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便所の落書きに文句言ってもしょうがないのになぁ・・・・・・・・・・ 【小説 新昆類】
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投稿者 愚民党 日時 2008 年 12 月 21 日 23:56:16: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 便所の落書きに文句言ってもしょうがないのになぁ・・・・・・・・・・ 投稿者 Ddog 日時 2008 年 12 月 21 日 22:54:56)

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小説  新昆類  (36) 【第1回日経小説大賞第1次予選落選】

     5
   
 昭和四十二(一九六七)年四月、関塚茂は矢板中学校の三年生になった。三年になって
急にクラス替えがあった。一年、二年と同じクラス、友達も多かったので、それがバラバ
ラになってしまい茂は淋しかった。それほど前のクラスは居心地がよかった。クラス替え
になってさっそく茂は背が小さかったので、川崎村の二人組みから目をつけられた。

 ひとりは親分格の斉藤武とその子分格の山口一郎だった。妙な話だが背が一番小さいの
が茂で次に一郎そして三番目が武だった。校庭での朝礼は、学級委員を先頭に、次に縦に
並ぶのが茂、次に一郎、次に武だった。武は左目の網膜に白いものがあり、川崎小学校で
は、「メッカチ」と言われいじめられていた。矢板中学校に来てからは暴力でクラスメートを威嚇
するようになった。武は茂を自分の子分にしようとしていた。茂は、休み時間になると、
武と一郎に呼び出された。

「話があるから、ちょっと、いくべ」

 子分の一郎が茂に伝え、茂は武と一郎に挟まれながら廊下を歩き、校舎のはずれにある
物置小部屋に入った。

「おらの子分になれ、ならなげれば、殴るぞ!」

 武が恫喝した。
 
「おらは、そういうのは嫌いだ、殴りたければ殴ったらよがんべ」

 茂は決然と応えた。調子こくんでねぇ、このやろうと武と一郎に茂は、二発、頬を殴
られた。それから休み時間のたびに武と一郎につきまとわれた。1年、2年の時のクラス
に暴力的な人間はいなかったので、茂の新しい環境は暗くなった。耐えるしかなかった。
茂は中学校よりも朝刊夕刊の新聞配達の方にやりがいを持っていた。

 茂は全国紙の毎日新聞を配達していた。受け持ちは国道四号線沿いの本通り商店街だっ
た。朝はいつもスポーツ紙に掲載されていた富島健男のすけべな連載小説を読みながら配
達するのが楽しみだった。茂は貸本屋から借りてきた富島健夫のクラスノートという高校
生が卒業するときの恋愛小説を読んでいたので、富島健夫の純愛小説とエロ小説との落差
がわからなかった。早朝の街で、読売新聞の配達をしている泥荒に出会った。泥荒は末広
町方面を配達していた。中学校で泥荒とは別のクラスだったが、行き会うたびにオッスと
あいさつをした。あいつも家は貧乏で苦労していんだんべと茂は泥荒に強い仲間意識をも
った。ある朝、校長が校庭での朝礼で、新聞配達をしている生徒がある家に配達された牛
乳を盗んで飲んでいるという通報があった、そうゆうことをしてはいけないと、全生徒の
前で訓示をたれた。茂はそのとき、歯をくいじばりながら、校長を真正面からにらみつけ
た。下を向いたら敗北でおれは終わりだと思った。もしかしたら泥荒かもしれないと思い
三組の列に並んでいる泥荒を見た。泥荒も歯をくいしばり眼光に燃え、校長を真正面から
見つめていた。あいつじゃない、あいつもおれと同じ、新聞配達少年が校長に侮辱された
と、たぎる怒りに胸は煮えくり返っている。何が市民からの通報だ、ちくしょう、暇なク
ソジイイの嫌がらせだ。そのとき、泥荒が茂を見た。ふたりは、眼光で「オッス」と挨拶
をした。負けてたまるか! とふたりは同時に顔をうなずき無言で、新聞配達少年の闘志
を確認した。

 矢板中学校の生徒は、毎朝、暇なクソジイイに監視されていた。登校する朝の定刻には
「君が代」が校舎のスピーカーから大音響のうなりを上げる。生徒は登校途中であっても
道路に止まり、「君が代」の大音響が聞こえたら、歩きを制止し、あるいは自転車から降
り、直立不動になり校舎の国家国旗掲揚に向かい拝礼するのだ。山県有朋一族に支配され
てきた矢板中学校の伝統だった。朝の「君が代」拝礼のとき、会話したり姿勢が崩れてい
る生徒がいたならば、山県有朋一族を敬服する「汚れ勢力」の暇なクソジイイが校長に毎
朝、電話で通報するシステムが完成していた。そして校長が、今朝の「君が代」拝礼には
きちんとやっていなかった生徒がいたと、朝礼で全生徒の前で訓示をたれる監視恫喝制度
が起動していた。さすが、長州テロリスト山県有朋支配地の伝統だった。山県有朋は、同
じく長州テロリスト伊藤博文とともに、幕末の孝明天皇と睦仁皇太子を暗殺し、長州の大
室寅之祐を明治天皇として祀り上げた人間であった。大室寅之祐明治天皇を神として貫徹
するために明治維新政府は強権となって、さまざまなものを壊滅した。日本近代は欺瞞に
よって成立した。大室寅之祐王朝の欺瞞と戦争による民衆虐殺の伝統こそ、明治、大正、
昭和の強権だった。その基礎をつくりあげたのがテロリスト山県有朋だった。日本の近代
とは、欺瞞と「嘘の神」の貫徹史でもあった。ゆえに「君が代」は大音響でうなりを上げ
る。

