http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008022702090866.html
石破防衛相 進退波及は免れない(東京新聞)
2008年2月27日
イージス艦衝突事故でこれまで伏せられていた事実がまた一つ明るみに出た。今度は石破茂防衛相にかかわる問題だ。石破氏は情報操作の意図はないとしているが、進退への波及は避けられまい。
イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突をめぐる防衛省の説明が迷走している。
事故があった十九日、衝突二分前に漁船の灯火に気づいたとしていたが、翌二十日夕になって十二分前に確認していたと訂正した。今回、新たに分かったのは「十二分前」だったとする一報を石破氏が十九日夜に、正式な報告を二十日午前八時半に海上幕僚監部から受けていたにもかかわらず、同日夕の自民党国防部会まで公表しなかったことだ。
一報からほぼ丸一日、確定情報を受けてからは九時間近くも伏せられていたことになる。「国民に向かってきちんとした説明責任を果たさないといけない」と語っていたのは、石破氏自身ではなかったか。「隠ぺいが行われるなら、責任を取るのは当然」との発言も記憶に新しい。
二十六日の国会答弁などでは「事実確認と、その公表の可否を海上保安庁と調整するのに時間を要した」と釈明し、情報隠しや情報操作にはあたらないとした。
どこまで国民を視野に入れていたか、首をかしげざるを得ない。「二分前」は比較的早く公表できたのに、なぜ「十二分前」はこれほどの時間がかかったのか。国民に誤った情報を与えた以上、防衛省独自の判断で早急に正す必要があったのではないか。こうした疑問に納得のいく説明を求める。
十二分前に漁船の灯火を確認しているのであれば、十分に衝突回避できたとされる。しかし、あたごは「相手がよけると思った」と自動操舵(そうだ)を続けたという。信じられない大失態だ。より責任が重くなる「十二分前」の公表を防衛省サイドがためらい、対応策に追われていたのではないかと疑われても仕方あるまい。
事故を受け、石破氏は背広組(内局)と制服組(各幕僚監部)の統合・再編を柱とした組織改革に意欲を示している。本来次元の違う話だ。事故が突きつけた重大な意味をすり替えられては困る。
石破氏は「誰が何をやってるのかさっぱり分からない組織になっているのではないか」と、文民統制の中核を担う防衛相にはふさわしくない指摘もしている。
野党の辞任要求にただちに応じられない事情は理解する。真相究明と再発防止策を定めた上で、速やかに自らけじめをつけるべきだろう。
http://mainichi.jp/select/jiken/atagocollision/news/20080227k0000m040156000c.html
イージス艦事故:防衛相、航海長を当日聴取 説明で触れず(毎日新聞)
千葉・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、石破茂防衛相ら首脳4人が、第3管区海上保安本部(横浜)の事情聴取前に直接、大臣室であたごの航海長から事情を聴いていたことが分かった。航海長をヘリコプターで移送する際は「けが人を運ぶ」と海保から許可を受けていたが、航海長を一緒に連れていくことは伏せていた。航海長は事故前の当直士官で、事故前後の状況を詳細に知る人物。石破氏はこれまで、直接事情を聴いたことを説明しておらず、「密室」での首脳4人による捜査前の聴取は批判を招きそうだ。
関係者によると、海上幕僚監部(東京都新宿区)は事故直後、現場からの情報不足から、あたごの幹部を海幕に呼び出し詳しく事情を聴くことを計画。神奈川・横須賀基地からあたごに到着したヘリが、事故6時間後の19日午前10時ごろ、航海長を乗せ海幕に向かった。この際「けがをした乗組員を搬送する」と海保から許可を得ていた。
航海長は、海幕で約1時間にわたり事情を聴かれ、メモに従い「衝突2分前に緑の明かりを発見、1分前に漁船を見つけ全力後進で避けようとした」などと述べたとみられる。
さらに、これとは別に大臣室で、石破氏のほか増田耕平・防衛事務次官、斎藤隆・統合幕僚長、吉川栄治・海上幕僚長の防衛省と自衛隊の4人が事情聴取していた。海幕による聴取と同様の説明をしたとみられる。航海士は午後2時半ごろ、再びヘリであたごに戻ったという。
石破氏はこれまで、航海長からの聴取内容について、海幕から報告を受けたとだけ説明していた。また航海長の移送と聴取について、防衛省は「事前に海保の許可を得ていた」と説明していたが、3管は26日、「防衛省側から聴取の連絡を受けたのは聴取後だった」と発表した。
海保の捜査段階で、海自が当事者から聴取することは、禁止はされていないが捜査妨害の恐れがある。冬柴鉄三国土交通相は、ヘリでの航海長移送が判明した26日午前の閣議後会見で「海上自衛隊にも内部的な調査権はあるにしても、私の方(海保側)の了解を得てやるのが法の仕組み」と不快感を示した。