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第83回 小泉首相“開き直り参拝” 日本が見失った過去と未来 (2006/08/17)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/756.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 18:47:58: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第82回 天皇はなぜ参拝しないのか 「心の問題」論と靖国神社 (2006/08/12) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 18:30:15)

第83回 小泉首相“開き直り参拝” 日本が見失った過去と未来 (2006/08/17)
http://web.archive.org/web/20060821203532/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/

2006年8月17日

 8月15日、小泉首相が靖国神社に参拝した。

 その日、朝10時頃起きだして、テレビのスイッチを入れたら、すでに小泉首相靖国参拝のニュースでもちきりだった。想定内のできごとだったから、特に感慨も起きなかった。

 しかし、「なぜ今日参拝したのか?」という記者の問いかけに、「いつ行っても批判されるから、今日がいいだろうと思った」と答えた、小泉首相の今日の参拝を決めた理由には唖然とした。

 小泉首相があまりロジカルな人間でないことは、とうの昔から知ってはいたが、これではあまりに非論理的で、問いに対する答えになっていない。二の矢の質問を繰り出せなかった記者も問題だが、参拝すれば必ず問われるであろう質問に用意していた答えがこれほど非論理的なものであるとは(それで十分と小泉首相が考えていたとは)、国民もなめられたものである。

 
東大安田講堂にあふれた「8月15日と南原繁を語る会」の来場者
……………………………………………………………………
 昼すぎに東大の安田講堂に行き、夕方5時半からはじめる予定の「8月15日と南原繁を語る会」の準備にとりかかった。

 数カ月前から準備していたので、基本的な準備はできていたが、不確定要素が若干あった。

 一つは来場者の問題だ。1カ月以上前から、この会のホームページを開き、会の内容を説明するとともに、参加希望者をインターネット登録によって集めるむね告知した。それから間もなく、朝日新聞がこの会のことを大きな記事で取り上げてくれたので、それから数日で、参加希望者は、たちまち1000人に及んだ。

 はじめに予定していた会場は法学部のいちばん大きな教室、法学部31番教室(安田講堂前の広場に面した教室)だったが、この教室は、定員が700人である。あわててすぐ近くにある工学部の講堂を第2会場として借りて、そこに映像と音声を配信する手はずをととのえた。そこが300人収容だから合わせて 1000人になる。

 しかし、参加希望者はさらに増え、みるみる1000人を100単位で突破していく。

 大学当局と交渉して、おりから改修工事で閉鎖中だった安田講堂を一時的に借用させてもらうことになった。安田講堂なら、1200人まで入る。

 参加希望者はさらに増え、安田講堂でも入れるかどうかわからない規模にふくれあがったので、途中から、「キャンセル待ち」の行列を作り、そちらに自動登録されるようにしたら、その行列に入る者も1000人を100単位で超えはじめた。

 
next: インターネット登録方式で人を集める集会の場合…
http://web.archive.org/web/20060821203532/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/index1.html

 インターネット登録方式で人を集める集会の場合、登録者と本当に来る人のあいだに2割か3割の誤差が生じるのが通例である。

 つまり1000人の登録があれば、2、300の誤差が生まれ、その分キャンセル待ちの行列から繰り入れられるだろうと思ったのである。

 ところが、予約登録者に、本番3日前までにコンファーム(予約再確認)してもらったところ、ほとんどキャンセル者が出てこなかった。結局、キャンセル待ちの行列から、入れた人は、ほんのひとにぎりにとどまった。

 
小泉、安倍政権で激変する国家の基本構造
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 この会がなぜこれほど人を集めることができたのかというと、いま時代が、きわめて大きなターニング・ポイントを迎えていて、戦後国家日本の基本構造が間もなく変わってしまうかもしれないという危機感を共有する人がそれだけ多かったということだろう。

 これは、冒頭に私が行ったイントロダクション、「なぜいま南原繁か」で述べたことだが、9月の小泉退陣はすでに確定し、次期総理の座に安倍晋三がつくことがほぼ確定している。

