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渡る世間はサツばかり 全文引用
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投稿者 てんさい(い) 日時 2008 年 3 月 02 日 23:18:14: KqrEdYmDwf7cM
 

(回答先: 連続テレビ小説 渡る世間はサツばかり 投稿者 てんさい(い) 日時 2008 年 2 月 21 日 18:16:22)

連続テレビ小説

渡る世間はサツばかり

ハズダズガゴ (元○○○真理教信者)原作

時代背景

1996年〜1997年にかけては、逃走犯も多く、ちょうど破防法の適用について審議されていた時期でした。警察、公安は破防法の適用に絡んで、現信者は勿論、脱会信者に対しても、教団との関係、逃走犯との関係等を中心に捜査した時期でした。

またその時期の脱会信者の中には、元オウムと分かり失職したりアパートから追われる人が続出し、教団に戻った方々がおります。

このお話は、その時期を背景に書かれています。

−部分: 中日新聞社説「ポスト破防法の課題」 より。

注意

作品に「公安局長」という役職が出てきますが、正確な役職名ではありません。ただ、高い地位のかたであるという事をご理解ください。事情により、正式役職名は控えさせていただきます。


http://rerundata.hypermart.net/syousetu/syousetu.htm

第1話 彼の正体

私は教団を脱会した後、東京駅から歩いて5分のところにある住宅会社フランチャイズ本部○●産業に就職した。そこで浄水機部門に配属されたのだが、折りからの不況には勝てず、業績は伸び悩んでいた。

私の上司、O.O氏は年齢52歳。早稲田大学政経学科を卒業。過去、丸紅に勤務し営業畑を歩いてきた人物らしい。彼は非常に交渉力があり、人望も厚い。出来る人と言った印象だ。仕事のためには我が身を犠牲にするタイプで、それがたたったのか、過労と不規則な食事、太りすぎのため、3年前に心臓病の手術をしている。Oさんは何とか浄水機部門を立て直そうと出張続きで奔走し、益々体調を崩しているようだった。

ある日、久しぶりにOさんが出張から戻ってきた。心臓が苦しそうだが会社を休むわけにはいかない。今日は大事な交渉があるのだ。行く途中、△▽クリニックに車を止めた。

「おい、すまないが薬を取ってきてくれんか。今朝、頼んであるから、もう出来ていると思うんだが」

上司の命に従い私は薬を取りに行き、清算を済ませたところで今まで見たことのない言葉を目にした。清算書の保険の種類に「政管」と書いてある。国民健康保険は「国保」、社会保険は「社保」。「政管」とは、一体どういう意味なのだろうか?少なくとも私と同じ保険の種類ならば「社保」となるのである。私は早速この疑問をOさんに投げかけてみた。

「あのう、清算書の保険の種類のところに「政管」とあるんですけど、「政管」って何ですか?」

「おまえ、そんなくだらないこと考えている場合か!これから交渉に行くところなんだぞ。どういう風に話を展開させていくかを考えろ!」

ということで、怒られてしまった。この件については、以後なかなか尋ねる機会がなかったのだが、今から思うと答えるのを避けていたのかもしれない。

それから何日か経ち、午前中の仕事を終えたところでOさんに呼び出されてレストランに行った。

レストランに着くとOさんは愛人と一緒にいた。彼女とはもう何度も会っているので顔なじみだ。T.Sさん、年齢27歳。中央大学法学部を卒業し、現在高島屋に勤務している。彼女と一緒にいるということもあってか、Oさんはとても機嫌がいいようで、昼食にしては高めのメニューをオーダーしている。

一緒に昼食をいただいた後、T.Sさんはちょっと席を外した。その時、なんとなく喉の奥にしまっていた言葉を発してみた。

「Oさん、「政管」って何ですか?」

「…。。。」

「Oさん、「政管」って、病院の清算書に書いてあったでしょう。私、馬鹿だから、知識ないから、教えて欲しいんですよ。そういう種類があるんですね?」

「ある。あるよ。私はね若い頃、日本の要注意人物をアメリカ国防省に連絡する仕事をしていたんだよ。その頃からあの病院にお世話になっていて、未だに保険の種類を書き換えていないんだ。先生がいいよって言うからさ。」

それはおかしい。保険の種類や記号番号が変っていれば、病院は保険請求をすることが出来ない。たとえ変更せずに請求しても、その書類は差し戻されるはずだ。

「「政管」というのは、「政府が管理している人間」という意味で、確か、国会議員も「政管」の保険証を持っていたんじゃなかったかな?」

「…だから私はアメリカ国防省の偉い人を知ってるよ。」

と、Oさんは得意げに言った。

私は驚いた。そして次の言葉を言うべきかどうか迷ったが思い切って、

「もしかして、Oさん、JC★Aじゃないんですか?」

「うわっ!!!」

というとOさんは頭を覆った。

「おまえなんで分かるんだ。」

その後、しばらく彼は声が出なかった。

「いや、でも、でもね、今は違うんだ。今は○●産業の社員だからな。今はしがない中小企業の社員に過ぎないんだよ。」

とは言ったものの、ろれつが回っていない。目が踊っている。

『いや、現役だ。間違いなく現役のJC★Aだ。』と私の感がひらめいた。グルや教団をおとしめたJC★Aが私の目の前にいると思うと、なんとも言えぬ憎しみと、この縁を離すものかという思いが渦巻いていた。

第2話 確認

Oさんの正体が判って私は混沌としていた。

Oさんは◯●産業の社員だが、裏でJC★Aとしての活動を続けているということなのか?たとえOさんが本当にJC★Aだとしても、実際に教団の事件とは関わり合いが無いのではないか?いや、その前に私の感は正しいのか?

会社ではOさんはいつものように仕事をしている。あの時の狼狽ぶりはまるで嘘のようだ、。そこで私はOさんと2人きりになるチャンスをねらって質問してみることにした。

なかなかそのチャンスは巡ってこなかったのだが、、、ある日、車の中で2人っきりになるチャンスが訪れた。

私は『いまだ!』と質問を切り出した。

「あのう〜Oさん、Oさんは昔、JC★Aのお仕事されていたっておっしゃってましたよね。どういう事をなさっていたんですか?」

「。。。」

「私、何にも知らないので、教えて欲しいんですよ。」

「おまえこそ、どうしてJC★Aを知っているんだ?」

「いや、ただ単にその言葉だけを知っているだけで、他のことは何も知りません。ただ、あんまり聞いたことがない仕事なので、どういう事をするのかなと思って。

だって、Oさんは私に言ったじゃないですか。営業は浅く広く知識を持っていないと駄目だって。だから知らないことがあったら、なんでも教えてもらえって。」

「そうか。。。」

と言ってOさんは、ぽつりぽつりと中野の警察学校のことや、JC★Aとはどういう組織なのか、その概略を教えてくれた。私は話題を変えられないように色々馬鹿な質問したり、相づちを打った。

そのうちに私が本当に何も知らないと確信したらしい。若い頃の自慢話を交えながら、色々な話をしてくれた。(しかし、あくまでも概略的なことだけだったが。)

「あのさ、**の家って言う団体知ってる?」

「えっ、良く知りませんが。」

「あそこ、大きくしたの、俺なんだよね。あと、**学会と。だからあそこの幹部はみんな良く知ってる。」

「どういうことですか?」

「つまり、信者だったってことだ。今は違う。」

「それと仕事とどういう関係が、、?」

「つまり、信者として入り込んで、そこの内部組織、幹部はどういう人物かを調べて報告するんだよな。もちろん、彼らの日々の行動もだ。」

「それってスパイみたいですね。なんか映画の世界って感じ。そういう事、実際になさっていたんですか?」

「まぁ、、ね。俺はずっと宗教に関わってきたからな。」

そう言えば、現在勤務している◯●産業は社長がサイババに夢中だ。各フランチャイズにも信仰を薦めている。当然社員にもだ。私はそれを拒みつづけているが、、。Oさんが◯●産業の社員である理由はそういう事か?

それに宗教に関わってきたということは、やはりOさんは○○○真理教と何か関係があるんだろうか?なかったとしても、他のメンバーが同じ手段でグルを監視していたに違いない。

しかし、宗教はたくさんある。よりによって、隣にいるOさんが本当に関係があるなんて、とても思えない。そんな偶然、あるわけが、、、

そこまで考えていたとき、Oさんが突然、

「あのさ、この前、○○○真理教が事件を起こしただろう。あそこの幹部も知ってるよ。」

「えっ、まさかOさん○○○真理教の信者?」

「いや、違う。。。

そのあとの言葉に私は凍りついてしまった。

第3話 動揺

「あのさ、この前、○○○真理教が事件を起こしただろう。あそこの幹部も知ってるよ。」

「えっ、まさかOさん○○○真理教の信者?」

Oさんはたばこに火をつけた。

「いや、違う。俺はね、麻原さんが薬事法違反で捕まる前から、彼をよく知っているんだよ。彼だけじゃない、新見さんとか幹部のほとんどの人と会ったことがあるよ。」

私の体は一気に硬直した。

「つまり、スパイとして、信者だったということじゃないんですか?」

Oさんはたばこを吸いながら得意げに言った。

「違う。私は麻原さんが薬事法違反で逮捕されたとき、その取引先にいたんだよ。それからずーっと付き合っている。あの、パーフェクトサーヴェーションの初期の頃の帽子(ヘッドギア)があるだろ。あれを教団に卸したのは俺だよ。確か1つ135円だったな。まだ、俺の部屋にあるよ。」

「取引先にいて、監視してたって事ですか?」

「監視って程でもないがな。昔はいい集団だったのに、何であんな事になったのかな?あそこは宗教でも何でもない、麻原なんてとんでもない奴なんだぞ!」

「そうですか。。。」

「幹部の中では、そうだな、新見さんと一番会う機会が多かったよ。だから俺はあいつをホント、良く知ってるよ。あいつはいい奴だったなぁ。」

「。。。」

何も言葉が出なかった。

ここで私は話題を変え、話を打ち切った。驚きと動揺で何を言うか分からないと思ったからだ。

その後、仕事が手につかなかった。

グルの説法の中に何度も出てきたJC★A。よりによって本物が私の隣にいる。教団を監視しつづけていたJC★Aメンバーの一人が隣にいる。この巡り合わせはいったいなんだ?神の祝福なのか?私は、自分のカルマのなにが原因でこの現実があるのか、考えざるを得なかった。

とにかく、私が元出家信者だということは何もばれていない。このまま白を切って、色々聞き出すことにしよう。もっと深い話があるはずだ。これを聞き出すことが、今の自分に与えられた使命のような気がしていた。何も急いで聞き出すことはない。まずは仕事をしっかりやり、Oさんの信用を得なければ。

 

それから数日後、私は友人ヒロコと会った。

ヒロコは私と同じ元サマナ(出家信者)で、第*サティアンにいた頃、一番仲が良かった。彼女も私も脱会してから事ある毎に会って、支えあい、励ましあってきた、なんでも話せる仲である。

そのヒロコにOさんのことを話してみた。誰かに話さないと動揺を押さえられないような気がしたし、自分の考えを確かめたかった。話すことで癒されたかった。

その翌日、ヒロコから電話があった。

「あのね、昨日聞いた話ね、ヨシコさん(ケロヨンクラブ主催者)に話してみたの。そしたらヨシコさん、どうしてもOさんに会いたいって言っているんだけど、連れてきてくれない?」

意外な展開だった。

第4話 発火点

ヨシコさんがOさんに会いたがっていると言うヒロコの電話は意外だった。私はヒロコにその理由を聞いてみた。

「なぜ、ヨシコさんにOさんを合わせなくちゃならないの?」

「ちょっと電話だと長くなって言えないのよ。明日でもいいからここへ来てくれない?電話代より交通費の方が安いし、色々詳しい話出来るじゃないの。」

と言うことで、明日、仕事が終わったら彼女に会いに行く約束をした。待ち合わせ場所はケロヨンクラブのメンバーが集まっているところだ。

ヒロコはケロヨンクラブのメンバーで、ヨシコさんはその主催者なのである。ヒロコはヨシコさんをとても信奉していて、ヨシコさんから言われたことは、すぐに実行に移すほどだ。

翌日、仕事が終わって待ち合わせ場所に行くと、ヒロコはすでに私を待っていた。

「電話でも言ったけど、ヨシコさんがOさんに会いたいと言っているのよ。だからすぐに会わせてあげて。」

「どうして会わせなくちゃならないの?Oさんをいきなり面識の無いヨシコさんに会わせるなんて、無茶だし、失礼よ。大体、なんて言って連れてくればいいのよ。」

「じゃ、偶然にっていうのはどう?どこかの喫茶店で、偶然、そこに居合わせたっていう感じで、引き合わせちゃうっていうのは?」

「その前にね、何でヨシコさんにOさんを会わせなくちゃならないの?ただ単にヨシコさんが興味持っただけなんでしょう?」

あまりにも先を急ぐヒロコの態度が理解できなかった。

「功徳積みたくないの?Oさんとグルは逆縁よ。それにOさんは真理に対して大きな悪業を犯しているわ。このままだと来世は多分、地獄よ。何カルパも地獄で苦しむのよ。逆縁と言ってもグルとの縁が深いわけだから、早く順縁にして、少しでもその苦しみを軽くするのよ。Oさんのためなのよ。」

「それは誰の考え?ヨシコさんに言われたの?」

「もう、とにかく、ヨシコさんが早くしなきゃダメだって言ってるのよ。なんでもいいからヨシコさんに会わせちゃえばいいのよ。そうするとヨシコさんがOさんを真理につなげてくれるんだから。ヨシコさんに任せておけばいいのよ。」

「はっ???」

「これでOさんが真理としっかり縁を結べば、大きな功徳を積んだことになるのよ。わかる?」

分かるも何もあったものではない。ヨシコさんに対し、あまり信の無い私にとって、ヒロコの話はただの妄信的な信者の言葉にしか聞こえず、たとえそれが正しいことであったとしても、私の心に嫌悪感が湧き出してきた。

