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「市場原理主義」VS「人間尊重主義」(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 12 月 17 日 20:23:43: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-53f1.html

2008年12月17日 (水)
「市場原理主義」VS「人間尊重主義」


12月16日、米国の11月住宅着工件数が発表された。新聞報道は18.9%の減少と伝えたが、間違えてはいけない。18.9%減は前月比変化率である。年率換算62.5万戸で前年同月比では47.0%の減少である。消費者物価指数は前月比1.7%下落した。


米国の住宅着工件数は2006年1月には、年率換算227.3万戸を記録した。わずか3年前の水準から約4分の1の水準に激減している。米国消費者の消費行動は住宅建設と密接に連動している。


FRBは16日のFOMCでFFレートを1.0%から0−0.25%に引き下げることを決定した。FRBはゼロ金利政策への突入を決定した。NYダウは大幅金利引き下げを好感して前日比359ドル上昇して8924ドルに達した。


自動車の販売がグローバルな規模で前年比3割も減少している。生産活動は所得を生み出す源泉である。所得が減少すれば支出も減少する。生産−所得−支出は連動する関係にあるから、現在観測されている生産活動の急激な落ち込みは、本格的な景気後退の入り口を示すものであることを警戒しなければならない。


日本でも輸出製造業を中心に景気の景色が一変した。海外経済の停滞と日本円の急激な上昇が重なった。日銀短観2008年12月調査でも製造業の景況感の悪化が鮮明になっている。


製造業は生産水準を大幅に切り下げ始めている。操業率が低下し、生産に必要なマンパワーが大幅に減少している。これが、非正規労働者を中心とする労働者の雇い止め急増の背景である。


その結果、年末を控えて仕事も住まいも失う国民が急増している。年の瀬の寒空の下に住まいと仕事を奪う所業が何のためらいもなく実行される現実に対する政治の鈍感さに驚きを禁じえない。


「市場原理主義」が跋扈(ばっこ)して、人々の生活の根幹である「労働」に関するルールが作り変えられてしまった。労働者の生存権を守るセーフティーネットが破壊されてしまった。


「市場原理主義」=「新自由主義」の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)がもたらしたのは、際限のない「格差拡大」だけでなく、国民の「生存権」そのものの危機である。経済運営の基本を「市場原理主義」から「人間尊重主義」に転換するべきである。


麻生内閣の支持率が暴落し、自民党内の反麻生勢力が新党創設への動きを示している。そのなかで観察される奇異な現象は、「市場原理主義」を日本社会に強制し、生存権を脅かす格差社会を生み出した元凶である小泉竹中一派を、メディアが批判勢力として登場させていることだ。


日経新聞、テレビ朝日がその最たるものだが、日本社会が直面している問題を国民の目線で捉える姿勢が欠落している。「小泉竹中「改革」政策」を絶賛し、日本社会の崩壊を側面支援したメディアが、「小泉竹中「改革」政策」を真摯(しんし)な姿勢で総括することは、メディア自身の自己批判に直結する。


しかし、主権者である国民の麻生内閣に対する厳しい視線は、「小泉竹中「改革」政策」に対する根本的な見直しに起因している。2005年9月の郵政民営化選挙で国民は一種の「集団ヒステリー」の状況に陥った。「郵政民営化」を「正義の政策」と錯覚してしまった。「偽装された改革」方針に目をくらまされて、間違った判断を下してしまったのだ。


小泉元首相は「痛みのある改革」と言った。「いまの痛みに耐え、より良い明日を目指す改革」と述べた。小泉政権は超緊縮経済政策を実行し、日本経済は激烈な悪化を示した。失業、倒産、経済苦自殺が戦後最悪の状況を示した。


多くの人々が「改革」政策に賛同する姿勢を示したが、「痛みのある改革」には大きな特徴があった。それは「改革」を叫ぶ人と「痛み」を受ける人が重ならないことだった。


「痛みのある改革」を正確に表現すると、「他人に痛みのある改革」だった。年間3万人を突破する自殺者数は、絶対数としてとてつもない大きな数である。しかし、1億2000万人の人口に対する比率は0.025%に過ぎない。失業、倒産、経済苦自殺が戦後最悪を記録したといえ、直接、このような苦しみに直面した国民の比率は、せいぜい1割だった。


