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投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 4 月 24 日 23:55:26: mY9T/8MdR98ug
 

(回答先: 投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 4 月 24 日 23:51:13)

http://www.jrcl.net/web/frame080428b.html

空自イラク派兵は憲法違反

占領軍兵員・物資輸送は戦闘行為
バグダッド空港周辺は戦闘地帯

武力行使と一体
化した活動だ

 四月十七日、名古屋高裁の「自衛隊イラク派兵差し止め訴訟」控訴審判決(青山邦夫裁判長)で画期的な判決が出された。原告が求めていた「イラク派兵差し止め」は却下されたものの、航空自衛隊がイラクで行っている多国籍軍の兵員・物資輸送に対して、憲法九条に違反するということが、この上なく明確な論理で判決文に明示されたのである。
 判決文は、自衛隊イラク派遣の違憲性について次のように言う。
 「03年5月のブッシュ大統領による主要な戦闘終結宣言の後にも米軍を中心とする多国籍軍はファルージャ、バグダッド等の都市で多数の兵員を動員して武装勢力の掃討戦等を繰り返している。その結果、双方に多数の死者が出るのみならず、子どもたちを含む民間人を多数死傷させ、重大かつ深刻な被害を生じさせている」。
 判決文はさらに、イラクの現状を宗派間の対立と、各武装勢力と多国籍軍との戦闘がからみあった「泥沼」と規定した上で、特に首都バグダッドは「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、物を破壊する行為が現に行われている地域というべきで、イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当すると認められる」としている。
 「航空自衛隊は米国からの要請を受け、定期的にクウェートのアリ・アッサーレム空港からバグダッド空港へと武装した多国籍軍兵員を輸送していると認められる。バグダッド空港は米軍が固く守備をしているとはいえ、その中にあっても離着陸時においても現実的な攻撃の可能性がある旨を防衛相が答弁している」。
 したがって自衛隊の行っている多国籍軍の兵員輸送は「戦闘行為がなされている地域と地理的に近接した場所で……戦闘行為に不可欠な軍事上の後方支援を行っている」のであり、「少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸するものについては他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるをえない」。
 「よって、イラク特措法を合憲とした場合であっても武力行使を禁止したイラク特措法と、活動地域を非戦闘地域に限定した同法の条項に違反し、かつ憲法9条1項に違反する活動を含んでいると認められる」。

政府の言い分
は完全に否定

 この判決文は、自衛隊のイラク派兵の違憲性を主張してきた反戦運動の主張が、きわめて当然の事実に立脚したもので、数々の詭弁を弄してイラク派兵の「合憲」性を述べたててきた政府の言い分がまったく通用しないことを確認するものである。実際、イラク派兵を強行した小泉元首相は「自衛隊は戦争のために行くのではない。人道復興支援のために行くのだ」とか「どこが戦闘地域か非戦闘地域か私に分かるわけがない」「自衛隊の行くところが非戦闘地域だ」などと答弁してきた。
 陸上自衛隊が二〇〇六年にサマワから撤退して以後も、航空自衛隊はクウェートの基地からイラク全土に派遣地域を拡大し、バグダッドやイラク北部のアルビルにまで兵員・物資を輸送してきた。小牧基地から派遣された常時三機のC130輸送機は現在では週四〜五日、イラク国内の三空港に飛び、輸送回数は二〇〇四年三月の活動開始以後、六百九十四回(4月17日現在)に及んでいる。
 当初、政府・防衛省は航空自衛隊の輸送機は国連関係の要員や復興支援物資を輸送している、と述べてきた。しかしイラク派兵差し止め訴訟原告団・弁護団が開示を求めた輸送記録は、そのほとんどが黒く塗りつぶされたものであり、自衛隊の輸送機が武装兵士、軍用品を運んでいることを問わず語りに明らかにするものだった。
 今回の判決は、航空自衛隊の輸送支援が「戦闘地域」における多国籍軍の戦争、すなわちイラクの市民を幾万も殺戮した軍事作戦への参加であり、「戦闘行為」にほかならないことをはっきりと示したのである。