「あのね、何でヨシコさんに会わせるとそうなるの?その根本が分からないわ。」

「いいかげんにして!」

彼女は猛烈に怒り出し、いかにヨシコさんが素晴らしいか、とうとうと語りはじめた。ヨシコさんは無冠の成就者であり、グルの化身であるということなどなど。

それを聞けば聞くほど、私は疲れが出てきて早く帰りたい一心だった。そうでなくても、このごろ仕事がうまくまとまらず、頭が痛いというのに。『無職のヒロコと違うんだよなぁ。もういい加減にしてくれよ。』

そんな私に気づいたのか、

「じゃ、決意書いていって。いつか会わせるって。今日は突然こんな話をしちゃったからすぐに決断できないわね。でも、決意だったらいいでしょう。」

ということで、その旨の決意を書いて、やっと開放された。

思えばこれが、これから始る全ての出来事の発火点だった。

第5話 発火

あれから2ヶ月経ち、夏の日差しが強くなった。

仕事もぼちぼち順調で、全面的に任せてもらえる分野も出来た。それと同時に信用を得られるようになったのか、隠し通す必要もないと判断したのか、教団のことがニュースで報道されるたびに、Oさんの方から事件について解説してくれる様になった。

私は相変わらずヒロコと会っていた。別に断る理由も無い。今はヨシコさんが忙しいので、時間が取れないとかで、Oさんと会う件について、しつこく言われなくなっていた。会う場所いつも、ケロヨンクラブの集会所だったので、何度かヨシコさんを見かけることがあったが、これといって彼女と話す事も無かった。

ある時ヒロコはこんな事を言いだした。

「お願いがあるんだけど、30万円サラ金から借りてくれない?」

「何で?何に使うの?」

「クラブのみんなで旅行に行くんだけど、費用が集まらないのよ。だからあなたに30万円借りてもらって、布施して欲しいの。」

「だめ。絶対だめ。もういい加減にしてちょうだい。」

彼女にとって、クラブのメンバー全員にとって、今やヨシコさんはグルなのだ。彼女は心の拠り所として大きな存在なのだ。その気持ちも理解できる。しかし、それとは裏腹に『もう、ヒロコとは縁を切ろうかな?』と思うほど呆れた気持ちになった。

それから数日後、ケロヨンクラブのメンバー数人は旅行に行ったらしい。『自分達で何とかできるじゃないの。』なんて、彼女たちの行動を横目で見ていたのだった。

仕事も順調に行っている。私生活で私を悩ませるようなことも無い。静かな日々が過ぎていった。

 

数日後、仕事中携帯電話がなった。

「大変よ。ヨシコさんが逮捕されたの!」

それはヒロコの声だった。

「あ、帰って来てたんだ。えっ、逮捕されたって?なんで?容疑は何?」

「よくわかんないの。旅行にいったときのことみたい。」

「ことみたいって、ヒロコも旅行に行ったじゃない?心当たりは?」

「わ、わかんないのよぉ〜。私も連行されるのかなぁ。」

確かに、ヒロコはケロヨンクラブのメンバーであるが、幹部ではない。詳しく分からなくて当然だ。

「それで、今、集会所にカタク(家宅捜査)が入ってて、みんな外にいるの。だから、これからしばらく連絡取れないし、会えないから。あっ、それでお願いがあるの。ヨシコさん、下野署に拘留されているんだけど、取り調べ担当は誰なのか、調べてくれない?Oさんに頼めばやってくれるでしょ。」

「無理なこと、言わないでよ。」

「お願い。どうしても知りたいの。みんなでその人に向かって、四無量心の瞑想するから。」

そこで電話は切れた。とても気が動転しているようだ。相変わらず、無理なことを言っているが、気持ちが分からないわけではない。彼女のことが心配だが仕事中だ。仕事を優先しなければならない。

翌日、ワイドショーでは早速ケロヨンクラブのことを報道している。

ヒロコのことが心配だった。彼女の態度に呆れているところがあるとはいえ、ヒロコはヨシコさんを頼りにしている。教団の事件で、1度は心の拠り所を失っている。また拠り所が無くなれば、彼女はどうなるか分からない。

ヒロコのためにという思いで、思いきって私はOさんに言った。

「あのぅ、いま、ちまたを騒がせているケロヨンクラブなんですけど、そこのヨシコさんって、どこの警察署にいるんですか?」

「おまえ、何でそんな事知りたがるんだ。」

なんて言ったらいいんだろう。言葉がすぐに出てこない。下手をすれば元信者だとばれてしまう。ほんの一瞬のうちに私の頭はフル回転していた。

第6話 始動

ヒロコの事が気掛かりだった私は決心の末、Oさんにヨシコさんの取り調べ担当官を聞き出そうとした。

「あのぅ、いま、ちまたを騒がせているケロヨンクラブなんですけど、そこのヨシコさんって、どこの警察署にいるんですか?」

「おまえ、何でそんな事知りたがるんだ。」

「えっ、、、いやぁ〜ちょっと今、有名人ですから、、Oさん知っているのかなぁと思って。」

しどろもどろな口調になった。ぼろを出すわけにはいかない。

「おまえ、社内でそんな話するな!

とにかく、ケロヨンなんて知らんな。俺は教団の幹部しか知らん。あぁ、俺が悪いんだね。俺が何かあっちゃ〜解説するから、おまえがそんな質問するようになるんだ。」

「い、いえ、そんなことないです。すいません。」

このままではもう、JC★Aについて話してもらえなくなってしまう。慌てて別の話題に移しその場を取り繕った。

 

その夜9時ごろ、Oさんから電話があった。

「おう、プライベートな時間に悪いな。実はおまえに話しておきたい事があるんだ。

実はな、昔やってた仕事の事、おまえにしか話していないんだよ。T子(Oさんの愛人)にも言っていない。あいつを心配させるわけにはいかないからな。それで、こういう事はおまえにしか話せないんだが、、、」

「はぁ、、、」

「俺の知り合いから電話があってな、○○○真理教の捜査人物リストに俺の名前が載ってるって言うんだ。俺は関係ないはずなんだが。」

「その、知り合いの方って言うのは、警察関係?」

「あぁ、同期だ。そいつからの連絡でな、リストにあるって言うんだよ。心当たり無いんだが。」

「それは、まだ逃走している人がいるじゃないですか?それに多少なりとも教団に関わっていた事だし。」

「おまえ、今日の昼、俺にケロヨンの誰だったかが逮捕されたって、言ってただろ。なんて言ったけ?そいつねぇ、下野警察のマル暴が担当してんだよ。」

「マル暴?なんで?だってあの人、暴力団じゃないでしょ?」

「○○○真理教なんて暴力団みたいなもんじゃないか。あれだけの事件起こしたから、マル暴が動くんじゃないのか?」

「でも、ケロヨンクラブは教団とは関係ないみたいだけど。」

「ケロヨンだって、教団の外郭団体のようなもんじゃないのか?ただな、下野署のマル暴と言ったら警察の中でも1,2を争う荒くれどもが揃っているところなんだ。取り調べはそうとうきついと思うぞ。

そんな事よりも、俺はそこの下野署の連中が挙げたリストに載ってるって言うんだよ。」

「???でも、、、、別に、、、何でもないんでしょ。」

「あぁ。。。いいか、もし何かあったら、今言った事が関係するかもしれないから、覚えといてくれ。」

「えっ何かって???それにしても、、、奥さん、大変ですね。」

「おい、俺は独身だぞ。離婚してるんだよ!じゃ、頼んだぞ。」

そこで電話は切れた。Oさんが独身なんて知らなかった私は、その事にばかり気を取られてしまい、Oさんが言った内容の深い意味を察する事は出来なかった。

 

翌日、私はいつものように地下鉄を乗り継いで家路を急いでいた。駅から真っ直ぐイトーヨーカドーへ買い物に行く。一人暮しにとって夜8時まで営業しているスーパーは有り難い。

買い物をしていて、ふっと、さっき同じ電車の中にいた人がそばにいる事に気がついた。

黒いジャンバーの男。。。片方の耳にイヤホンをしている。。。

とっさに教団支部にいた頃の記憶がよみがえる。

『尾行?尾行されている?!まさか?!』

第7話 尾行1

私は精肉売り場の前で動けなくなった。

さっき電車の中で見かけた男が、そばでこっちを見ている。黒いジャンバーを着て、片方の耳にイヤホンをしている。ちょっと体格のいい40代後半という感じの男。

『どうしよう。本当に尾行されているんだろうか。昨夜のOさんの電話を受けて、ただ単に自分が敏感になっているだけじゃないのか?』

様々な思いが交錯する。『しかし、あの格好、目つきはどう考えても警察だ。』男から殺気にも似たバイブレーションが伝わってくる。

教団支部にいた時、警察に追い掛け回された記憶が、ほんの一瞬の間にすべてよみがえってくる。

『今度はどんな理由で追い掛け回しているんだ?もし本当に尾行されていたとして、それに気づいた態度を取れば、暗に彼らの容疑を認めた事になりはしないか?ここは平静さを保たなければ。』

欲しくもない挽肉をカゴに入れ、その場を立ち去る。とりあえず、男を見ないふりしながら必要なものをカゴに入れていく。

会計を済ませ、急いで2階へ上がる。

ついてくる。しかし、さすがに女性用下着売り場には入ってこれないらしい。エスカレーターのそばにある、休憩用の椅子に座っているではないか。連れがいるのかと思って、なに気なく観察するが分からない。

下着を選んでいるふりをして、心を決める。

『やっぱり尾行されているようだ。。。だったら最後まで、尾行させてあげよう。とにかく落ち着いて。。。私には何もやましい事はない。だから、堂々と胸を張っていればいいんだ。』

一気に下着売り場を後にし、家路を急ぐ。後ろを振り向いてはいけない。きょろきょろしてもだめだ。心臓が高鳴る。心の隅で『尾行じゃない、これはただの自分の思い込みなんだ。』と言いきかせていた。

マンションに帰り、鍵を確かめ、すぐにシャワーを浴びる。それから眠るまでの間、これといって何も手につかない。気が高ぶったままだ。しょうがないので、冷蔵庫の片隅にあったビールを飲んで、布団に入った。何も考えたくない気分だった。 

翌朝、いつものように出勤し、いつものように仕事に就いた。いつもと変らない毎日の始まり。それにしても昨夜の事が頭から離れない。

帰り道、それとなく尾行されているかどうか気を付けたが分からない。

こんな事が2,3日続いた。『多分、この頃疲れているんだな。勝手に被害妄想にかかって、馬鹿な私。尾行される理由なんてあるわけないし。』

 

それから1週間後、商談のため、上司のOさんが運転する車に乗り込んだ。いつものように契約内容等、商談の打ち合わせをしながら得意先へ向かう。

途中、車はいつもと違う道で曲がり、ちょっと細い道に入った。曲がり角を見付けるとすぐに曲がってしまう。

「あれ、今どこ走ってるんですか?いつもとルートが違いますよね?」

「… … …」

「ねぇ、Oさん!」

「ちっ!やっぱりな。」

と言って大きな道に出た。

「あぁ〜近道でしたか。」

まもなく得意先に着く。

商談を済ませ会社に戻る時は、細い道に入らず、いつもの道を通ってきた。商談がうまくいった時、Oさんは機嫌がいいのだが、何故か今日は無口だ。何を話し掛けてもムスッとしている。『変だな、、、?』

駐車場が近くなってきた時、やっとOさんが口を開いた。

「いいか、降りたらな、真っ直ぐ会社に入っていくんだぞ。この車、尾行されてるから。」

「えっ?!」

「ばか!振り向くな!いいか、ゆっくりミラーを見るんだ。目だけ動かせ。後ろの車だ。男が2人乗ってるだろ。よく顔覚えとけ!」

「!!!!!!!!」

「大丈夫だ。今は仕事に集中しろ!」

『やっぱりそうなんだ。尾行されてる。理由は何?この状態で、どうやって仕事に集中しろって言うの?』

私は一気に崖っ淵に立ったような気持ちになった。

第8話 尾行2

会社に戻るとすぐに会議室に閉じこもった。

「いいか、こういう事は会社では言いたくないんだが、プライベートで会うと、おまえにまで迷惑がかかる。」

と、Oさんは開口一番に言った。

「この前電話で、俺が下野署が挙げたリストに入っているって話しただろ。あれな、どうやらケロヨンの一件らしいんだ。俺はそんなもんと関係ないから、すぐに容疑は晴れると思う。

ただその間、今日みたいにつけられたりすることがあるだろう。ちょっとの辛抱だ。心配は要らん。気にすること無く、仕事に専念してくれ。」

「ケロヨンの一件。。。」

何も言えなくなった。

『どうすればいいんだ。彼らの目的は、Oさんではない、私だ!私は何度もケロヨンクラブの集会所に行ったことがある、ヨシコさんは逮捕されている、だからだ!!!だから私を調べているんだ!