 その安倍は、憲法改正が自分に負わされた最大の政治課題であると、かねてから標榜している人物である。

 最近の著書、安倍晋三対論集「日本を語る」の中でも、櫻井よしこを相手にしての「憲法全文を書き直す気概を持つべし」の中で、次のように、はっきりと憲法改正が自分の政治目標であることを明確にしている。

 そもそも、1955年に自由党と民主党が一緒になって自由民主党を作った最大の目的の一つが、自主憲法を作ることだった。憲法改正には、議員総数の三分の二の賛成が必要だったが、三分の二の多数を集めるためには、保守合同が必要だという事情があったのだ。

 しかし、保守合同後の鳩山内閣も、岸内閣も、憲法改正を実現できなかった。

「私の祖父、岸信介の目標も憲法改正というか、自主憲法制定でした。(しかし岸は)安保改定にすべてのエネルギーを使ってしまい、憲法改正はできなかった」

 次の池田内閣は、憲法改正など考えず、政治的エネルギーをもっぱら経済政策に注いだ。その後も、自民党政権がつづいたが、憲法改正を正面からかかげる内閣はずっとできなかった。そして、95年の村山政権下の自民党では、河野洋平総裁のもと、結党40年の新綱領から、ついに、自民党の金看板であった憲法改正を外してしまうという大きな政治目的の変更が行われた。

 ただし、綱領からは外したものの、「新宣言」という付属文書の中で、「21世紀に向けた新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民と共に論議を進めていきます」と、ちょっとあいまいな表現で、憲法改正も党活動の視野に入っていることが宣言された。こういう形でしか、憲法改正派の存在証明がなされなかったのだ。その中心にいたのが、安倍晋三、中川昭一、衛藤晟一らであったという。

 
next: 憲法改正に政治生命をかける安倍晋三…
http://web.archive.org/web/20060903095336/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/index2.html

憲法改正に政治生命をかける安倍晋三
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 安倍は、一貫してスジ金入りの改憲派であり、その主張をいささかでも隠そうとしたことはない。櫻井よしことの対論においても、そこを明確にしている。

「私は政治家としては3代目です。岸信介は自民党結党当時の幹事長ですが、首相になっても憲法改正に着手することはできませんでした。父、安倍晋太郎も残念ながらできなかった。こうなると憲法改正は、われわれ戦後生まれの世代に課せられた大きな宿題であり、責任でもあると痛感させられます。いまこそ改憲という戦後半世紀以上に及ぶ懸案をきちんと片づけて、次の日本を担う新しい世代に、新しい憲法を授けていくべきだと思います」

 このような安倍の発言に、櫻井よしこが、

「安倍さんは遠くない将来、総理・総裁になられる方です。憲法改正がご自分に課せられた歴史的な課題だと捉えておられるということですか」

 と問うと、安倍は、これまでの自民党政権は、憲法改正を実現するためには、あまりに大きなエネルギーが必要だということがわかっていたがために、それを避けてきたとして、こういっている。

「憲法改正を実現しようとすれば、激しい論争を呼びますし、党内でそれをテコに権力闘争を優位に進めようという人もたちも出てくる。だから、首相になると改憲は棚上げしてしまいがちでした。

しかし、もう戦後体制をこのまま続けていくのは限界です。これは私というより私たちの世代が責任をもって取り組まなくてはいけないことです。次の総理がこの問題に片をつけなければ、日本の未来は非常に暗いものになってしまいます」

 この対論集が出たのは、2006年4月、そのオリジナルの対談が行われたのは、2005年6月、1年ほど前のことになるが、そのときすでに、自分がポスト小泉筆頭候補になることを意識していたのかどうか、次のように、対論はつづいている。

「櫻井 次の総理、ということは、小泉さんが任期いっぱい総理をなさるとしても、ほんとに手の届くような未来のことですね。

安倍 ええ、そういうことになると思います。もう指呼の間であると思いますね」

 それから1年たって、この安倍が本当に総理の座に座る日が、指呼の間どころか、もう目の前というところまできているのである。

 
next: 戦後日本が目指した国家像の原点を再検討する時期に…
http://web.archive.org/web/20060903184859/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/index3.html

