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「原油市場参入阻止行動」としての「原油増産」-産油国の思惑(経済コラムマガジン)
http://www.asyura2.com/08/senkyo51/msg/857.html
投稿者 JAXVN 日時 2008 年 7 月 14 日 05:44:25: fSuEJ1ZfVg3Og
 

「経済コラムマガジン(08/7/14(535号))

・市場参入阻止行動

・原油価格のディスカウント
73年の第一次オイルショックで石油価格が高騰している最中、ロンドン・エコノミスト誌は「数年のうちに産油国は物乞いに転落するだろう」と予測した。オイルマネーで沸き返っている産油国の経済が、わずか数年で窮地に陥ると大胆な予想を行ったのである。もちろん当時、これを本気で信じる者はほとんどいなかった。

ところがロンドン・エコノミスト誌のこの大胆予想がほぼ適中したのである。消費国の経済が急速に悪化し、石油の需要の伸びが鈍った。ちなみにこの時に初めて先進国のサミット会議が開催され、今日まで続いている。

一方、原油価格の高騰を受け油田の開発が進んだ。この結果、需給関係が緩み、エコノミスト誌の予想通り原油価格は大きく下落したのである。石油価格は、79年の第二次オイルショックで再び高騰するが、その後は長期低迷することになる。特に98年には一時的に10ドルを割る事態となった。筆者は、今回の原油高騰劇の後は、これまでと同様に石油価格は低迷すると思っている。

ニューヨークの原油先物価格(WTI)は11日に147ドルと最高値を更新した。一見、原油価格の高騰は収まらないという印象を受ける。しかし価格上昇の理由はいつもの中東の地政学的リスクの高まりなどである。今回はイランの中長距離ミサイルの発射実験などが材料にされた。中東での紛争の可能性はゼロではないが、石油供給に影響するほどの事件が起る可能性は低い。しかしこのような説得力が乏しい理由で投機筋は先物を買上げているのである。

今日、供給不足が全くないのに原油価格が上昇するという奇妙な現象が起っている。明らかに投機の要素が大きい。しかし米国と英国の政府だけは投機マネーの働きを認めたがらない。彼等は先物市場の価格は将来の需給関係を反映していると強弁している。日本のエコノミストの中にも、テレビに登場しこのようなばかげた見解に賛同する者がいる。しかし筆者は、むしろ将来こそ需給関係が緩むと見ている。

日本が中東から輸入する原油の価格は、ドバイ原油の価格に準拠して決められる。ドバイ原油や北海原油の価格は、原油先物価格(WTI)に連動している。したがってニューヨークの原油先物価格(WTI)が上昇するにつれ、これまで日本の輸入する原油の価格は上がってきた。ところが先月オマーンから輸入する原油がディスカウントされたのである。

WTI価格が実態とあまりにも掛け離れた結果、このような事が起るのである。石油価格が高すぎて、漁にも出られないという異常な事が起っているのであるから当然とも言える。そして供給が不足している訳ではないから、原油価格のディスカウントは広がって行く可能性がある。もしディスカウントが一般化すれば、ニューヨークの原油先物価格(WTI)の権威は一気に失墜する。これも原油価格暴落の一つのシナリオである。

ただ原油価格暴落には副作用が伴う。原油価格の上昇は消費国に多大な迷惑となった。しかし原油価格の暴落の方も違った形で問題を生じさせる。原油先物価格が暴落することによって利益を得る者がいる一方で、多大の損失を被る者もいる。損失を被るのが、サブプライム問題で傷付いている金融機関ということがあり得る。もしそうなればまた金融不安が増す事態になる。

サブプイム問題も住宅高騰というバブルの崩壊で起ったのである。原油高騰も一つバブルである。もしこれが崩壊すれば、少なからず経済(特に金融)に影響を与えることをサブプイム問題で学んだはずである。それもあるのかFRBは投資銀行が破綻した場合の受け皿を準備している。

・手遅れの増産決定

サウジアラビアのような潤沢な原油埋蔵量を持つ国は、長期に渡って最大の利益を得ようと考える。このような国にとって今回の投機による原油高騰はかえって迷惑である。原油高騰が、その後の原油価格の低迷に繋がる。このことは2回のオイルショックで経験している。

サウジアラビアは、先月6月22日の産油国と消費国の会議をリードした。サウジアラビアは本気で増産(将来的には50%、500万bpd)を決断している。しかし市場ではこのことがまだ理解されていないのである。これから開発するのは重質油の油田である。このような油田の開発に合わせ、サウジアラビアは日本企業(日揮)に原油の改質設備を2,000億円で発注している。

4月頃までは、むしろサウジアラビアはのんびりとかまえていた。消費国の増産要請に対して「今の原油価格高騰は投機マネーによるもの」と断っていた。おそらく100ドル程度までは許容範囲の上限と思っていたのであろう。しかし100ドルを越えても下落する様子を見せないので慌て出したのである。

世界的にガソリン留分の多い軽質油の開発は進んでいるが、重質油の油田は未開発のものが多い。サウジアラビアには重質油油田の開発案件がいくつもある。サウジアラビアの今回の動きは唐突に見えるが、この開発構想はかなり前から練られ、準備されてきたものと思われる。筆者は、サウジアラビアの今回の動きはオイルサンドなどの開発を睨んだものと見ている。たしかに同じ重質油の競争となれば、サウジアラビアの方が優位に立てる。

世の中では、中国など新興国の需要増大を当然と見なし、将来は石油の供給不足を前提にした議論が当り前になっている。したがって今後も原油価格は下がらないという考えが主流になっている。しかし筆者はこれに懐疑的である。

経済理論上、完全競争下においては物の価格は需要と供給だけで決まることになっている。しかし現実の経済では、完全競争の市場はほとんど存在しないと言える(比較的、完全競争に近いという市場はある)。むしろ寡占下の市場が一般的であると筆者は考える。

寡占下における価格決定については99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」で取上げたことがある。寡占下の価格決定理論では、価格が膠着的になるというポール・スウィージーの「屈折需要曲線」が有名である。ただどの水準で価格が膠着的になるかについては色々な意見がある。それに言及したのがベインやパオロ・シロスラビーニの参入阻止価格である。

筆者は、サウジアラビアの今回の増産決定は、一種の参入阻止行動ではないかと見ている。5年前まで、低価格の石油に対抗できる代替エネルギーはなかった(有力であった原子力は反原発運動で足踏み状態になった)。しかしその後の価格高騰によって、石油に対抗できる代替エネルギーの登場がかなり早まったと筆者は考える。

具体的には、本誌が何回か取上げたオイルサンドもその一つである。また原子力の復活も現実的になってきており、これは産油国にとって驚異になる。さらに直近において、燃料電池で白金に替わるカーボンの触媒が日清紡で開発された。これは燃料電池の大幅なコストダウンを可能にする。本誌は取上げたことがないが、石炭の液化も競争相手になり得る。

サウジアラビアなどの産油国にとって、原油価格が高いことは望ましいことは当り前である。しかし代替エネルギーの開発が促進されることは避けたいところである。したがって本来なら代替エネルギーの参入を阻止できるギリギリの価格を上限にして、この価格水準を長期間維持するのが理想であったろう。筆者の感想ではこれは50ドル程度である。しかし今日の価格はこれをはるかに越えている。筆者はサウジアラビアの増産決定を手遅れと見ている。

来週は、米国での金融不安の再燃をもう一度取上げる。」

http://www.adpweb.com/eco/eco535.html  

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