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WTO交渉の決裂と日本の沈黙(天木直人のブログ)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 8 月 01 日 12:16:04: twUjz/PjYItws
 

http://www.amakiblog.com/archives/2008/08/01/#001044

2008年08月01日
WTO交渉の決裂と日本の沈黙


 たとえば、悪事をあばいて批判してみたり、平和が一番と叫んだりする事は簡単である。

 私がこのブログで毎日行なっている事だ。

 あるいはその逆に、政府側に立って政策の正当性を主張したり、軍備なくしてどうして国が守れるのか、と居丈高になるのも簡単だ。よく見かける保守、反動ブログが好例だ。

 しかし、本当に難しい事は、白黒つけられない問題にどう答えを出すか、そしてその答えの正統性を、自信をもって不特定多数の人々にどう説得できるか、という事である。

 その最近の好例がWTO交渉である。

 資源を持たない貿易立国の日本は自由貿易の最大の受益者である。

 そしてその通り、日本は戦後の世界自由貿易体制(GATT)の恩恵にあずかって、戦後復興と経済成長を成し遂げた。

 ところが、自由貿易体制は強者の論理である。

 世界の大多数はいわゆる開発途上国という弱者である。

 しかも、どのような国でも、つまり米国や欧州や日本といった西欧先進国でも、国内に開発途上産業、衰退産業という弱者を抱えている。

 強者の論理で、強者の利益だけでなく弱者の要求をどう満たすか。これこそが近年のWTO交渉の難しさであった。

   話は横道にそれるが、かつて私は1970年代の末にスイスのジュネーブにある国連日本政府代表部に勤務し、そこで連日行なわれる経済交渉会議に携わっていた事がある。

   当時ジュネーブの経済交渉といえば、開発途上国問題を扱うUNCTADと、先進工業国間の自由貿易を話し合うGATTの二つに大別されていた。

   UNCTADは、多数の弱者途上国と先進国が対立する労使交渉のような会議で、小田原評定だとGATTの担当者からはバカにされていた。

   それに引き換えGATTは、先進国主導の交渉だった。

   利害が激しくぶつかる変わりに最後は結論がでる。

   規則に違反する経済活動を行なえば訴訟で白黒をつけられる合理性がある。

   必然的にGATTの交渉は真剣なものになるが、先進国は、そのプライドをかけて最後は交渉をまとめる、そういう不文律があった。

   それが変わり始めたのが私がジュネーブにいた70年代末であった。

   おりから起きた開発途上国の資源ナショナリズムなどにより、国際貿易において開発途上国の意見を無視できなくなったのだ。いわゆるGATTのUNCTAD化である。

   その時のGATT担当者が、GATTも堕落したものだと嘯いていたのを今でも私は思い出す。

   それから30年、いまやGATTはWTOと名前変え、多くの開発途上国を参加国とする世界的機構になった。

   しかも開発途上国はもはやかつての開発途上国ではない。

   インド、中国、中東金融資本国、などと、成長著しい新興発展国としてサミットにまで呼ばれるように成長した。

   その一方で米国や欧州の先進国にとって、国内産業保護は、ますます重要な政治問題となりつつある。

   従来ならば先進国同士が国内産業保護について妥協すれば交渉はまとまった。 

   欧州と米国が妥協すれば、日本がはじき出されて終わりだった。

   今回の交渉もそういう結末で終わりそうだという報道もあった。

   ところが突如としてインドが米国の国内産業優先に反撥し、中国がそれを支持した。

   この両国は、もはやかつてのインドや中国ではない。世界一、二位の人口を抱え、経済、技術力の向上を果たした自信に満ちた国だ。

   今では、国の経済発展を第一に主張する事に何のためらいもない。

   国民の絶対的な支持を背景に、堂々と自国の国益を主張できる国となった。

   WTOが決裂するのは当然であった。そしてこの事はWTOの将来に暗い影を投げる。

   世界的な自由貿易体制を目指すこれまでの方向から、地域自由貿易、新しい時代のブロック経済化時代に移行する前兆である。

   そこで日本である。

   どの新聞を見ても日本の存在感のなさを嘆いている。

   しかし、それは無理もない。

   日本は世界で最も低関税率を誇る産業、技術先進国であるにもかかわらず、その一方でコメを最優先する農業保護政策国であるからだ。

   おまけに日本は、米国やインドや中国のように、「国益優先で何が悪い」と開き直る強さがない。戦略がない。

   さらにいえば日本は、低価格の自国農産物を海外で売りさばくために開発途上国にまで関税削減を求める理不尽な米国に、何も言えない国なのだ。

   7月31日の読売新聞に次のような光景が描かれていた。

 ・・・ジュネーブのホテルの一室では、農林族と農林水産省や外務省の幹部が、「ありがとう」、「ご苦労さま」と声を掛け合い、がっちりと握手した・・・

   つまり日本は、自分達が悪者にならずに交渉が決裂した事で、結果的には農業を守れてよかったのだ。

  その一方で経済産業省や日本の産業界は、「輸入拡大という自由化のメリットを逃がした」、「長い目でみれば決裂は損失が大きい」などと言う。

  要するに、日本全体としてコンセンサスがないのだ。貿易自由化と農業保護という相反する政策を、いつまでたっても調整できないのだ。

  WTO交渉決裂を報じた日の各紙はすべてこの問題を社説で取り上げた。

  そしてその社説はすべて、貿易自由化を後戻りさせるな、農政改革に取り組め、というものだ。

  建前ではその通りだ。しかしわかっていてもそれが出来なかったのがこれまでの日本であった。

  その最大の理由は政治が国益をまとめ切れなかったからだ。

  政治家が選挙の票を優先して、政策を歪めて来たからだ。

  それを一言で言えば政治にリーダーシップがなかったからだ。

  唯一リーダーシップを発揮した最近の首相は小泉元首相だと言われている。

  私もそう思う。

  しかし、小泉元首相のリーダーシップは間違ったリーダーシップであった。

  日本を破壊し、米国に売り渡した、おろかなリーダーシップであった。

  いまこそ正しいリーダーシップを持った政治家が現れなくてはならない。

  果たしてそのような指導者は出てくるのか。

  WTOの交渉決裂ろ日本の沈黙を見てつくづくそう思う。

  

 

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