戦後日本が目指した国家像の原点を再検討する時期に
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 憲法が改正されるということは国家の基本構造が変わるということである。昔風の表現を使えば、日本の国体(国のすがた)が変わるということである。

 いまの日本の国体は、昭和憲法(1947年憲法)が規定するところの国のすがたである。それ以前の国体は明治憲法が定めるところの国の姿であり、それは第1条「大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す」ではじまる、天皇制がその根幹にある国家体制だった。

 かつて、国体を変革しようと企てることは、企てそれ自体が、治安維持法によって、死刑に処されるべく定められた国家最大の犯罪だった。

 明治憲法から昭和憲法への移行によって、国体変革は、死刑に処せられることもなく、法の手続きによって可能となる時代になった。

 その法の手続きでいちばん必要な要件は、国会における数の力(3分の2)と、国民投票における数の力(過半数)であるが、それは各種の調査等の数字を信用すると、たしかに憲法改正が十分可能と思われるレベルに入りつつある(具体案が出てきて、その持つ意味が細部にわたって議論されるようになると、それに従って、また数のバランスは変わってくるだろうが)といえるようである。

 現実の政治情勢がこのようなレベルにきたところで、まずなすべきことは、日本の戦後国家が、その出発点において、どのような発想のもとに、どのようにして、また何を目指して作られたのか、その原点にさかのぼって再検討することではないのか、というのが、今回の会を企画した趣旨である。

 
滅びた国家をどのように再建すべきかを説いた南原繁
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 なぜいま南原繁なのかというと、この人こそ、その原点となる地点で、敗戦ショックでみな茫然自失状態にあった日本人たちをはげまし、復興に向けての第一歩を踏み出させ、同時に進むべき方向(新しい国造りの方向)をさし示した人だったからだ。

 南原繁は、憲法、教育基本法など、戦後日本の基本的骨格をなした法律の策定に中心的にかかわっただけでなく、それらの法律の制定以前の問題として、滅亡した大日本帝国の欠陥(システム上の欠陥というよりむしろ、日本人の精神上、マインド上の欠陥)をどこに見て、日本を再建するためには、その欠陥のどこをどう改めていかねばならないかを説いた人だった。滅びた国家をどうすれば再建できるかを説くことで、国家の死のドラマを国家の再生のドラマに打ち変えた人だった。そのような意味において、戦後日本の出発点で、比類なく大きな役割を果たした人物だった。

 当時、南原が語った言葉を手がかりに、日本のこれまでを総括し、かつ日本のこれからを見すえていこう。こういう発想から、この日の集会は出発したのである。そして、前東大総長の佐々木毅が「政治学者南原繁」について語り、政治学者の姜尚中が「南原繁と憲法9条」について語り、哲学者の高橋哲哉が「南原繁と靖国問題」について語り、大江健三郎が「南原繁と倫理的想像力」について語るという、大変に知的にスリリングな集会となった。

 ここでは、そのすべてに言及している余裕はとてもないので、高橋哲哉の「南原繁と靖国問題」についてだけ述べておこう。

 
next: 実は、南原繁の生の言行録の中には…
http://web.archive.org/web/20060903092347/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/index4.html

 実は、南原繁の生の言行録の中には、靖国問題について発言したものは何もない。しかし、戦没学徒について述べた言葉が沢山ある。学徒動員によって多数の教え子たちを戦場に送ってしまい、その多くが帰ってこなかったということが、この時代の南原の最大のトラウマになっていた。

 南原が東大の戦後最初の総長になってまずやったことが、戦没学徒と戦没教職員を悼む追悼式だった。この死者を悼む心から、戦後の南原の活動はすべてはじまっているといってよい。

