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米(コメ)の関税を下げれば、MA米は減らせるか ── WTOはもはや時代遅れ【農文協】
http://www.asyura2.com/08/hasan59/msg/693.html
投稿者 きすぐれ真一 日時 2008 年 11 月 16 日 22:10:17: HyQF24IvCTDS6
 

http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2008/200812.htm

事故米事件 ――業務・加工用米の流通を農家がひらく
目次
◆MA米と加工用米をめぐる怪しげな流通
◆米の関税を下げれば、MA米は減らせるか
◆WTOはもはや時代遅れ
◆中米やクズ米が主食用の「安い米」に変わる
◆本末転倒の価値基準を、農家が是正していく

MA米と加工用米をめぐる怪しげな流通
 昨年秋、「全国一律、1俵7000円の内金(仮渡金)」という全農本部の発表が農家に衝撃を与えるなか、本誌11月号の記事「2007秋 東京のスーパーのお米の値段を調査してみた」では、東京都台東区のお米屋さん・金沢米店の砂金健一さんのこんな声を伝えていた。

「今、『安い米』が人気なのは業務用需要ですよ。私も経営の6割は業務用ですが、いろんなお客さんがいて、超高級米がほしいところもあれば、とにかく安い米を、というところも多いです。関西のほうなどでは1kg200円台前半で取り引きが成立してるって話も聞きますから、びっくりですよね。

 1kg200円というと…、(精米で)1俵1万700円! 米屋さんがこの価格で売らないといけないとなると、農家の手取りは確かに相当下がることになりそう…。

 いや実際、そんな価格で入手できるまともな米なんてあり得ないですから。当然、中国米とか加工用米とかをブレンドして、何とか価格を合わせないといけません」

 今回の事故米事件は、そんなまともでない米が出回る米流通の実態を浮かび上がらせることになった。マスコミは、事故米を不正転売したメーカー・業者とともに農水省の責任を厳しく追及し、政府も検査体制の強化、米のトレーサビリティや原料原産地表示の義務づけなどを検討課題にしている。もちろんこれらは重要な課題であるが、ここでは、事故米事件で浮き上がってきた2つの問題に焦点をあてて考えてみよう。

 一つは事故米事件の背景にある輸入米=ミニマムアクセス米(MA米)について、そしてもう一つは、MA米のほか、国産の中米やクズ米が加わって流通している「加工用米」についてである。

 事故米を不正転売していた三笠フーズは、その一方で、食品加工用に限定された国産米を主食用の米に混ぜて販売していた。また、加工原材料用輸入米を、第三者より精米を委託された国内産加工用米と差し替えて委託元に納入し、差し替えた国内産加工用米を主食用米として転売するメーカーもあった。

 この間、農家は直売所、産直などの「小さい流通」づくりを展開してきたが、業務用など農家のあずかり知らない米の流通のほうでは、ずいぶん怪しげなことが行なわれていたわけだ。怪しげなだけでなく、「安い米」の出回りが米価を押し下げる方向に働き、結果として農家を苦しめる要因になっている。事故米事件を機会に、農家が業務需要を含めて、米の流通をとりもどす道を探ってみよう。


米の関税を下げれば、MA米は減らせるか
 まず、MA米について。MA米の輸入は平成5年(1993年)、ガット・ウルグアイラウンドの決着に伴って決定され、WTOが発足した平成七年から実施された。アメリカを中心とする輸出国による農産物の例外なき関税化の要求に対し、日本は、米の関税化を六年間猶予してもらう代わりに、特例措置として最低限の「輸入機会の提供」を約束したのである。その数量は国内消費量の4%から段階的に引き上げられ、その後、平成11年(1999年)に関税化へ移行、現在の年間輸入枠は76.7万t(玄米ベース)に及ぶ。この量、米生産量第1位の新潟県の65万t(19年産米)を大きく上回り、面積に換算すると反収500kgとして約15万ha強、福岡県を除く九州全県のイネ作付面積に匹敵する。