こんな事、Oさんには言えない。本当に迷惑をかけているのは私なんだ。Oさんは私の上司だから、だから、関係があると思われているんだ!』

「尾行なんて初めてだろ。気にするな!じゃ、戻るぞ。」

『尾行。。。何度もあるよ。』と心の中でつぶやいた。

もう、教団を脱会し、警察とは完全に縁が切れたと思っていた。ケロヨンクラブは教団とは何の関係も無い。脱会信者が拠り所を求めて集まっているに過ぎない。ここは大丈夫だと思っていた。

でも、ヒロコの話によると、ずっと公安に監視されていたという。それで何か事件が起きたら元○○○信者だということで、特別扱いされる。追う側にとっては、脱会信者も現信者も区別が無い。捜査は同じなのである。教団にいた頃、カッターナイフを持っているというだけで、逮捕、連行された信者がいた。多分、今回もそんな言いがかりに等しい罪で、ひっぱるに違いない。

 

私は相変わらず、尾行されているようだった。仕事中の移動時と、就業時間が終わるとついてくる。私が誰かに会うのをチェックしているのだろうか?プライベートな時間の尾行は毎日ではない様だが、私が気づかないだけかもしれない?『こそこそすることはない。堂々としていなくちゃ。』と心細くなる自分を支える。

友人と遊びに行く予定は、風邪をひいたからという理由ですべてキャンセルした。せめてヨシコさんが釈放されるまでと心に決めて、会社と自宅の往復に専念することにした。

 

息が詰まりそうなある夜、西野さんから電話があった。

西野さんは、私が出家する前勤務していた会社の同僚だ。彼女は私が出家する時「もし帰って来るようなことがあったら、自分を頼って欲しい」と言ってくれた。脱会したばかりで、住むところもなかった私は、彼女に連絡を取り、彼女の取成しでここに住める様になった。現在住んでいるマンションのオーナーは、西野さんが親しくしている税理士さんだ。私にとって彼女は、いわば恩人なのである。

「いやぁ〜久しぶりだね。元気?」

「うん、お蔭様で。」

「ちょっと飲みに行こうよ!」

「それはちょっと…」

私は自分が尾行されているかもしれないということを打ち明けた。西野さんなら自分の過去を知っているし、理解してくれる。

「だったら尚更飲みに行くべきよ。ずっと閉じこもってちゃ、かえって変に思われない?私だったら大丈夫。どこたたいたってチリ一つ落ちやしないわ。ね、今そばに着ているの。そうね、(夜)7時半までに駅の南口に着てよ。」

『憂さ晴らしもいいかな?今の私の心情を話せるのは彼女だけかな?』

ちょっとウキウキした気分で、彼女に会いに行った。

第9話 怒涛1

久しぶりに西野さんに会った。

彼女は相変わらず元気いっぱいだ。私を元気づけてあげると言って、どんどんメニューやお酒を注文していく。こうしていると、何もかも忘れていく。嫌なことも、何もかも。

だいぶ彼女は酔ってきた。私もお腹いっぱいだ。

「あのさ、よそうと思ったんだけどさ、言うわ。電話で、あんたの話聞いた時、これはもうずっとあたしの心にしまっとこうと思ったんだけどさ。

この間、あたしのところに警察が来たのよ。」

一気に酔いが覚めていく。

「それでね、何と私の職場に来ちゃったわけ。アポなしでいきなりよ。で、10分でいいから話し聞かせろって言うのよ。」

「警察だって言って尋ねてきたの?」

「いや、個人名。

それでさ、用件は何?って言ったらあんたの事だっていうじゃない?あたしびっくりしてさぁ〜、話聞いてやったわよ。

そしたら、あんたんとこのマンション、世話したの私ジャン。どうして世話したのだって。言ってやったわよぉ〜!住むとこなくて困ってるからだって。あとさぁ、あたしとあんたの関係は何だ、あんたはどこに勤めてんだって、色々聞いてくるから、頭にきちゃってさぁ〜、彼女は脱会してんだから、もうあそことは関係ないんだから、あんたにそんな事聞かれる筋合いはないって怒鳴ってやったわ。」

彼女は酔いも手伝ってか、いつもより饒舌だ。

「それ、会社の応接室で話したの?」

「ばかねぇ〜そんな事できるわけないジャン。警察の車の中よ。で、さっさと出てきたわ。何が10分よ。30分も話してたのよ。それで最後になんて言ったと思う?この事はあんたに絶対言わないでくれって!だったら最初から来るなよ。いい迷惑だわ。」

「ごめんなさい。私のせいだわ。」

「違うわよ。あぁ〜ゴメン。やっぱり言わなきゃよかったなぁ〜」

「そんな事ない。隠されている方がもっと辛い。でも大丈夫。全然関係ないし、まだ逃げてる人がいるから、警察も必死なのよ。」

「それにしてもねぇ〜。私のこと知ってるって事は多分、不動産屋に行って契約内容を調べたんだわきっと。

そう思ってね、すぐにオーナーの先生(税理士)のところに電話したのよ。そしたら案の定、来たんだって! でもね、その時めっちゃ忙しくて、後にしてって、帰ってもらったんだって。それからまだ来てないって言うから、ちゃんと言っといたわよ。あなたは脱会してる。もう関係ないって。先生もね、全然心配してなかったから安心して。絶対追い出されるようなことはないわ。」

 

それからまもなく私たちは別れた。いつのまにか、夜は秋風が吹くような季節になっている。

自宅に戻った私は倒れ込んでしまった。力が入らない。『西野さんや先生にまで迷惑が、、、』と思うと自分の知らないところにまで、捜査の手が及んでいることを考えた。と同時に迷惑をかけている方々に、大変申し訳ない気分でいっぱいになった。目が涙でいっぱいになってくる。

『私はそんなに悪いことをしたんだろうか?何がどう悪いの?ヨシコさんが逮捕されたのは、旅行の一件でしょう?旅行にも行ってない、彼女自身にすらろくろく会ったことのない私が、なんでこんなに追われるの?一体容疑は何?何が知りたいの?知りたかったら、直接聞きにくればいいじゃないの?いくらでも教えてやるわ。』

 

留守電が何件か入っている。聞いてみるとメッセージがない。ボーッとしていると電話が鳴った。

「おう、今帰ってきたのか。」

Oさんの声だった。

「友人と会っておりまして。。。」

「あのさ、近くの公衆電話から、今すぐ携帯に電話してくれ。」

といって、切れた。面倒だなと思いながらふらふらとコンビニに行き、Oさんに電話する。

「悪いな。何回も電話していたのは俺だ。メッセージ入れられなくてすまん。いいか、これから言うことにはな、ハイハイって返事だけしろ。

おまえの電話、盗聴されてる。」

「えっ!!!」

「ハイって言うんだ!誰か見ているかもしれないんだぞ!

俺の自宅の電話もそうだ、やられてる。知らせが入ったんだ。それで、おまえのところはどうかと聞いてみたら、そうだっていうんでな。でも、携帯は盗聴されないポイントがあるから、今そこで話してる。

あのな、仕事の件はいいがそれ以外で何かあったら、携帯の留守電メッセージに電話くださいとだけ言え。後でこちらから連絡する。

それから、俺は尾行されてる。今も外に車が止まっていて、監視されている。…あれは警察じゃないな。公安だ。公安が動いてる。俺はぴったりマークされている。

こんな状態だからって事もないんだが、さっき、社長に電話して、明日から延び延びになっていた新潟支店への出張、認めてもらったから。だからしばらく留守にする。とにかく、俺のことは心配するな。大丈夫だ。俺のことがはっきりすれば、おまえの尾行とか、盗聴とか、解けるはずだからな。じゃ、頼んだぞ。」

「…ハイ」

声を出す力さえなくなっていく。

『Oさんは自分にかけられた容疑で、私が尾行されたり、盗聴されたりしていると信じている。。。』

第10話 怒涛2

うかつだった。

尾行されていれば、盗聴なんて当たり前のことだった。という事は、友人との約束をキャンセルしたことも、西野さんとのやり取りも全部筒抜けだったということだ。とすれば、私が尾行に気づいているということを、彼らは承知していたということだ。

泣いている暇も、悔やんでいる暇も、悩んでいる暇もない。私は見えない敵と戦わなければならない。私を捜査している理由はなんとなく分かった。私自身、なんの非はない。ならば、私が原因で迷惑をかけている人たちや、これからかかる可能性がある人たちを守らなければならない。

そっとカーテンの隙間から外を見る。車は止まっていない。監視されているような感じはない。でも、彼らのことだ、どこかで見ているに違いない。

ぐっと歯を食いしばった。『さて、どうするか?』

 

教団にいたころ、普通では考えられないような微罪で、信者達がどんどん逮捕された。それが当時の彼らの方針だった。

多分、今回もあの時と同じように、聞いたこともないような小さな罪で、逮捕したり、捜査したりするんだろう?たとえ脱会信者であったとしても、現信者と同じ扱いをするんだろう?

たとえ現世に戻っても、彼らの私たちを見る目は冷たい。世間の風は冷たい。

心を入れ替えました、人生やり直しますと言って、現世に戻ってきたとしても、元信者ということで、扱いが違う。就職すら出来ない有り様だ。私はまだ、出家していた期間が短いからいいが、出家期間の長い信者の復帰は並大抵のことではない。

また、社会経験がなく出家した人の社会復帰は難しい。社会生活をしたことがないから、社会に対する免疫がない。壁に当たればすぐにくじけて、勝って知ったる教団に戻ってしまう人が多い。それを「依然としてマインドコントロール下にある」と評する人がいるが、果たしてそれだけだろうか?

ある男性信者は、脱会し、社会復帰を目指して就職した。それからすぐに、「あの人は○○○だ!」という電話が会社に1日10本もかかってきたという。電話をかけた人は誰かは分からないが、社会復帰を阻止する電話である。それでも彼は会社社長の理解があって働いている。

こういうケースは非常にまれだ。元信者だと判った時点でクビになる。

警察もマスコミも、信者達に現世に戻るように言っているがあれは嘘だ。本当に戻って欲しいのであれば、この冷たい世間の風を、現世の風を、どうにかして欲しい。私たちを受け入れる様子など全く無いではないか!このような風潮を作ったのはあなた方ではないのか?(勿論、その元凶は教団にあるのだが。)

末端信者達にはなんの罪もない。しかし、現世の人たちには、大幹部も末端信者もみな同じ人殺しに見えてしまう。

心無いマスコミ報道のために、親から「絶対に家に戻ってくるな」と宣告された信者が何人いることか。その為に現世に帰りたくても帰れなくなった信者は何人いることか。その信者達は、マスコミの被害者だ。

しかし、彼らの方がまだましだ。そばには同じ辛さを分かち合える法友がいる。余計なことを考えずに、修行にワークに集中できる。

 

しかし、私は現世にいる。

向かい風厳しい現世に一人だ。何があっても一人で乗り越えていかなくてはならない。耐えていかなくてはならない。

必死の思いでここまで来た。就職し、仕事も順調、生活も順調だ。蓄えが無いという心細さがあるが、それもいずれは解消される。この状態になるまで多くの方々が、協力してくださった。そしてこの状態を維持する事が、その方々に対する私からの感謝の証であり、安心させることにつながる、そう思っていた。

『しかし、やはりこの世は無常なのだな。。。。。』

彼らの捜査によって、それはもろくも崩れ去る。今の生活なんて、所詮は砂上の楼閣。元信者に安定なんてない。

未だに逮捕されていない逃走犯が何人もいる。彼らについての情報を下さいという名目で、今までに何人もの警察、公安が聞き込みにやってきた。それがどれだけ社会復帰を目指している元信者にとって重荷になるか、苦痛になるか、彼らは知らない。

忘れたい事だってあるだろう。しかし、彼らの聞き込みによって、いちいちと思い出さなくてはならない。いや、彼らの姿を見ただけで、よみがえってくる。また、警察や公安と話しているところを周りの人に見られたら、なんて言われるかわからない。これではいつまでも過去を裁ち切ることなんて出来ないし、安心して生活できない。

本当に彼らは捜査しているんだろうか?ならば逃走犯が未だに逮捕されないのはなぜだろう?逃走犯がまだいるということは、元信者に会う為のいいきっかけになっていないか?日本の警察は優秀だとTVで見た。脱会信者への聞き込みのねらいは、教団とのつながり、教祖への帰依の度合い等、探りを入れるためではないのか?意地悪な考えだが、そうとも捉えられる彼らの行動。

 

『ならば…』一瞬、教団に戻ろうかと躊躇する。教団にいれば、集中して物事に当たることが出来る。一人で悩むことはなくなる。法友達が支えてくれる。

だがそれは「逃げ」だと思う。教団は駆け込み寺ではない。今の状態で戻れば、容疑を認めたことになるような気がする。教団に迷惑がかかる可能性がある。それは本意ではない。

『さて、どうするか?』

とにかく、この分では家宅捜査という状況も覚悟しなければならない。。。

もう、時計は深夜0時を過ぎていた。

 

それにしても、Oさんのことが気になる。

警察、公安、JC★A、これらはみな同じように見える。しかしそれぞれ違っていて、情報の行き来はないらしい。Oさんのような、スパイ活動をしている人の情報については全く表面に出てこない。だから(?)逮捕されるような人物、つまり、その団体の核心人物にならなければならない使命を帯びるのだという。Oさんは今までに何度も逮捕された経験があって、それでも取り調べにおいて、自ら身分を明かすことはなかったと言う。

『いくら修羅場をくぐってきた経験がある人とはいえ、迷惑をかけるのは申し訳ないな、、、』

しかし、他人のことにかまってはいられない。私は急いで住所録を取り出し、友人の電話番号を覚えはじめた。と同時に、手紙を細かく破いていく。その他に、メモ等全部、細かく千切っては少しずつ、トイレに流し、台所で焼いた。家宅捜査に備えるためである。

いくら自分に非が無いといっても、「いくらでも容疑はかけられる。それを根拠にしていくらでも捜査は出来る、家宅捜査に入ることも出来る。それが『手』なんだよ」とOさんは教えてくれた。

もし、そのOさんが、私のことで追われていると知ったら何と言うだろう?どんな事をするんだろう?

目に見えない恐怖だった。その恐怖と戦いながら、夜を徹して片付けていく。

第11話 怒涛3

翌日から通勤バックにカメラが加わった。何かあった時、証拠写真をとるためである。

今の私を支えているのは、仕事だった。

どんなに嫌な事があっても、通勤、1時間足らずで心を変える。すべてを忘れて仕事に集中していく。おかげで(?)業績は悪くなかった。でも、彼らの出現で、いつこの仕事を奪われるか分からない。少なくとも、Oさんに過去がばれた段階で、会社を追われるだろう。その日のために、仕事への執着はいつでも切れるように心の準備をする。

帰宅して、夜、久しぶりにヒロコから電話が来た。

「元気?」

「お蔭様で。その後はどう?」

「ボチボチかな?それよりも、ケロヨンクラブのメンバーにどんどん家宅捜査が入ってるわ。」

「旅行に行った人だけじゃないの?」

「違うのよ。結構親しくしている公安の人に聞いたらね、ヨシコさんの事件に関わらず、1度でもケロヨンクラブに顔を出した事がある人全員に、カタクが入るんだって。」

「はっ?それって弾圧って言うんじゃないの?」

「そういう事よ。だから、そこも明日か、明後日か、って言う事よ。」

「そう…弾圧されるなんて、ケロヨンもイッチョマエになったなぁ。あのさ、それはいいけど、ここの電話盗聴されてるの。」

「それがどうしたの?今や常識よ。」

「ははははっは!」「ハハハハハ!!!」

お互い高笑いしてしまった。正直な話、笑うしかないような気分なのである。

ヒロコは就職したばかりだというのに、一連の捜査がきっかけで、職場に元信者だという事が分かり、退職させられた。

所詮、現世復帰しようとする事自体が無理な話なのである。みんないつでも現世を切れるように準備はしているようだ。私もであるが。しかし、何か悔しい。このまま現世とおさらばするなんて、何か悔しい。

ヒロコの電話の後、サトミから電話が来た。彼女も元出家信者だ。

彼女からの電話も、ケロヨンクラブのメンバーは勿論、それ以外でも関わりあった全ての人に家宅捜査が入るというものであった。その話の中で、引っかかるものがあった。

「**さんの家にカタクが入った時の話なんだけど、公安の人がね、**さんにあなたの事聞いたんだって。この人、ケロヨンの大幹部なんだって?って。」

「なに?!すると私はあそこの大幹部と思われているの?」

「そういう事だって。あははハハハ!」

「なんか、知らないうちに出世してんジャン!はははハハハ!!!」

ここまでくると、あまりの馬鹿らしさで、家宅捜査の心配なんて吹き飛んでしまう。一体彼らはどういう捜査をしているんだろう?どうして私がそういう事になっているんだろう?どこで変な道に迷い込んでいるんだろう?これを盗聴している人はどう思うんだろう?

