるように思われる。

第一のフェーズは、空売り規制から始まって、格付け会社やヘッジファンドや証券化商品やデリバティブやレバレッジに対する規制と監視の強化である。第二のフェーズは、IMFの抜本改革であり、権限を持った新興国の本格参加と体制改編である。第三のフェーズは、ドルに代わる新しい国際基軸通貨の制定である。この図式から今度のG20サミットを眺めれば、第一のフェーズをめぐる攻防が主要な問題となり、どこまで具体的な成果を上げられるかが焦点となる。キャンプデービッドでサルコジがブッシュを説得したときは、金融規制を議題にして合意することが思惑に入っていたはずだが、ブッシュの側はそのようには受け取らず、単に中印露伯に名目だけのIMF理事職を与えて、各国の外貨準備金をIMFの金庫に取り込む狙いだけがあったようである。11月に入って、相場が比較的安定を取り戻していることも、米国の強気の背景になっている。さらに言えば、ブッシュ政権は金融危機の問題について徹底的に無責任を貫く構えであり、任期中は問題の解決への取り組みを放棄して、一切を来年1月のオバマ政権に委ねる気配が濃厚に漂っている。すなわち、G20サミットを「新ブレトンウッズ」には位置づけず、単なる形式行事の名目イベントにして流す魂胆だ。

本日の日経の5面にG20サミットの関連記事が載っている。そこには私が知らなかったIMFの政策決定のルールが紹介されていて、何と、米国が一国で重要案件を拒否できる拒否権を唯一持っているのだそうだ。これは知らなかった。国連安保理のような運営規則がIMFにもあり、米国だけが拒否権を持っていたとは。IMFが国際機関の外貌を呈した事実上の米国の政府機関であり、連邦政府の「海外財務省」であった事実が裏付けられた印象を持つ。97年のアジア通貨危機も、米国の「海外財務省」が政策を仕切ったのである。記事では、インドなど新興国がIMFでの発言権拡大を求めるのは必至と目を配りつつ、今度の会議では、サルコジが要求するところの、IMFに国際金融の規制と監督の機能と権限を持たせる改革の方向へと向かうのではなく、米国と日本の主導で、IMFとは別の「金融安定化フォーラム」というお飾り機関に規制問題の議論を預ける決着でお茶を濁すのではないかという見方が示されている。その中間に入るのが英国のブラウンで、今日の朝日の3面記事にフランスと英国のIMF改革の温度差について触れられている。英国は規制に積極的ではなく、おそらく、10/25の北京でのASEM首脳会合にブラウンが出席しなかった理由も、金融規制とIMF改革に消極的だったからだ。

私は、オバマがG20サミットに米国のホストとして顔を出すと予想していた。キャンプデービッドの会合があったのは10/18、戦慄の世界同時株安が進行し、短期金融市場が麻痺し、アイスランドなどがデフォルト状態になり、各国政府が相次いで金融機関に公的資金を入れる緊急支援策を発表していた緊迫の只中で、普通に考えれば、1か月も先のG20サミットは日程的に悠長な政治だった。その翌週末に北京でASEMがあり、その時間軸でセットすれば、ASEM翌週の11/1にG20が組まれるのが適当だったと言える。サルコジはその考え方だっただろう。だが、米国大統領選の投票日が11/4で、10/18頃はすでにオバマ勝利が確定的な情勢だったが、G20の開催を11/15 まで敢えて引き延ばしている。それはオバマを出席させる必要があったからだと私は思うが、11/4の当選以降の政権引継ぎ協議の中で、結局、オバマの G20サミット出席は見送られることになった。サルコジにすれば肩透かしもいいところで、G20サミットが「新ブレトンウッズ」の意義を失い、「お飾り形式会議」の要素が色濃くなる羽目になってしまった。私の推測では、おそらくブッシュとオバマの間でG20サミットへの対応方針が分かれたのだ。オバマの考え方は、ブッシュよりサルコジに近く、規制強化とIMF改革で米国の妥協を前向きに考えていたかも知れない。

あるいは、オバマの政権チームや民主党内部で方向性が分かれ、妥協派とブッシュ支持派で割れていた可能性も考えられる。民主党の中にも新自由主義のマネタリストは多く、むしろ現在でも多数派の存在だろう。オバマ個人のスタンスは未だ不明だが、選挙中に発言した経済政策だけから判断すると、本来的には最左派のケインズ主義の性格が顕著なように見受けられる。国際金融市場の規制、すなわち、格付け機関の規制、ヘッジファンドの規制、証券化商品の規制、デリバティブの規制、レバレッジの規制が現実に全世界で実施されると、金子勝が言っていた「環境バブル」を起こす前提条件が失われる。民主党の中でも賛否が分かれて不思議はない。11/4の選挙勝利直後は、すぐに金融危機に対応するべく、財務長官を週内の 11/7までに決めると報道されていた。だが、それは見送られ、そのままG20サミットの日程を迎え、オバマはG20サミットの準備と決定に無関係な立場になった。私が考えるところでは、仮にオバマの経済政策が最左派のケインズ主義であるとして、財務長官に最も適当な人物はスティグリッツである。が、スティグリッツはすでに国連で国際金融体制の変革を検討する作業部会の座長に就いており、別の人間を選ばなくてはならない。人選に悩むのは当然で、この人事で米国経済の浮沈が決まるとなれば、焦らず時間をかけて熟考した方がいいとも言える。

結果的に、規制や監視やIMF体制改革の中身は何も決まらないかも知れない。米国が逃げて、日本が太鼓持ちをやって、サルコジがパフォーマンスをやって、メドベージェフが討論で気を吐くだけの会議になり、報道発表的には「新ブレトンウッズ」の中身にはならない会議になるかも知れない。だが、11/15の G20サミットが「新ブレトンウッズ」にならなくても、それが「三部会」であることは間違いなく、その意義は打ち消されることはない。日本が10兆円手土産に参上したことは、これは、アナロジーに沿って言えば、三部会の貴族階級が、「それならオレが国王のためにカネを出そう」と言ったに等しく、これを材料に、国王(米国)は市民階級(中印伯露)に、「貴族も無理して出してるんだから、お前らももっとカネを出せ」と言えるという筋書きになる。あれほど特別会計には余剰な資金はないと言い、2200億円の社会保障費削減分を埋める財源はないと言い、消費税を上げるしか社会保障にカネを回す方途はないと言いながら、米国が出せと言った途端に、「ハイわかりました」とポンと10兆円が飛び出してくる。消費税1%で2兆円だから、10兆円では消費税5%分になり、つまり、日本の1年間の消費税の税収全てが、ここで一気に米国に差し出される勘定になる。社会保障費を削りながら、地方の病院を潰しながら、健康保険料を引き上げながら、高齢者の年金から医療保険料を毟り取りながら、米国には気前よく10兆円が差し出される。

否、10兆円ではなかった。三菱UFJが先に手付金を1兆円(モルスタに)払い込んでいたから、全部で11兆円になる。この事実は、奇想天外で説明不可能な「不都合な史実」として、 23世紀も、24世紀も、人類が滅びるまで、末永く世界中で語り継がれることだろう。An Inconvenient Truth of Japanese History。

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