 事故米事件を受けて、このMA米の存在が世間に広く知られるようになり、「大幅な減反をしながら、なぜこんなに米を輸入しているのか」「世界では飢えている人々がたくさんいるなかで、さばくのに困るほど輸入するのはおかしい」といった素朴な疑問も広範に生まれている。そして一方では、米に高い関税をかける見返りとしてMA米があるのだから、関税を引き下げるべきだという論調もでてきている。朝日新聞の社説「コメ輸入義務―農業強化の構想を競え」(2008年10月7日付)は次のようだ。

「コメの国際相場が高騰し、幸い内外価格差はずいぶん縮小している。世界的な食糧不足は今後とも続きそうだ。ここは農政を抜本的に組み直すチャンスではないだろうか。

 早ければ来年にも再開される貿易交渉では、コメの関税をできるだけ引き下げて輸入義務量を抑える方針に転換する。同時に、それに見合って生産コストが下がるよう、強い農業へ向けた政策を集中させる。米作を主業とする農家へは所得補償制度を拡充して支援する」

 ミニマムアクセスは「義務」ではなく「輸入機会の提供」であり、そのことは日本政府の統一見解として出されているが、この社説ではあいかわらず「輸入義務量」と表現している。それはさておき、米の関税を下げれば「輸入義務量」を抑えられるというのは本当だろうか。

 ガット・ウルグアイラウンドを引き継ぎ、7年間にわたって交渉をしてきたWTO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンドはこの七月末、スイス・ジュネーブで開催された閣僚会合で交渉が決裂した。もし、これが妥結した場合の米の状況について、村田武氏(愛媛大学農学部)が整理している(本号324ページ)。これによると、米の関税は341円(1kg当たり)から262円に下がり、その場合でもMA米は拡大しなければならず、拡大分を含めたMA米は114.1万tになる。これがドーハ・ラウンドが妥結した場合の結果であり、村田氏は、「『国家貿易だから輸入義務だ』とするわが国の一方的かつ自虐的なMA全量輸入をこれまでと同じように続ければ、国内での米管理と米価維持はいよいよむずかしくなるだろう」と指摘している。

 このMA米輸入の半分はアメリカからである。巨大穀物メジャーの戦略のもと、自国では日本以上の「農業保護政策」をとりながら、諸外国に自由化を押し付けるアメリカは、この間のWTO農業交渉でもっとすごい提案をしていた。結論をいうと、MA米はさらに拡大し、高関税をかける重要品目に指定できる数は全品目数の1%にするというもので、このとおりになれば、米の輸入総量はほぼ600万tになり、しかも、米以外に重要品目指定ができなくなる。文字どおり、日本農業を解体する提案なのだ(詳しくは谷口信和氏(東京大学大学院)「米復権の時代がやってくる(2)」、本誌2006年5月号360ページ参照)。


WTOはもはや時代遅れ
 1980年代から90年代前半は、穀物が相対的に「過剰」で国際価格が低迷し、アメリカやEUが「過剰」な穀物の売り先を求めてやっきになっていた時代である。86年に始まり93年の決着まで延々七年間行なわれたガット・ウルグアイラウンドはその売りさばき合戦の主戦場だった。だが、ここへきて「食料危機」が急速に顕在化し、時代は大きく変わった。MA米の輸入価格もこのところ上昇を続け、ついに2007年度の最後の入札では、国際価格の高騰によって、政府が設定した予定価格では落札されない(輸入できない)事態になっている。政府が購入価格を引き上げれば輸入は可能だろうが、それは国際価格をいっそう引き上げ、米不足の国を困らせる。

「金を出せば外国からいくらでも食料を買える時代」は終わった。日本が無理に買い漁れば、開発途上国の貧しい人々をさらに苦しめることになる。国連世界食糧計画(WFP)のシーラン事務局長によって「新顔の飢餓」と名づけられた飢えと栄養不足の増大に、日本が加担することになる。穀物価格の高騰で儲かるのは、巨大多国籍企業・穀物メジャーだけだ。

