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【中学生の企業インターン「14歳の挑戦」】若者の雇用問題とどう向き合うか―富山に学べ!【立大教授山口義行氏】
http://www.asyura2.com/08/social6/msg/120.html
投稿者 一市民 日時 2008 年 8 月 12 日 22:12:10: ya1mGpcrMdyAE
 

http://www.media-kiss.com/yamaguchi/content/koregaiitai/09.html
山口義行の“コレが言いたい”
第9回 若者の雇用問題とどう向き合うか―富山に学べ!―

若者の雇用問題に注目が集まっている。これは、企業が採用数を増やせば解決するといった簡単な問題ではない。そこには社会全体で取り組まなければならない、大きな問題が横たわっている。

若者の雇用問題

仕事に生きがいややりがいを見出せない若者が増えている。2006年度国民生活白書によれば、適職探しをしている若者は558万人(2004年度)いる(図表1)。これは1987年に比べて3割増、在学者を除く若年者全体の2割以上に達する。また、フリーターやニートの増加も社会問題になっている。定職に就かない若者の増加は社会を不安定にさせたり、経済の活力を減退させたりするものとして危惧されている。「コレが言いたい」の第9回は、"若者の雇用問題"をテーマとして取り上げたい。

(図表1)
図表1:「適職を探す若年者」数の推移  国民生活白書より作成

定職に就かない若者が多い理由

なぜ定職に就かない若者が増えているのか。その理由の1つは、言うまでもなく企業が正社員の採用を絞ったことにある。2002年に正社員として就職できた割合は、大卒で66.7%、高卒では40.4%にとどまっている(図表2)。ともに10年前より20%以上悪化している。これに代わってパートやアルバイトでの採用が増加しており、若者をめぐる不安定雇用の背景となっている。

もう1つの理由は、若者の職業観にある。社会で責任を持つことに抵抗感を持っていたり、できるだけ長くモラトリアムを享受したいと考えている若者は多い。就職してもちょっとした失敗で会社を辞めてしまい、働くことに夢が持てないまま日々過ごしているケースも目立つ。若者の職業意識や社会人としての自覚をどう育てるかが課題となっている。今回は、この後者の問題に立ち入ってみたい。

(図表2) 大学・高校の卒業直後就業形態割合
図表2:大学・高校の卒業直後就業形態割合

(備考)

1. 総務省「就業構造基本調査」により特別集計。
2. 大学・高校の卒業直後の就業形態割合の推移を示したもの。
3. 「正社員」とは正規の職員・従業員、「パート・アルバイト」とは雇用者のうち正規の職員・従業員以外の者
(ただし、不詳の者は含まない)。
4. 「無業」とは、有業・無業の別で「無業」だった者。
5. 「その他」とは3〜4を除くすべて。

国民生活白書より作成

若者の職業意識を育てる試み

この点に関して興味深い表がある。「フリーター比率」とよばれるもので、新卒者のうち進学も就職もしない者の比率を調べたものであるが、図表3に明らかなように、この比率が全国で最も低いのは、富山県である。全国平均15.3%に対し、富山県は5.0%である。フリーター比率の低さに直結しているかどうかは別にして、確かに富山県では若者の職業意識を育てるために様々な試みが行われている。

(図表3) 新卒フリーター輩出率 都道府県ランキング
都道府県 (%)
1 沖縄県 31.5
2 京都府 21.8
3 東京都 21.1
4 大阪府 19.5
5 神奈川県 18.1
全国平均 15.3
47 富山県 5.0

* (注1) 新卒フリーター輩出率=(進学も就職もしないもの)/ 卒業者
* (注2) 新卒大卒者の中には進路を学校に報告しない人もおり、数字が実態より高めに出ている可能性がある。

(資料) 文部科学省「学校基本調査」2003年度

(出所) 三菱UFJ総合研究所作成

その1つが「14歳の挑戦」。これは富山県が国公立中学を対象に義務づけているもので、中学2年の生徒たちが5日間学校を離れ、地元の企業で実際に働きながら、仕事とは何かを学ぶ体験学習である。2005年度は10,028人の中学生が参加し、受け入れ事業所は3272ヶ所に達している。

「14歳の挑戦」を立ち上げた山本晶氏(現富山県立富山養護学校校長)は、この試みを始めたきっかけを次のように語っている。

「中学生で最後の担任を受け持っていた昭和63年頃、中学2年生の真面目な生徒がこんなことを言い出しました。

『大人っていいがねぇ。仕事が終わったらパチンコにビール。自分たちは学校の授業が終わっても午後6〜7時頃まで部活。それから家に帰ってきて塾に通い、夜は宿題で1日が終わらない。なのに大人は夕方5時頃には会社から開放されてパチンコをしている』。

私はショックを受け、『ちごがい。大人は大変な仕事を一生懸命やっているんだよ。だから、仕事が終わってからビールを飲んで1日の疲れを癒すんだよ』と説明すると子供たちは『うっそぉ〜』と言ってなかなか信じようとしなかったのです。

