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第50回 新・世界一の借金王 小泉デフレ政権の正体 (2005/10/12)
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投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 22:03:20: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第49回 小泉強権政治がもたらす「自由」と「民主」の末路 (2005/10/11) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 21:59:43)

第50回 新・世界一の借金王 小泉デフレ政権の正体 (2005/10/12)
http://web.archive.org/web/20051125142657/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051012_defla/

2005年10月12日

 そもそも小泉首相は、自分自身の未来についてどう考えているのだろうか。小泉首相が本当にあと1年でやめるかどうかは、実は小泉首相の意思ひとつである。

 前に述べたことだが、総理大臣をある程度の長さやった人が、次に何より関心があるのは、自分の歴史的評価である。自分が総理大臣として歴史に名を残すようなこととして何ができたかということである。

 いま突然小泉首相が死んだとして、小泉首相の歴史的評価はどうなのか。

 
待ったなしの異常事態に「改革」は素通り
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 小泉首相が「改革だ」「改革だ」と叫びつづけたことと、そう唱えることで、突然の総選挙で驚くほどの大勝利をかち得たことは、まちがいなく歴史に記録されるだろう。だが、肝心の改革の中身はというと、まだ意外に成果に乏しい。

 一枚看板にしてきた郵政民営化にしろ、中途で挫折(参院で法案否決)してしまったのである。現段階(衆院選での歴史的大勝と法案の衆院への再上程とその通過)はまだ、その挫折点までもう一度戻ってやり直しをはかっているところでしかない。

 この後、法案がやすやすと両院を通過して成立することはまちがいないだろうが(衆院は昨日通過)、それが本当に実効性のある郵政改革になるかどうかはまだわからない。それにそもそも小泉首相にとって、「郵政改革は小泉改革の最初の一歩」という程度の位置づけでしかなかった。

 「これができないようだったら、これから必要になってくるもっと大きな改革の何ができますか」

 と、小泉首相はこの選挙で何度も叫んだはずだ。

 実際、年金改革、医療改革、三位一体改革(国と地方の税財政改革)など、やりかけの改革はいろいろあれど、すべて中途半端なままに終わっており、これまで最後までやりとげたという改革は、事実上なきに等しい。

 だから、ここで小泉首相が引退してしまったら、小泉首相の歴史的評価は、きわめて低いものにとどまる可能性が強い。

 
大目的の財政改革と財政再建はどこへ
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 たしかに、小泉首相は、国家破綻寸前の状態にあった日本経済を、破綻寸前のところで、さらなる悪化(つまり本当の破綻)から喰い止めたということは実績として認められる。

 しかし、それが本当の喰い止めだったかどうかは、依然としてまだよくわからない段階──この先も突然の大破綻がいつあっても不思議ではない状況がつづくということである。

 
next: 株価は反転しはじめたようだし…
http://web.archive.org/web/20051125142657/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051012_defla/index1.html

 は反転しはじめたようだし、地価も、ところによってまだら模様だが、下げ止まりの気配が見えてきた。(一部)反転すらしはじめたところもあるようだ。しかし、株価の反転も地価の下げ止まりも、それが本格景気回復のあらわれなのか、それとも、もう一度二番底めがけて落ちる前の踊り場での小休止状態なのかは(必ずしも)はっきりしない。

 そもそも、小泉改革全体の大目的が何であったのかといえば、日本の国家的破綻状況をおさえるための財政改革と財政再建だったはずだ。

 いま俎上にあげられている年金、医療、三位一体、公務員制度などの諸改革にしろ、その大目的を達成するための、小改革だったはずだ。国家破綻を導いてきたもろもろの恒常的出血を喰い止めるための方策としての改革だったはずだ。

 郵政改革にしろ、それが小泉改革の本丸と位置づけられたのは、それらもろもろの出血の根源を、構造的に絶つ──国民の膨大な貯蓄を赤字財政の慢性的出血補填のためにズルズル発行されてきた国債の買い入れに安易に使わせない──という目的で構想された改革だったはずである。

 郵便事業の赤字による出血をおさえるためとか、郵政公社の人員整理で公務員数を減らすといったことが主目的であったわけではない(そもそも郵政民営化は国が給与を負担する公務員数の減少には全くつながらない)。

 
プライマリー・バランスの回復に不可欠な経済成長
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 では、小泉首相の任期中に肝心の大目的である財政改革、財政再建のほうはどうなったかというと、全く達成されていない。