それはそれとして、家宅捜査は近い。もう準備は出来ている。今晩はゆっくり眠ろう。。。。。

 

朝、いつもより早く目が覚めた。どこか緊張しているんだろう、眠った様な、眠らないような、そんな気分だった。時計は5時半。カタクに入るならもうそろそろだ。

どことなく緊張する。教団にいた時、何度も家宅捜査はあった。初めは恐かったけど、あの時は周りにたくさんの法友がいたし、私個人について捜査されているわけではなかった。

しかし今回は違う。。。

時計は6時を回った。静かだ。すごく静かな朝。

ふと、隣の部屋から物音がする事に気がついた。確か、隣は空室のはずだったのだが、誰か入居したのだろう。そんな事にも気づかないなんて。。。。

静けさに耐え切れず、ニュースを見る。どんな不幸な事件も、今の自分よりも幸福な状態に見えた。

いらいらしながら緊張した時間は過ぎていく。

7時を回っても何にも無い。今日は来ないんだと思って、いつものように出勤の準備をする。

準備が終わって、ちょっと早いけど出勤する事にした。部屋のドアに鍵をかけていると、隣の人が出てきた。『あぁ、今から出勤するんだ。』

「おはようございます。」と挨拶をした後、私は息を飲んだ。

隣の部屋から出てきた男は、私を尾行していた男だったのである。

第12話 宣戦布告

『隣に警察?公安?が住んでいる。多分、私を監視するため?私もVIP扱いされるようになったか。』

心中は穏やかではない。

『多分、彼らは私がいない間に私の部屋に入っているんだろうな。彼らは不動産屋と手を組んでいるって事か…』

そういえば、先日のヒロコからの電話は面白かった。

当時ヒロコは友人と一緒に暮らしていた。ある日、友人が、具合が悪いので会社を早退し、自宅で寝ていたという。すると、鍵を開ける音がしたので、てっきりヒロコが帰ってきたと思って玄関をのぞいてみたら、見ず知らずの男2人が入ってきたのだという。友人は驚いて応対に出たところ、男達の方が驚いた様子だった。身分を問いただしたところ、公安のもので、大家さんの承認をとって鍵を借り、部屋に入ったのだという。それは調査のためで、何の調査かは言わなかったという。当然、すぐに帰ってもらった。それからすぐ、ヒロコと友人は引っ越してしまったが。

『いくら西野さんがマンションのオーナーに取り成してくれたといっても、オーナーの本心は穏やかではないはずだ。多分、近いうちに出て行かざるを得ないかもしれない。住むところも追われるのか。。。』

会社に向かいながら、いつでも身をひけるように決心を固めていく。

 

『それにしても、私にかかっている容疑は何だろう?あまりにも大きすぎるような気がする。。。もしかして、Oさんは私の過去の事など、とうに知っているのではないか?知ってて知らないふりをしている可能性は十分にある。OさんはJC★Aだ。調べる事なんて簡単に違いない。私は泳がされているのか?私が一体何を握っているというのか?何をねらっているんだ?』

『もし、Oさんが私の過去の事を知っているとしても、今、自分が置かれている状況を説明して、捜査状況とか、教えてもらえないものだろうか?私はもう、脱会しているし、現役信者ではない。そこのところ、理解してくれるんじゃないだろうか?』

こんな事を考えていると仕事に集中できない。そうでなくても、この会社にも長くいられないんだと思うと仕事をする気さえなくなってしまう。

Oさんは新潟出張に行ったまま帰ってこない。定期連絡がくるが、仕事の事以外はお互い全く話していない。しかし、『今日は連絡を取ってみよう。完全に監視下にあるという事を言ってみよう。。。ちょっと今日は連絡が遅いな』と思っていると、新潟支店から連絡が入った。

「大変です。Oさんが心臓発作で倒れたそうです。」

「え?!!!」

みんな驚きの声を上げた。

確かに出張に行く前から、いつ倒れてもおかしくない様子だった。相変わらずオーバーワーク気味で、睡眠不足だった。いつもニトロ(発作時の薬)を手放さなかった。尾行、監視などがあって、相当ストレスがたまっていたはずだ。多分、新潟でも警察か、公安がつきっきりだったんじゃないのか?心臓病を抱える人にとって、ストレスは大敵なのに、、。

その後の連絡で、大事をとって、2,3日新潟の病院に入院してから、月大付属病院に入院するという。

現在進行中の契約などについては、私が担当する事になった。

困ったものだ。私個人はそれどころではない状態だというのに。しかし、仕事に私生活のいざこざを持ち込むのは厳禁だ。ここは割り切らなくてはならない。でも、Oさんに今の自分の状況を打ち明けて、警察、公安の動きを教えてもらおうとしていた計画は流れた。余計な心配をかける事は出来ない。

私個人の事は、私の問題。ムコウがどう出ようと腹は決まっている。

 

マンションに帰った。

隣がどうあれ、意識してはいけない。普通の生活音が大事なんだと思っても、普段気を配った事の無いトイレの開け閉めの音にまで、神経がいってしまう。これでは生活なんて出来ない。いっそのこと大音響でハードロックでもかけてやるか!!

引き出しが荒らされていないかどうか、確認する。何か、変ったところはないか?彼らが留守中に入ったような軌跡はないか?

今日も尾行されていた。多分、今もどこかで監視しているんだろう。いいかげんにして欲しい気分だ。このままでは本当に気が変になりそうだ。

電話のベルが鳴る。実家からの電話だった。

母といつもの他愛も無い会話の後、、、

「本当はお父さんに言っちゃいけないって言われていた事なんだけど、、。1週間ぐらい前に法務省から電話があったんだよ。その電話はお父さんが直接取ったんだけど、それで、法務省の人が、『娘さんをもう一度捜査して良いでしょうか?』って言ったんだと。そこでお父さんは、『なんだと。本当はもう、おまえ達は捜査してんだろう?今更何言ってんだ』ってやり返したんだよ。そこで、その電話は切れたんだけど、その後が大変で。。。」

「何があったの?」

「おじさんのうちのね、警察の人が来て、おまえが信者だったって事、言ったんだよ。それで、おまえの事とか、お父さんの事とか色々聞いたんだって。多分、警察はお父さんが、おまえをかばっているって思ったんじゃないかね。。。でも、うちは大丈夫だよ。安心してね。どんな事があってもおまえは娘なんだし、縁は切れないからね。」

そこで電話は切れた。

愕然。。。

私の田舎は非常に封建的だ。恥の文化がしっかり根づいているほどの田舎なのだ。

たとえ叔父とは言え、私が元信者だと分かったら、父の立場はない。両親は私が出家している事を親戚には隠していた。出家している間は、仕事で外国に出張しているという事にしていた。それが、彼らによって、暴かれてしまった。

何でこんな事までするの?

。。。

私はこの瞬間、もう2度と田舎には帰れない事を悟った。私には帰るところが無い。

ふつふつと憎しみが沸いてくる。。。

負けない。絶対に負けない。私は彼らと戦う。教団に帰ろうなんて、やはりただの逃げだ!今まで私を支えてくれた人の心を無下には出来ない。私が何をしたというんだ?捕まえられるもんなら捕まえてみろ!!!

乱暴にカーテンを開けた。

外には黒い車が止まっていた。


第13話 愛人1

Oさんが月大付属病院に入院して一週間が経った。

昨日、手術が行われて無事成功したという知らせが会社に入り、今日、早速私は仕事の打ち合わせも兼ねて、お見舞いに行く事にした。心臓の手術といってもカテーテルを使用しての手術だから、翌日から面会できるのだという。手術に入る前、何度もOさんから仕事の進行状況について連絡が来ていた。気になるのだろう。業績は悪くない。安心させて、早く回復して欲しかったのだ。

会社帰り、病院に向かう。

病院に着くと、面会者用玄関にOさんの愛人のT子さん(Oさんは独身だから、恋人と言った方がいいのかな?)が、真っ青な顔をして立っていた。

「こんにちは。どうしたの?」

と声をかけると彼女は震えるような小さな声で言った。

「今から、両親が来るのよ。Oさんに会いに。私とOさんとの事、ばれちゃったのよ。今日はやめてって言ったの。Oさんが手術したばかりだから、後にしてって言ったの。でも、父が怒ってて。どうしても一言いいたいって。。。」

彼女は今にも泣き出しそうな雰囲気だ。

私は何も言えず、ただうなずいて、Oさんの病室へ向かった。

Oさんは元気そうだ。昨日手術したばかりの人には見えない。カテーテル手術と言う、傷口が小さくあまり負担にならない手術だったからかもしれない。私の顔を見るとすかさず、1階の待合室に行こうと言った。

「病室はな、ナース用のマイクがあるだろ、あれで盗聴するんだよ。待合室にはいろんな人が来る。完璧ではないが、ここよりいい。それに今からT子の両親が来る。病室で悶着起こすわけにいかないしな。」

T子さんに1階の待合室にいる事を告げ、Oさんと仕事の打ち合わせをしていた。すると、、、

「どこにいるんだぁっ!」

叫び声にも似た大声を張り上げて、こちらにやってくる人がいる。どうやら、T子さんのお父様らしい。あとからお母様もやってきた。

「ここにいろよ。お前には関係ない事だ。悪いな、こんな事になって。話し合いが終わったら、続きの打ち合わせをするから、帰らずにいてくれ。」

月大付属病院の待合室は大きい。100人ぐらいの人が座れるだけのスペースがある。夜、診療が終了しているという事もあってか、その一角での話し合いは、待合室すべてに響いた。Oさんの声は静かだが、T子さんの父の声はさすがに大きい。話し合いではなく、怒りをぶつけているに過ぎない。しかし、これも無理の無い事。誰だって、愛する娘の事になるとこうなるだろう。

時々シャッターを切る音がする。Oさんの写真を撮っているようだ。

私はあまり、話しを聞きたくなかった。というか、あの猛烈な嫌悪のバイブレーションに参ってしまった。だからそっと待合室の端の方に移動して行く。

しかし、聞きたくなくてもあの大声、無理矢理声が耳にねじ込まれる。時々、T子さんが何か言っているようだが、聞き入れてもらえない様だ。この嫌悪も娘を愛するあまりの事。愛情の現われでもあるのだなと思うと、愛されているT子さんが幸せに見えてくる。親に「帰ってくるな」と嫌悪丸出しで言われて泣いていた法友の顔が浮かんできた。

1時間ほどして、静かになった。

車椅子のOさんが私を呼びに来た。もう、終わったのだと言う。「わるいな」の言葉を何度も言っていた。

あまりにも具合が悪そうだ。打ち合わせは止して、病室に戻ろうとした。車椅子を押して病室に入ろうとすると、近くにT子さんのご両親がいた。主治医と何か話していたらしい。すると私の方ににつかつかと寄ってきた。

「お前もグルだな?」

「は???」

何の事だか分からない。

「お父さん、違うのよ。この人はOさんの会社の人で、全然関係ないのよ。」

と、T子さんが言う。

「いや、違う。こいつもグルなんだ。T子から金を巻き上げおって!ただで済むと思うなよ!」

と言って、写真を撮ろうとする。

私はOさんをT子さんにお願いし、女子トイレに逃げ込んだ。『一体どうなってんだ?なんか、とち狂ってないか?』

トイレにT子さんが入ってきた。彼女は謝る一方で話しにならない。

もう帰ろうと思って、トイレから出ようとするが、T子さんの父親が写真を撮ろうとやってくる。

「おい、顔隠すな、こっちを見ろ、おい、ほら!」

Oさんが病室から出てきた。

「静かにしてください。ここは病棟ですよ。」

と言って、私に

「君は関係ないんだから、1枚撮らせてあげても問題はないだろう。」

と言う事で、1枚だけ撮らせる事になった。

「ふん!何が関係ないだ。何もかも暴いてやるからな。そのつもりでいろ!」

と言って、シャッターを切る。

もう、T子さんは半分泣いている。その隣に全く状況の分からない私がいる。病棟にいる人のほとんどが見物していた。

やっと面会時間終了の午後8時になった。強引にこの悶着は終りになった。

帰り際、

「今日は本当にすまなかった。こういう事になるってわかったのは、お前が来る直前だったんだ。あのな、後でこの件について説明するが、これだけは頭に入れておいて欲しい。

T子の父親は公安局長だったんだよ。それで、T子の父親の後輩が○○○真理教絡みで俺を捜査したんだ。そしたら、T子が出てきただろ、そういう事で、俺をマークしたんだよ。」

『なに!!公安局長!!

