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第65回 異例ずくめのライブドア事件 なぜトップ逮捕を急いだのか (2006/01/24)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/687.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 08 日 12:09:45: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第64回 ライブドア粉飾決算事件でITバブルは弾けたのか (2006/01/18) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 08 日 11:58:18)

第65回 異例ずくめのライブドア事件 なぜトップ逮捕を急いだのか (2006/01/24)
http://web.archive.org/web/20071219124444/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060124_taiho/

2006年1月24日

 ライブドアの堀江貴文容疑者の逮捕それ自体は、私にとって、それほど意外なものではなかった。先に書いたように(「第64回 ライブドア事件でITバブルは弾けたのか」)、強制捜査(家宅捜索)がはじまった時点で、それは当然予測されたことだからだ。そこまで行ける見込みがないようだったら、そもそも検察はこの事件の摘発に踏み切るはずがないのである。

 家宅捜索があった時点で、いずれ堀江逮捕までいくにちがいないというのが、検察ウォッチャーたちの当然の推測だった。

 わからなかったのはそれがいつになるのかということと、どういう手順でそれにいたるかだった。

 
なぜこのような異例の展開をしたのか

 ロッキード事件にしても、いきなり田中角栄逮捕があったわけではない。まず、贈賄側を固める必要があった。

 贈賄側にしても、いきなり、檜山丸紅社長逮捕にいたったわけではない。まず、大久保利春担当常務の逮捕にはじまり、10日後に伊藤宏専務が逮捕され、さらに10日後に檜山社長が逮捕されている。田中逮捕は、檜山逮捕の2週間後である。

 普通はこのように、逮捕の線は、下から順に上に向かって伸びていく。逮捕した下の人間から、上の人間を逮捕するに至る証拠(供述)を引きだし、未決拘留ギリギリ(最長2週間)のところで、上を逮捕するということを繰り返して、トップに(贈賄から収賄)にいたるのが普通である。

 今回のように、事案の性質がちょっとちがう(贈収賄事件ではない)とはいえ、トップに最大の疑惑が集中している(検察の狙いもその一点に集中している)という点では似ている事件において、捜査開始まもない時点で、いきなりその会社のトップ4人全員が逮捕されてしまうというのは、事件の展開として、きわめて異例である。

 この事件は、なぜこのような異例の展開をしたのか。

 いちばん大きな疑問は、ここにある。そして、この事件はどこまで広がるのか?これが第二の疑問だが、内容的には前者のほうがより重大な疑問かもしれない。

 
早期決着は本当にマーケットの混乱を避けるためなのか

 メディアの解説の主たる論調は、マーケットがこれ以上混乱するのを避けるために、事件の早期決着をめざしたという点において一致している。論調がこれだけ一致した背景には、記者懇談という名のオフレコ会見で、検察筋からそのようなニュアンスの背景説明が流れたということだろう。

 そして、おそらくその背景には、事件に動転した小泉首相の周辺の(その意を受けた)人物から、そのようなニュアンスのプレッシャーが検察に強力にかかったということがあったにちがいないと私は推測している。

 
http://web.archive.org/web/20070527110155/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060124_taiho/index1.html

 こういう場合、首相本人が直接のプレッシャーをかけるということは絶対にない。法律上もできないし、もしそんなことがバレたら、大政治スキャンダルになる。

 ライブドアが市場に与えた影響はあまりに大きかった。株式市場の大暴落に加えて、その過大な取引に耐えかねて起きた東証市場のシステム・ダウンが、世界市場における日本の信用を大きくそこねる事態にまでたちいたったことは、すでに報じられている通りである。

 この事態が、せっかく立ち直りかけ、世界の信用を取り戻しつつあった日本経済界を大きく引っ張るものとなったことはいうまでもない。

 政府(小泉首相)としても、事態を重く見て、そのようなプレッシャーを(間接的に)かけたのだろうし、検察としても、そのような大きな混乱を引き起こすにいたったことは、想定外だったろうから、事態の一挙収束の方向に向けて、かじを切り直したのだろうと考えられる。