 財政再建の第一歩であるはずの「プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の回復」(財政の単年度黒字化)という目的ですら、最近では、2010年以降という遠い目的にされてしまっている。

 ということは、それまでは財政赤字が続くということである。そしてすでに約800兆円にまでふくれあがっている累積赤字(現発行国債累積額)がさらに積み上がっていくということである。

 プライマリー・バランスを回復するためには、「出るを制する」だけでなく、「入るをふやす」ことが絶対に必要なはずなのに、小泉首相は、「入るをふやす」ための努力は全くしてこなかった。

 「入るをふやす」ための手段は結局、「増税する」か、「経済を成長させて、税の自然増収をはかる」かのどちらかしかない。

 そして、増税となったら消費税増税以外の選択はないはずである。それなのに、小泉首相は「自分の任期中は消費税増税は絶対にしない」と明言して、増税に言及することすらいっさい避けてきた。

 要するに、小泉首相は改革を何度も何度も叫びながら、根本問題に正面から向きあおうとはせず、一貫して逃げてきたのである。

 
next: 財政の現実はいかなる逃げも許さない段階に…
http://web.archive.org/web/20051103041949/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051012_defla/index2.html

財政の現実はいかなる逃げも許さない段階に
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 歴代の政権が、財政再建のための増税を持ち出したとたん、国民の激しい反発をくらって、政権を失うにいたった数多くの事例を見てきたので、同じ失敗を犯すまいとしているのだろう。

 その結果小泉首相は、「入るをふやす」の努力を何もせず、結局のところ逃げに逃げてきただけなのだ。しかし、財政の現実は、もはやいかなる逃げも許さないところまできている。最大の問題は、年金だ。団塊の世代の引退の時期を迎えたことで、いまや年金会計の破綻状況はいかなる塗抹も許さないところまできている。

 年金会計の政府支払部分は、すでに40兆円を突破しており、歳入の主要部分である国税収入(45兆5900億円)とほぼ等しいところまできてしまっているのだ。

 いまの日本の財政構造を、一般会計と特別会計ひっくるめて、一言でいえば、国に入ってくる税金をすべて年金の支払にまわしてしまい、残りの政策経費はすべて借金(国債)でまかなっているというに等しいことになっているのだ。このような無理なとりつくろいが長続きするわけがない。

 このような待ったなしの異常事態に直面しているというのに、小泉首相はなおも人気取りのために逃げの姿勢に徹しつづけ、それでいて、見せかけだけは、「改革」の騎士のごとき風を装いつづけてきた。このような小泉首相の政治姿勢は、ズルを通りこして、ほとんど詐欺かペテンの域にまで達しているといっていいだろう。

 
「小さな政府」だけでは危機的状況は乗り切れない
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 もうひとつの財政再建策であるはずの、経済を成長させて税の自然増収をはかるというほうの戦略はどうかというと、これまた小泉首相はいっさい拒否してきた。

 財政がこれだけ悪化している現状では、公共事業拡大などの景気刺激策をとる余地は全くないとしてきたのである。小泉首相のこれまでの経済政策は、景気に関してはひたすら消極策に徹してきた。

 小泉首相の頭の中には、「大きな政府」は諸悪の根源という発想が抜きがたくある。逆に大きな政府を小さくすることはすべて正しいと小泉首相は考えるから、「民でできることは民にまかせる」が聖なる大原則となる。

 官は民ではできないこと、民では不都合なことだけをやればいいから、「小さな政府」にするのがいちばんいい。予算も、これまでの「大きな政府」の使いすぎをあらためるために、予算はすべてゼロ・シーリングで切りつめていって、財政規模をどんどん縮小していくのが正しいということになる。

 だがその結果どうなったかというと、この通りのデフレ経済(経済の縮小再生産過程)になってしまったのである。

 
next: デフレ経済下では財政再建はできない…
http://web.archive.org/web/20051103041949/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051012_defla/index3.html

デフレ経済下では財政再建はできない
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 考えてみればそれは当たり前の話である。世界大恐慌以来、その原因分析をしていったところ、経済を市場原理にまかせてただ放っておくだけ(自由放任)では、必ず破綻してしまうから、政府の介入が必要だということがわかってきたので、そうするようになったというのが20世紀の資本主義経済の基本的なあり方である。

