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第22回 立花隆の仕事場から知を巡る大冒険へ! (2005/06/27)
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投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 11:30:58: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第21回 日本経済も血を流す アメリカとの軍事同盟許すな! (2005/06/10) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 11:19:38)

第22回 立花隆の仕事場から知を巡る大冒険へ! (2005/06/27)
http://web.archive.org/web/20060210225443/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050627_shigotoba/

2005年6月27日

 しばらく原稿と原稿の間が空いてしまったが、この間に大きすぎるほど大きな仕事を次々に片づけていた。近況報告がてら、その間に何をしていたのか書いておく。

 まず、この7年余にわたって、月刊「文藝春秋」に連載をつづけてきた「私の東大論」を次の八月号でついに完結させた。つい一昨日、「天皇に達した東大七教授の終戦工作」をもって、その最終回(第七十回)とすることにして、これを校了にした。

 この連載は「私の東大論」という形をとってはいるが、その内容は明治維新以来の(というよりその少し前の幕末期からの)日本の近現代史そのものである。

 
文藝春秋長期連載「私の東大論」で書いてきたこと
……………………………………………………………………
 日本の近現代史は、1945年8月15日で、大きく二つに分断される。天皇制の時代と、主権在民(民主主義)の時代である。

 もう少し細かくわけると、前者は王政復古の大号令(1867年)から、明治憲法発布(明治22年。1889年)までの擬古代王朝風天皇制の時代と、明治憲法発布以後の立憲君主制としての天皇制時代に歴然とわかれる。

 そして1945年を境として、天皇制は明治憲法時代と昭和憲法時代(正確には1947年から)の全く異質な天皇制の時代に画然とわかれる。

 明治憲法下においては、国家主権はすべて天皇一人に属した。司法、立法、行政すべてが天皇大権に属し、陸海軍の軍事力すべてが天皇に属した(統帥大権)。外交大権もすべて天皇に属した。要するに、明治憲法下の日本国を構成したものは、天皇とその臣民という二つの成分だけであり、臣民はすべからく天皇に服従するというのが日本の国体(国の基本的な姿)だったのである。

 東大の憲法学教授、上杉慎吉の『国体精華乃発揚』にいう。「万機悉く天皇に出づ。主権は一人に存す」「日本臣民は天皇に服従するを以て基本分と為す。臣民の天皇に服従するは国体なり」「天皇の意思は最高なり。国内一切の意思はこれに服従す」

 皇族ですら、天皇とならぶ身分ではなく、臣民に属した。昭和15年の紀元二千六百年記念式典で、国民を代表して祝賀の辞を述べた高松宮が、式辞の最後に臣高松宮宣仁(のぶひと)と名乗り、一同、高松宮ですら天皇の前では臣民の一人なのだと、あらためて天皇の威光の大きさに感じいったというのは有名な話である。

 それが、昭和憲法においては、主権は国民に在ると高らかに宣言され(第1条)、天皇の地位すら、「主権の存す日本国民の総意に基く」ものとされた(第1条)のだから、ここで、日本の国家の体制は完全に逆転したというべきである。主権在天皇国家が、主権在国民国家になったのである。

 
next:「私の東大論」を1945年8月15日で終わりにしたのは…
http://web.archive.org/web/20060210225443/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050627_shigotoba/index1.html

 「私の東大論」を1945年8月15日で終わりにしたのは、もともと近代国家の礎石の一つとして作られた高等教育機関の東京大学にとっても、それが一つの時代の終わりとなったからである。

 最終回でかなり書きこんだのは、東大法学部の7人の教授(南原繁、高木八尺、田中耕太郎、我妻栄、岡義武、末延三次、鈴木竹雄)たちが秘かに終戦工作をすすめていたという話と、南原繁(東大総長)が戦後まっ先かけて公然と主張した昭和天皇の「(戦争責任を取っての)退位論」である。