・・・あるツッパリの生徒はこんなことを言いました。『担任の先生は、父ちゃんは子供のためにつらい仕事を我慢して働いているんだから自分も頑張れと注意する。会社は我慢していればお金をくれるけど、自分が我慢して学校に行ってもお金はもらえない』これは、大人をなめている。なんとか大人の働く姿をみせないといけない。そう強く感じたのでした」

(富山県中小企業家同友会、未来来[ミラクル]とやま研究会発行『ON YOUR MARK』2005年10月刊、7ページ)。

「14歳の挑戦」を体験した中学生は、それをきっかけに父親を見る目が変わったり、家族との会話がはずんだといったことを事後報告している。また、将来自分がやりたい仕事を考えるきっかけになったと答えた中学生もいる。

「インターン先の八嶋さん(八嶋合名会社社長)の話が印象的でした。

『仕事とは、人のために役立つことを考えるもの。仕事は、ただ生きる、家族を養うためのものではない』そう言われました。

普段は、友達と家でゲームばかりでしたが、インターンをキッカケに、仕事とは何か考えるようになりました」

――小林美希氏(『エコノミスト』編集部記者)のインタビューに、「14歳の挑戦」を体験した中学生はこのように答えている。(同上、5-6ページ)

地元企業の協力が不可欠

「14歳の挑戦」は、生徒を受け入れる企業の協力がなければ成り立たない。

「『あたたかく受け入れてあげよう。仕事の楽しさを教えてあげよう』と従業員と生徒の受け入れについて事前に話し合いをします。たった5日間でも生徒が成長していく様子を見ることができ、私たちにとってもうれしい体験です」(潟Tンエツ 板川信夫社長)。

「生徒の緊張をほぐしてあげるために事前の説明や見学を実施しています」(中尾清月堂 中尾吉成)。

「お皿を下げることからはじた生徒が最後には自ら工夫してお客様に声をかけるようになるんです。店のみんなが成長ぶりを驚いたほどでした」(エクボ 国奥真由美店長)。

また、受け入れる企業側にも大きなメリットがあると経営者たちは語っている。生徒の指導役に入社2〜3年目の社員をつけることで、社員自身が仕事の楽しさや失敗体験等を伝えるうちに、仕事の意義や自社の良さを自覚でき、仕事のやりがいを改めて見出すきっかけとなるのだという。

2日間で売上額1350万円!!

さらに富山県の高校では、もっと進んだ取り組みを行っている。たとえば、県立富山商業高校が実施している「TOMI SHOP」。これは、生徒 800人が1株500円で出資して設立した株式会社。生徒全員が社員となり、校内に売り場を作り、生徒たちが仕入れた商品を客として訪れた人たちに販売する。オリジナル商品の開発も行っている。販売日は毎年11月の2日間だけ。それでもこの2日間だけで、昨年はおよそ1350万円もの売り上げを上げた。商品は100円のお菓子から100万円の車まで。富山の名産物である魚やクラブ活動の様子などを柄にしたネクタイを開発するなど、ユニークな取り組みを行っている。ちなみに、このネクタイ(1本2500円)は2日で600本も売れるという。

参加した生徒も「コミュニケーション能力の向上」を「TOMI SHOP」体験の効果としてあげているが、実際仕入れのための交渉、商品開発のための話い合いなど、企業関係者と立ち入ったコミュニケーションを積み重ねなければ事業はできない。

富山商業高校の安田隆教諭は「必要なのは社会の人たちからしかられたり褒められたりすることです」と語り、高校時代に「TOMI SHOP」の社長を務め、現在潟Iーパーツに勤務している藤井南さんは「いろいろな立場の人とお話をしても、気後れしないでお話しすることができるのは『TOMI  SHOP』の経験があるからだと思います」と言っている。「コミュニケーション能力の向上」はまさに社会に出るための準備であり、職業人養成のための重要な教育機会となっている。

コレが言いたい――「信頼」の体験が「社会人」を育てる

山本氏は、「14歳の挑戦」の意義について次のように語っている。

「困ったときに人に助けてもらうことの重要さを知るのです。今、学生時代から『自己実現』を教えようとする気運が高まっていますが、それはどうなのでしょうか。自分がどうしていいか分からない時、やり方が分からず思うように物事が進まない時に、人の助言に耳を傾け、相談してみること。いろんな人が手を差し伸べてくれるんだということが心に残ることが、今の中学生にとっても、社会全体にとっても大切なことなのです」(同上、8ページ)。

こうした言葉にも示されているように、小さな職業体験が人への信頼、社会への信頼を生むきっかけとなり、生徒たちは自分も人に「手を差し伸べて」あげられる人間になりたいと感じるようになる。これはまさに「社会人育て」である。周りの大人たちが支えてくれることを体験し、人に対する信頼が生まれ、さらに自分もその役割を果たしたいと思うようになり、社会人になっていく。こうした「社会人育て」を通して、若者の健全な職業観が醸成されていく。それを地域の試みとして実践している富山県から学ぶべきことは多い。

(2006/10/05 執筆)  

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