1割の人々は「格差拡大」の潮流のなかで大きく浮上した。竹中平蔵氏が「改革の旗手」として絶賛した堀江貴文氏なども、浮上した「成功者」の中に入る。9割の国民は浮上せずに没落し、4割の国民が大きく沈んだ。しかし、「悲惨な痛み」に直面したのは、全体の1割に過ぎなかった。


「痛みに耐える」と言うものの、「改革を訴える本人の痛み」ではなかった。「ひと(他人)の痛み」なら10年でも20年でも耐えられるだろう。「いまの痛みに耐えより良い明日を目指す改革」といっても、この政策を提唱した人物自身が「痛み」とまったく無縁の存在だった。


麻生首相の連日のレストラン&バー通いが話題になったが、小泉元首相も負けていなかった。2003年4月22日の「六本木ヒルズ」のオープニング・セレモニー。拙著『知られざる真実−勾留地にて−』に記述したが、小泉元首相が祝賀挨拶した。


りそな銀行の2003年3月期決算について、朝日監査法人が本部審査会で繰延税金資産5年計上を否認した日である。朝日監査法人の担当会計士は4月24日にマンション12階から落下して死亡している。


日本経済が戦後最悪の大不況にあえいでいた局面だ。小泉元首相は六本木ヒルズの賑わいを見て、「こんなに賑わっていてどこが不況か」と発言した。クリント・イーストウッド監督作品『父親たちの星条旗』について、評論家の沢木耕太郎氏は、クリント・イースドウッド監督が伝えたかったメッセージは「戦争を美しく語る者を信用するな。彼らは決まって戦場にはいなかった者なのだから」ではなかったかと記述した。


経済は循環変動する。竹中氏などはIT革命により景気循環が消滅するとまで言い放っていたが、竹中氏が推進した「新自由主義」=「市場原理主義」が景気循環を空前の規模に拡大したとも言える。「市場原理主義」に基づく「自由放任」が金融産業の暴走を生み出すとともに、労働者のセーフティーネットが破壊された。


不況のしわ寄せは、経済の鎖のなかの最も弱い部分に押し付けられる。鎖は破壊され、国民の生存権さえ脅かされる状況に追い込まれている。「痛みに無縁の人」にはいささかの「痛み」も生じないが、「痛み」の直撃を受けた国民は「痛み」の激烈さに震撼(しんかん)する。


「小泉竹中「改革」政策」にうっかり賛同してしまった国民の多くは、自分は「痛み」と無縁の存在だと錯覚してしまっていた。しかし、世の中で何が起こるかは分からない。自分は無縁と思っていた「痛み」にいつ直面するか分からないのだ。「市場原理主義」は大多数の国民を下層に没落させるメカニズムを内包している。


私は「人の痛みの分かる改革」でなければならないと訴えてきた。「1割」は比率で言えば小さな比率だが、「絶対数」ではとてつもない「多数」である。4割もの国民がかつてない苦しみを背負わされるようになった。


政治は強い者のために存在するべきでないと思う。セーフティーネットを強固に構築し、すべての国民の生存権、生活を守ることが政治の最大の役割だと思う。


麻生政権は多数の国民が生存権を脅かされる状況に直面しているというのに、国民生活支援のために、全身全霊の努力を注いでいない。物見遊山(ものみゆさん)気分での社会科見学ばかりが目に付く。与党が政策運営をサボタージュしているから野党が臨時国会に法案を提出して会期末までの法律成立に最大限の努力を傾注している。


メディアは法律制定を全面支援して当然だ。ところがテレビ朝日番組でコメントを提供した政治評論家の有馬晴海氏は「与党と野党のアドバルーン合戦」と評した。麻生政権は法案提出を2009年に先送りし、野党は年内成立を目指している。中立公正の論評をせずに御用評論に徹する人物をコメンテーターとして採用する堕落し切ったメディアが、国民の苦しみ増大に加担している。


麻生政権は国民の生存権危機を直視せずに、この期に及んで、法人税減税、株式等の資産課税軽減、高額住宅建設優遇などの「新自由主義」経済政策を提示している。財政資金を集中投入すべき対象は、セーフティーネット構築である。「障害者自立支援法」見直しでも冷酷な姿勢は維持されたままだ。


「市場原理主義」を否定し、「人間尊重主義」を基本に据える政府の一刻も早い樹立が求められている。

 

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