 
東大の歴史は天皇の歴史
……………………………………………………………………
 東大は国家のための大学として作られ、国家のための人材供給機関として機能してきた。それはいってみれば、天皇のための大学であったから、明治憲法(大日本帝国憲法)ができて、日本国が、大日本帝国となるとともに、東京大学も帝国大学になった。そして、帝国大学令で、帝国大学の目的は国家須要の人物を育てることにあると明記されていた。

 はじめ帝国大学は一校しかなかったから、東大はただ帝国大学と名乗り、明治30年に二つ目の帝国大学として京都大学ができると、それと区別するために東京帝国大学となった。

 帝国大学の初期、東大は天皇の大学であったから、卒業式には天皇が臨席して、最優秀の卒業生に対して、手ずから、賞として、恩賜の銀時計を与えた。天皇がそんなことをするのは、東大と、陸軍大学、海軍大学に対してだけだった。

 こうして天皇は、国家を支える文官と武官の双方のトップになるような人物たちを感涙にむせばしめ、天皇に忠実きわまりない股肱の臣として帝国維持のシステムに取りこんだのである。

 このように天皇と東大の関係ははじめから密接で、東大の歴史はある意味で天皇制の歴史と切っても切り離せない部分がある。連載の過程でも、東大と天皇のかかわりを相当詳しく書きこんできた。

 それは日本の近現代史が天皇制の問題抜きには、理解が困難な場面が多々あるからである。

 とりわけ、天皇制そのものが大きく変質していく最大のきっかけになったのは、昭和10年の天皇機関説問題であるが、これは東大を中心的な舞台にして起きた事件である。

 天皇機関説問題を契機として、日本の社会はまるで右翼のクーデタが起きたかのごとくに、急速に右傾化し、戦争の時代にまっしぐらに入っていく。昭和 6年の満州事変からすでに戦争の時代に入っていたともいえないこともないが、天皇機関説問題以前と以後ではまるで社会の空気が変わってしまった。そこが昭和戦前期の最大の核になる変化だと思ったので、天皇機関説問題を相当詳しく書きこんだ。

 
next: この連載、終わってみると…
http://web.archive.org/web/20060301145256/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050627_shigotoba/index2.html

 この連載、終わってみると、1回平均400字40枚だから、70回で2800枚になる。

 すでに単行本にまとめる作業に入っているが、2800枚もあると、かなり大部の上下二冊本とせざるをえない。刊行は早くて今年の秋ということになる。

 この連載の大テーマの一つは一貫して天皇制の問題にあったから、まだ確定はしていないが、単行本の仮題は「天皇と東大」としてある。

 
もう一つの仕事、未完の大作「エーゲ永遠回帰の海」
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 この連載完結とならぶ大仕事が、20年前にスタートしながら未完に終わっていた書物「エーゲ永遠回帰の海」(仮題。書籍情報社から刊行予定)をやっと仕上げたことだ。

 これは、73年と82年と、二度にわたって敢行したギリシア、トルコをまたにかけての一大旅行の旅行記だが、いわゆる旅行記とは、一味も二味もちがっている。

 第一にこれは、写真家の須田慎太郎と一緒に旅行して作った本だから、半分写真集的なおもむきを持つ。しかし、写真とテクストをただ並列にならべた本ではない。独特の処理を施してこれを一つにまとめた本なので、ただの写真入の本でもなければ、テクスト付き写真集でもない独特の作品に仕上がっている。

 また、テクスト部分の文章が独特で、半分、私の前著『思索紀行』(2004。書籍情報社)に近い部分もあるが、それ以上に文学的かつ哲学的なおもむきを持つ文章となっている。自分でもこれはかなりユニークな本を作ったという思いがしている。

 試みに、ほんの数ページ分だけここに示してみると、次のようになる。(拡大していみると写真のよさがわかるはずだ)