 一方では環境問題も資源問題も深刻化している。人口―食料―資源・エネルギー―環境。グローバリズムと市場原理主義のもと、この4つが相互に絡みあい、投機マネーが加わって、事態はスパイラル的に悪化している。「7月のWTO閣僚交渉の決裂と金融危機、両者がともに示しているのは、新自由主義時代の終幕。自由貿易の御旗を掲げたWTOはもはや時代遅れだ」と先の村田氏。一方、関良基氏(拓殖大学)は、「関税引き下げ」とは逆に「引き上げ交渉を開始すべき」だと主張している(332ページ)。

「日本のマスコミが地球温暖化対策を叫びながら同時に自由貿易を礼賛することがいかに矛盾に満ちているかを論証したい。農産物関税の引き上げは、運送エネルギーの削減や、石油ガブ飲み重機の使用の削減のみならず、熱帯林の農地転用に歯止めをかけることによるCO2削減効果がじつに大きい。地球温暖化対策というのなら、即刻、WTOの関税引き下げ交渉を打ち切り、すぐにでも関税引き上げ交渉を開始すべきなのである」


中米やクズ米が主食用の「安い米」に変わる
 日本の国民が食べる米は、日本の農家が引き受ける。それは、朝日新聞の社説があいも変わらず述べているような「生産コストが下がるよう、強い農業へ向けた政策を集中させる」ことではなく、大きな農家も小さい農家も、米つくりを楽しくやっていける条件をつくることである。

 低米価でなく、農家の手取りが増える米の流通をつくっていく。そこで第2の問題、いわゆる「加工用米」と呼ばれる米の流通についてみてみよう。

 事故米事件を契機に、加工用米を主食用米として転売する業者がいたことが問題になっている。これを受け、農水省は国が取り扱う加工用米の調査に乗り出すようだ。加工製造業者の購入・使用量のほか、実際に最終製品になっているかどうかなどをチェックするという。

 せんべいなどの菓子類や味噌、焼酎などに使われる加工用米には、国産米とMA米があり、最近の需要量は年間100万t程度。このうち、MA米が年間20万〜30万tである。ちなみにこれまで輸入されたMA米の累計は865万t(1995〜2008年3月末)であり、このうち加工用が319万tで、他に援助用222万t、飼料用104万t、主食用91万tとなっている。

 加工用には他に全農が集荷・販売した加工用米が年間13万7000t(19米穀年度)あり、この場合の生産者最終手取り額は1俵当たり8430円(1等包装込、税込)である。さらに、農家が直接、業者に販売する分が相当あるが、問題は、農家から安く仕入れた中米やクズ米が主食用として出回っていることだ。

 農民連(農民運動全国連合会)の食品分析センターが大変おもしろい調査をしている。同センターは2007年11月から12月にかけて、都内や埼玉県南部のドラッグストア、ディスカウントストアなどで購入した5kg入り2190円から1250円の超低価格の米まで19点を検査した。1.85、1.8、1.7mmの網目でふるって調べた結果、1.7mm未満の一番下に落ちた網下米(クズ米)の割合が20%以上のものが5点あり、そのうち2点は、網下米が6〜7割にのぼった、という。

 昨年(2007年)12月号で、秋田県大潟村の今野茂樹さんが、「中米の米粉利用が米価下落を防ぐ」と題して、次のように述べている(112ページ)。

「農家や農業者団体は、産地間競争の中で高品位米の生産に努めようと、ふるい網を大きくしてきた。その結果として発生するクズ米は、主食用にならないものとして格安で売買される。だが、この米の中には従来なら主食用にしていた米も含まれているので、買い取った業者はこれを再選別することで『中米』と呼ばれる安価な米を、主食用米として販売可能になる。

 つまり、生産者の努力が低価格米の供給源を作り出し、『自分の米と価格競争』する事態になっていた。消費者にとっては、クズ米を由来とした低価格米と高品位な一等米を店頭で判別することは困難であり、食味の劣る米を購入してしまう不利益がある。

 年間20万〜30万t発生するといわれる中米の流通が米価に及ぼす影響は、けっして無視できるものではない。そこで、不透明な主食用転売を見直し、中米を利用した米粉パンを製造することを提案したい」


