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【植草一秀の『知られざる真実』】当面の内外政治経済金融情勢について(2008年5月21日 (水))
http://www.asyura2.com/08/senkyo50/msg/376.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 5 月 21 日 21:15:29: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_634a.html

2008年5月21日 (水)
当面の内外政治経済金融情勢について

スリーネーションズリサーチ株式会社のHPドメイン移転に伴い、現在、HPを改修しております。HPが通常通り稼働するようになるまで、当ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」にコラムをアップさせていただきます。


当ブログではスリーネーションズリサーチ株式会社会員制レポート『金利・為替・株価特報』の主要テーマである内外の政治、経済、金融情勢に関する記事に加えて、私が現在係争中の訴訟に関する情報やその他の一般的な題材に関しましても、適宜記述して参りたいと考えております。


執筆は不定期になるかと思いますが、なにとぞご高覧賜りますようご案内申し上げます。


なお、本ブログでは書き込み欄を設定せずに、私の考えを徒然なるままに書き留めて参りたいと思っております。


実質的な第1回エントリーになる今回は内外の政治経済金融情勢について執筆いたします。


本年3月から5月にかけて、特筆すべき重要な変化や論議が数多く観察されている。そのなかから三つの論点を取り上げてみたい。三つの論点は、@内外株式市場での3月中旬以降の株価上昇、A4月27日衆議院山口2区補欠選挙での自民敗北、民主勝利、B日銀人事、道路、後期高齢者医療制度などの政治諸問題、である。


内外の株式市場では昨年後半以降、大幅な株価下落が生じた。米国のサブプライムローン問題が拡大して、経済、金融の混乱が広がり、グローバルな連鎖的株価下落が生じた。問題の発端は2006年後半以降の米国の住宅価格下落だった。住宅価格下落に連動してサブプライムローンの焦げ付きが拡大し、証券化されたサブプライムローンを大量保有していた主要国の大手金融機関に巨額損失が発生した。


住宅市場悪化に伴う経済悪化と金融市場の信用収縮懸念が株価下落の背景になった。NYダウは昨年10月9日の14,164ドルから本年3月10日の11,740ドルまで、2424ドル、17.1%下落した。日経平均株価は昨年7月9日の18,261円から本年3月17日の11,787円まで6474円、35.5%下落した。このほかの市場ではドイツDAX指数が23.7%、英国FT指数が19.6%、香港ハンセン指数が32.8%、インドSENSEX指数が29.1%下落した。これらの株価指数の安値は3月中旬に記録されている。


中国上海総合株価指数は昨年10月16日の6092ポイントから本年4月18日の3094ポイントまで、2998ポイント、49.2%の急落を示した。中国市場の株価調整は、主要国の株価指数が3月中旬に底値をつけたこととは独立に進行していると考えられる。昨年10月までの株価上昇が急激だったが、中国金融政策当局の金融引き締め政策強化を背景にして、その反動が一気に表面化しているのだと考えられる。


『金利・為替・株価特報』では、本年2月7日号の投資戦略欄に「節分天井彼岸底」の可能性を指摘し、3月8日号のタイトルを「日米株価『節分天井彼岸底』の可能性」とした。3月22日号には「日米株価が反発局面を迎えている可能性が高い」、「金利低下、円高、経済減速のなかでメリットを受けるセクターに注目するべきだろう。大幅に価格調整の進行した不動産、銀行、証券、その他金融などのセクターが注目される」と記述した。


直近号である5月8日号では、タイトルを「民意不在の国内政治・株価上昇一服か」とし、「日本の株価が上昇トレンドに転換した可能性は高いが、3月中旬から2ヵ月弱で2割の株価上昇が生じたので、市場のリズムとしては小休止が入ってもおかしくはない」と記述した。


私が3月中旬以降の株価反発を予想したのは、3月中旬に表面化した米国大手証券ベア・スターンズ社の経営不安表面化に対して、FRBが実質的な公的資金投入策と言える290億ドルの融資を実行したからである。金融市場が最も警戒する事態は大手金融機関が破たんして金融システムの機能不全リスクが表面化することである。このリスクが排除されるなら、株式市場の崩落は回避される。


住宅価格下落が、経済悪化−不良債権増加−金融システム不安の連鎖的な悪循環を引き起こす。この悪循環を遮断する施策が政策当局に求められる。必要な政策対応は@マクロ経済政策を活用して経済悪化を緩和すること、A不良債権の早期開示と早期処理を促進すること、B金融システム不安を排除するための公的資金投入を含む政策対応を明示すること、の3つである。


今回の米国の金融危機に際して観察されたのは、@FRBによる大幅利下げ実施とブッシュ政権による1680億ドルの財政政策発動の迅速な決定、AFAS157などの会計規則を活用した損失の早期決算計上と民間金融機関の迅速な資本増強への対応、BJPモルガン・チェースによるベア・スターンズ社買収に際してのFRBによる実質的な公的資金投入策実施だった。