T子は元公安局長の娘だと言うのか!?』

第14話へ続く

正確には「公安局長」という役職名ではありません。ただ、それほどの高い地位のかたであると言う事をご理解ください。


第14話 愛人2

翌日土曜日、Oさんのお見舞いに行った。

それにしても、昨夜出来事は驚きだった。ただ、T子さんの父親が元公安のお偉方とは、、、と思うと、写真を撮らせた事が、なんとなく嫌な予感につながっていた。

それに、「いや、違う。こいつもグルなんだ。T子から金を巻き上げおって!ただで済むと思うなよ!」という言葉が気になる。一体どういう事だろう?どういう意味なのか、聞き出さなくてはならない。

病院に着くとOさんはT子さんと一緒にいた。

「昨夜の事はごめんなさい。。。」と、T子さんは私を見るなり謝った。T子さんの父が言った言葉の意味を聞き出そうとした私の思惑は後回しになったまま、仕事の打ち合わせをし、T子さんと一緒に帰る事となった。

病院の前から海袋駅行きのバスに乗る。T子さんは何も言わず、窓の外をじっと見ている。彼女はたった一晩でこんなにもと思うほど、やつれて見えた。今、彼女を元気付ける言葉は何も無いだろう。多分、家に帰ってからいろいろ言われたに違いない。

確かに両親にしてみれば、娘(27歳)が52歳の男性と交際していたと判ってショックだっただろう。しかし、それ以上のものが父親の怒りの中にあるような気がした。あれは何だろう?

要町駅前で、バスを降りる。なんとなく彼女の事が心配だったが、仕事のため得意先に行かなければならない。

 

すると、「あの、すいません」と、後ろから声を掛けてくる人がいる。

振り向くと、T子さんの母親だ。

「あ、あれ?どうしてこんな所にいるんですか?」

「えっ、ち、近くに来たものですから。あ、あの、Oさんの事についてちょっと聞きたい事があるんですけど、、いいですか?」

「はい、いいですけど、、あっ、あそこの喫茶店に入りましょうよ。」

「い、いえ、ここでいいです。。」

と言って、地下鉄の入口付近に立ったまま、どんどん話しはじめた。

「あ、あのね、はっきり言って欲しいんですけど、T子はOさんと体の関係があるんでしょうか?」

「はっ?!」

驚いてしまった。いくら母親とはいえ、のっけから娘についてこういう質問をするものか???そうでなくても、ここは色々な人が行き交う路上なのである。ここで、そういう内容の質問をすること事態、非常識なような気がする。

私はOさんの仕事の部分しか知らない。プライベートな面など、一切知らない。その事を何度も言った。しかしT子さんの母親は何度も同じ質問を繰り返す。。。母親ゆえの心配なんだろうか?同じ女性としての心配?しかし、ちょっとしつこいほどに聞いてくる。

その後、T子はOさんといつ頃から交際しているかとか、Oさんの性格や会社での評価等の質問に入った。

話が長くなりそうなので、何度もそばにある喫茶店に入る様すすめるが、断られる。質問は機関銃のようにどんどん出てくる。その内容は路上で簡単に答えられるものではない。

『なんか、、、おかしいなぁ?』と思いながらも、T子さんの母親でもある事だしと思いながら、答えていた。時間にして、20分ぐらいだっただろう。やっと質問が一段落し、最後に

「どうもありがとうございます。また、貴方に何か聞きたい事が出てくるかもしれません。その時のために、連絡先を教えていただけませんか?」

と言うので、名刺を渡して、その場を失礼しようとしたとき、、

『警察?!公安?!』

どうして気がつかなかったんだろう。T子さんの母親の肩越しに黒い車が止まっているのがみえる。車は私の方を向き、前に男性2人が乗っている。後部座席には多分、父親がいるんじゃないのか?

『多分、T子さんをつけてきたんだ。それで、私がここでバスを降りたから話を聞こうと、、、。今の会話は全部、録音されている!』

一瞬にして、何故ここに母親がいるのか、何故喫茶店に入るのを拒んだのか、何故あのような質問をしたのか、謎が解けていく。

心が締め付けられるように緊張していく。それを顔に出さない様にして、最後の挨拶をした。

 

得意先に向かいながら話の内容を思い出す。

『何か、変な事は言わなかったかな?彼らは揚げ足を取るのがうまい。言葉の綾を巧みに使い、自分達の都合の良い様に解釈し、どんどん容疑を拡大させていくんだ。

ましてや今回の事は、自分の娘の事だ。どうしても私情が入るだろう。とすれば、Oさんを全面的に悪い方向に持っていくはずだ。だって、彼女の父親は公安のお偉方だったんだ。いくら退職した身分とはいえ、後輩をいくらでも使い、いくらでも捜査するに違いない。それこそ役得と言うものか。

一体容疑は何なんだ?これだけでも判れば答え方もいくらか違ったかもしれない。』

ぎりぎりとした思いと、後悔とが一緒になる。

涙が出た。T子さんの母親だからと思って、丁寧に答えたつもりだった。母親の気持ちを自分なりに汲み取って、同情した部分もあった。それがこんな風に裏切られるなんて!

とにかく、Oさんにはこの出来事を連絡した。

『こんな混乱した気持ちで、得意先には行けないよ。。。』

 

月曜日、いつものように出勤した。

10時ごろ、常務から呼び出され会議室に行った。

「すまんが会社をやめてくれないか。」

「!!!???」

常務の言葉が理解できなかった。

第15話 愛人3

会社を辞めて欲しいと言う常務の突然の言葉に狼狽した。

「理由は何ですか?」

「まぁ、なんというか、つまり君がこの会社に合わないと言う事だよ。なんて言ったらいいかなぁ、つまり浮いているというか、、、」

何を言っているんだ!そんな事が退職勧告の正当なる理由になるわけがない。

「納得いきません。どういう事ですか?はっきり言ってください。なにかあるんじゃないですか?私に非があるということなんでしょう?悪いところは改めます。でも、どうして突然やめて欲しいなんて言うのか、その理由をおっしゃってください。お願いします。今まで何もなかったじゃないですか。」

しかし、常務は同じような内容を繰り返すばかりだ。そして、、、、

「いやぁ〜、会社としては貴方の方から辞めると申し出たと言う事にして欲しいんだが、、」

何を言っているんだ!私にクビを宣告しておきながら、私の方から辞めると申し出た事にして欲しいなんて!

クビになった場合、1ヶ月分の基本給が上乗せされる。しかし、自分から会社を辞める希望退職の場合、上乗せはない。突然辞めるようにいわれ、会社の都合の良い様に、自分から辞めたことにして欲しいなんて、それを承諾するほど私はお人好しではない!

「お断りします。納得できません。私はたとえ仕事が無くても出社します。よろしいですね。」

そう言いきった。常務はなんとも困ったような顔をしている。しかし、納得できない事に承諾出来ない。

 

もう昼時だ。そのまま会社から出た。

『どういうことなんだ!金曜日、出社した時は何も無かったじゃないか。浮いている?会社に合わない?どういう事?』

気持ちの整理がつかないまま、自然と足は公衆電話に向かっていた。

『Oさんに聞いてみよう。Oさんは直接の上司だし、何か知っているに違いない。。。』

Oさんの携帯電話に電話をする。すると、珍しく直接本人が出た。

「あっあの〜」

「おう、なんだ?声で分かるよ。」

「実は…今さっき常務から会社を辞めて欲しいと言われたんです。どういう事なのか、聞いていますか?」

「… 会社が終わったら病院に来なさい。話しはそれからだ。」

 

会社が終わり、病院へ向かう。

あれからずっと私の頭は常務の言葉に占領されていた。理由が分からない。業績も悪くないはずだ。確かに私の態度に悪いところはあっただろう。だけど、それが突然の退職勧告にまでなるのか?

Oさんは元気そうだ。でも、ちょっと疲れた顔をしている。まだ手術してから何日も経っていない病人に心配をかけてしまった事を反省した。盗聴の恐れがあるので、病室は避け、待合室で話しをする。

「まさかお前までやられるとは思わなかったよ。今日、午前中に社長が見舞いに来た。そして俺をクビにしたんだ。」

「えぇっ!!!どうしてですか!?」

「T子の父親だよ。T子の父親が、ある事無い事ぶちまけたんだ。社長に俺をクビしろって言ったんじゃないのか?」

「そういえば、T子さんの父は私に『お前もグルだろう』って言ってたんです。どういう事なんですか?」

「…実は俺はT子から、200万円借りているんだ。最初は、今、住んでいるマンションの契約の時に借りたんだ。あと他にも色々あって、全部で200万円になった。すぐに返そうと思ったんだがなかなか返せない。T子も急がなくていいって言うもんだから、つい、甘えたんだな。それがあるきっかけで、T子と俺の関係、借金の事が父親にばれたんだ。

多分、父親は俺がT子をだましたと思っているんだよ。お前とグルで、T子からお金を巻き上げたとでも思ったんだろう。そんなことで、今、俺にかかっている容疑は詐欺罪だ。だから、T子の母親がおまえの話を録音したりしたのも、そういう事だ。容疑を立件しようと躍起になってるぜ。

あの父親は土曜日か日曜日に、社長のところに行って、いろいろ俺の事を言ったんだよ。なにせ元公安局長だ。後輩なんていっぱいいる。退職したって、掛け声一つでいくらでも集まってくる。そして後輩に俺の事をたっぷり調べさせ、それを持って、社長のところに行ったんだ。

しかし、お前までクビになるとは思わなかったよ。多分、お前の場合、俺とグルじゃないかって言うよりも、他の理由だと思うがな。」

「他の…理由ですか?」

「そうだ。お前隠しているだろ。ま、隠して当たり前だがな。しかし、俺も驚いた。お前が○○○真理教の出家信者だったなんて。」

「!!!」

第16話 発覚

「しかし、俺も驚いた。お前が○○○真理教の出家信者だったなんて。」

「!!!」

「社長が俺をクビにするって言った後、お前もクビにするって言ったんだ。お前をクビにする理由なんてどこにもないじゃないかって言ったら、社長が言ったよ。元○○○真理教の信者を社員にしているなんて、会社の恥だ。沽券に関わるって。信用がなくなるってさ。

元信者なんて、顔に書いてあるわけじゃなし、普通じゃ分からん。これからだってそうだ。だから会社に迷惑なんてかからんだろう。それでも、元○○○真理教の信者と判った以上、お前を会社においとくわけにはいかないそうだ。どこで事件と関わり合いがあるか分からないし、薄気味悪い。それに何かあって警察に来られても困る。それこそ会社の信用がなくなるってよ。

お前が信者だったってことは、T子の父親から聞いたんだろうな。一体どこ見て社員にしたんだとか、よくあんな人殺し集団の人間を社員にしてくれたなとか、最初からおまえを元信者だって知ってて採用したんじゃないかとか、いろいろ言われたよ。お前の採用に関しては俺が大きく関わっているからな。。。」

ショックで声が出ない。胸に大きな槍が突き刺さったような気分だ。

「…Oさんは社長に聞いてはじめて、私が元信者だって知ったんですか。本当はずっと前から知っていたんじゃないですか?」

「あぁ、知ってた。俺が黙って仕事していると思う?新潟に出張に行ったと思わせて、JC★Aに顔を出していたんだよ。そして、俺がなんで調べられているか、徹底的に調べた。

最初は自分の事しか考えていなかった。でもどうしても出てこないんだよ。何で俺が追われているかがさ。大体ケロヨンとの絡みなんて、どこにもないからな。そうしたら出てきたんだよ。すごい写真が。」

「すごい写真?」

「そうだ。おまえ、ケロヨンの集会所で何やった?」

「えっ?」

「俺をY子に会わせるって書いてきただろ。思い出したか?」

OさんをY子さんに会わせる?何の事だかピンとこない。

「Y子が事件を起こす前に、おまえ、俺を必ずY子に会わせるって紙に書いてきたろうよ。」

「あっ!」

そうだ、あれだ!!確かヒロコにOさんを救済するチャンスだからY子さんに会わせなきゃ駄目だって何度も何度も迫られて、しぶしぶ書いた決意の事だ。

「Y子の事件の事で、集会所に家宅捜査が入って、その時それが、写真に撮られたわけだ。それには俺の名前が書いてある。『必ずお引き合わせ致します』って書いてあるから、てっきり俺がY子と会ったもんだと思ったらしいんだ。そこで、俺について捜査する事になったというわけだ。

ケロヨンクラブが旅行に行くにあたって資金を集めていた事は、彼らの調査で分かっていた。その資金を俺が出したんじゃないかって思われたんだな。つまり、俺がケロヨンの影の幹部だって疑われたという事だ。」

『あっ!だから私がケロヨンの大幹部って思われて…』ふと、サトミからの電話を思い出す。

「そういう容疑でだ、俺を張り込んだデカは実はT子の父親のポンユウだったんだよ。その刑事は当然、不動産屋に行ってマンションの契約について調べるよね。そうしたら保証人の欄にT子の名前が書いてあるから慌てて父親に言ったんだ。そこから俺とT子との関係が発覚したって言う事さ。」

「つまり、すべて私が書いたあの文書が原因だったって事?」

「そうだ。何もかもあれから始っている。」

何も言えなくなった。自分の身に起きた一連の捜査はすべてあの決意が始まりだったんだ。自分だけならまだ良い。Oさんにまで迷惑をかけてしまったんだ。なんとも言えない罪悪感にも似たような感情に包み込まれた。

「あの文書にお前の名前を見た時、俺はびっくりしたよ。お前はどう見たって元信者には見えないからな。暫く信じられなかった。ま、それだけお前がダメ信者だったって事なんだろうが。

そういう事で、悪いがお前について、色々と調べさせてもらったよ。」

「私をずっと尾行したり、隣の部屋に張り込ませたりしたのはその為だったんですか?」

「ん?マンションの隣の部屋に誰か住んでいるのか?」

「しらばっくれないで下さい。以前、尾行していた人が今でも住んでいるんです。おかげでどんなに迷惑しているか。もう気が変になりそうです。いや、もう変ですよ。」

「それは知らない。いいか、お前を追っているのは1つだけじゃないんだぞ。ケロヨン絡みで、警察と公安が動いている。T子の件で、公安が動いている。全部で3つだ。この前まで俺も動いていたけどな。