平和的生存権に
具体的権利性

 さらに今回の高裁判決は、原告らの「平和的生存権」の主張についても踏み込んだ判断を下している。
 判決文は「憲法9条が国の行為の側から戦争放棄や戦力不保持を規定しているところから、平和的生存権は憲法上の法的な権利として認められるべき」としている。
 「憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行などによって個人の生命、自由が侵害されたり、戦争の遂行への加担・協力を強制されるようなときには、裁判所に違憲行為の差し止めや損害賠償請求により救済を求めることができる場合があると解することができ、平和的生存権には具体的権利性がある」。「『平和』が抽象的概念であることなどを根拠に平和的生存権の権利性や具体的権利性の可能性を否定する見解があるが、憲法上の概念はおよそ抽象的なもので、否定されなければならないという理由はない」。
 自衛隊イラク派兵差止訴訟の会と自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団は、この判決を「日本国憲法制定以来、日本国憲法の根本原理である平和主義の意味を正確に捉え、それを政府の行為に適用したもので、憲政史上最も優れた、画期的な判決である」と高く評価した。
 確かに今回の判決は、派兵差止請求については「行政権の行使に対し、私人が民事上の給付請求権を有すると解することはできないことは確立された判例」であるとして退けた。また損害賠償請求についても「控訴人らの具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められず、損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益が生じているということはできない」とした原告の請求を却下した。したがって形式的には被告である国の勝訴であり、原告の敗訴である。
 しかし逆に、被告である国が「勝訴」した結果として国は上告できず、「敗訴」した原告の側も上告しない態度を決めたことで、このイラク派兵違憲判決は確定することになったのである。イラク反戦運動は事実上勝利したのであり、自衛隊をイラク侵略戦争に参戦させた国の側は敗北したのである。

危機感むき出し
で居直る政府

 今回のイラク派兵違憲判決に対して、福田内閣と与党は危機感をむきだしにしている。
 「政府は総合的な判断の結果、バグダッド飛行場は非戦闘地域の要件を満たしていると判断している。高裁の判断には納得できない。バグダッド飛行場には商業用の飛行機も多数出入りしている。危険な飛行場であれば、民間機が飛ぶはずがない」と町村官房長官はムキになって反論した。しかしこの「総合的な判断」とは何か。結局のところ「イラク特措法によって非戦闘地域にしか自衛隊が行けないのだから、自衛隊が行く以上そこは非戦闘地域だ」とする小泉元首相と同様な居直りにすぎない。また「民間機が飛んでいるから安全だ」というのなら、なぜ日本政府はイラク全土からNGOや民間人を退避させるのか。
 高村外相や石破防衛相は、判決が主文以外の傍論の部分で違憲判断をしたことを批判した。さらに高村は、「外相をやめてヒマになったら判決文を読んでみる」などとウソぶいた。「百人斬り」名誉棄損訴訟や大江・岩波沖縄戦訴訟で原告側代理人となり、映画「靖国」上映中止問題の口火を切った極右の稲田朋美・自民党衆院議員は、「原告敗訴」のため「勝訴」した国が上告できないことを捉え「最終決定は最高裁にあり、それを封印するような違憲論展開こそ憲法違反」といきまいている。
 田母神俊雄・航空幕僚長にいたっては、四月十八日の記者会見で名古屋高裁判決に対して「そんなの関係ねえ」と、とぼけた。防衛省や自衛隊幹部は一様に「現地で苦労している自衛隊員の心情を思いやるべき」などと語っている。しかし、明白に違憲・違法で不正な侵略戦争に駆り出されている一般自衛隊員を踏みにじっているのは、政府・防衛省と自衛隊幹部の側なのである。「陸自の復興支援活動は周辺国でも好意的に受け止められていた」とするクウェートのNGO「イスラム人権委員会」ムバラク・モタワ事務局長すら、「米兵らを輸送する空自の活動は軍事的任務であり、アラブ諸国で平和国家として知られる日本のイメージを損なっている」というほどなのだ(「朝日」4月18日)。

イラク・インド
洋から撤退を

 追い詰められた政府・自民党は、司法の違憲判断への圧力をさらに強めるだろう。自民党内で今国会中の上程をめざしている「派兵恒久法案」作成の衝動も強まるだろう。それが憲法9条そのものの改悪を必然化させる。
 しかし本紙前号で紹介した「読売」憲法世論調査の結果に示されるように、小泉・安倍政権が推進してきた憲法改悪へのコースには赤信号が灯った。それはイラク侵略戦争の完全な破綻と米帝国主義の政治的・軍事的・経済的覇権の危機、さらには全世界であらわになっている新自由主義的グローバリゼーションの矛盾の深まりに規定されている。
 先述した「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」と「自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団」の声明は「三権の一つであり、かつ高等裁判所が下した司法判断は、法の支配の下では最大限尊重されるべきである。行政府は、立憲民主主義国家の統治機関として、自衛隊のイラク派兵が違憲であることを示した司法判断に従う憲政上の義務がある」としている。
 今こそ自衛隊のイラクからの撤退、そしてインド洋からの撤退をただちに実現するために、福田政権の居直りと「知らん顔」を許さず、攻勢をかけていこうではないか。

 (4月19日 平井純一)
 

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