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第75回 地に堕ちた時代のヒーロー 村上容疑者と堀江被告 (2006/06/06)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/748.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 16:21:41: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第74回 大手銀に“架空利益”もたらした政府・日銀の異常な金融政策の行方 (2006/05/24) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 16:07:46)

第75回 地に堕ちた時代のヒーロー 村上容疑者と堀江被告 (2006/06/06)
http://web.archive.org/web/20060615023800/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060606_murakami/

2006年6月6日

 村上ファンド代表の村上世彰容疑者逮捕のニュースを聞きながらこの原稿を書いている。

 実はこの原稿、もともとは一昨日の夜執筆して早朝入稿し、午後出たゲラに手を入れている最中にテレビをつけたら、村上容疑者逮捕直前のニュースにぶつかった。

 ニュースそれ自体を知ったのは、一昨日の夕方だった。フリーのカメラマンから、村上容疑者の逮捕が確実になったから、明日は(昨日のこと)早朝から張り込みに狩り出されていると聞き、これはいよいよ村上逮捕だなと思った。

 その兆候はもっと前から出ていた。

 
検察がマスコミに情報をリークした狙いとは
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 5月31日に、村上容疑者はシンガポールから急遽帰国して、地検特捜部の事情聴取に応じた。その直後から、各紙が、村上容疑者にかけられたインサイダー疑惑の詳細な解説を流しはじめた。

 どのような行為が、証券法上インサイダー取引として禁じられているのか。問題のニッポン放送株取引前後の、村上容疑者、堀江被告(ライブドア)の動きはどうで、どの部分が法令違反となるのかなど、歴史的事実関係をふまえた詳細な解説が次々にあらわれた。

 村上逮捕が確実に日程に上がっていなければ、そういう詳細レクチャーは決して行われない。だから、そういう紙面を見たとき、ああ、これは村上逮捕まで行くなと思った。もし村上逮捕が怪しかったり、立件するかどうか判然としない段階であったら、被疑者の犯罪事実の具体的内容を当局が自らバラしてしまうなどということは、被疑者の人権問題になるから、通常は決して行われないのである。

 一般に地検特捜が扱う事件はギリギリまで、潜行捜査で行くのが普通で、任意の事情聴取に踏み切る場合でも、それが即座に公表されるわけではない。任意の事情聴取をずっと続けるだけで、結局逮捕しない、あるいは立件しないで終わるケースだって珍しくない。

 今回、これだけあからさまなマスコミに対するリークが行われた背景には、容易ならざる地検の覚悟があったと見なければならない。

 地検にとって大事なのは、逮捕に踏み切ったあとのマスコミの情報の伝え方である。正しい情報が沢山流れて、「被疑者の逮捕もっとも」という空気がいち早く社会に醸成されるかどうかでその後の本件の展開、裁判の展開などがまるでちがってくる。

 
next: 村上容疑者追及の決め手となった宮内供述…
http://web.archive.org/web/20060615023800/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060606_murakami/index1.html

村上容疑者追及の決め手となった宮内供述
……………………………………………………………………
 今回、インサイダー取引疑惑というのが、一般の人にわかりにくいところがあるということもあって、検察OBなどがテレビに次々に登場して、背景解説にあたっている。

 実をいうと、今年はじめのライブドアの堀江社長逮捕のあたりから、検察の本当の狙いは村上容疑者であるという説がマスコミの間で強く流れていた。村上逮捕を予期して、村上容疑者の住居、事務所に張りこむカメラマンも出ていた。

 その後、5月10日、突然、村上ファンドが活動拠点をシンガポールに移したという事実が明るみに出て、世の中をびっくりさせた。

 このニュースを聞いたとき、私などは、これは周囲に迫ってきた取締当局の手を村上容疑者が察知して、高飛び(ないし証拠隠滅)をはかったということではないかと思った。事実はそうでなかったようだが、おそらく、それに近いことがあったのではないか。