 
エイチ・エス証券副社長の野口氏が自殺した2つの理由

 もうひとつ、4幹部一斉逮捕の引き金を引いたのは、1月18日に起きた、ライブドア関連会社(エイチ・エス証券)の副社長だった野口英昭氏の自殺だったと思われる。

 野口氏がなぜ自殺し、事件とどのようにかかわっていたかは、まだいっこうに明らかでない。しかし、関係があったことは明白である。

 第1に、ライブドアの堀江元社長がそのニュースに著しく動揺したことを隠そうともせず(家宅捜索そのものには内心はともかく表面上ほとんど動揺の色を見せなかった)、「もう誰にも自殺なんかしてもらいたくない」とテレビカメラにむかって語ったあと、深刻な顔をして自室に引きこもっていたと伝えられている。

 また、ライブドアの社員の1人がこのニュースに動揺し、カメラに向かって「なぜ死んだのか知らないが、野口さん1人に罪をかぶせてしまおうとしていたのだとしたら、とんでもないことだ」という意味の発言をしていた。

 あきらかに、野口氏は、堀江元社長を含むライブドア中枢部と深い関係を持ち、機密を知りうる立場にいたと考えられている。

 野口氏がなぜ自殺したのかはまだわからない。しかし、一般論として考えられる理由は2つある。

 1つは、自分が知っている機密を守るためである。すなわち、捜査が自分に及ぶことが明らかに予測でき、その際、自分が秘密を口外することによって最上層部に波及していくのを、身をもって防ぐ(自らに永遠の口封じをする)ためである。贈収賄事件などで、事件のカギをにぎる下級官僚がしばしば死を選ぶのは、主にこの理由による。

 もうひとつ考えられる理由は、野口氏は、すでに自分が知る機密を口外してしまっており、それが事件のこのような急展開をもたらした原因となったことを苦にして、ということである。

 
http://web.archive.org/web/20070528095007/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060124_taiho/index2.html

投資事業組合利用方式のスキームを考案した野口氏

 ロッキード事件でいえば、目白の田中邸の自動車運転手で、5億円の受け取りにたずさわった榎本秘書を何度も車で5億円授受の現場に運んでやり、そのときの様子を供述メモの形でのこし、それに署名までしてしまった笠原運転手のような役割を果たしてしまったのかもしれない(笠原運転手は供述メモを作って間もなく、田中邸の秘書などから強烈なお叱りを受けて、自殺してしまった)。

 この事件でも、ロッキード事件のようなのようなオドロオドロしい金の流れがあり、それに野口氏がかかわっていたということではない。この事件のカギになる事実を相当検察にしゃべってしまっており、それが調書ないし供述メモの形で残ってしまっているのではないかということである。

 野口氏は、今回の事件の核心部分をにぎる投資事業組合利用方式のスキームを考案した人だったといわれ、その関係の情報が、いま一斉に検察から流れ出ている背景はそれだろうと思われる。

 この事件、強制捜査がはじまった直後から、次から次に核心にふれる新事実が、検察当局から流れ出しており、検察は、強制捜査開始以前から、相当の情報を得ていたことは確実である。

 検察が、いつどこからどのようにその情報を得ていたかは、本件が立件され、法廷でその証拠関係が明らかにされてみないと、その本当のところはわからない。野口氏がその情報提供者でなければ、他の誰かから、検察は、事件の核心部分にふれる供述をたっぷり得ていたことは明らかである。

 
関係者のメール提出という形で進んだ捜査

 直近の「週刊朝日」には、そのような情報元の1人が、検察の事情聴取を1カ月以上前に受けたことをかなり詳しく告白している。

 彼はライブドア関連会社の元役員で、昨年秋、ライブドアと架空取引をするという形でライブドアの粉飾決算(利益のつけ替え)の片棒をかついだ。彼は、昨年暮、地検の呼び出しを受け、行くといきなり「××の件で粉飾したろう」と図星をさされて驚いたという。

 彼はそれから週2回のペースで検察に呼びだされ、延べ30時間以上の事情聴取を受けている。最近の新聞に、腕ききの検事を何人も動員した秘密の先行捜査が、3カ月前からはじまっていたとある。このような濃密な事情聴取を受けた人がおそらく、2,30人はいるのではないか。

 そして、その関連会社元役員は、コンピュータに保存されていたメールを、すべて提出することを求められ、それに応じたという。事情聴取だけでなく、関係者のメール提出という形で、捜査はどんどん進められてきたのである。

 野口氏がなにも大したことは語っていなかったとしても、先の堀江社長のコメントにあったように、野口氏の自殺がライブドアの幹部たちに与えた衝撃はきわめて大きなものがあった。その心理的動揺の大きさを見すえて、

