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オバマ新大統領は筋金入りの実利主義者 日米同盟や通商、小沢民主への影響を読む 
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投稿者 児童小説 日時 2008 年 11 月 25 日 18:01:11: nh40l4DMIETCQ
 

2008年11月25日

吉原欽一
社団法人アジアフォーラム・ジャパン専務理事

 1998年6月、ビル・クリントンは、アメリカ大統領として89年の天安門事件以来はじめて中国を訪問した。滞在は9日間という異例の長さに及んだが、その一方で、訪中の前後に同盟国である日本に立ち寄ることはなかった。

 日本「素通り」(ジャパン・パッシング)が、中国側の意向を汲んだものなのか、もとからクリントンに立ち寄る考えがなかったのかはわからない。だが、中国を「戦略的パートナー」と呼び、さらに江沢民国家主席主催の晩餐会で「米中両国はかつて日本と戦った同盟国だった」とスピーチしながら、日本を素通りしたあげく、中国滞在中に繰り返し日本の経済政策を批判するという彼の態度は、経済摩擦や第一次朝鮮半島核危機、沖縄の基地問題などをめぐって危機に瀕し、「同盟漂流」といわれた90年代の日米関係を象徴していた。

 このとき、日本の政・財・官界のエスタブリッシュメントに植え付けられた“クリントン・コンプレックス”あるいは“民主党コンプレックス”は、相当に根強い。加えてブッシュ政権の8年間、対米交渉においては、リチャード・アーミテージ元国務副長官や、マイケル・グリーン元国家安全保障会議 (NSC)上級アジア部長といった知日派人脈に頼りきりであった。こうしたことから、2008年の大統領選に際しても、日本のエスタブリッシュメントの間では「民主党は中国重視」「民主党が勝てば保護貿易主義となり日本への要求が厳しくなる」といった意見が見られ、アーミテージが外交・安全保障アドバイザーを務める、共和党のマケイン候補が勝つのを期待する空気が少なからずあった。

 特に、2008年初めまで大統領候補の大本命であったヒラリー・クリントンは、07年10月に発表した論文で、米中関係を「21世紀でもっとも重要な二国間関係」と表現する一方、日本にはほとんど言及しなかった。実際、90年代に比べると、中国がアメリカ経済に占める割合は、はるかに大きなものとなっている。米財務省が先ごろ発表した国際資本統計によると、中国の米国債保有高は9月末時点で5850億ドル(約56兆7千億円)、ついに日本を抜いて 1位となった。また、10年末までに4兆元(約55兆円)を投じる予定の内需拡大策も、危機に瀕した世界経済を牽引するものとして期待されている。

 第2部で述べたように、オバマ政権は「三期目のクリントン政権」と呼ばれるほど、クリントン政権の人材を受け継いでいる。外交・安全保障分野においてもそれは例外でなく、クリントン政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたアンソニー・レイクや、国連大使を務めたリチャード・ホルブルック(「ヒラリー政権」の国務長官候補だった)がアドバイザーに名を連ねているし、ヒラリーが国務長官に就任する可能性もある。

 だからといって、オバマ政権が「中国重視・日本軽視」になると考えるのは早計だ。

 まず、90年代と大きく異なり、アメリカの貿易赤字の相手国で、もっとも赤字額が大きいのは中国である。また民主党には、ナンシー・ペロシ下院議長をはじめ人権重視派の議員が多いから、チベット問題などで中国を攻撃するかもしれない。環境問題も対立の火種となりうる。

 一方、オバマが07年4月、安倍晋三首相の訪米にあたって発表した声明では、日本を「米国の真のパートナー」と呼び「日本にはアジア太平洋にとどまらず全世界規模で、アメリカの経済面・安全保障面での利益のアンカー(碇)としての役割を果たすことを期待している」と述べている。また、外交アドバイザーのリチャード・ダンツィグ元海軍長官とジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授に、論文「オバマ氏と日米関係」を朝日新聞に寄稿(08年6月)させたことや、名誉職とはいえ、ウォルター・モンデール、トマス・フォーリーという駐日大使経験者2人を対日政策アドバイザーに加えたこと(同8月)には、民主党政権に対する日本側の不安を打ち消すねらいがあったと考えられる。

 実務者レベルでも、対日政策コーディネーターとして、日本の防衛研究所にいたこともあるマイケル・シーファーを起用、またジョセフ・バイデン次期副大統領の懐刀で、政権では朝鮮半島問題を担当するとみられるフランク・ジャヌージも、「日米同盟は北東アジアの問題だけでなく、気候変動、中東での平和構築、経済開発、民主化の拡大といったグローバルな課題にとっての要石である」と発言している。

 通商政策に関しても、もともと「保守的」なオバマはアメリカの伝統である自由貿易を尊重し、経済政策ブレーンにもシカゴ学派の経済学者が名を連ねている。金融危機で多少の軌道修正を迫られたものの、保護主義へ大きく舵を切るということはないだろう。

 そもそも、ブッシュ政権が終わる前から、われわれは日米同盟が絶対のものではないと思い知らされている。08年10月、アメリカが北朝鮮への「テロ支援国家指定」を解除するに当たり、麻生太郎首相への通告は、解除発表のわずか30分前にすぎなかった。いかなる同盟も永遠のものではない。それは、同盟を維持しようという不断の努力によって、かろうじて支えられるものなのだ。

日米の貿易摩擦が重要な問題となっていた80〜90年代とは異なり、いまのアメリカにとって重要な外交・安全保障面での課題は、対テロ戦争、対ロシア政策、対イラン政策、対中政策、地球温暖化問題などであり、対日政策は、これらの重要課題の文脈のなかで決定されることになる。

