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チベット問題によせて
http://www.asyura2.com/08/idletalk30/msg/658.html
投稿者 kanon 日時 2008 年 3 月 30 日 11:25:33: FUgy0.1v81/ao
 

kanonです。

新聞やマスコミの報道でも大きく取り上げられており、既にご承知のこととは存じますが、中国チベット自治区ラサでの大規模暴動が国際的にも注目を集めています。中国政府とチベット民衆側の見解に相違がみられるのですが、大雑把に申しますと中国政府の見解は、暴徒と化した民衆を鎮圧することで治安維持を図るという名目がある一方で、チベット民衆側に立てば、独立国家であった祖国であるチベットが中国に統治された上に、ダライ・ラマが述べているところの二級市民として扱われていることに対しての不満からであるものといえるでしょう。

中国政府はチベットの文化や言語を否定し、中国の文化や教育を常態化する政策を展開しています。チベット自治区に政治・経済だけではなく、文化や慣習までも強要するのは同化政策であり、こういったやり方は過去の歴史によれば帝国主義的な手法を反映したものです。その裏づけとして、政府の故意的な人口移入政策によって中国本土から大量に移住してきた中国人との人口比率が逆転し、人口比率の変化によってチベット人は少数民族化しつつあり、チベット語を読み書きする人が少なくなってきています。さらに、公用語が中国語となったことで中国語を話せない人が職場で差別の対象となったり、また中国人に対する政府の税金面での優遇、さらには移入者への職業斡旋などで、現地のチベット人が仕事を奪われる事態が顕在すること。したがって、チベットでの騒乱の原因は中共人との格差が目に見える形で露呈することで、チベットの経済・教育・文化などに対する不当な扱いに対しての抗議行動であるととらえることができるでしょう。

そこで、中国とチベット間の問題を考察する上で参考にしたいのがマルクスの『ユダヤ人問題によせて』(岩波書店)です。今回はこの論文の概要を紹介しながらチベット問題の核心に迫ってみようと思います。ただし、これを通読したからといいましても、チベット問題についての具体的な処方箋が提示されているわけではないので、即効薬のごとくチベット問題に精通するわけにはまいりません。ここで学ぼうとすることは物事の捉えかたであり、社会問題を分析する上での一定の視座を得ようとする試みだということを、ご理解していただければと思います。

さて、「国家」と「市民社会」を分離して考えようとする立場は、ルソーの『社会契約論』においてもみられるところです。マルクスは『ユダヤ人問題によせて』でこの立場を踏襲しながら独自の考えを提示していきます。つまり、「国家」と「市民社会」の関係を切り分けて考察することでユダヤ人問題の本質に迫ろうとする試みが描かれています。マルクスのこうした切り分けの視点を学ぶことから、チベット問題の対立軸を究明すれば現状の認識より少しでも整理・分類できるのではないかと考えた次第です。

周知のように、チベット問題は、2008年3月に中国軍がチベット人のデモを武力で鎮圧したこと
から、国際的に大きく報道されることになりました。

チベットに関する問題点を振り返っておきますと、「超入門 チベット問題」のサイト
からの説明からですが、(http://www.tibet.to/mondai/index.htm


『☆人権がおろそかにされています
 思想信条を理由に投獄されたり、刑務所で拷問されたり、マトモな裁判もなしに死刑
にされたりします。
☆中国人(漢民族)の移民が多すぎます
 政府が入植を奨励しており、すでにチベット人は少数派になってしまいました。もと
もと600万人しかいないため、民族としての存亡が危ぶまれています。
☆チベット人にとって不利な社会
 社会の上層部は中国人が支配。教育水準の低さや中国語の能力などで、チベット人は
何かと不利な扱いを受けています。
☆信仰の自由がありません
 ダライ・ラマ法王を批判しない僧侶は寺院から追放されます。一方、中国政府が勝手
に高僧を任命して、信仰を強制しています。
☆環境を壊しすぎています
 乱獲、乱伐、乱開発でチベットの自然が破壊されました。核兵器を作り、核廃棄物の
捨て場にしている疑いがあります。
こういった状況に置かれても、ほとんどのチベット人たちはダライ・ラマ法王の教えを
守り“非暴力”を貫いています。
現在、チベット亡命政府と中国政府の“交渉”が続いていますが、時間がたてばたつほ
ど、チベット人にとって状況は悪くなります。2006年にはラサまで鉄道(青蔵鉄道)が
通りました。ますます多くの中国人が流れ込み、状況の悪化が加速されるのは間違いあ
りません。
2006年には、ダライ・ラマ法王に会うためにヒマラヤ山脈を歩いて越えて亡命しようと
するチベット人たちを中国軍が狙撃する模様を多くの登山者らが目撃。一部始終を撮影
した映像が公開されました。』


