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「独立自尊外交」について(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 6 月 26 日 14:36:02: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_836a.html

「独立自尊外交」について


外交政策についての私の立ち位置についての疑問を「気まぐれな日々」のkojitaken氏が提示されているので、拙著『知られざる真実−勾留地にて−』第三章「不撓不屈」に「望ましい政治のあり方について7つの提案」を記述し、その第4として「外交政策の見直し」を、同章第6節「平和国家の追求」に記述したので、以下に引用する。


 
私は元来、経済金融市場に関する研究を本職としてきた。現実の金融市場の分析を通じて、金利・為替・株価の変動メカニズムに関する研究を重ねて、ひとつの分析体系を構築した。1990年代以降、研究の重心を経済政策に移行したが、そのなかでの重要な着眼点のひとつが「政治経済学的」分析視点だった。

  
経済政策を政治経済学的な視点から分析することを重ねるなかで、当然の帰結として、政治のあり方に関する考察を重ねるようになった。私なりの思想、哲学を基に政治と政策について意見を表明するようにもなった。

  

  
政治経済学的分析を記述した最初の論考は『中央公論』1991年11月号所収の「バブル崩壊後日本経済の行方」である。私がつけた当初のタイトルは「漂流する日本経済に明日はあるか」だった。この論文で私は、バブル生成・崩壊のメカニズムを明らかにするとともに、日本のバブル生成・崩壊が米国の経済政策と不可分に結びついており、「戦略的経済外交」の視点を明確に保持しなければ、一国経済、国民生活を守ることはできないとの提言を示した。

  

  
経済政策に関連して、「対米隷属外交」からの脱却、「独立自尊外交」の重要性を唱えてきたが、過去の戦争に関する歴史認識、アジア外交の基本スタンスなどに関しては、私の専門領域の外の問題として言及せずにきた。

  

  
しかし、上記『知られざる真実−勾留地にて−』では、私なりの政治論を提示する側面を持って執筆したこともあり、この問題についてのスタンスを明確に示す必要があると考え、記述した。私の外交問題に対する基本スタンスは、私の著作のなかでは、基本的にこの著作にしか記述していない。

  

  
私は私の主張に対する批判を封じ込める考えを一切持っていない。あらゆる問題について、多数の見解、意見があることは当然であり、自由主義社会の美点のひとつは、自由な言論活動が容認されることにあると思う。建設的な論議は非常に大切だと考えている。

  
ただ、それぞれの人がそれぞれの思想、哲学を持っており、それらが異なることは十分にありうる。建設的な論議を深めて、それぞれの相違をしっかりと確認することも大切だと考えている。

  
私の言説に対する批判を私は一切排除しないが、批判する際には、私のこれまでの著作を踏まえてほしいと感じる。歴史認識、外交政策、経済政策などについて、マスメディアなどが勝手に創り出してきた事実と異なる私に対するイメージに基づいて批判されても、私としてはいわれなき事実誤認だとしか反論できない。

  

  
歴史認識、外交政策についての私の主張は、私を支援してきてくださっている方々の主張とは異なる部分も多いと思う。ブログにリンクを張っていくつかのサイトを紹介させていただいているが、各サイト主宰者の思想、哲学と私の思想・哲学が同一であることを意味していない。私が参考にさせていただいている言説を掲載されているサイト、私を支援してくださっているサイトを紹介させていただいている。

  

  
拙著『知られざる真実−勾留地にて−』では、プロローグに「想像力」のタイトルを付して、映画監督の山田洋二氏の言葉、

   
「一言で言えば想像力。想像することは、つ  まり思いやること。

いまの時代、注意深く相手を観察する能力がとても欠けていると思いま

す。」

  
を紹介し、執筆の基本理念を記述した。安倍政権に対する論評も記している。機会があれば紹介させていただきたいが、私の言説について論評してくださるのであれば、ぜひその前に拙著に目を通していただきたいと思う。

  

以下は拙著第三章第2節「人類の歴史」からの抜粋(175−176ページ)、および第6節「平和国家の追求」からの抜粋(186−189ページ)である。

  

「人類の歴史を振り返ると美しい世界は広がっていない。人類は支配と被支配、戦争と殺戮(さつりく)を繰り返す歴史を負ってきた。動物の世界の弱肉強食は自然の摂理に従って起こる。しかし、人間の支配、被支配、戦争や殺戮は自然の摂理によって生じるものでない。