 ちなみにマケインは共和党だから「日本重視」だといわれたが、それは先に挙げたような課題に対処するうえで、日本の貢献に期待を寄せていたということであり、期待とはすなわち「要求」なのだ。マケイン側近のアーミテージが、普天間飛行場の移設問題を早期に解決し、インド洋での給油活動を継続するよう求めていたのは、それがアメリカのグローバル戦略に不可欠だからである。

 日本の「アンカーとしての役割」に期待を表明しているオバマも、同盟国としての責務を果たすよう、日本にさまざまな要求をしてくることは間違いない。特に、イラクからの撤退を進め、アフガニスタンでの対テロ戦争に軸足を移す考えを表明していることを考えると、アフガンでのさらなる貢献を求めてくる可能性がある。「最低ライン」である給油活動に加えて、たとえば陸上自衛隊の大型ヘリコプターによる輸送活動や、アフガン・パキスタンでの政治安定化支援活動への参加などが考えられる。海兵隊のグアム移転とパッケージになっている普天間の移転についても、当然、予定通りの実施を求めるだろう。


 また忘れてはならないのは、過去の偉大な大統領たちからいいとこ取りをした「ハイブリッド」大統領のオバマが、筋金入りのプラグマティスト(実利主義者)だという点である。したがってオバマのアジア戦略においては、中国を動かす梃子(てこ)として日米関係を強化する可能性もあれば、逆に中国に接近して日本を牽制する可能性もある。つまり日中のどちらかに軸足を置くのではなく、課題ごとに、アメリカにとって役に立つほうを利用しようとするのではないだろうか。戦中から戦後にかけて活躍したジャーナリストの松本重治が、「日米関係は米中関係である」と喝破したことが思い出される。

 ゆえに、日本としても、漠然としたイメージで「重視」「軽視」と騒ぐ暇があったら、日米中の三角関係、さらにはグローバルな課題において、日米同盟をどのように活用できるか、積極的に発信していくことが必要である。麻生首相が外相時代に提唱しながら、首相就任後は封印したままの「自由と繁栄の弧」構想を、現在の国際情勢にあわせて練り直すのも一案ではないか。都合のいいことに、オバマはNATO(北大西洋条約機構)の拡大に前向きである。

 なおオバマは、日中を相手にするときだけでなく、よりグローバルな問題についても、プラグマティックな態度で臨むだろう。彼は、ブッシュ政権の失敗を踏まえ、多国間協調主義にもとづく外交をおこなうと述べているが、これは決して国連重視を意味しているわけではない。クリントン政権内部には、「可能なときは多国間協調主義をとるが、必要なときは単独行動主義になる」という言葉があったそうだが、オバマもこの哲学を踏襲すると見られている。外交面での課題については、国連やNATO、G8、APEC(アジア太平洋経済協力会議)、PSI(大量破壊兵器の拡散防止構想)など、あらゆる枠組を使って対処するだろうが、もし緊急で重要な問題があったときには、躊躇なく単独で行動するだろう。

 したがって、国連重視を標榜している小沢一郎民主党代表が、政権をとった場合にオバマ政権とは国連において共同歩調をとれる、と考えているとすれば、それは大きな誤解と言わざるをえないのである。

 最後に、オバマ政権の誕生が日本に与える影響について考えるとき、日米同盟や貿易といった通常の外交課題にとどまらない問題を含んでいることを指摘して、本特集を締めくくりたい。

  日本には、「政局よりも政策」といって総選挙を延期した総理大臣がいる。だが、誤解を恐れずにいえば、オバマは「政策よりも政局」の人である。もちろん、ここでいう「政局」とは、「永田町政治」のような権力争いのことではない(アメリカ人も、「ワシントン政治」には嫌悪感を抱いている)。コミュニティ・オーガナイザーという彼の出自を考えると、おそらくオバマは、細かい政策を提示することではなく、多数派工作=人びとの意思をまとめることこそが政治の役割だと考えている。そして、アメリカという国において、人びとの意思をまとめる最良の手段は選挙なのだ。オバマの勝利演説に政策の話があまりなく、選挙の話とエピソードばかりであったことは、そのことを示している。

 もちろん、アメリカ大統領には議会の解散権がないから、自分の手で「政局」をつくり出すことはできない。だが、上級顧問としてホワイトハウス入りする選挙参謀のデビッド・アクセルロッドは、2年後の中間選挙や、全米の知事選挙などをコントロールすることで、オバマ大統領のリーダーシップを演出していくに違いない。

 ではもし、多数派工作に長けたアクセルロッドやエマニュエル首席補佐官が、日本の政局に手を突っ込んできたらどうなるか。クリントン政権時代、数々のスキャンダルの処理係を務めたエマニュエルとしては、オバマとの電話会談で満足している麻生首相と、アメリカの「チェンジ」を日本の政権交代に結びつけようと躍起になっている小沢代表を手玉にとることなど朝飯前かもしれない。テレビや新聞にとどまらず、インターネットメディアも駆使し、日本の政局に揺さぶりを掛けてくることも十分に考えられる。麻生首相に対し、アメリカの意向に従わなければ小沢民主党を支援する、といった圧力をかけることもありうる。

 こうした事態を避けるためにも、日本のエスタブリッシュメントは、アメリカの出方を待つという受け身の姿勢をいつまでも続けていてはならない。政府間交渉や議員交流にとどまらず、アメリカのアドボカシー団体(政策提言をおこなうNPO)と連携してロビー活動をおこない、日本の利益を実現するため連邦議会に多数派工作を仕掛けるぐらいのつもりで、オバマ政権に対峙すべきであろう。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20081125/114929/?P=1  

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