 あのシンガポール移転は、検察にとっても寝耳に水であったはずで、これは下手をすると、大魚を逸するという思いがあって、村上容疑者が一時帰国したのを幸い、一挙に事情聴取まで踏みこんだのだろう。──はじめはそのような報道があったが、実際には、検察が正式の出頭命令を出して、それに応じて村上容疑者も帰国したのだと思う。いずれにしても、こういう状況があると、逃亡あるいは証拠隠滅の恐れを理由として逮捕状が取りやすくなるということもあり、村上容疑者が検察の手を逃れるのが目的でシンガポールに行ったのだとすれば、ヤブヘビだったことになる。

 今回、検察の背景説明の中で明らかになったことは、村上容疑者追及の決め手になったのが、ライブドア事件で逮捕された宮内亮治被告らの供述だったということだ。その中でニッポン放送株大量取得時の経過がすべてバラされていたのである。

 つまり、検察は、すでに手元にある証拠で、この事件は難なく立証できるということなのだ。しかし実はそれは宮内被告の供述を待つまでもないことだった。

 実は、ニッポン放送株取得で世の中がわきたっている頃に、堀江被告が有楽町の外人記者クラブに招ばれて記者会見をした。そのとき、堀江被告は記者の質問に答える中で不用意に村上容疑者の株を譲り受ける約束が内々にできていたことをTVカメラがまわっている前でしゃべってしまっていたのだ。その頃から、あれは「インサイダー」でやられるぞという声が記者の間で流れていたのである。

 
next: ライブドア事件の堀江被告に与える影響…
http://web.archive.org/web/20060702094709/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060606_murakami/index2.html

ライブドア事件の堀江被告に与える影響
……………………………………………………………………
 興味深いのは、この一件が堀江被告の裁判にどのような影響を与えるかである。

 村上容疑者にとっては、この一件の処理のされ方によって、自分の人生の死命が制されるくらい大きな影響を受ける。場合によっては、相当の刑罰を受けるだけでなく、さまざまの資格が剥奪され、村上ファンドがつぶれ、ファンド出資者からの訴訟などで再起不能になるくらいの経済的ダメージを受ける恐れが十分にある。

 ダメージを少しでも小さくしたい村上容疑者は、検察に全面協力をする姿勢を取っているようである。自分の罪はいち早く認め、調書にもサインをした。5日の記者会見でも、自分の罪を認め、もう証券界から身を引くとまでいっていた。

 おそらく、ここまでやれば、逮捕をまぬがれる可能性があると思ったのではないか。つまり、在宅起訴ですませてもらうということである。だが、検察はそうは甘くなかった。午後早い時間に村上容疑者は逮捕され、獄中の人となった。

 これ1件だけであることがハッキリしていれば、本人が罪を認め、前非を悔い、もう引退するとまでいっている以上、あえて逮捕までせずともよいという判断もあったかもしれない。

 それを敢えて逮捕に踏み切ったということは、検察はこれ1件だけとは考えていないということである。同じようなケースが他にも幾つもあるはずだと考え、これからファンドの活動歴をずっとさかのぼって、ありうるインサイダー疑惑、その他の疑惑をつぶさに追及していくだろうということである。

 要するに、ありうる余罪を洗いざらい追及していくということである。

 その中から、ニッポン放送株事件以上の何かが出てくることを検察は期待しているのだろうし、期待通り何かが出てくる可能性は大いにある。

 もうひとつ検察が期待しているのは、村上容疑者から、堀江被告の余罪を聞きだすことだろう。

 
検察が狙う、裏切りとバラシの連鎖反応
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 堀江被告はよく知られているように、ライブドア事件では、否認をつづけ、調書を1枚も取らせなかったといわれる。裁判においても、否認を貫いて検察側と強く争う方針といわれる。

 
next: 堀江被告の財力をもって一流の弁護士を…
http://web.archive.org/web/20060702094720/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060606_murakami/index3.html

 堀江被告の財力をもって一流の弁護士をそろえた強力弁護団を作り徹底的に争えば、検察側もそれなりに苦戦する場面もあるかもしれない。検察はすでに罪状を基本的に認めた宮内被告など共犯者の調書をしっかりおさえている以上、事件の本質部分がひっくり返ることはないだろうが、なんらか苦戦する場合にそなえて、堀江被告の弱みを少しでも多く握りたいはずである。