 こちらの本のほうも、テクスト部分はすでに入校しているが、あと写真との組み合わせ、レイアウト、デザイン等々の本造りの作業にまだまだ時間がかかるので、本がマーケットに出てくるのは秋になる予定である。

 
NHKスペシャル“サイボーグ”では「人間の定義」を問う
……………………………………………………………………
 もうひとつこのところずっとかかわっていて、やはりアウトプットは秋になる大仕事が、NHKのスペシャル番組、「“サイボーグ”が人類を変える」(仮題)である。

 かつてSF映画やSFマンガの世界の話でしかなかった「サイボーグ」が、現実の医療技術の課題となって、ある部分はすでに実用化の領域にまで入っている。

 それを広くレポートする番組である。

 
next: サイボーグとは…
http://web.archive.org/web/20060301145304/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050627_shigotoba/index3.html

 サイボーグとは、身体の一部に人体の機能を代替する電子機械を組みこんでしまった改造人間のことだが、すでに聴覚障害者のためには、埋め込み型の人工内耳が開発されており、商品化され、現実にそれを使って聴覚を取り戻している人たちが沢山いる。

 人工眼もすでに様々のタイプのものが開発されつつあり、臨床実験のレベルまできているものもある。普通の人の肉眼のように見るわけにはいかないが、たしかに人口眼によって視覚系に電気信号を入れると、ある程度世界が見えるようになるのである。人工義手も実用化に近いところにきているし、人工義足もそうだ。人工心臓、人工腎臓の研究は前から進んでいて、人工心臓はいまや実用レベルの埋め込み型が登場寸前のところまできている。

 このような研究がいまどこまで進んでいて、どこまで発展しようとしているのか、そしてそういうものが続々登場してきたときに、社会にどのようなインパクトを与えるのか。また、このような技術の行きつく先を考えていくと、人間とはそもそも何なのかという、哲学の歴史が一貫して問うてきた人間の定義そのものが問われるというか、その再定義がせまられる時代になっていくのだろうが、そのあたりどう考えればいいのか。

 そういう視点をもって、日米の研究現場をまわり、研究者たちと対話してこようという大がかりな企画で、すでに、日本国内では取材を開始しているし、 7月からは、アメリカとヨーロッパの研究現場をたずねる予定にしている。その関係の資料読み、予備取材で、このところ大わらわなのである。

 
東京大学特任教授として秋から「科学インタープリター養成」講座をスタート
……………………………………………………………………
 もうひとつ、この秋からスタートする大仕事が、東大駒場の大学院総合文化研究科に新しく設けられることになった「科学技術インタープリター養成プログラム」に特任教授として加わることになったことである。特任教授というのは、従来の教授にはめられていたさまざまの縛りを外す形で外部の人材を導入できるようにした特別のポジションである。私は正規の教授ならとっくに定年になっている年令だが、このプログラムがつづいている間は、定年の枠は外されている。普通の公務員には、職務専念義務というのがあって、副業などしてはならないというきまりがあるが、特任教授の場合は、学生の教育をおろそかにしないかぎり、副業を営んでもよいことになっており、私の場合、従来通りの文筆業を継続してもさしつかえないことになっている。

 私のこれまでの仕事の相当部分が、「科学インタープリター」的な仕事そのものだったといってもいい(先に述べたNHK特番の仕事など、まさに科学インタープリターの仕事そのものだ)が、そういうことができる学生たちを育ててやってくれということだから、喜んで仕事は引き受けた。しかし、大学の中に全く新しいプログラムを発足させて、学生を募集したり、教官集団を作り、カリキュラムを練ったり、といった準備にまつわる仕事がいろいろあって、そちらのほうでも大わらわの日々が続いている。

 そういう一連の大仕事がつづいていたので、このページが少し遅れがちになっていたが、これら一連の仕事の中で発見した、書きたいこと、書くべきことが山のようにあり、二つの大仕事が一段落したこともあり、これから続々発信を再開したいと思っている。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。

 

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