 「あの連中をいま一挙に叩けば、連中はたちまち全部吐いてしまうにちがいない」

 との思いから、幹部4人を一挙に一斉逮捕という強行手段に踏み切ったのかもしれない。

 たしかに、修羅場を何度もくぐってきたベテラン検事たちに会ったら、あの連中の口を割らせることはいとも簡単かもしれない。

 
http://web.archive.org/web/20070527132322/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060124_taiho/index3.html

ライブドアはこのまま解体され消滅するのか

 今回の事件で特徴的なのは、さすがIT企業らしく、社業の秘密は、ほとんどがコンピュータの中の電子記録という形で保存されていたことである。それが1月16日から17日にかけての一斉捜査で検察が押収した数百台の社内コンピュータ(その中にはサーバーも含まれていた)の中にあったということである。

 いまでは、腕のある技術者が、ほんのちょとした技術を使うと、コンピュータで「消去」の手続きをとって消したはずのデータすら、ほとんど復元することが可能となっている(見せてもらったことがあるが、、これはオドロキである)。

 検察はあの一斉捜査のコンピュータ押収で、大量の証拠をすでに手にしているということなのだ。あとは、幹部たちを密室でしめあげれば、それらの証拠をもとに簡単に核心部分の供述が得られる見込みを得ているという。

 あとは、幹部たちが顔を合わせての口裏あわせなどができないように、幹部連中を一斉逮捕して拘置所に入れてしまえばいいという判断になったのではないか。

 もうひとつの一斉逮捕の目的は、これを機に、ライブドアを経済的に破綻させ、いかなる意味でも堀江元社長が再起をはかるなどということがないようにしておきたいということだろう。

 もともとが、経営的に弱体のライブドアである。トップ幹部が4人も一斉に抜けたら、経営体として立ちいかなくなることは火を見るより明らかである。ライブドアの経営をそのような状態に追いこめば、捜査がうまくいかなかった場合(検察が望むような供述がなかなかとれなかった場合)、それを取り引き材料に、供述を迫るなどという手(本当はよくないとされることだが)も使えるわけである。

 検察という組織は、相手をやっつけるとなると、とにかく徹底的に相手を痛めつけるどころか、つぶしにかかるところだから、ライブドアはこのまま解体され消滅してしまうということすら考えられる。

 「そうしたくなかったら、ちょっとはこっちに協力して知ってることをしゃべったらどうだ」

 というような説得法できたとき、堀江容疑者にしろ、その他の幹部たちにしろ、どれだけ耐えられるかはなはだ疑問である。

 これからしばらくの間、そのような、拘置所の密室での心理的格闘戦がつづくことになる。堀江容疑者はじめ、幹部たちも相当抵抗するだろうが、百戦錬磨の特捜検事たちの手練手管にどれだけ抵抗できるか、はなはだ疑問である。

 
http://web.archive.org/web/20070527105328/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060124_taiho/index4.html

ライブドアの裏側に広がるブラック経済の闇

 もうひとついっておきたいことは、おそらく、いま表面上に見えているライブドア事件の様相は、これから展開していく事件のほんの一部にすぎない可能性もあるということである。

 ライブドアの裏側には、ブラック経済の闇の部分につながる世界が大きく広がっているともいわれ、そこまで検察がメスを入れていくとなると、なにかトンでもないものが、闇の中から浮かびあがってくる可能性もある。

 ロッキード事件だって、当初はずっと児玉誉土夫の事件であり、田中角栄などカゲもカタチも見えなかったのに、突如角栄逮捕という大ドラマに変貌したのである。

 そういうものが出てきたら、いま見えている事件など、「小さい小さい」という話になってしまうのかもしれない。

 とにかく、ライブドアの展開していた、えげつない金儲けの手法は、たちまち、何億何十億という金が濡れ手にアワの形でころがりこんでくるという甘い甘い世界の話である。

 こういう甘い話には、必ずブラックの連中が吸いよせられるように集まってくるというのが、この世界の常識である。いずれ、そちらの方面に発展していく可能性は十分にある。そして、そのまた向こうが政治家の世界につながっているなどという例も少なからずあり、いずれ、この事件の向う側が魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界につながっていく可能性も十分にあると思う。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月 -2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。2006年10月より東京大学大学院情報学環の特任教授。 2007年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。

 

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