でもお前はさすがだよ。尾行がついてもびくともしない。むしろ挑戦的だ。俺の同期がそう言ってたよ。ずいぶん慣れてるって。」

「それ、誉め言葉ですか?それで、私を調べて何か出てきましたか?」

「何も出てこない。お前は嫌なくらい真っ白だ。だが、しばらく彼らに追われるだろう。」

「それは何故?何もないんだったらさっさと余計な捜査はやめるべきです。」

「そのとおり。しかし、○○○真理教絡みの場合そうはいかない。破防法の件があるからな。どうしても適用させたいんだよ。どうしても。その為に捜査が必要なんだ。」

「破防法?でも、T子さんの件はそれとは関係ないでしょ。」

「それは判らない。俺がT子から借りた金は実はケロヨンに流れて、、、そのケロヨンは元信者達で構成されて、、、なんて考えたら捜査がこのまま終わるわけがない。

それにT子の件は、父親とすりゃ、自分の娘が関わっているからな。どうしたってこっちが悪いっていうことにするだろう。おまけに破防法まで関わってくるんじゃ躍起となるぞ。どんな事でもするだろうな。」

「そ、そんな!じゃ、これからどうなるんですか?どうすればいいんですか?」

「とにかく、お前はシロだ。何かあったらすぐに連絡する。俺が判る範囲内になるがな。とにかく元信者の友人とは会うな。勘ぐられるぞ。

…そんな事よりも、俺は明日からの生活の方が心配だよ。いきなりクビになっちゃって、これからどうやって暮らしていけばいいんだ?手術代だの、入院費だの、半端じゃないんだぞ。T子にも金を返さないとな。」

2人、誰もいない病院の待合室の窓から、秋風の中、浮かび上がった満月を眺めていた。

第17話 秋風1

重い心を引きずって出勤する。

考えてみれば仕事があったからここまで来れたようなものだった。たとえ私生活にどんな事があっても、それを打ち消す通勤時間。やがて訪れる仕事への集中。それが失われるというのは何とも辛い。

私が退職勧告を受けた事は、正式には発表されていないが、多分知っているんだろう。やけに私が受け持っていた仕事の事について、みんなから質問される。

「ごめんね、今までその仕事全部やってもらってて。これから私たちがやるからちょっとづつ教えてちょうだい。」

言い方は優しいが、その裏に秘められた事を考えると顔から笑みが消える。

昼近くなって常務から呼び出された。

「昨日の件なんだが、考えてくれたかな?」

「何をどう考えるんですか?私の気持ちに何も変化はありません。私に会社を辞めて欲しいという理由は何ですか?はっきりとお聞かせください。」

「いや。。。。。」

まるで話しにならない。もしここで『元信者だから…』とでも言おうものなら、人権擁護団体にでも訴えようかと思った。しかし、『あの教団絡みだから、どこに何言ったって取り上げてもらえないだろう。訴えたって嫌な顔をされるだけ。所詮、泣き寝入りになるんだろうな。』そんな諦めた感情が沸き上ってくる。

話し合いは平行線だった。こういう時は「わかりました」と言ってはいけない。「聞いておきます」という、ハイでもイイエでもない言葉を使う。会社で学んだ事はこういう交渉術だけだった。

 

翌日から、私の意志とは関係なく、どんどん仕事の引継ぎがなされていった。はっきり言って、何も仕事が無いのは辛い。でも、ここで自分から会社を辞めるなんて言ったら負けなのだ。どんなにひどい事をされても、カルマが落ちたんだと思って耐えるしかない。『とにかく会社に体を運べばいいんだ。体を運ぶだけで、仕事なんかしなくたって、給料はもらえる。これって、すごく楽な事じゃないか?もしかして、ラッキーな事なんだ!!!』

私が営業に出なくなって、尾行している人たちも退屈している様だ。たまに窓から外を見るとシートを倒してのんびりしている姿が見える。

そういえば、Oさんが言っていた。

Aランク…24時間張り込み付き。

Bランク…朝から夕方まで、張り込みつき。

Cランク…時々、張り込みつき。

(A〜Cランクまで盗聴あり。前科のある人に対してはチェックの入れ方が違うとの事。)

私は今のところCランクのようだ。しかし、隣に刑事が住んでいる事を考えるとAランクとも考えられる。部屋の盗聴は、照明器具の取り付け部分の天井の裏から仕込む場合があるという。特にマンションにその方法を用いる場合が多く、プロが見るとやられているかどうか一発で判るという。多分、何もかもやっているんだろう、私の場合。

自分でまいた種とはいえ、彼らのおかげで何もかも狂わされてしまった。こんなはずじゃなかった。教団を脱会して、やっと就職して、ここまで何とか自立した生活が成り立つようになって、これからだったのに、彼らの出現でありとあらゆるものが奪われていく。壊れていく。崩れていく。これからどうしろって言うんだろう。世間的に見て、加害者の立場の私達に誰も支援してくれない。協力してくれない。親兄弟だって、いざとなれば他人なんだ。

彼らとすれば本望だろう。たとえ事件と関わっていない信者でも、彼らは犯罪者として見ているんだ、世間の人と同じように。

破防法が絡んでいるとすれば、尚更その必要性を訴えるために、どんどんマスコミを使って煽り立てるだろう。一方、マスコミは、そういう風潮を作っておきながら、いざとなれば知らん振り。責任はありませんとそっぽを向くんだ!

何かが狂っているようにしか思えない。それよりも、私自身、発狂してしまいたい気分だ。『何が公僕だよ。ただの鬼じゃないか。』

 

それから1週間、ただひたすらに会社に体を運んだ。心はどこかに置いたままだった。そしてようやく?常務から正式にクビを宣告された。

頼むからやめてくれという。1ヶ月分、給料を上乗せするから、頼むからやめてくれという。机に額をくっつけたまま動かない常務を見て、こんなヤツの下で働いていたのかと思うと、あまりの馬鹿らしさに笑いをこらえきれなかった。

と同時に、T子の父親の顔が頭をかすめていった。

第18話 秋風2

会社を後にして、真っ直ぐ病院へ向かう。Oさんに正式にクビになった事を報告するためだった。

相変わらず病院には多くの人がいる。この人込みに紛れ込んで、公安の人がいるのだという。病室での会話は全部ナースコール用のマイクで盗聴されているし、Oさんは窮屈な入院生活を強いられている。

いつものように待合室で会う。クビになった事や、自分を付け回っている公安の事を報告する。Oさんがクビになった段階で、上司でも部下でも無いわけだから、Oさんとの縁が切れるはずだった。しかし、このままの状態では切るに切れない。

Oさんのところには、先日、急に税務署の職員が、去年の申告の調査の為に来たのだという。公安の人は毎日のように聞き込みに来ていて、そのあまりにも失礼な聞き込みの内容に思わず殴りたくなる事がしばしばあるという。ここで相手の言葉に乗って手を挙げようものなら、その場で即逮捕だ。これでは治るものも治らないと、Oさんは言っていた。そして、いつどういう容疑で逮捕されてもおかしくない状況にあると言った。あれもこれも皆、T子の父親が手を廻した事なのだ。

「いくらなんでもそんな事許されるんですか?本当にOさんが犯罪を犯しているのなら別です。しかし、T子さんは27歳ですよ。27歳と言えば、私の友人みたいにもう小学校に上がる子供がいるような、大人も大人、いい大人ですよ。何も分別がつかない年ではありません。その娘が自分の判断でOさんと交際していたんでしょう。

そりゃ親としてみれば、2人の年齢が離れているからびっくりしたでしょうけど、いくら自分が公安関係の人間を動かせる事が出来るからって、ここまでしますか?公安って、税金を給料としている人たちですよね。その人たちをですよ、自分の私的な調査の為に使うんですか?いくら自分が偉かったって、こんな事許されませんよ。それこそ税金横領みたいなもんじゃないんですか?」

「あの父親はな、T子を監禁しているんだぞ。T子は俺のマンションのそばに部屋を借りたんだよ。その部屋をあの父親は勝手に解約して、T子を監禁した。電話も使えない様にしている。」

「何で知っているんですか?」

「T子から連絡が来たからだ。多分、これが最後になるでしょうって言って。ま、すごい親だよ。」

「愛情のひっくり返しってヤツですか?」

その後、2人とも何も言葉が出なかった。この怒りをどこにぶつけたらいいのか判らない。

今はそんな事よりも、明日からどうやって生きていくかが問題だった。早急に仕事を探さなくてはならない。蓄えのほとんど無い私は、仕事が無ければ、収入が無ければ、すぐに干上がってしまう。なんて言って就職活動をすればいいんだ?出家していた期間の事は何と言えばいいんだ?そして今度解雇された事は?ありのままを語るわけにはいかないし、頭の痛い問題だ!!!

「…すまんが俺に金を貸してくれないか?」

「はっ???私には貸すようなお金はありませんよ。そうでなくたって、明日からは無職ですよ。当分の間お金は出ていくばかり。そんな金がどこにあるんですか?」

「お前はまだ若いからいいだろう。おれはもう、どこにも雇ってもらえないよ。手術代、入院費、マンション代、何も払えない。」

「Oさんには別のところからお金が来るんじゃないんですか?政府の方から。」

「ばか!入ってくるわけが無いだろう。俺にはそういう金はこない。

頼む貸してくれ。お前に金が無いのは知っている。調べれば判る事だ。しかし、それ以上に今の俺には金が無い。これ以上お袋に頼るわけにもいかんしな。頼む、貸してくれ。カードやサラ金で借りる事が出来るだろう。」

「お断りします。いいかげんにしてください。」

「今の俺にはお前しか頼る人がいないんだよ。頼む。もとはと言えば、みんなお前が原因じゃないのか?お前が原因でこうなってしまったんじゃないのか?」

「…ずいぶん脅迫染みた事を言うんですね。」

「何が脅迫なんだ。お前があんな事をしなければ、俺はT子ずっといっしょにいられたんだぞ。T子だってそうだ。お前を怨んでいるぞ。

大体なんで脱会したのに元信者なんかと会ったりするんだ?やめたんだったらそんな奴等との付き合いも一切止めるべきだ。それをだらだらと要らぬ付き合いしているからこうなるんだろ。お前だって、つけられたり、張られたり。どうだ、嫌な気分だろう。

でもお前は自分でまいた種だからしょうがないって言ったらしょうがないよな。しかし、俺達はお前のとばっちりを受けたようなもんなんだぞ。俺達の気持ちにもなってみろよ。色々と探られて、痛い目にあって、どうしてくれるんだ!

…金は近いうちに入ってくる予定があるから、それで一気に返す。大体1ヶ月後ぐらいと考えてくれ。金額は今、病院から請求が来ている65万円なんだ。」

「…本当に1ヶ月ですね。じゃ、借用書書いてください。勿論、裁判沙汰になっても通用するような書類をね。」

ここで、Oさんのいる病院を後にした。

近いうちに入ってくるお金とは何だろう?JC★Aの方からの収入なんだろうか?本当に信じていいのだろうか?

しかしJC★Aという看板は大きい。あんな事を言われたら、どうする事も出来ないような気がした。確かにこの一連の事はすべて私の書いた文書から始っているんだ。あぁ、こんな事まで言われるなんて、過去を消してしまいたい気分だ。こんな事で首を押さえられて金を貸せだなんて、とんでもない事だ。しかし、相手はJC★Aだ。それこそいざとなったらT子の父親以上に恐い存在なんだ。困った。とても困ってしまった。

 

翌日、就職情報誌を買い派遣会社数社に電話をする。そして登録の予約を入れた。正社員よりも派遣会社の方が仕事しやすい。面接の時、過去についてあれこれと詮索されないですむ。

そして、、、カードを使ってお金を借りた。65万円。いざとなったら借りようと思って作っておいたものだった。それがこんな事になるなんて。

借金なんて生まれて初めての事だった。

第19話 秋風3

Oさんが退院した。

Oさんは知り合いを頼って仕事を求め、私は派遣会社数社に登録し、派遣社員をしようとしていた。もう、以前のように会う事も無い。ただ、Oさんは私に対して65万円(これに利息がついていくのだが、、、)の借金があるという事で、切るに切れない関係である。借用書には1ヶ月最低4万円づつ返却(銀行振込)するとある。当然、公的に通じる文書だ。

この頃になると、尾行が絶えないという友人がどのランクにあるかとか、気になる捜査状況とか、Oさんに調べてもらったりしていた。(私の友人達はみな、末端信者ばかりで、これといって問題のある人はいないのだが。)

もう私の意識は、尾行がついて当たり前、盗聴されて当たり前という様に変化していた。電話をかけてくる友人も、自分や私の電話が盗聴されていても、ビクともせずにどんどん電話してくる。「聞きたかったら聞かせてやればいいのよ。こんな電話を聞いて給料もらえるんだから、いい商売よね。」なんて言う。皆心得ているんだ、彼らが破防法の件で躍起となっている事を。それによって関係ない事まで、捜査されてしまう事を。

−私の場合はプラスアルファがあるんだが−

 

ある日、Oさんから留守番電話が入っていた。電話をくれる様にという事だったので、電話してみた。以前は盗聴を恐れて、公衆電話から電話したが、今はそういう事はしない。

「もしもし、Oさんですか?」

「あぁ、、、それは自宅電話か?申し訳ないが公衆電話に変えてくれ。携帯に電話するように。」

というので、面倒だが近くのコンビニに行って電話する。

「申し訳ないな。実は昨日、俺のところに家宅捜査が入ったんだ。」

「ええっ?容疑は何ですか?」

「ケロヨンの一件だよ。T子の金の件と絡ませてな。俺が退院するのを待ってカタクに入ったんだよ。全く、弱り目にたたり目だな。それはいいんだが、困った事が起きた。それで今日、署から電話が来てな、事情聴取したいって言うんだよ。」

「事情聴取ですか?」

「そうだ。それで、容疑が固まったらそのまま逮捕という事だな。」

「えっ、逮捕?そんな大きい事なんですか?」

「あぁ。その困った事と言うのは、押収されたものなんだよ。T子の件とは全く関係ないものが押収されたんだ。何だと思う?パーフェクトサーベーションの帽子10個と…上司からの預かりものなんだけど…」

「預かりもの?」

「いいか、誰にも言うなよ。上司からの預かりものというのはな、***の荷物だったんだ。」

「な、なんですって!!!なんでそんなもの持っているんですか?」

「だから、頼まれたんだよ。ずっと前にダンボール箱1つ預かってくれって言われて、押し入れの中に入れていたんだ。俺はそれを開けた事がないから、中に何が入っているかなんて全然知らなかった。それが、まさか***の荷物なんて知らなかったんだよ。」

言葉が出ない。なにかで頭をスコーンとたたかれたような衝撃だ。

「それを、家宅捜査に入った刑事に持っていかれたんだよ。だからその件で、近く事情徴収がある。でも、大丈夫。俺は逮捕されない。その荷物の件は、、出所は、、ハッキリしているから。そういう事で、お前の張り込みがきつくなると思う。迷惑をかけるが、こらえてくれ。じゃ。」

電話はそこで切れた。でも、私は受話器を持ったままそこに立ちすくんでしまった。

***さん(******師長)は、先日**県で逮捕された。ボーディーサットヴァの称号を与えられた成就者だ。

『なぜ***さんの荷物がそんな所から見つかるの?ずっと前に上司から預かった?Oさんの上司っていったい???』

あらゆる思考が渦巻く。

スパイ?