米国金融危機が最悪期を脱したと断定することはできないが、グリーンスパンFRB前議長が第2次大戦後最悪の金融危機と表現している不動産金融不況に対して、米国が極めて巧みに対応していることは確かである。株価下落率は2割にも達していない。半年の期間での対応は驚くべき迅速さを示している。


1990年以降の日本の不動産金融不況においては、@当初からマクロ経済政策の対応が遅れたことに加えて、1997年に橋本政権が大増税を実施し、2001年以降は小泉政権が超緊縮の財政政策運営を進め、金融政策においてもバブル崩壊後に急激な金融引き締めを実施し、2000年にはゼロ金利政策を解除するなど、マクロ経済政策が事態悪化を促進した、A不良債権処理は「隠ぺい、先送り、場当たり」の対応が最後まで続いた、B金融危機を招いてしまったのちに、最終的にりそな銀行への対応で公的資金が投入されたが、責任ある当事者の責任を問わない「自己責任原則」放棄の致命的失敗を演じてしまった、ことを指摘することができる。


日本の不動産金融不況が最悪期を通過するのには13年半の時間を要し、株価下落率は80.5%に達した。米国は今回の金融危機に際して、日本の失敗事例などを十分に踏まえ、最適に近い対応を示している。私が当初から念頭に入れていたことは、こうした意味での米国政策当局ならびに民間企業の適応力、柔軟性の高さだった。


FRBの積極的な金融緩和政策は金融市場安定化に大きな効果を発揮しているが、他方において市場のインフレ懸念を増加させる副作用を伴っている。原油価格は指標となるWTI先物価格が1バレル=120ドルに接近しており、5月20日に発表された4月米国卸売物価指数のコア指数が前月比0.4%の大幅上昇を示したことで、再びインフレ警戒モードが表面化してきた。


日経平均株価は3月17日の11,787円から5月15日の14,251円まで2464円、20.9%の急騰を示したため、市場のリズムとしても小幅株価調整が生じておかしくない状況にある。NYダウはチャート上の節目である12,700ドルを上方に突破したのち、12,700ドルから13,000ドルのレンジ内でのもみ合いを示している。目先は12,700ドル水準を大きく割り込まないかどうかがチェックポイントになる。グローバルに株式市場は本年3月を境にして、トレンドを転換した可能性が高まっているが、目先の調整局面に目を凝らす必要が生じている。


4月27日に衆議院山口2区で行われた補欠選挙では、民主党の平岡秀夫氏が自民党の山本繁太郎氏に2万2千票の大差をつけて勝利した。福田政権はガソリン税の暫定税率復活方針を明示して補選に臨む一方、民主党はガソリン税率・道路特定財源問題に加え、後期高齢者医療制度、年金記録問題などを争点に掲げて補選を戦った。自民、民主両党が総力をあげて戦った福田政権発足後初めての国政選挙だった。


昨年7月の参議院選挙では民主党が大勝して、参議院第1党の地位を確保し、野党が参議院の過半数を制した。衆議院では与党が過半数を確保し、参議院では野党が過半数を確保する「ねじれ現象」がこの時点から始まった。衆参の議席状況が逆転しているために、法律成立が困難になっている。福田首相は日銀総裁人事などで国会決議が混乱していることを野党の責任と主張しているが、見当違いも甚だしい。


小沢一郎民主党代表が指摘したように、福田首相は参議院で与党が少数であることの意味を正確に理解していないと考えられる。参議院の議席配分は有権者の審判を体現しているのであり、与党の意向通りに法律や人事などを決定できない状況を生み出したのは有権者である。主権者である有権者の意思を尊重するならば、参議院の意思表示は十分に尊重されなければならない。


昨年7月の参議院選挙、4月28日の衆院補選の直近2回の国政選挙で有権者は、安倍政権、福田政権にNOの意思を明示した。このなかで、2005年9月の郵政民営化選挙の結果もたらされた衆議院における3分の2以上の与党多数を用いて、参議院が否決した法案を衆議院で繰り返し再可決することは民意の軽視と言わざるを得ない。「権力の濫用」とはこのような行動を指して使われるべき用語である。


5月1日のガソリン税率再引き上げ後の世論調査では福田内閣の支持率が一段と急落して一部の調査では20%を割り込む一方、不支持率は60-70%の高率に達した。また、民主党の支持率が自民党を上回り、次期総選挙後の政権について民主党中心の政権を求める意見が多数を占めた。日本の真の改革は政権交代実現からスタートする。官僚利権と表裏一体をなしている自民党中心の政権が崩壊しなければ、官僚利権を根絶する国民本位の政治状況は生まれない。次期総選挙で政権交代が実現するかどうかが日本の命運を分けると言って過言でない。