 村上容疑者は、堀江被告の陰の部分を相当知っているはずだから、検察への協力姿勢をどんどん強めていくと、堀江被告の本件(粉飾決算など)あるいは余罪につらなる部分についてベラベラしゃべり、堀江被告の裁判で検察側証人として出廷するようになるまでいくのかもしれない。

 あるいは、これまで沈黙をつらぬいてきた(といわれる)堀江被告が、村上バラしに怒って、逆に村上容疑者の余罪についてベラベラしゃべるというようなことが起こるかもしれない。

 大型の特捜部事件では、このようなバラしの連鎖反応的展開が歴史的にはよくあったことなのだ。

 たとえば、ロッキード事件の摘発過程で仕込まれたウラ情報の山が、後の日商岩井事件や、グラマン・ダグラス事件など一連の航空機疑惑に発展していったようにである。

 表面上はすべて別々の事件だが、情報という側面ではウラですべてが密接につながっていたのである。

 同じことが、90年代のバブル崩壊過程で次々に起きた一連の巨大金融機関のウラ社会がらみの不祥事(総会屋暴力団への不正利益供与など)についてもいえる。

 ブラックの社会、ウラ社会、ヤミ社会は、さまざまのネットワークで底の底のほうでは情報的につながっているのである。

 「悪事千里を走る」のたとえ通り、悪の世界における情報の伝達速度は速い。同時に悪の世界の情報のからみ合いの網の目は細かいから、特捜部がその一角に喰らいつくと、裏切りとバラシの連鎖反応が起きて、事件が思いがけない方向に伸びてゆくということがよく起こるのである。

 
時代のヒーローが地に堕ちるとき
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 これから、村上ファンド事件がどのような方向に伸びていくのかまだ全くわからないが(そのうちポシャってしまって、これ以上全く伸びないのかもしれないが)、ライブドア事件とこの事件は、同じひとかたまりの事件といってよいだろう。

 
next: この事件で何より注目すべきことは…
http://web.archive.org/web/20060718221044/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060606_murakami/index4.html

 この事件で何より注目すべきことは、日本のこれまでの株式市場の常識が根本的に変わらざるをえなくなったということだろう。この程度の(金額的ということではなく質的に)インサイダー疑惑は、その辺にゴロゴロあるが、それが敢えて摘発されることもないというのがこれまでの証券界の一般的認識だった。それが摘発されなかったというのは、その程度のことはよくあることだという証券界の常識(多少のインサイダー取引は多くの証券界の人間が罪悪感を持たずに多かれ少なかれやってきたこと)に守られていたということがある。

 誰もそれほど悪いと思っていなかったから、司法当局がいざ立件しようと思っても、証拠・証言を得ることがむずかしいという法技術上の問題があった。それがこの事件の場合、ライブドア事件の余波で、証拠がバッチリ押さえられていたということがあって、この急テンポの展開になったのである。

 つまりこの事件はある意味で偶発的に展開したわけだが、これまではグレーゾーンにあった事案も一端正式に摘発されてしまうと、それが先例になって、これまでの常識を常識として通用させなくなってしまう破壊力を持っているのである。

 つまりこの事件以後、過去の常識(インサイダー取引はあるのが当り前。そんなに悪いことではない。摘発されるわけがない)は常識ではなくなるということである。

 それとも関連するが、もうひとつの事件摘発の大きな要因になっているのは、すでにライブドアの事件のときに指摘したことだが、検察トップの姿勢が、現代社会で優先的に摘発されるべき社会悪が、経済界に巣食っているアクどいアブク銭集団の世界にあるという認識に切りかわったということにあるだろう。

 ライブドアの堀江被告にしろ、村上ファンドの村上容疑者にしろ、ついこの間まで金儲けこそ善とする考えにすっかりなびいていた小泉改革支持派の若者たちの間ではヒーローとなっていた人物たちである。

 この事件が明らかにしたことは、よくよくウラをのぞいてみると、それらヒーローたちが人目につかないところでコソコソやっていたことが、とてもヒーローとはいいがたいことばかりだったということだろう。

 考えてみると、田中角栄だって、金脈事件、ロッキード事件で摘発されるまでは、熱狂的にヒーロー視していた人が沢山いたのである。

 ヒーローが地に堕ちるときというのは、こんなものなのである。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。  

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