 中学校では相変わらず、武と一郎が、休み時間になるとしつこく、つきまとってきたの
で、武と決闘をして、現状を打開しようと茂は決意した。決闘は土曜日の放課後、中学校
から荒井村にいく道沿いにある牛馬市場ということになった。そこは牛と馬が売られる日
以外は誰もいない広い場所だった。クラスメート二人が立会人でついてきた。

 茂と武は取っ組み合いのケンカをしたが、ふたりとも背も力も同じ位なので、なかなか
決着がつかなかった。立会人が一息入れろと中断した。ふたりはひと時ケンカをやめた。
茂が立会人とこれからどうずるか、最後までやるのか話していたところ、武が茂の肩を手
で話があると後ろからチョンチョンとたたいた。茂がなんだと振り返った時、武のパンチ
が茂の左目に入った。このやろう、汚い手をつかいやがってと茂は動物のようなでかい
声を出し、猛然と武に向かっていった。武はヨロヨロとうろたえた。茂は何発も武の胸と
腹にパンチを浴びせ、ぶちのめした。自分でもこれほど暴力が発動できる人間であること
を、瞬間に茂は自分自身を発見していた。そのとき立会人が危険を感じ、やめろそこまで
だと仲裁に入った。ケンカはここまでだと立会人がふたりに言った。じゃぁ、おれは帰る
ぞ、夕刊の新聞配達があるかならと茂は肩掛け布製のカバンを拾い、牛馬市場の建物を後
にした。後ろから、逃げるか、このやろうと武が声を出したが茂は相手にしなかった。一
郎は最初から最後まで黙って見ていた。

 月曜、茂は眼帯をして登校した。後ろから武に殴られた左目が腫上がっていたが、それ
はケンカの勲章でもあった。おれはケンカができる人間だと茂は自信に満ちていた。その
日から武と一郎は、茂に休み時間まとわりつくのを止めた。一郎も武から距離を置くよう
になった。武のケンカゲーム相手は、他の人間に向かった。授業が終わった掃除の時間、
武は、川崎村の隣にある木幡村から登校している成績が良い山田秀雄を挑発し、ぶちのめ
した。クラスメートは誰も止めに入らなかった。茂も黙って見ていた。中学一年、二年の
時と違って、新しい環境は殺伐としていた。それとも三年になり大人になったのだろうか
と茂は思った。掃除が終わり、毎日のクラス討論の反省会が始まる時、秀雄は机に両手で
頭をふせ泣いていた。周りの女子もそれを見ないようにしていた。男子は沈黙のなか、暴
力で調子に乗り、威張っている武をいつかぶちのめすと暗黙の了解を空気のなかで感じて
いた。すでに中学三年になると、表ざたにせず、隠しながら進行する政治的人間になって
いた。

 六月のある日、雨が降っていた。保健体育の授業は体育館だった。九人制のバレーボー
ルの試合を男子と女子、二組づつに分かれてやる事になった。最初に男子が二組に分かれ
て試合をやり、女子はコートの周りを囲んで観戦することになった。茂は選手からはずれ
観戦となった。選手となり得意げに武はコートの後方にいた。武の対戦組のサーブとな
った。ボールを打つのはバレーボール部に所属している岡田純一だった。岡田は強いサー
ブを武めがけて打った。武は取れなかった。次のサーブも武めがけて打つ。ふたたび武は
受けたが後ろにはじき返した。武が対戦する相手の組の全員が武をめがけて打った。武こ
そがチームの弱点であることが女子生徒の前でクラス全員の前でさらされた。武は蒼ざめ
た顔になり、ますます身体は羞恥と恐怖に硬直していった。その日から武はクラスで目立
たない人間へと変貌した。集団の暗黙による政治的報復を恐れる人間となった。十五の季
節を迎える少年少女たちは、陰部に陰毛が生えて、隠すことを知り、体が大人へと脱皮を
とげていく過程の思春期にあり、それは距離をとるというニヒリズムへの知覚が芽ばえる
季節でもあった。

