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オバマを逆転リードしたマケインの勢い【SAFETY JAPAN】
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投稿者 Ddog 日時 2008 年 9 月 10 日 22:20:30: gb2b4T9TetGkU
 

外交弱小国”日本の安全保障を考える
第83回
オバマを逆転リードしたマケインの勢い
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/83/

国際問題評論家 古森 義久氏
2008年9月9日
 米国大統領選挙の共和党全国大会を現地で見た。
 この大会で共和党大統領候補に正式に指名されたジョン・マケイン上院議員は民主党のバラク・オバマ候補に対し、新たな勢いをつけ、一連の世論調査の支持率でも逆転のリードを記録して、本番選挙戦への新しい局面を開いたようだ。
 もっとも東西を問わず、選挙は水もの、予測は難しい。いまのマケイン人気の高まりも瞬間風速だけ、一時的な現象かも知れない。だが、たとえそうでも、共和党大会が選挙キャンペーン全体の一つの転換点となったことは否定できないだろう。
 共和党全国大会は9月1日から4日まで、中西部ミネソタ州セントポール市で開かれた。「エクセル・エネルギー・センター」という巨大な屋内競技場の会場は全米各州からの代議員たちで埋め尽くされた。
 この大会を盛り上げた要因をあえて項目別に挙げれば、ペイリン、イラク、ベトナム、オバマ批判ということとなろう。4つのまるで異なる要因だった。その結果としての産物はジョン・マケイン大統領候補、サラ・ペイリン副大統領候補の下に、これまでよりは団結を強め、民主党への対抗意識をより強く燃やした共和党の態勢だといえよう。
清新なイメージのサラ・ペイリン副大統領候補
 サラ・ペイリンというアラスカ州知事の女性は、賛成派にも反対派にも、新鮮な異色の星として映ったことは間違いない。国政レベルの政治家としては無名の新人に等しいからだ。44歳の元准ミス・アラスカ、5児の母親、ハイスクール時代から恋人だった漁業従事の夫、妊娠中絶や同性結婚に断固、反対する保守志向、小さな町の町長、共和党エスタブリッシュメントへの挑戦‥‥大統領選挙キャンペーンへの登場人物としては異端の特徴ばかりである。「ワシントンの既成政治家」へのアンチテーゼだともいえよう。
 だがその一方で、民主党寄り、リベラル寄りの有権者層ではペイリン候補の国政レベルでの未経験や保守主義の強固さを批判する声も当然、強い。ただしその批判派もペイリン候補のダイナミズムは認めざるをえないという感じなのだ。
 9月3日のペイリン候補の指名受諾演説は会場を激しく沸かし続けた。
 「わたしの19歳の長男トラックは9月11日に陸軍の歩兵としてイラクに派遣されます。2人の息子と3人の娘、みな強く、親切な心の持ち主です」
 「わたしはアラスカでは利益団体、ロビイスト、石油会社、古い男同士の集団などと対決しました」
 「一部のメディアはわたしがワシントンのエリートの一員ではないというだけで、副大統領の資格がないと断じています。しかしわたしはメディアやエリートの助言を受けにワシントンに行くのではありません。国民に奉仕するために行くのです」
 こうした言葉を熱っぽく述べていくペイリン候補は新しいタイプの女性政治家であることだけは確実だった。家族を重視し、社会に向かっては保守の信条を恥ずることなく表明し、既成の政治システムには同じ政党の政治家相手でも歯向かっていく、という姿勢である。そしてペイリン候補のそのような言動がマケイン陣営に新たな活力を注入したといえる。
イラク情勢の好転が追い風に
 第二の要因のイラクは、多くの登壇者たちがマケイン候補の強く支持した米軍増派の成功を語るという形で重要性を強調された。
 イラク情勢が大統領選挙で大きなプラス材料として語られるようになった、その変化は大きい。大会全体を通じてイラクの治安回復と民主化の前進が繰り返し述べられ、その原因となった米軍増派をマケイン氏が超少数派として強く支持したことが功績として語られるのだった。歴史とは変わるものであり、国際情勢とは予測が難しいものである。一年前に誰がこんな政治状況を予測しただろうか。
 大統領予備選でマケイン氏に挑戦したミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は党大会の演説では「マケイン氏はブッシュ大統領のイラクへの米軍増派に強く賛成することで戦略的思考の正しさを証明した」と強調した。リンジー・グラム上院議員も「イラク情勢の好転がいまや共和党大統領候補が米国民に誇示できる成果を生んでいる」と明言した。
 ブッシュ大統領が2006年から2007年にかけて発表し、実行した米軍増派はイラクの治安回復という目的に関しては明らかに成功をもたらした。米軍やイラク国軍に対する攻撃が激減し、シーア、スンニという宗派間の武装闘争も減って、テロ組織のアルカイダが衰退したことは種々の統計で立証されている。その増派には共和党側でも多くの議員や元閣僚たちが反対していた。ところがマケイン候補だけは一貫して支持を表明したのだった。
 当時はマケイン氏の人気はその表明のために地に落ち、大統領選からもう脱落だという観測がすっかり定着していた。だがいまやその状況がすっかり逆転してしまったのだ。マケイン氏の孤独な増派賛成論が、いまは勇気と先見に満ちた賢明な判断として称賛されるのである
「国家」「公」を考える原点となったベトナム体験
 第三の要因はベトナムである。
 マケイン氏がベトナム戦争中の1967年10月、海軍パイロットとして北ベトナムの軍事拠点を空爆中に撃墜され、パラシュートでハノイ地区に落下したところを捕まり、その後の5年半を捕虜として過ごした経歴は広く知られている。拘束された間には過酷な懲罰や拷問を受けたが、みごとに耐えて、軍事機密を守り、同僚の米軍捕虜たちを激励し続けた。
 マケイン候補は党大会ではそのベトナム体験を大統領に必要な資質の基盤として称えられた。「ベトナム戦争でのヒーロー」であり、「国家安全保障については最も確固たる資格を持つ指導者」というような評価だった。大会場にはマケイン氏とともに戦争捕虜としての辛苦をわかちあった元軍人たちが20人以上も出席し、熱心な声援を送り続けた。
 マケイン氏自身も指名受諾演説のなかで改めてベトナム体験を語った。そしてその体験が自分の国家や価値観に対し新しい目を開かせたことを強調した。
 「わたしはベトナムで捕虜になったときに、自国を愛するようになったといえます。わたしはアメリカ合衆国をその適正さ、叡智への信念、公正さ、そして国民の善良さなどのゆえに愛するようになったのです。米国は単なる場所ではなく、理念、そして戦って守る価値のある大義だと思い、愛したのです。わたしの国家はわたしを救ってくれました」
 こういう思いから今回の選挙戦でのスローガンの「国家第一」とか「奉仕」という「公」への強い意識がわいたということなのだろう。日本では政治家の標語としては考えられない内容ではあるが、米国共和党大会では熱狂的な拍手や歓声を受けたマケイン候補の姿勢だった。そしてその出発点がベトナムでの捕虜体験だったというのである。
禁を解かれたオバマ批判
 