 20世紀の資本主義は自由放任(市場まかせ)から政府介入型(規制あり)経済に移行することでうまく走ってきたのである。特に、投資の面で、政府が積極的な公共投資を行わないと、有効需要の不足からまた「デフレ→恐慌」の繰り返しになってしまう恐れがある。そこで、政府が実体経済の主要なアクターとして登場してきて、需要不足(デフレギャップ)を補うために公共投資、公共事業を積極的に展開していくというのが20世紀の資本主義国家運営の基本である(ケインズ経済学の教え)。

 ところが、小泉首相の頭の中はケインズ以前で固まってしまっていた。そのため、デフレをどんどん進行させてしまったというのが日本経済をここまでの苦境に追いこんだ最大の原因だと思う。このデフレは自然現象などでは全くなく、明らかに小泉首相の経済失政が原因なのである。

 デフレ経済下では、税は自然増収ではなく、自然減収になる。そのおため財政赤字は一層悪化する。財政再建などできっこない。

 
日本経済の苦境はデフレ・トラップにはまった苦境
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 20世紀の資本主義は、ある程度大きな政府を前提にしてはじめてまわっている。

 ソ連経済のような「大きすぎる政府」はむろん誤りだが、小さすぎる政府も同様に誤りである。デフレにトラップされた場合、小さな政府では、そこから抜け出すことができない。ここ数年の日本経済が陥っていた苦境は、デフレ・トラップにはまりこんでしまったがための苦境である。

 デフレというのは、ブラックホールのように、経済の総体が下方に向かう超巨大な引力にとらわれてしまった状態のことだから、そこから抜けだすためには、逆向きの巨大な力をかける必要がある。

 しかし、小泉首相はそのような努力を一向に払わなかった。小泉首相がやったことは、

「改革のためには痛みに耐えることが必要です」

 と次々と非情に言い放つことだけだった。

 
next: 日本国民には、一種マゾヒスティックな…
http://web.archive.org/web/20051103042026/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051012_defla/index4.html

日本国民には、一種マゾヒスティックなストイシズムがあるのか、苦痛に耐えることに一種の美学のようなものを感じてしまう人が多いのか、小泉首相の「改革のためには、痛みに耐えることが必要です」の一言に易々と騙されてしまった。そして、小泉改革の夢を信じて(苦しみの向こうに喜びがあるに違いない)、それぞれの生活の中で、耐えられるかぎりの痛みに耐えてきたのである。といっても耐えられない人々が少なからずいたため、その間に、日本は先進国中最大の自殺大国になってしまった。

 
新「世界一の借金王」になった小泉首相
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 それでその結果がどうなったのかというと、金子勝慶応大学経済学部教授が「週刊文春」(10月6日号)に書いているように小泉首相は新たに「世界一の借金王」になってしまったのである。そして国民はそれに怒りもせず、小泉首相を許しているのである。

 「世界一の借金王」とは、98年から1年8カ月にわたり総理大臣をつとめていた小渕恵三首相が、経済苦境から逃れようとして、一大バラまき経済刺激策を取った結果、84兆円もの国債を発行するはめに陥ったことをさしている。

 しかし、このとき小渕内閣が発行した国債の実に3倍以上もの国債を発行したのが、小泉首相なのである。小泉首相が首相をしてきたこの4年間に、小泉首相は財政赤字を540兆円から796兆円にふくれあがらせ、その間に発行した国債が250兆円にも及び、小渕時代の「世界一の借金王」の3倍は軽々と突破しているのである。

 まことに小泉首相は「世界一の借金王」というしかない。小渕が、自分のことを「世界一の借金王」といったとき、そこには、自嘲の響きがあったが、小泉首相は、そんな認識もなく、いけしゃあしゃあとしているだけである。

 小泉首相はいったい何を考えているのかと思うが、一方で、小泉首相はもしかしたら、この危機的状況を誰よりもよく認識しているのかもしれない。

 それを認識しているからこそ、「あと1年で絶対にやめる」をきっぱり断言しつづけているのかもしれない。

 1年以上つづけたら、大破綻が必至(いわゆる07年危機による破綻の到来)だし、それに対応しようと思ったら、小泉首相があれほど逃げて逃げて逃げまくってきた大増税を自分の年でやらなければならなくなることが必至だということを見こしているのではないか。

 先の衆院選で小泉首相にバカ勝ちさせた国民は、いったい小泉首相の上にどんな幻影を見ていたのだろう。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。

 

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