とありますように、今回の事件の問題点は中国政府のチベット人に対する非人道的な扱いにあるといえるでしょう。中国側としましては、自国の支配下であるチベット自治区に対しての正当な権利を行使しているとの認識がまかり通っているのですが、例えば、解放人民軍によって他国からの干渉を一掃し、チベットでの植民地支配の撤廃があげられています。それでは、チベットがどこの国から植民地支配を受けていたのかと問えば、具体的にはそのような事実は存在していないといえましょう。チベットが独立国家だった事実はインドやイギリスのチベット宛の親書からも伺い知ることができるのですが、中国側としては、チベット自治区の領域は歴史的・文化的なチベット地域のうちの、中国領に内包される部分の一部(西蔵自治区)として認知されてきたと主張しています。

『ユダヤ人問題によせて』でマルクスは、ブルーノ・バウアーの「ユダヤ人問題」を批判しながら自説を展開します。バウアーはユダヤ人の問題を解決するにあたって、ユダヤ人のユダヤ教からの解放はもちろんのこと、一般に国民においてもキリスト教からの解放を求めたのですが、バウアーの不徹底を以下のように指摘します。

『政治的開放の人間的解放に対する関係を究明せず、そのために、政治的開放と普遍的な人間的解放との無批判な混同ということからしか説明できないような諸条件を立てていること』

マルクスがいわんとすることとは、市民社会の基礎である所有財産が守られるために、国家による保護を取りつけたのが近代国家であり、逆にいえば国家の保護下で私人間同士の由な競争が保障されているという2つの分裂した理想と現実に目を背けてはならないということです。つまり、政治的開放とは国家が成熟に向かうと、宗教に頼らない国家独自の考えで国家を統制できる状態にまで引き上げることであり、その一方で現実の私個人の生活の中では、依然として不平等が解消されずに残ったままの状態が残っており、それゆえに宗教が国家の成し得ないことの代理を果たすと解されます。したがって宗教は、市民社会に根深く息づいており、その存続が理想としての国家の限界を補填するものであり、よって必然的なものに留まってしまうという現実を押さえる必要があるということです。

ところで、中国は信仰の自由を憲法で保障されており、チベット人に対しても然りで、これは宗教的な弾圧によるところからのものではないでしょう。では何をして中国がチベット人に対して弾圧を正当化しうるのか?

一言で述べますと、それは、チベットの独立への不寛容でありましょう。グローバリズムで世界は、資本の流れに翻弄されているところですが、チベット独立を認めますと、世界の勢力図が変化し中国の及ぼす影響力が低下します。また、イラクでの内戦やアフガニスタンにみられるアメリカによる内政干渉の影響も考慮しますと、チベットでも同様にアメリカなどの内政干渉の動向も懸念されます。

国家的な成熟を志向することで、市民社会の軋轢や矛盾を揚棄すればいいのですが、現実的には、国家間の打算的なことも絡み、利権をめぐる国家間での覇権闘争によって、市民社会の開放への展望は遮られてしまうわけです。

また、チベットが宗教国家となる要素を抱えたままですと、たとえ独立を成し得たとしても、それは独裁性を許す土壌に繋がりますし、また他国の干渉によって骨抜きにされてしまう恐れもありましょう。かといいましても、中国の強行的な施策では、国家と市民社会のずれが益々乖離するだけであって国際社会からの指示を得ることは不可能でしょうけど・・・

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