突然、グルの説法の中にでてきたスパイの事が私の頭脳を占領する。

『うそだ!まさか******師長がスパイだなんて!!!

でも、でも、そうとしか考えられない。でなきゃ、何でOさんの上司が荷物を確保しているの?しかも逮捕される前に。どういう事なの?』

「俺達はね、逮捕されるような人物、つまり、その団体の核心人物にならなければならない使命を帯びるんだよ。」

Oさんの言葉が頭をかけめぐっていく。

あぁ、******師長の顔が浮かんでくる。出家していた時に、とてもお世話になったあの******師長がスパイかもしれないなんて!

その場にしゃがみこんでしまった。立ち上る事など、到底出来ない。

第20話 脱出1

もう誰も、何も信じられないような気分になった。まさか***さん(******師長)がスパイ、、なんて信じられなかった。***さんは人望のあつい方だった。たくさんの部下がいて、みんな***さんを信じていたんだ。スパイなんて知らずに!

この事実を知ったらどれだけの出家信者(現、元、合わせて)が驚くだろう。なかにはだまされたと怒る人もいるんじゃないのか?たくさんの信者が***さんの指示で動いていたんだ。***さんの指示はグルの指示だと思って、いろんな人が極限までワークしてきたのに、実は裏切られていたなんて!

どうしようもない怒りの感情と、脱力感に包まれた。

 

翌日、いらいらした感情は極限状態になっていった。

仕事は決まらないし、借金はあるし、尾行はされるし、監視されてるし。おまけに信じていた師はスパイだという。この世で頼りになるのは自分だけだという意識が、自然と私に決意させていった。『このまま黙ってやられっぱなしなんて、ふざけるんじゃないわ!』

今まで、私を尾行していた警察?公安?の方々をことごとく写真に撮ってきた。これをネタにして、どこかに訴えたい。少なくとも、私には自分には罪はないという自信があるし、Oさんのお墨付きがある。罪の無い人に疑いがあるということで、これだけの捜査をして一体何が出てきたの?何も出てこないじゃないか?人権侵害とかなんとかということで、訴えられないかい?

盗聴もされている。何とかしてこれを押さえられないか?盗聴されてるっていう証拠をだ。

受話器を握りしめた。ちょっと緊張した気持ちを押さえて、下野署の○○○真理教の事件の捜査本部に電話した。『これ以上、黙ってなんかいられない』というヤケな気分も手伝っていた。

電話に出た方に名前などを告げ、本題に入った。

「私の電話、盗聴されているようなんですけど、これ、どうにかなりませんか?」

盗聴されている電話は、音声が響いたり、ダイヤルした直後にどこかに繋がる音がする。時には人の声がどこからともなく聞こえてきたりする。最初、こんな事の無かった電話が、突然そういう状態になるから混線しているのかと思う場合が多い。しかし、私の場合、教団で散々盗聴されている電話はどういうものなのか経験しているので、すぐにピンときた。その事を下野署の方に話してみた。

いきなりこんな事を言われて、下野署の人も慌てたらしい。何を言っているんですか?などといっている。しかし、私は知っているのだ。下野署の方々が盗聴している事を。Oさんの調べで裏付けされているんだ。下野署だけじゃない。T子の絡みで、どこかの公安も盗聴している。その、盗聴している皆さんに是非聞かせてやりたい話もあるんだ。

「あなた、いいかげんにしてください。貴方のようなヒステリックな方の話を聞いている暇はないんですよ!」

「何がヒステリーなのよ。そちらの署では、私をずっと尾行していたでしょ。ちゃんと尾行していた人の写真、撮ってあるのよ。それを見たらそちらの署の方々が関わっているかどうかハッキリするわよね。尾行の件はどういうことなの?このまま続くようじゃ、裁判所に訴えるつもりよ。」

「…とっ、とにかくですね、盗聴の件は電信柱を見ていただいて、、、」

と言って、電信柱に盗聴器が仕掛けてあるかどうか、その見分け方を説明してくれた。これは勉強になった。思いがけない収入だ!

これ以上話をする必要はなかった。急いで電信柱の写真が撮りたい。適当に返事をして、丁寧にお礼を言って、電話を切った。

 

急いで電信柱を見に行く。

電信柱にはNTTと書いているハコと、携帯電話会社のハコがついていた。携帯電話用と思われるアンテナが、黒いハコの上に4本設置されている。いったいどれだろう?分からない。本当の事をうかつにも警察が教えてくれるわけはない。でもどれかが盗聴の為のものなんだ。とにかく細部に渡り写真を撮り続ける。

また、電話機本体に盗聴器が仕掛けてある可能性がある。これはどうしようか? 一応、NTTの方に来ていただいて、混線しているという事で、みてもらう事にした。

さて、次は夜が来るのを待つ。盗聴している皆さんに是非聞かせてやりたい話は、夜の方がいい。

 

夜も9時を回った。電信柱に変化はない。さてそろそろ始めよう。

ヒロコに電話をする。盗聴されている電話特有の音がする。

「久しぶりだね、元気?」というありきたりの挨拶と、お互いの近況を話した後、

「ねぇ、この電話盗聴されているんだけど、ヒロコの方もされてるの?」

「されてるよ。」

「そう、じゃ、悪いけど、私盗聴している皆さんに是非聞いてもらいたい話があるのよ。ヒロコは適当に聞き流していいからさ、、

実はね、私が前に働いていた職場の上司には愛人がいて、その愛人は前の公安局長だったかな?とにかく公安のお偉方の娘なのよ。」

と言って、T子の事をぶちまけた。

T子がOさんと交際している事が発覚して、手術の翌日だというのに、両親が病院でOさんに怒鳴りかかってきた事。OさんがT子から借金している問題で、私もグルだと思われて写真を撮られた事。母親が私との会話を録音した事。両親がT子を監禁した事。両親が親しい公安の方を使って、Oさんや私を尾行、盗聴している事、Oさんの家に家宅捜査を入れたことなどなどなど、、

「え〜そんなのあり?だって、いくら自分が公安のお偉方だったからって、もう退職しているんでしょう?それなのに、自分の家庭の問題の為に、親しい公安の人を使うってどういうこと?その公安の人もどういう神経してるの?だって、公務員でしょう?公安って。一個人の為にって、許されるの?」

ヒロコはとっても驚いた様子だ。

「こんな事言えたガラじゃないけど、自分の娘に何かあったら国家権力に頼るって言うのは、おかしいんじゃないかって思うの。何が公安局長か何かよねぇ。もう退職してるのに、ただの虎の威をかるきつねじゃないの。娘の問題には肩書き捨てて、父親として突き進んでいったらいいのに。そうだから、娘に嫌がられるのよね。T子だって、もう27歳よ。立派な大人よ。それなのに全然信じていないのよね、自分の娘を。それで何かあったら仕事上の地位や権力を出すのよ。

公安が動いたことは、私が元出家信者だって言うことも加味していると思う。いや、私の過去を利用したと思うよ。

だけど、公安の人も、いくら自分の元上司からの要請だからってここまでやる?彼らは公務員でしょう?税金を給料としてもらっている人でしょう?彼等の着るものも何もかも、、、血や肉に至るまで、奥さんや子供に至るまで、税金で出来てるようなもんでしょう?その人たちが、一個人の利益の為に動くってどういう事って思うのよ。」

「それで、何か調べてでてきたの?T子さんをだましたかどうかとか?」

「何にも出てこないわ。出てくるわけが無いでしょう。ただただ、尾行されただけ、盗聴されただけ、監視されただけよ。Oさんなんて、カタクにまで入られちゃって、いい迷惑よ。税金の無駄使い発覚ってとこかしらね。

それでね、私、裁判起こすことにしたの。こんな事、黙ってられると思う?証拠はあるし、頑張るわ。」

 

これと同様の電話を、サトミにもする。

ヒロコを盗聴しているところと、サトミを盗聴しているところ、私を盗聴しているところはそれぞれ違う。いろんな人の耳に入れたかった。いろんな人に、元エリート公務員の所業を知って欲しかった。

『明日はまた別のところに、同じ用件で電話しよう。』

ということで、今日はこれで眠ることにした。

 

翌朝、NTTから電話が来た。今から伺っても良いだろうかという内容の電話だったが、、、

おかしい。音が違う。いつもの音じゃない、、、

ハッと思って慌てて外に出る。電信柱を確認すると、、、

なんと昨日まで4本立っていたアンテナが2本になっているではないか!

『そうか!あのアンテナが盗聴の為のものだったのか!』

急いでシャッターを切る。

その後、NTTの方に調べてもらったが電話機に異常はなかった。

念のため、Oさんに連絡を取る。盗聴されているかどうかの確認をしてもらう為だった。確認には時間がかかる。しかし私はもう確信していた。盗聴はされていない。昨夜、私が寝ている間に解除したのだということを。

なんとも言えない笑いが込み上げてきた。

第21話 脱出2

なぜ急に盗聴を解除したのだろう?訴えるって言ったから?T子の父親であるS元公安局長の話が広がるのを恐れた為?

盗聴している方もびっくりしただろう。Sさんといえば、公安のほとんどの人が知っているであろう、有名人に違いない。つまりそれだけ地位の高かった人なのだ。その方のゴシップが聞けるなんて、思いも寄らぬことだったんじゃないのか?T子の父親自身が盗聴の解除を指示したとは考えられない。多分、盗聴によって事実を知った人達の計らいではないのだろうか。それにしても、お蔭様で盗聴されていたという証拠をつかむことが出来た。これでいつでも裁判所に訴える事が出来る。

その日の夕方、Oさんから連絡があった。盗聴はされていないという。あの、携帯電話用のアンテナの形をしたものは、やはり盗聴のためのアンテナだったと確信する。

しかし、念には念を入れたい。また違った形で盗聴する可能性があるからだ。駄目押しをしようという気分で、T子の一件を他の友人に電話する。その次にヒロコとサトミに電話する。この2人には、盗聴に使用していたのは、携帯電話用のアンテナそっくりのアンテナだったこと等を話す。この方法が有効かどうかは分からない。しかし、今の私に出来る反撃はこれだけだった。話しながら、心のどこかで、彼等が私に対して何らかの報復に出るんじゃないかと思った。

しかし、今の私には何も怖いものはない。何も失うものはない。彼らの捜査のおかげで、脱会後、必死になって築き上げた小さな楼閣は崩れてしまった。彼等にとって私の城なんて、それはそれは小さい子供だましのようなものであっただろう。だけど、それを作り上げる為にどれだけ苦労したことか、どれだけの人が協力してくれたことか。それを全部踏みにじった彼等の行動は許されるものではない。彼等に対する恨みは、ふつふつと煮えたぎる釜の泡のように、いつまでも心に湧いて出てくるものなのだ。

 

以前から時々あった無言電話が、翌日から頻繁にかかってくるようになった。私にとって無言電話は全く気にかからないものだ。電話料金は相手が払っているし、受けた方は切れるまで受話器をあげて、ほっとけばいいのである。

今日もいつものように無言電話がかかってきた。受け取って、受話器をあげたままTVを見ていた。5分ぐらい経って、ツ−ツ−と音がする。切れたようだ。続けてまた電話のベルが鳴る。いつもは「ハイ」と言ってとるのだが、その時に限って、黙って受け取ったのである。

すると、「もしもし」と男の人の声がする。どこかで聞いた声だ。。。。『あっ、T子の父親…』

「もしもし、もしもし、」

何度も呼びかけるが声がしない。いつもの無言電話になってしまった。

『もしかして、無言電話って、T子の父親の仕業なの?』

「あっ、あははははは!!」 

思いっきり電話に向かって笑った。とにかくおかしい。あのT子の父親がこんな事をしているなんて、なんておかしいんだ!権力にものを言わせて、叶わないとなったら嫌がらせをするなんて!これが公安エリートだった人のすることか!

電話はガチャリといつもより大きな音をたてて切れた。それと同時に私の周りから、警察、公安の影がすべて消えた。

 

あれから一週間経った。

もう、隣の部屋には誰も住んでいない。尾行も監視もされていないように感じる。久しぶりに開放されたような気分だ。すごく晴れがましい気分だ。あぁ、こういう気持ちになったのは何ヶ月ぶりなんだろう。

朝10時30分頃、Oさんから電話がかかってきた。署に連行されて、たった今、事情聴取を受けて帰ってきたばかりだという。

朝6時30分、交通違反の罰則金未払いの件で刑事が署まで連行したのだという。(つまり、別件で連行)。しかし、事情徴収の内容は、○○○真理教とのつながり、ケロヨンクラブとの関係、家宅捜査で荷物を押収した、***さん(******師長)についてであったという。

特に押収したものについての事情聴取は、刑事が自分を犯人扱いしているようだったという。しかし、、、事情が判るにつれ、まるでヒンヒン鳴く小犬のようになり、最後にはおねだりする子供のように『何か情報があったら私たちにも教えてください』と哀願したという。

事情徴収の時間はわずか2時間少々。さすがにJC★Aの印篭は大きい。刑事もさぞびっくりしたことだろう。

結局、私のところには家宅捜査は入らなかった。そして、Oさんの事情聴取をもってこの一件は終結するに至ったのである。

私はOさんに聞いてみた。

「***さんはスパイだったんですか?」

「知らん。」

「でも、Oさんは上司の方からその荷物を預かってくれるよう、依頼されたんでしょう?そしたら、少なくても***さんは、JC★Aとつながりがあると考えてもおかしくないですよね。***さんを教団に送り込んで教団を監視していた、あるいは操っていたんですか?」

「…」

「多分、***さんは麻原さんの裁判に証人として出ることがあるかもしれませんね。その時、当然?麻原さんに不利になるようなことしか証言しないんじゃないですか?それが彼の最後のお役目じゃないんですか?

