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「小泉改革」の評価(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 9 月 27 日 09:00:27: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-1746.html

2008年9月27日 (土)
「小泉改革」の評価


小泉元首相が政界を引退することを表明した。麻生政権の発足に合わせての政界引退表明は、小泉氏の影響力がもはや自民党内でも著しく低下したことの表れでもある。

  

夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡  


  (松尾芭蕉 『奥の細道』)


  國破山河在


  城春草木深


  國破れて山河在り


  城春にして草木深し


  (杜甫 『春望』)


 小泉元首相は国民を煽動(せんどう)し、惹(ひ)きつける弁論術と、多くの国民を魅了する風貌(ふうぼう)を有していたのだと思う。


 竹中平蔵氏が関与した郵政民営化推進キャンペーンでは、政府が国民を「IQ」で分類し、「IQの低い層」にターゲットを絞ってPR戦略を実行したことが国会で暴露された。「IQの低い層」は「B層」と命名されていた。


「B層」とは「主婦層&子供」や「シルバー層」を中心とする国民で、「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣官僚を支持する層」と説明されていた。


国民に政策を丁寧に説明して、納得してもらい、応援してもらうのではなく、支持を仰ぐ有権者を「上からの目線」で「B層」と蔑視(べっし)したうえで、「ムード」や「イメージ」で誘導、洗脳して、高い「政権支持率」を創出し、提案した政策を実行した。これが「小泉改革」の基本手法だった。


「小泉改革」によって、日本には荒廃した寒々しい風景が広がった。「美しい田園風景」は破壊し尽くされたと言ってもよい。相互に信頼し、尊重し合って、「ともに生きる」温かな空気が消滅した。多くの国民が不幸な生活を強いられるようになった。


「高齢期=人生の秋」は、「黄金色(こがねいろ)」に輝く、人生の収穫期だ。永年の苦労を偲(しの)び、喜びに満ち溢れた時間を味わう、最も大切な時期である。日本の発展に尽力した高齢者が、人間としての尊厳を傷つけられ、肩身の狭い思いをして生きなければならない空気が醸成(じょうせい)された。


小泉元首相が、日本社会を荒涼とした風景に変えた主体であるが、小泉元首相の暴走を制止せず、逆に助長したのがメディアだった。「世論」が政治を動かす「テレポリティクス」の時代は、メディアが「第一の権力」とも呼ばれる。「小泉政治」は、政治が「メディア」を支配し、「メディア」が情報、世論を操作して、独裁的な政治運営を支えたことによって、初めて成り立った。


小泉元首相の政界引退の機会に、「小泉改革」を正確に再整理し、今後の政治の方向を考える題材として活用しなければならないと思う。


私は小泉政権が発足する1年ほど前に、日本経済新聞社の杉田亮毅専務(現会長)のセッティングで、小泉氏、中川秀直氏に対して、1時間半のレクチャーをしたことがあった。小泉氏は私の説明を十分に聞こうとしなかった。私は小泉氏の主張を認識したうえで、どこに問題があるのかを詳しく説明しようとした。しかし、目的は十分に達成されなかった。


  


「小泉改革」を私は次の三つで理解することができると考える。


第一は、財政収支改善を重視し、「緊縮財政」を政策運営の基本に据えたことだ。


第二は、財政再建をもたらす基本手法である「歳出削減」の中心に「セーフティーネット」の廃絶を置いたことだ。


第三は、「官から民へ」の掛け声の下に、いくつかの「民営化」を強硬に実施したことだ。


メディアは「改革」の言葉だけを連呼し、多くの国民は「内容はよく考えもしないが」、「何となく「改革」とは良いものだ」といった感想を持つようになった。「B層」にターゲットを絞った「イメージ戦略」が成功したのだと言える。


私は、上記の「改革」政策は正しくないと主張してきたが、小泉政権5年半の実績からみても、この判断は間違っていないと考える。


私は中長期の視点での「財政収支改善」は達成すべき課題であると考える。私は「財政収支改善政策」に反対したことはない。問題は「不況の局面での行き過ぎた緊縮財政」が「財政収支改善」をもたらさないことにある。私は1997年度の橋本政権の大増税政策が「不動産金融不況を招いて、財政収支改善をもたらさない」と強く警告した。


2001年度、2002年度には、小泉政権の行き過ぎた緊縮財政が、橋本政権の二の舞を招くことを警告した。現実に、小泉政権は2001年度と2002年度の政策運営に大失敗した。


最大の問題は、2001年から2003年にかけての戦後最悪の不況により、多数の国民が地獄の苦しみに直面したことだ。政策運営を誤らなければ、これらの人々が地獄の苦しみに直面することを回避できたはずだ。目先の財政収支改善を追求して国民を不幸にすることは本末転倒だ。しかも、目先の財政収支改善政策が景気のスパイラル的な悪化をもたらすために、減らすはずの財政赤字までが拡大したのだ。


第二の問題は、「歳出削減」の中心に「セーフティーネット破壊」が置かれたことだ。「格差拡大=弱肉強食奨励=市場万能主義」の問題は、この政策から発生した。「障害者自立支援法」、「後期高齢者医療制度」、「生活保護圧縮」、「社会保険料率引き上げ」、「所得税増税」、「医療機関窓口負担増大」など、一般国民に対する社会保障給付が切り込まれる一方で、社会保障負担は激増した。