 第四の要因はオバマ候補への遠慮のない批判だった。
 これまでの長い選挙キャンペーンでは民主党のバラク・オバマ候補への正面からの歯に衣着せぬ非難や批判は意外なほど少なかった。民主党の指名争いの激烈な闘いでもヒラリー・クリントン陣営はオバマ氏を個人レベルで非難することはほとんどなかった。共和党側もオバマ氏に焦点を合わせて批判を表明することは少なかった。オバマ氏がそれだけ清新な政治家として魅力があるということなのだろうが、彼が黒人であることも原因だったといえよう。オバマ氏への攻撃は黒人へのネガティブな態度として受け取られかねないリスクだったわけだ。
 ところが今回の共和党大会ではどっとセキを切ったように、オバマ批判が噴出した。おそらくは共和党全体として計算した戦略だったのだろう。ルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長やロムニー前マサチューセッツ州知事ら共和党の大物たちがこぞって「オバマ氏の未経験」を指摘し、非難した。「オバマ氏はここ100年で最も未経験な大統領候補だ」という批判さえあった。
 上院議員一期目のオバマ氏が議会では一貫して「大きな政府」のリベラル政策に賛成してきた軌跡も否定的に紹介された。オバマ氏が大統領に就任すれば、すぐに金正日、フィデル・カストロといった世界の独裁者たちと前提条件をつけずに会談すると言明したことも非難の対象となった。オバマ氏がイラクからの米軍撤退を唱えることにも「敗北の戦略」という糾弾が浴びせられた。ペイリン候補は以下のように述べたのだった。
 「オバマ候補はアメリカがいま戦う戦争について語るのに、勝利という言葉を一回も使わずに済ますのです」
 こうした遠慮のないオバマ批判は少なくとも会場の共和党代議員たちから賛同の歓呼を受け続けた。共和党側の「オバマ神話」を打破しようという試みの打ち上げという感じだった。
世論調査でマケイン候補が逆転リードへ
 さてこうした共和党大会の展開は選挙戦全体にどのような効果があったのだろうか。
 その一つの手がかりはテレビの視聴だろう。「ニールセン・メディア・リサーチ」の調査によると、マケイン候補の指名受諾演説を見た人が全米で3890万人と、オバマ候補の演説を見たという3830万人を小差ながら上回った。ペイリン候補の演説を見た人は3720万人とオバマ候補に肉薄した。一方、民主党の副大統領候補ジョセフ・バイデン上院議員の指名受諾演説をテレビで見た人の数は約2400万人と報じられた。すごい差であり、ペイリン候補への一般米国民の関心度の高さが分かるだろう。
 支持率では共和党大会が終わって3日目の9月8日のギャッラプ世論調査によると、マケイン候補が50%、オバマ候補が46%となった。このところの一連の世論調査で僅差ながらリードを保ってきたオバマ候補が逆転されたわけだ。この数字は登録有権者の間の調査結果だが、「必ず投票する」と述べている有権者の間では、マケイン候補がさらに大きくリードして11ポイントの差をつけたという報道もある。
 しかし今のこの時点だけを切り取って、マケイン候補が確実に優位に立ったと断じることも、もちろんできない。共和党大会が終わった直後、ペイリン候補という新人が賛成反対の入り混じった注視を集め、それがマケイン候補への支持をも一時的に高めただけかも知れない。だがたとえ一時的にせよ、今回の共和党全国大会が同党候補たちに新しい前向きの動因を注入する結果になったとは言えるだろう。
 

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