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第2回 ニッポン放送乗っ取り劇のミッシング・リンクの在り処 (2005/03/25)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/529.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 00:54:36: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第1回 ライブドア、ソニー、西武鉄道報道のミッシング・リンクを読み解く (2005/03/25) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 00:44:06)

第2回 ニッポン放送乗っ取り劇のミッシング・リンクの在り処 (2005/03/25)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325nottori/

2005年3月25日

 ニッポン放送乗っ取り事件のミッシング・リンクはどこにあるか。

 事件が突如明らかになるのは、2月8日朝、東京証券取引所の通常の取引時間(8時20分から)外に、ライブドアが電子ネットワークを使って、一度に6回の取引を行い、ほとんど一瞬にして、ニッポン放送株972万株を取得したときである。

 それだけのことを一瞬に行うためには、相当長期に渡る事前準備が必要だったはずだ。実際、ライブドアが買収資金を、調達するために、800億円の転換社債(CB)を発行し、それをリーマン・ブラザーズ証券(以下、リーマン・ブラザーズ)が全額引き受けるといったことが行われているが、その過程(下絵から、条件の詰めまでと、その後の具体的事務的作業)に相当の時間がかかっているはずである。

 

コーポレート・ファイナンスのすべてを仕切る米投資銀行
……………………………………………………………………
 そもそも、堀江社長の最初の動機づけは何だったのか。そして、このようなスキームの絵図を描いたのは誰なのか。スキームの中には、ライブドアからリーマン・ブラザーズに4600万株という大量の株式が貸し出され、リーマン・ブラザーズは早速そのかなりの部分をカラ売りして、将来得るべき利益の最大化をはかるなどといった手のこんだことも行われている。

 リーマン・ブラザーズは、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなどと並んで、アメリカの金融資本の中枢に位置する投資銀行の一つである。アメリカの投資銀行というのは、大企業と超大金持(スーパー・リッチ)のファイナンス・サービスのためだけに働く、アメリカ独特の銀行で、アメリカ型資本主義そのものの体現者といっていいような組織である。これに日本の銀行のイメージを重ねると全くちがう。(大衆の預金を集めて、それを企業に貸すなどということは一切やらない。することが禁じられている)。

 投資銀行がするのは、企業が生まれ(設立)てから死ぬ(清算)までに必要とされるコーポレート・ファイナンスのすべてで、主として、企業が株式を発行する、あるいは債券を発行するなどして、金融市場から資金を調達するすべてのプロセスにかかわる、その相談にのり、事務手続きのすべてを引き受ける。会社の合併、乗っ取り(M&A、TOB、LOB)なども得意中の得意で、今回のスキームも基本的にはリーマン・ブラザーズが描き、すべてのプロセスを自ら仕切ったはずで、演出したのも、全体をプロデュースしたのもリーマン・ブラザーズだろう。

 堀江社長は確かにリーマン・ブラザーズにいわれるがままのリスクを取った上で、2月8日から舞台の上で踊りだした。あとはもっぱら、舞台の上で踊っている堀江社長に照明があたっているから、あたかも、最初の最初から堀江社長のヘゲモニーでことが進んだかに見えるが、そうではあるまい。堀江社長がニッポン放送買取の意図を持ち、800億円あれば、その夢を実現できると計算して、800億円の融資案件を独自にリーマン・ブラザーズに持ち込んだとして、それをリーマン・ブラザーズがおいそれと受けるはずがない。800億円の融資はリーマン・ブラザーズにとってもそう簡単に決断できるはずがないリスク・マネーである。

 ライブドアの堀江社長は、IT業界でそれなりに知られている人物だとしても、800億円を融資するに足る人物なのか。そして、ニッポン放送乗っ取りが成功するチャンスはどれぐらいあるのか。乗っ取ったあと、それによってどのような利益が生み出されるのか。そのあと、フジテレビの買収まで進むのか。ニッポン放送、フジテレビ側の対抗策にはどのようなものが考えられるのか。このプロジェクトが、どこか途中で失敗するとして、その場合、リーマン・ブラザーズの利益はどこでどのように確保できるのか。

 

next: すべては米投資銀行が描く「想定のうち」
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325nottori/index1.html

すべては米投資銀行が描く「想定のうち」
……………………………………………………………………
 こういったすべてのポイントが徹底的に検討されたはずで、スキームが固まるまでに、何人もの両社の弁護士が額を寄せ合って、幾晩もの徹夜を重ね、高さ何十センチにも及ぶ(あるいはすべてが電子化されていたか)検討書類、契約書類を作ったはずである。後に、フジテレビ側の対抗策が姿をあらわしてきたときに、堀江社長がビクともせずに、「すべて想定のうちです」と言い放って、「想定のうち」が流行語になった。一般には、あれを堀江社長一流のハッタリ的強がりと判断した向きもあったようだが、そうではあるまい。リーマン・ブラザーズが、あれだけ特異なスキームのもとに、あれだけ巨額なリスク・マネーを動かした背景では、それこそ徹底的な起きうるあらゆる事態を想定しての検討が行われたはずだから、本当にその程度のことは想定のうちだったのだ。

 ただし、念のためにいっておくと、堀江社長は大変にハッタリが強い人で、自分でもそれを自著の中で認めている。たとえば、堀江社長が最初に仲間数人と作った会社は、ホームページの制作請負会社で、その営業を堀江社長がやった。当時、堀江社長も仲間も技術的なことがそんなによくわかっていなかったので、社外の人間に高額の謝金(社内の誰よりも高い給料)を払って技術顧問になってもらっていた。

 しかし、社外では技術を売りにする会社として通っていたので、クライアントから、「きみの会社ではこういうことができるか?」と問われることがよくあった。すると堀江社長は、問いの意味すらよくわからなくても、必ず「もちろんできます」と二つ返事で答えて、あわてて技術顧問のところに駆け込み、どうやればそれができるかを教えてもらい、それから徹夜作業になっても、頼まれたことを実現して、翌日、「わが社の技術陣ならこの程度のことは朝飯前です」という風を装ったのだという。

 「三つ子の魂百まで」だから、堀江社長のこういうハッタリ部分が今でも堀江社長の言動の中にあるはずだが、どこがハッタリなのかは今では判定しがたくなっている。

 さて、話を戻すと、本当のミッシング・リンクは、このような具体的なフィージビリティスタディが始まる以前のところにあると思う。

 堀江社長の最初の動機づけはどこでどう生まれたのか。そして、リーマン・ブラザーズに話が持ち込まれる以前の段階での、最初の絵図を描いたのは誰か。そして堀江社長とリーマン・ブラザーズを結びつけたのは誰か。リーマン・ブラザーズ側はどのような計算のもとにこの話にのったのか。

 

立花 隆

評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。

著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
 

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