また、「市場原理主義」に基づく「労働行政の規制緩和」が「非正規雇用者」と「働く貧困層」の激増をもたらした。


小泉政権は、一般国民に対する「セーフティーネット」の本格的破壊に全力をあげて取り組んだが、「官僚の天下り利権」には、まったく取り組まなかった。財政収支改善のための「歳出削減」が必要であることに、国民の多数は理解を示す。しかし、「官僚利権を温存したままでのセーフティーネット破壊」は、政策の順序として間違っている。


第三の「民営化」について、小泉元首相は「民でできることは民に」のスローガンを掲げた。このスローガンは間違っていないと思う。問題は、具体的に何がターゲットとされたのかだ。「小泉改革」が対象にしたのは、「日本道路公団」、「住宅金融公庫」、「郵政三事業」だった。


この三つの「民営化」には、すべて裏があった。「裏」とは、特定の利害関係者に利益、利権をもたらす「民営化」だったということだ。かけがえのない「道路資産」が将来、特定の「資本」の所有物になる。「郵政三事業民営化」では、郵貯、簡保の350兆円の国民資金を収奪しようとする外国勢力、銀行界が存在した。さらに外国資本は郵政会社が保有する「莫大な一等地不動産」に狙いをつけている。「郵政会社」は「莫大な一等地不動産」の再開発事業を今後本格化させる。この動向から目を離せない。


「住宅金融公庫」廃止は「銀行界」の悲願だった。旨味のある「住宅ローンビジネス」は「民間銀行」が「公庫」から完全に収奪した。


「特別会計」、「特殊法人」、「独立行政法人」を廃止して、「天下り」を根絶するなら、「官から民へ」のスローガンにふさわしい「正しい政策」だ。しかし、小泉政権が実行した「三つの民営化」は、すべて「特定の勢力に対する利権提供」の政策だった。


麻生政権が「改革」路線からの決別を示していると言われるが、これまで述べた「三つの政策」のなかの、1番目の政策を転換しただけにすぎない。「セーフティーネット破壊」=「市場原理主義」=「弱肉強食奨励」=「格差拡大」の政策路線を抜本的に修正する方針は示されていない。


また、「特定の勢力に対する利権提供」を本質とする、「三つの民営化」についても、政策修正の方針は示されていない。


「小泉改革」の内容は上述の「三つの政策」で整理することができるが、小泉政権のもうひとつの重要な政策方針は「日本国民の利益ではなく、外国勢力の利益を優先した」ことだった。2001年から2003年にかけて、小泉政権は強力な「景気悪化推進政策」を実行した。このなかで、2002年9月に金融相を兼務した竹中平蔵氏は、「大銀行破たんも辞さず」の方針を明言した。


日本の資産価格が暴落したのは極めて順当だった。問題は、「大銀行破たんも辞さず」の方針が、最終局面で放棄されたことだ。小泉政権は「りそな銀行」を2兆円の公的資金投入により「救済」したのだ。小泉政権は金融行政における「自己責任原則」を完全に放棄した。


詳細を拙著『知られざる真実−勾留地にて−』に記述したので、是非一読賜りたいが、国家規模での犯罪的行為が実行された疑いが濃厚なのだ。小泉政権は「対日直接投資倍増計画」を国際公約として、外国資本による日本資産取得を全面支援した。


2002年10月から2004年3月までの1年半に、47兆円もの国費が米国勢力に提供された。47兆円の国費投入は、その後の米ドル下落により、巨額の損失を国家に与えている。「売国政策」と言わざるを得ない行動が2002年から2004年にかけて展開された。


「小泉改革の内容」、「売国政策」について述べたが、見落とせない、もうひとつの「罪」は、「権力の濫用」である。議院内閣制の下での「内閣総理大臣」は、憲法に規定された権能を最大に行使すると、「三権を掌握する独裁者」になり得る職位である。行政の許認可権限を活用すれば「メディア」を支配できる。


「反対意見」を無視する国会運営も不可能ではない。警察、検察を支配することも不可能ではなく、裁判所人事を通じて裁判所にも影響力を行使し得る。小泉元首相は内閣総理大臣の権能を文字通り「濫用」した日本で最初の総理大臣であったと思う。また、自民党総裁は本来、民主主義政党の「代表」に過ぎない。党内民主主義を重視するなら、代表は党内の多様な意見を尊重する責任を負う。


郵政民営化選挙では郵政民営化に反対する自民党議員を党から追放し、刺客を差し向けた。メディアは複数候補による代表選を実施しなかったことで、民主党の小沢一郎代表を「独裁的」と悪意に満ちた的外れの批判を展開した。そのメディアは2005年9月の郵政民営化選挙の際、小泉元首相を批判しただろうか。


小泉元首相の政界引退は、ひとつの「特異な時代」の終りを意味する。しかし、「小泉改革」によって、日本社会の風景が、殺伐とした荒れ果てた風景に変わってしまった状況は不変だ。麻生政権の誕生により、財政政策運営の手法は変化するが、それ以外の「小泉改革」の遺物は現在も温存されている。


「セーフティーネットの破壊」、「官僚利権の温存」、「利権提供の国有財産民営化」、「米国隷属の外交」、「メディアの政治支配」、「警察・司法の政治支配」の構造は現在も存続している。「政権交代」を問う「総選挙」では、これらの「仕組み」を維持するのか、廃絶して「国民の幸福を追求する政府」を樹立するのかが問われるのだと思う。

 

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