 茂は武の挑発から解放されて、クラスの中で友達をつくっていった。最初の友達は牛乳
配達をしている石田実だった。石田に誘われたのは七月はじめの土曜日だった。土曜日は
半ドンで、昼1時前には学校が終了していた。

「今日、冒険に行くべよ、汚れてもいいズボンと上着を持ってこいよ、あと新聞紙ももっ
てこい」

 待ち合わせは矢板駅だった。茂は夕刊の新聞配達もしていたので、遊べるのは土曜の午
後の夕刊配達するまでの時刻と、夕刊配達がない日曜だった。茂の家族住むアパートから
駅までは歩いて十分ほどだった。新聞紙の束を布製の手提げに入れて駅に行くと、すでに
紙袋を腕にかかえた石田が待っていた。石田は目が三角で、ねじれた印象がある男だった。
よし、いくべ、ついてこいと石田は駅の公衆トイレに向かった。茂は石田の後からついて
いった。公衆トイレは男女共有だった。水洗式ではなく汲み取り式便所だった。

 トイレの入り口に入ると、左側が小便用便器が三個あり、右側に大便用男女共用個室ト
イレが二っつあった。ベニヤのドアには薄緑色のペンキが塗ってある。石田と茂は端のト
イレに入った。木の板壁にはのぞき見るためのちいさな穴があり、そこに紙がねじこまれ
ている。石田はそれを取ると、ここからとなりが見えるべ、のぞいて見ろと茂を促した。
そして石田はドアを少し開け、誰も来ないことを確認すると、隣のドアに入り、隣のトイ
レの穴からもねじ込まれていたチューインガムを取った。

 茂はしゃがんでその穴を見ると、となりのトイレが見えた。石田が隣トイレから帰って
きた。

「この穴をみて、女かどうか確認するんだっぺ」

 石田はドアにあるちいさな二つの穴を指差して言った。茂は立ち上がってドアの穴をみ
るとトイレ入り口方向の外が確認できた。

「きっと、高校生がのぞきにつくった穴だんべな」

 石田はそう言うと、紙袋から新聞紙を出し、白い陶器製の便器を拭き始めた。何故、そ
んなことをするのか茂にはわかならなかった。どうやら便器に体を潜りこませ便溜め槽に
まで降りるらしい。石田は紙袋から古い長袖シャッツを取り出し、半袖シャッツの上に着
た。おまえも着替えろと石田が指示をしたので茂も紙袋から汚れた長袖シャッツを取り出
し、それを着た。ていねいに石田は便器を新聞紙でふき取ると、さらにボロ布で便器をき
れいにした。石田は紙袋から軍手二組を出すと、一組を茂に、これをはめろと渡した。

 隣からトイレドアが開き閉まる音がした。誰か入ったなと石田が小声で言った、そして
しゃがんで、左目を強く閉じながら右目をぱかっと開き、のぞき穴を見る。おんなだと石
田は小声で言った。よし、おれは潜るからなと、軍手をはめ、両足を便器に入れ、徐々に
体を沈ませていく。石田の両足はやがてコンクリートで出来ている便槽についた。そして
便器から手を離し、便槽へと潜り込んだ。だいじょうぶかと茂は声をかけた。下からニヤ
っと笑う石田の顔が見えた。

 茂ははじめての体験に興奮していた。茂がのぞき穴から見ると女子高校生がパンツを下
げているところだった。陰部から恥骨へと毛が生えているのが見えた。やがて女子高校生
は腰を下ろし、用を足していった。のぞき穴からは女子高校生の髪が下に垂れているのが
見える。やがて女子高校生は顔を上げた、そして不思議そうに目の前のちいさな穴を見て
いる。好奇心で女子高校生はその穴に瞳を近づけてきた。茂はあわてた。ここで穴から目
をはなせばバレてしまうと思い、そのまま見続けた。光が女子高校生の瞳に遮られ、穴は
真っ暗になった。やがて女子高校生は穴から目を離して、光が見えてきた。女子高校生は
立ち上がってパンツをはきはじめた。用を足した女子高校生はトイレのドアを閉め出て行
った。美人だったと茂は思った。

 石田が便器に手をかけ、顔を出し肩から上半身を出し、はいずり上がってきた。
 
「いまのおんなが捨てたモノだっぺ」と石田は紐がついた茶色の生理用具を茂にみせた。
そして便槽へと落とした。

「ション便をへっていたよ、今度はおめえが中にもぐれ、足、滑らないように気をつけろ
よ」
 ドアの穴から外を見ていた石田が、来たっぺ、おんなだ、潜れと小声で指示した。茂は
両足を便器に入れ、両腕で体を支えた。腰まで便器に入れ、両足の着地点をまさぐった。
やがて左足の運動靴が便槽に着いた。その左足を基点に今度は右足を着き、便槽を大きく
開脚した両足でまたぐ格好になる。足が滑れば便槽の底まで落ちるはめになる。両足を踏
ん張りながら、茂は肩から顔を便器の下に沈めた。上から石田が、隣はきれいな女子高校
生だんべ、下からよくおがめよと真剣な顔でいった。石田の眼は危険な遊びの情熱に燃え
そして炎は歪んでいた。その石田の眼を便器の下から見ながら茂はうなづいた。