本末転倒の価値基準を、農家が是正していく
 今月号の巻頭特集は、「やるぞ、自分のお米で米粉!」である。世の中、大変な米粉、米粉パンブームで、行政も米粉パン振興に力を入れ、大手メーカーやコンビニチェーンまで米粉パンビジネスに乗り出しているが、「自分の米で米粉」は農家しかできない。転売を重ねるような身元不明の米粉でなく、農家の米粉を届ける。

「自分の米」にはいろいろある。以下は新潟県阿賀野市の遠藤昌文さんの場合である(56ページ)。

「3年前の米の収穫を迎えたときのこと。ライスグレーダーの1.85mmの選別網から落ちる米が大量に出ました。出穂期以降の高温により実入りが悪かったのではないかといわれています。このままではいわゆる『クズ米』が大量に発生し、収入に大きな打撃を与えることとなります。

 そこで私は考えました。卵にも大きさによってLL・L・Mなどの規格があるように、米にも粒の大きさによって規格があってもよいのではないかと。

 現在の米の評価方法では、網から落ちたものはすべて『クズ米』として取り扱われます。米を買ってくださるお客さまに事情を説明し、1.8mmの網で拾った米をM規格の米として通常の2割安い価格で販売することとしました。お客様の中には、そのお米でも十分という方がおられ、M規格の米は余すことなく販売することができました」

 それでもまだまだ「クズ米」があり、そこで思いついたのが米粉パンである。試行錯誤を重ね、家庭用製粉機でやれる方法を工夫、菓子製造業の営業許可も取得し、毎週土曜日の直売所で米粉のパンを販売している。地域の人々に大変好評で、直売所での販売日以外でも注文されることがあるという遠藤さん。

「ある時米粉100%のパンを焼いているパン屋の社長さんに、わが家の米粉パンを持参してお話をうかがいに行ったことがあります。その社長さんに『遠藤さん、あなたは農家であってパン屋ではない。私はパン屋だからいろいろと研究をしておいしいパンを焼く。農家のあなたが焼くパンはこれで十分ではないのか。素人っぽさがあるほうが味があっていいのではないか』と言われ、なるほどと思いました。それ以来、『米をつくっている農家がつくった米粉パン』というスタンスで取り組んでいます。形はいびつ、味もまちまちですが、それがいいと思っています。素人でも、個人の家でも粉が挽け、パンが焼ける。こんなわが家の取り組みが大勢の方に広まって、米を有効に活用し、米の需要が高まることを願っています」

 青森県十和田市の古舘留美子さんも、「自分の米」にこだわる(62ページ)。留美子さんは、一度だけ新潟県の有名な製粉会社の米粉ミックスを使ってパンを焼いたことがある。焼いてみたら今まで見たこともないくらい、ふんわり膨れた。まるで小麦パンみたいにおいしそう。ところが食べてみたら、どうも違う。おいしくなかった。

「それ以来、自分の米でなければ! という想いがうんと強くなりました」

 農家の手に流通を取り戻すということは、「ものの真の価値をわかっていない経済」と「それに囚われてしまっている人々の価値観」を、ものの価値を体感・体現している農家が変えていく、ということである。食の不安が高まるいま、異常に安い食品、流通の都合で決まる価格など、経済合理主義とグローバリゼーションが形づくってきた本末転倒の価値基準を、農家が是正していく好機である。

 今回の事件では、病院や老人ホーム、学校や保育園で、事故米やそのでんぷん入り卵焼きが使われ、栄養士さんや調理師さんなど関係者に大きな衝撃を与えた。食費を切りつめなくていけないなかで、なんとか工夫して安全でおいしい食事を提供したいと苦労してきたのに、こんな形で裏切られるとは、と悔しい思いをしている人々は多い。

 これまで関わりが弱かった地域の業務需要、給食に、自分の米、地域の米を届ける。値段も含め、お互いに納得し、ともに元気に楽しくなるやり方を工夫したい。

(農文協論説委員会)  

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