日銀人事問題では民主党が財務省からの天下り人事案を最後まで拒絶し、画期的な決定が下された。これまでにも記述してきたが、日本の政治行政システムの基本構造は財務省を中核とする「官僚主権構造」である。日本の最大の構造問題は、@官僚機構が意思決定の実権を握っている、と同時に、A官僚機構が国民の幸福を追求せずに、自己の利益増大を追求していること、B政治がこの現状を「改革」しようとせずに「温存」していることにある。


日銀人事で野党が財務省からの天下り人事案を拒絶したことは、新しい日本の政治行政システムを構築するうえで非常に重要な第一歩になった。民主党が小沢代表を中心とする結束をなんとか維持したことも重要である。政府与党は次期総選挙での最大の脅威が選挙指揮官としての小沢一郎民主党代表の存在にあると判断していると考えられる。マス・メディアを総動員し、さらに民主党内部にまで手を入れた小沢一郎氏への攻撃は、次期総選挙が実施される前までに小沢氏の影響力を排除しようとの政府与党の強い危機意識の表れだと考えられる。


民主党は、@弱者の適正な保護、A官僚利権の根絶、B独立自尊外交、を基本政策方針として明示すべきだと考える。国民は「小さな政府」に賛成するが、「小さな政府」に(イ)官僚利権を根絶する「小さな政府」、と(ロ)弱者を切り捨てる「小さな政府」の二つあることに十分な注意が必要だ。


小泉政権が主張した「小さな政府」は(ロ)弱者を切り捨てる「小さな政府」だった。小泉政権は官僚利権を死守した。とりわけ官僚機構の中核に位置する財務省の利権を小泉元首相は徹底擁護した。現在問題になっている「一般財源化」が財務省利権の拡大を意味することにも注意が必要だ。「道路特定財源」から「一般財源」への移行は、「道路族」から「財務族」への権力移転=所得移転を意味する。


暫定税率の廃止は「国家権力から国民への所得移転」をもたらすが、特定財源から一般財源への転換は「道路族から財務族への所得移転」の意味しか持たない。一般財源化を過大評価している議員はこの意味で「財務族」議員と判断してよいだろう。


「後期高齢者医療制度」は、私が当初より反対し続けた「障害者自立支援法」と同様に「弱者切り捨て」の象徴的施策である。こうした「弱者切り捨て」の方針を強力に推進したのが小泉政権であり、財務省である。医療保険制度は医療を必要とする人と医療を必要としない人が同時に加入していなければ成り立たない。


多くの高齢者は長期間、医療を受けずに保険料を払いつづけてきた人である。高齢になり医療を必要とする段階に至って、過去に払った保険料を回収できるのだ。高齢になった時点で、従来の保険制度から切り離されたのでは、詐欺に遭ったと考えても当然だ。高齢者のみを切り離す後期高齢者医療制度の構造そのものに根本的な矛盾がある。


後期高齢者医療にかかる費用の1割を高齢者が負担することになると、高齢者の負担金額は今後急増する。民主党の長妻明議員が繰り返し訴えているように、2015年までの高齢者の保険料負担増加率は非高齢者の負担増加率の約2倍と見込まれている。もとより保険料負担能力の低い後期高齢者の負担金額の激増が、後期高齢者に対する医療費削減圧力を強めることは間違いない。「姥捨て山制度」と呼ばれる合理的な根拠が存在する。「後期高齢者」の呼称も制度提案者の「想像力の欠如」を鮮明に示しているが、根本的矛盾をかかえる「後期高齢者医療制度」は野党提出の法案に基づいて廃止することが適正だ。


5月18日のNHK「日曜討論」で、自民党の伊吹文明幹事長は消費税増税を含む税制抜本改革の論議が必要だと強調した。これに対して民主党の鳩山由紀夫幹事長は、将来的に消費税増税は避けて通れない課題だが、国民に負担増加を求める前に、天下り利権などの官僚利権を排除することが先決だと述べた。


鳩山幹事長の指摘は最重要の論点である。年齢別人口構成の急激な高齢化が進展するなかで、年金、医療、介護の社会保障制度の重大な設計ミスの矛盾がますます顕在化する。国民負担の増加を含めて抜本的な制度再構築が必要だ。しかし、その際に最も重要なことは国民に負担増加を求める前に、官僚利権を根絶することだ。小泉政権以降示され続けている財務省の政策路線は、障害者、高齢者、非正規雇用者、母子世帯などの社会的、経済的弱者を冷酷に切り捨てる一方で、官僚利権を温存するものである。


社会保障制度は「国民の国民による国民のための制度」である。制度を維持するために必要であるなら、賢明な国民は負担に積極的に応じるはずだ。多くの国民が納得できないのは、官僚利権を温存する一方で、真に制度を必要とする人々を冷酷に切り捨てる政策対応なのである。民主党はこの点を丁寧に国民に説明するべきである。次期総選挙では共産党を含む野党が選挙協力を拡大して、政権交代実現に向けて総力を結集する必要がある。政権交代実現により日本の未来が開ける。野党各勢力は大きな目標に向けて力を終結すべきだ。


 

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