「あまり近くまで行くとバレるから、気をつけろよ」

 石田が小声で注意した。
 
 便槽の中の便溜めには蛆虫が蠢いていた。紙、そして糞、ション便の匂いに圧倒された。
両足で踏ん張っているコンクリートの便槽壁は農茶色でぬるぬるしている。茂は軍手をは
めた右手を便槽の壁を押し指に力を入れた。これで体を支える三点が確保されたことにな
る。向こうの便器から光が差してくる。茂は慎重に前進していった。濃紺のスカートそし
て女子高校生の両足が見えた。女子高校生は、ゆっくりと白いパンツを下ろし、やがて下
半身を丸出しにしてしゃがんだ。茂は便槽の下から女子高校生の中心を仰ぎ見た。暗くて
性器はよく見えなかった。茶色い生物体のようだった。やがてその生物体の口からション
便が発射された。次に大便が爆弾のように茶色の生物体の黄門から落とされてきた。茂は
あわてて体を後退させた。女子高校生のション便と糞爆弾投下が終了し、今度はチリ紙が
ひらひらと落ちてきた。茂は初めておんなのおまんこを仰ぎ見たことになるのだが、それ
は憧れの美しいおまんこというより、茶色いシワと溝がある怪物の排泄生物体だった。茂
にとっては革命的な出来事になってしまった。暗い便槽の世界で、茂の少年期は終焉した。
茂は便器に手をかけ、顔から肩そして腰を便器の外に出していった。はぁはぁと新鮮な空
気を吸った。小声で静かにしろと石田が真剣な顔で注意した。

「なにか下のほうで見えた、気持ち悪かったよ」

 トイレから出た女子高校生が外で待っていた女子高校生に話す声が聞こえた。
 
 月曜日、茂は中学校へ登校したが、すでに、おれは恥ずかしい事をしたという罪悪感を
心の底に内包していた。クラスメートの女子中学生や女教師がスカートの下に怪物のよう
な生物体を宿していることが信じられなかった。その日から茂は赤面恐怖症になってしま
った。授業で教師に指され椅子から立ち上げると顔は真っ赤になっていた。またいくか?
と石田は土曜日に誘ったが、用があるからと茂は断った。

「おめぇ、おっかなぐなってしまたんだんべ」

 石田は歪んだ眼で笑った。
 
 夏休みになった。茂は朝の朝刊配達が終わると、箒川へ自転車で水浴びに行ったりして
過ごした。夕方になると夕刊配達をした。勉強はしなかった。夜はマンガを描いたり、テ
レビをみて過ごした。お盆が過ぎると宿題の絵を長屋の前にある大きな木を描くことに決
め、昼間から木の前で絵を描いて過ごした。その木は長屋の前の道路の向こう側にあった。
砂利が敷かれた空き地だった。茂はひとりで絵を描いているときが一番幸せだった。夏休
みが終わりその絵は体育館に張り出され銀賞をとった。茂は嬉しかった。

 二学期になると、高校進学の模擬テストがあった。そして黒板の横の机には就職案内の
パンフレットが置かれるようになった。クラスメートはひとりひとりが進路を問われるよ
うになった。授業が終わると高校進学のための課外授業が行われるようになった。茂は夕
刊配達があるので、課外授業の申し込みをしなかった。自然に茂は高校進学しないグルー
プとより付き合うようになった。高校進学しないグループはほとんど氏家町にある職業訓
練所へ入るつもりでいた。茂は那須工業高校の土木科を希望していた。自分の進路を選択
していくという社会の重みをクラスメートの誰もが感じていた。天真爛漫だった中学一年
や二年の時と違って、それぞれが内向化していった。未来への不安と心を隠し秘密を持っ
た茂はインキンタムシに犯されてしまった。体を動かすたびにきんたまが痛かった。つい
に茂は、きんたまを圧迫できる水泳パンツを履いて登校した。後ろの女子生徒に水泳パン
ツの線を見られるのが怖かった。茂は夢精をするようになっていた。夢の相手は長屋の二
軒隣のおばさんだった。夢の中で茂は発射した。起きるとパンツが精液で水濡れしていた。
先行し大人になっていく体の革新に、意識は置きざれにされ不安と動揺の日々だった。
家ではテレビを見ながら国語辞書を開き、性に関する語句を読み、ひとり興奮していた。

 


【第1回日本経済新聞小説大賞(2006年度)第1次予選落選】


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