  
現代の民主主義国家では人権尊重が重視され、理不尽、不条理の程度は低められていている。米国のネオコン(新保守主義派)と呼ばれる人々は、民主的な国家体制こそ人類が到達した最も優れた価値観と制度で、この価値観と制度を世界中に広げてゆくことが「正義」だと唱える。

  
だが歴史を振り返ると、米国自身が大西洋を渡った欧州人による侵略によって建国された事実を忘れられない。欧州人は全世界に進出し、原住民を支配して抑圧した歴史を負っている。アフリカの人々は奴隷として人身売買の対象にされ、米国に強制連行され、苛酷な労働と生活を強いられた。米国で奴隷解放宣言が出されたのは南北戦争下の1863年、いまからわずか150年前のことだ。

  
米国がイラクやイランに過剰な関心を注いでいる裏側に、米国のエネルギー戦略が存在している。大規模な戦争が繰り返される背後に、巨大な軍事産業の利害が関わっている。

  
米国はイラクが大量破壊兵器を保持しているとして、イラクへの武力行使に踏み切った。米軍の犠牲者が3000人を突破したがイラク保健省は2003年3月の開戦から2006年11月までに15万人のイラク人が死亡したと公表している

  
米国には歴然とした人種差別や人種偏見が残っている。WASPとよばれるプロテスタントのアングロサクソン人が米国を支配しており、少数だがユダヤ人が金融を中心とする重要産業に強い影響力を有している。自由で開かれた国だが、「格差」は限りなく大きく社会の支配階層は固定化されている。

  
2005年には所得上位2割の国民が所得全体の50.4%を占めて、1967年以降での最高値を記録した。所得上位4000人が年間所得10億ドル(約1200億円)超のビリオネアになった(フォーブス誌調べ)。米国は決して理想の楽園でない。小泉政権は米国流のシステムをそのまま日本に持ち込もうとしたと言ってもよい。」

  
(第三章第2節「人類の歴史」から175−176ページ抜粋)

  

  
「第四は外交の見直しだ。西部邁(にしべすすむ)氏は米国に追従する日本の外交姿勢をこう表現する。「9.11以後、世界はユニ・ポーラル(一極集中)に行く。アメリカのユニラテラリズム(単独主義)はもう不可避だ。アメリカのヘゲモニー(覇権)が世界を覆うのだから、好むと好まざるとにかかわらず、この下に入らなければ安全と共存は保たれないと言うイメージ」。(「表現者」前出)

  
しかしことはそう単純に運ばない。西部氏は、ロシア、中国が「そうは問屋が卸してくれるわけがないじゃないか」と対応していると指摘する。米国内でさえ、ブッシュ政権の「ネオコン」路線は中間選挙で拒絶された。イラク攻撃を積極支持した日本政府の判断の正当性も問い質(ただ)される。

  
米国外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長はフォーリン・アフェアーズ誌2006年11・12月号に『新しい中東』と題する論文を寄稿し、「中東近代史における「米国の時代」は終わった」と記している。英国フィナンシャル・タイムズ紙も06年11月23日にジェイコブ・ワイズバーグ氏による「米国政治の保守時代は中間選挙で終わった」との署名記事を掲載した。「アメリカは強い国だから、ひたすらに隷属すれば良い」とする「植民地メンタリティー」から脱却すべきだ。朝日川柳に「メンフィスで国家の品格また落とし」と風刺されていたが、日本の国家としての尊厳を大切にするべきだ。

  
オランダのジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレンは「アメリカという巨大な鷲(わし)の翼の下に日本が入って、今やほとんど消滅寸前だ、中にいる日本人にはそれがなかなかわからないけれど」と指摘した。米国と友好関係を維持しつつも、国家としての尊厳を大切に守り、日本の考えを世界に発信すべきだ。

  
日本の核武装論が論議されている。私は反対だ。日本は世界で唯一の被爆国として核廃絶を訴え続ける責務を負っていると思う。核の使用は人類の自殺行為だ。

  
核兵器では「第二撃能力」が問題とされた。核攻撃を受けた時に反撃する核攻撃能力を持つことによって、核攻撃を抑止できるとの考え方である。これを踏まえると、そもそも核拡散防止条約(NPT)は根本的な不平等性を持っている。米国、ロシア、中国、フランスの核保有を容認し、これ以外の国に核兵器の保有を認めないとする条約である。