 小泉首相がこの日、靖国参拝をするのであることがわかりきっている以上、靖国問題の論客としてよく知られている高橋に、もし、南原がいま生きていたとしたら、南原はこの問題についてどのような発言をしていただろうかという形で語っていただいたのである。

 
記録フィルムが明らかにした軍事施設としての靖国神社
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 高橋はこの日、小泉首相の靖国参拝があった日とあって、他の集会とかけ持ちで来なければならないという多忙さであったが、その話は、予想通り、なかなか説得力あるものだった。

 私がとりわけ強い印象を受けたのは、高橋が話の途中で使った、戦争中の靖国神社の参拝風景をリアルに記録した映像である。それは、陸軍、海軍の幾つかの部隊が参拝している風景なのだが、それを見て、我々戦後の靖国しか知らない人間は、あの神社がそもそもどのような神社であったかを何も知らなかったのだと思い知らされた。

 我々はみな、靖国神社といえば、戦争犠牲者の追悼の社だと思っている。そこに眠るのは、英霊たちであり、そこに行って頭をたれる人は皆、死者を悼むためにそうしているのだと思っている。ときどきあの神社では、旧日本兵の服装をして、鉄砲をかついだり、軍刀をふりかざしてみせたりする人が出てきたりするが、そういう人を見ても、普通の人は、ちょっと神経系に問題がある軍隊フリーク、戦争フリークを見たくらいにしか考えないだろう。

 だが、戦争中は、それが常態だったのである。陸軍も海軍も、部隊で次々におしかけてきては、そこで軍事パレードや出陣式を毎日のように行っていたのである。死者を悼む儀式など、なきに等しく、そこは戦意高揚のために、勇猛果敢なる兵士たちが、熱気でいっぱいのパフォーマンスを繰り広げる場所だったのである。

 昔、靖国神社が陸軍省と海軍省が共同管理するミリタリー中心の場であるということは知識としては知っていたが、この映像を見るまでは、まさかここまでとは夢にも思っていなかった。

 これを見ると、靖国神社とは、神社とはいうものの、宗教的な施設ではなく軍事的な施設そのものだったのだということがよくわかる。

 
next: 高橋がこの映像を入手してきたのは…
http://web.archive.org/web/20060903092429/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060817_sanpai/index5.html

 高橋がこの映像を入手してきたのは、韓国に残されていた戦時中の記録フィルムからだったという。韓国では、靖国というと、これがよく使われる映像で、韓国の人の頭の中ではこの映像が焼きついているのだという。

 韓国の人が靖国問題で烈しいリアクションを示す背景には、このような映像の問題がある。これを見るかぎり日本人は戦争に狂奔した戦争大好き民族としかいいようがない。靖国が静かな祈りの場、鎮魂の場などとは、韓国人の多くは思っていないのである。

 
外国人には理解不能な靖国参拝の“真意”
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 同じようなイメージの問題が、欧米における靖国報道にもある。

 外国で靖国問題が報じられるとき、靖国神社(YASUKUNI シュライン)などといっても、それが何であるか、誰も知らないから、靖国を報道するときには、必ず、同格の形容句として、「A級戦犯を祀った(Aクラス・戦争クリミナルをエンシュラインした)」という言葉が枕詞のように必ず付くのである。

 そうなると、小泉首相がよく使い、日本人の多くもそうかなと思う小泉首相の弁解「私が拝みに行っているのは、戦没者全体であって、A級戦犯ではありません」が、まるで通じないのである。

 外国の報道では、靖国神社とはこういう所で小泉首相はこう主張しているなどというくだくだしい説明は、日常の短いニュースの中で付けられるわけがないから、先に述べたような枕言葉がつくだけなのである。そういう枕言葉つきの神社に小泉首相が行ったというニュースを聞けば、当然のことながら「小泉首相はA級戦犯を拝みに行っている」としか聞いてもらえないのである。

 「A級戦犯を拝みに行っているわけではない」という小泉首相の弁解は、外国人には理解不可能な強弁としか聞いてもらえていないということなのである。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。  

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