そう考えてみると、これほどまでに、教団内で重要な地位にまで上り詰めた***さんは優秀なスパイだって事ですか?」

「何にも言えん。」

「***さんを慕っていた信者はたくさんいました。***さんを信じて、必死でついていった信者はたくさんいるんです。その、信者達はどうなるんですか? 信者達を先導して、色々なことをやらせて、実はだましたということなんでしょう?」

「…もう、その件については、、、止めてくれ。俺は何もしらん。いずれにしても、***は裁かれる。それでいいじゃないか。」

「いい加減にしてください。なにがいいんですか?***さんが公平に裁かれるなんて、信じられるもんですか!***さんの裁判なんて、どうせ茶番劇だ!そうやって、どこまでも私たちを欺いていくんだ!!!」

 

結局、私は訴えなかった。

確かに証拠となるべき写真、録音テープ等などある。いつでもそれらを根拠にすることは出来る。しかし、今は静かな環境が欲しかった。誰に追いかけられるわけでもなく、監視されるわけでもない、静かな環境を噛み締めたかった。

第22話 結局

結局、破防法は適用には至らなかった。

破防法をにらんでの捜査等のおかげで、脱会したばかりの信者達は現世の手荒な洗礼を受けた。また、マスコミによる俗世間への教育は、隅々にまで浸透しており、私たちはことごとく締め出された。ある者は親に監禁、監視された。

警察、公安による監視は相変わらず続いている。今はあの頃と比べてだいぶ緩やかになっているだろうが、それはあくまでも表面的な部分だけで、影ではじっと監視しているに違いない。マスコミはことある毎に俗世間への○○○真理教に対する教育を忘れない。

結局、脱会信者だろうがなんだろうが、○○〇真理教と関わりのある者は、この世界では暮らしてはいけないという事だ。だから?私たち脱会信者は(私だけだと思うが)、今でもこの社会をいつでも切れるように心のどこかで準備している。

特に私は裁判の様子がマスコミで報道されるのを目にする度に、それがすべて真実だとは思えない。勿論、たくさんの方々がお亡くなりになった。たくさんの方々が今でも苦しんでおられる。その事実は否定出来ない。たとえ自分が事件とは全く関わり合いが無いとは言え、その方々に対し、謝罪しきれないと思う。しかし、どこかで誰かが何かを工作している。スパイ達がはびこっている。それに私たちは躍らされているに過ぎない…と思ってしまう。

いずれにしても、それらは全部自分の外の世界の事だ。外の世界に惑わされず、自分の内なる世界を磨き上げていく事が大切なのだ。その事を気付かせるために今までの出来事はあったんじゃないだろうか?

『もう一度、しっかり教学しよう…』

そう思って、大切にしまっておいた経典を手にした。

とたんに全身がカァ−っと熱くなる。涙が止めどもなくあふれてくる。そして神へのざんげの気持ちでいっぱいになった。

 

結局、Oさんは借金を全く返済してくれなかった。

私が借金してOさんに貸した金額は65万円。毎月4万円返済するという借用書を書いてもらった。貸した時、「一ヶ月後に大金が入るから、すぐに返す。」という事だった。しかし、その後、その大金はOさんの手元には入らなかった。税金未払い分があり、取り押さえられたのだ。

一気に支払ってもらう事は出来なくなったが、毎月4万円づつ返却してもらう事になっている。しかし、全く返却してもらえない。ローン会社からの請求はどんどんやってくる。だから私がその肩代わりをしなければならなくなった。その為に夕方からアルバイトをする事にし、返済分を当てる事にした。

昼は派遣社員、夜はバイト、月曜日から金曜日まで、労働時間は12時間以上。朝7時50分に家を出て、帰ってくるのは夜11時過ぎ。この生活を余儀なくされてしまったのだ。

出家していた時、ワーク時間は12時間だ。あの頃は辛いと思った。しかし、現世での仕事に比べれば楽なもんである。教団内のワークは、今日は体調が悪い、アストラルに突っ込んでいるから、とかなんとかでいくらでも休める。いくらでもサボれる。ワークが嫌だったらボイコットも出来る。遊んでいても食事(お供物)はある。寝る場所もある。生きていける。

しかし現世での仕事は、何十倍もキツイ。まず、エネルギーが悪い。休んでいたり、無職でいると、すぐに干上がってしまう。自分がどんな精神状態であったとしても、多少体調が優れなくても、きちんと仕事を成し遂げなければならない。教団で通用する甘えの一切許されない世界なのだ。それこそ「私」を滅していかなければならない。たちまちのうちに、足(特に膝から下)が鉛のように重くなる。朝になっても体が動かない。ものすごく眠い。しかし、行かなければならない。その意志だけが私を動かす。

何度もOさんに返済してくれるように請求した。しかしその度に怒られた。Oさんは仕事が上手くいかず、イライラしている事が多かった。そのイライラに、私からの借金返済要請の電話が重なると、猛烈に怒った。

「お前は人の心を思いやるという事が出来ないのか!そういう話しを聞くと、どっと疲れが出るからやめてくれ!」

『一体誰が肩代わりしていると思っているんだ。借金した人間が、威張り腐っているなんて、いい加減にして欲しい。Oさんは私を憎んでいるんだろうな。私と関りあったおかげで、警察や公安につきまとわれる事になったし、T子とは別れる事になった…こういう仕打ちをするわけか…私の方が疲れるよ…』

過労のため、何度も気を失って倒れた。

 

そしてOさんも倒れた。

以前から動脈瘤破裂の危険性が指摘されていたが、仕事での無理がたたって倒れてしまったのだ。Oさんはまだ、T子の両親にしつこくつきまとわれているらしい。私への借金もある。色々心労が重なったんだろう。

その後退院したが、また倒れた。今度は危篤状態に至った。が、しかし何とかその危機を脱したと聞いて、面会に行った。

「まいったよ。親族がみんな集まってくれて、生死をさまよっていた俺を見守っていたらしい。」

「そうですか。私も生死をさまよっていますよ。貴方が借金を返してくれないばっかりに。」

「遺言書を書いたよ。俺が死んだら、保険金がおりる。それでT子の借金とお前の借金を返済してくれって。当然、利息をつけてな。」

「貴方が死ぬまで、借金は返してくれないって事ですか?一体死ぬのはいつですか?」

「…」

ベットの中のOさんは、抜け殻のようだ。これが昔JC★Aの一員として、グルを監視していた人間の姿なのか?

『あっ…』

その瞬間グルの説法を思い出した。真理を誹謗中傷した魂はどうなるかという説法だ。

『Oさんは心臓をやられている。説法の通りだ…』

とたんに、それまで憎んでいたOさんへの思いが、慈愛へと変わる。

『もう、もうこの人には何も言えない…』

 

それからOさんに二度と会う事はなかった。連絡も取らなかった。

 

それから2ヶ月後

Oさんにお金を貸すために借金してから1年2ヶ月、利息も含めておよそ80万円にのぼった借金の返済がすべて完了したのである。

第23話 現在

現在、私はOさんと全く連絡をとっていない。

あれからすぐに、Oさんには黙って引越しした。電話番号も当然変った。携帯電話は使用していない。職場も変った。Oさんからは全く連絡が取れないようにしたのだ。

Oさんから、全く借金の返済がなされていないのに、こんな事をするなんて、馬鹿としか思えないだろう。しかしこんな事をしても無駄な努力に過ぎないのだ。JC★Aの力を持ってすれば、私がどこにいるかなんてすぐに分かることだろうし、判ったところで、返済してくれるとは思えない。今の私にとって、そういう事はどうでもいいことになってしまったのだ。

ようやく社会復帰したものの、警察や公安の捜査に阻まれ、ものすごく怨んだ。今でも怨んでいないと言えば嘘になる。

しかし私は分かったのだ。こんな事は取るに足りないことだと言うことを。

 

所詮、人間が作った法と言うものは、今のこの社会でしか通用しない。300年前の江戸時代の法が、現在通用するかと言ったら通用しない。法はいつでも、その時代の権力者に都合の良いように作られる性質があるし、また、現在も法は(どこかの誰かにとって都合の良いように)どんどん改正される。その様に人間の作る法なんて、どこかに不公平な部分があり、無常なものだ。

しかし、それに対して完璧な法がある。

それは太古の昔から変ることの無い法則。真理の法則

 

Oさんや彼等がなしたことは真理の法則の中のカルマの法則によって、彼ら自身に返ってくるだろう。そして、私がなしたことはカルマの法則によって、私自身に返ってくる。

Oさんには、もうカルマが返りつつある。その事が分かった時、これ以上咎められないと思った。神の力にお任せする以外にないと思った。私が警察や公安の捜査で苦しんだもの、借金で苦しんだのも、カルマによるもの。これに逆らうなんてもってのほかだと思った。かといって、決して許したわけではない。しかし、私が手を下さなくても、神が手を下すのである。

 

この社会で生きていくには、この社会の人間が作った法に従わなければならない。その枠の中で生きていかなければならない。しかしその法は、真理の法則と比べると、なんと他愛も無いことか。もし、人間が作った法が真理の法則に背くものならば、私は破る。人から受ける罰よりも神からの罰の方が、ものすごく恐ろしい。

私は、人間の認知を越えた神の世界の法を、人間が理解することは到底不可能な事だと思っている。だから、神にとっては当然の事でも、人間にとって異常な事があるだろう。人間界にとって外れた行動であっても、神の世界から見れば正当な行動だってあるだろう。

人間が理解可能な範囲内の法は、おそらく低いレベルのものではないだろうか。とても高い世界の法則は、おそらく人間には全く理解できない。理解できたところで、その法則にそった行動は、他の人間から見れば、奇怪な行動にしか写らないだろう。人間の作った法に触れる事だってあるだろう。逆に犯罪に当たることでも、神の目から見ると正しい事だってあるだろう。

私はもっと教学したい。もっと高い世界の事を学びたいのだ。

こんな事を言うと、まだマインドコントロールが解けていないんじゃないかと言う人がいるだろう。そうかもしれない。しかし、私は言いたい。世間一般の人はコントロールされていないと言いきれるのかと。マスコミなどに力によって、コントロールされている部分があるのではないのかと。

私は元○○○真理教信者である。事件とはなんの関わり合いも無い。しかし、元○○○真理教信者であるということが、周囲の方々にばれたら、ものすごい差別を受けるだろう。村八分になるだろう。教団の事件の大きさから言って、それは仕方が無いと言えばそうかもしれない。しかし、マスコミなどを使った一般の方々に対する○○○真理教への洗脳が、その背景にあると思ってしまうのは、私の勝手な被害妄想だろうか?

そこから派生した、「こんな汚れた世界よりも、高い世界に行きたい。」という気持ちは、あまりにも「夢見る少女趣味」だろうか?

差別を受けてみろと言いたい。弾圧されてみろと言いたい。

どんなに差別されても、弾圧されても、人の心の奥底までは、とどかない。そこには不可侵の自由があると思う。私はその世界で生きていこうと思ったのだ。

 

今日もいつもと同じ様に一日が過ぎていく。たくさんの人を乗せた満員電車が私を日常へと運んでいく。

『この満員電車に持っている人々の中で、一体何人が天界に行くのでしょう?人をけなしたり、罵倒したり、嫌悪してみたり…皆さんこれからどこに行くのでしょう?その行動の一つ一つが、知らず知らずのうちに自分の未来を決定しているのに…』

そういう事を考えながら電車に乗っている自分に気がついて、結果的にはすべて良い出来事だったと思えるようになってきた。

私の身に起こった出来事は、私の心をもう一度修行に向かわせる結果となった。今となってはあの頃にであった人々…Oさんをはじめ、公安、警察、JC★Aの皆さんにとても感謝しています。

本当にありがとうございます。

私との縁によって、グルとの縁によって、皆さんが少しでも早く真理に気付き、真理の流れに入るよう願ってやみません。

現在、私は教団に戻っていない。信徒でも何でもない。相変わらずこの現世で、一人あくせく働いて暮らしている。私にとって、教団に所属しようとしまいと、どうでも良いことなのだ。逆に、脱会したからこそ、教団内では経験できない激しい修行(経験)が出来たのだと思っている。これもすべて神のお導きでしょう。私はグルの弟子であることに強い誇りを持ち、これからを生きていきたいと思っています。

本当に皆さん、ありがとうございました…

 

通勤電車から、東京湾に大きな夕日が沈んでいくのが見える。同じ太陽でも、明日はまた、違った光を私に届けてくれるだろう。

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<感謝!>

ハズダズガゴ

あぁ〜やっと終わりました。

文章らしきものを書いたことの無い私に出来るのかしら…と思いながら始めたことでしたが、ようやく終わりました。

今、読み返してみると、色々言葉足らずのところがあってご理解いただけたかどうか…と心配になることばかりですね。もっと詳しく書いても良かったんじゃないかと…

これから徐々に文章を直して、より完全なものに仕上げていきたいと思っています。ですから時々、増補、改訂はあるでしょう。

最後に

この作品を書くにあたり、ご尽力いただいた皆様、ありがとうございました。

この幼稚な作品を読んでいただいた皆様、ありがとうございました。

皆さんの未来がより一層、光あるものになりますように…

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もどる/ほーむぺーじ/99/03/10


この物語はフィクションです。登場する人物、団体は架空のものです。但し当HPがポアされた場合、関係者の圧力だと思ってください。

情報の出所は本人の強い要望により極秘とさせていただきます。

http://rerundata.hypermart.net/syousetu/syousetu.htm

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