  
ところが、インド、パキスタンの核保有によりこの条約は事実上崩壊した。米国はインドと原子力協力の条約を批准した。米国はイスラエルの核保有も容認している。NPTは多くの矛盾を抱えている。日本は包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を米国に求め、核兵器廃絶へ努力を注ぐべきだと思う。

  
核兵器の生みの親とも言えるアインシュタイン博士は原子爆弾が日本に落とされたことに悔悟の念を持ち、1955年4月に、核兵器廃絶と戦争廃止を訴える「ラッセル・アインシュタイン宣言」に署名した。この署名に湯川秀樹氏など9名の学者が加わり、「バグウォッシュ会議」という原爆反対の物理学者の運動が生まれた。日本はこの遺志を引き継ぐべきだ。

  
国内経済が低迷し、国民の不満が蓄積されるとき、安価な国家統合の手段として歴史やナショナリズムが動員され易い。いまの日本にもこの傾向が強く感じられる。

  
しかし、戦争ほど理不尽なものは存在しない。朝日新聞の連載「歴史と向き合う」のなかで、元特攻要員の江名武彦氏(83)が述べた。1945年4月に鹿児島県串良(くしら)基地から特攻出撃した。出撃は晴れの日に決行され、曇れば延期される。「眠れない布団のなかで晴れるなと祈り、明け方空を仰いだ」。江名氏の飛行機はエンジン不調で黒島沖に着氷して、江名氏は敗戦後に帰還した。

  
以前『ビルマの竪琴(たてごと)』という映画を観た。1956年公開の市川崑(こん)監督作品だ。主人公の日本兵は友を戦争で亡くし、遺骨を抱え日本への帰還を頑なに拒絶した。「埴生(はにゅう)の宿」の美しい音楽を聞きながら、涙が溢(あふ)れるのを止められなかった。悲惨な戦争を回避することにあらゆる努力を尽くすのが日本の進むべき道だと思う。小菅信子(こすげのぶこ)氏の著書『戦後和解─日本は〈過去〉から解き放たれるのか』(中公新書)が第27回石橋湛山(たんざん)賞を受賞した。

  
著書は歴史を忘却せずに和解を実現することの重要性を説いた。小菅氏は第二次世界大戦後のドイツと日本の戦後平和構築の方法をこう述べる。「敗戦国の国民を、戦争指導者や加害者と、彼らに騙(だま)されて戦争協力した一般国民とに分けて、その一般国民と、戦勝国の国民や被害者・戦争犠牲者との間の関係を修復して、最終的に和解へと導いていこうとする方法」であった。

  
東京裁判は、戦勝国が「事後法」を用いて一方的に裁いたものだったから、多くの問題点が存在する。しかし私たちは歴史を見つめるとともに歴史を超克して和解の上に立つ世界平和を目指して進んでゆかねばならない。

  
小菅氏は受賞講演で石橋湛山元首相の言葉を紹介した。「ナショナリズムをどういうふうにしてプラスの方向に向けるかが重要ですね。これは結局人間自身の問題です。つまり体制とか組織とかいうけれど、つきつめていえば人間の問題だ。人間が人間自身と取り組む、これが一番重要ではないですか」(『湛山座談』)。五百旗頭真(いおきべまこと)防衛大校長が指摘するように、中国と隣接する日本は、日米中連携のなかでアジア太平洋地域の真の平和と友好を育む努力を注ぐべきだ。

  
安倍首相は2006年9月29日の所信表明で「日本人が本来持っていた、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを、純粋に保って、忘れずにいてほしい」というアインシュタイン博士の言葉を引用した。

  
博士は1922年に来日した。日本とドイツは第一次大戦に勝利したばかりで友好関係を持っていた。来日した博士は次の言葉も残している。「日本にきて特に気になるのは、いたるところに軍人を見かけ、平和を愛し平和を祈る神社にも武器や鎧が飾られていることで、それは、全人類が生きていくのに不必要なことと思います」と語り、大阪での歓迎会場が日独の国旗に埋め尽くされているのを見て、「日独親善の気持ちには感謝しますが、軍国主義のドイツに住みたくないと思っている私には、余りいい気持ちはしませんでした」と述べたという(中本静暁著『関門・福岡のアインシュタイン』新日本教育図書)。私たちは可燃性の高いナショナリズムが高揚することを常に警戒しなければならない。

  
(第三章第6節「平和国家の追求」から186−189ページ抜粋)

  

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2008年6月26日 (木) 政治
 

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