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アジアを読む 「“死の商人”逮捕 武器ヤミ取り引きの実態」(解説委員室ブログ)
http://www.asyura2.com/08/wara1/msg/909.html
投稿者 gataro 日時 2008 年 4 月 01 日 10:16:27: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/600/7849.html から転載。

2008年03月31日 (月)
アジアを読む 「“死の商人”逮捕 武器ヤミ取り引きの実態」

▼映画
(ニコラス・ケイジ)
「今世界には5億5000万丁の銃がある、ざっと12人に1丁の計算だ。残る課題は1人1丁の世界」

(岩淵梢キャスター)
アフリカや中東などの紛争地に銃やミサイルなどの大量の武器をヤミ取り引きで売りさばく武器商人。
その実態を描いたアメリカの映画で、ニコラス・ケイジ扮する主人公のモデルとなった人物が今月初め、タイのバンコクで逮捕されました。
男はロシア人のビクトル・ブート容疑者。国際指名手配されていた悪名高い武器密売人で、「死の商人」と呼ばれていました。
世界最大規模の武器密売のネットワークを運営し、アルカイダやタリバンとの取り引きも指摘されています。
「死の商人」逮捕の背景とヤミ取り引きの実態にメスを入れます。
ここからは山内聡彦(としひこ)解説委員とともに進めます。

(岩淵キャスター)
Q1:逮捕されたブート容疑者とはどんな人物なのですか。

(山内解説委員)
A1:旧ソビエト時代は空軍のパイロットでしたが、軍の情報機関員かKGBの工作員だったという情報もあります。
ブート容疑者は旧ソビエト連邦の崩壊後、老朽化して放置されていた軍の輸送機に目をつけ、安く買い集めて、25歳の若さで航空貨物輸送のビジネスを始めました。そして輸送機や貨物船を使ってアフリカなどの紛争地に武器を密売する世界最大規模のネットワークを築きました。
ブート容疑者は世界で暗躍する最も悪名高い武器商人の1人で、「死の商人」と呼ばれています。彼は語学に非常に堪能で6ヶ国語を話し、7つの名前と5つのパスポートを持っていたと言われています。まるで映画のような話です。

(岩淵)
Q2:そのブート容疑者が逮捕されたきっかけは何だったのでしょうか。

(山内)
A2:数カ月に及ぶアメリカの捜査当局のおとり捜査によるものです。
まずアメリカ政府の協力者が南米コロンビアの左翼ゲリラを装って彼に武器の調達を依頼しました。そしてブート容疑者が今月6日、交渉のため自宅のあるモスクワからタイのバンコクに入国した際、タイの警察に逮捕されました。
取り引きの内容は左翼ゲリラ・コロンビア革命軍に地対空ミサイル100基やライフル銃数千丁を売り渡すというもので、ブート容疑者は武器の輸送費だけで500万ドルの報酬を得ることになっていました。
彼はテロ行為に加担した疑いが持たれ、逮捕された際、「ゲームは終わった」と述べましたが、その後容疑は否認しているということです。

(岩淵)
Q3:ブート容疑者はこれまでどんな武器取り引きをしていたのですか。

(山内)
A3:彼は武器のヤミ市場では世界的に有名な人物で、3年前、武器商人の実態を描いたアメリカの映画のモデルにもなっています。
これはその映画の一部です。俳優のニコラス・ケイジさんがロシア人の武器商人に扮しています。アフリカ諸国の独裁者と直接、取り引きをしたり、輸送機で紛争地に大量の武器を運び込む様子が描かれています。
ブート容疑者は実際、戦争犯罪人として起訴されているアフリカ・リベリアのテーラー元大統領に大量の武器を売り渡していました。
主にアフリカのアンゴラやリベリア、シエラレオネ、またアフガニスタンやイラク、そして南米のコロンビアなどの紛争地の独裁政権や反政府ゲリラ、テロ組織を相手に取り引きをしていました。
また売っていたのは主に旧ソビエト製の武器で、カラシニコフなどの銃やミサイルから、戦車や戦闘機に至るまで、あらゆる種類のものを扱っていました。

(岩淵)
Q4:アジアの国々にも武器を売っていたのですか。

(山内)
A4:アフガニスタンでは1990年代、同時多発テロが起きるまでの間、イスラム原理主義のタリバン政権と、敵対する北部同盟の双方に武器を売っていました。
イデオロギーに関係なく、紛争当事者の双方に武器を売り込むのが、ブート容疑者のやり方です。
また国際テロ組織アルカイダとも取り引きがあったということです。
その一方で、ブート容疑者はイラク戦争の際にアメリカ政府にも協力していたことが明らかになっています。
アメリカのメディアによりますと、ブート容疑者の関連企業が、国防総省と下請け契約を結び、アメリカとイラクの間の物資の輸送をしていたということです。輸送はあわせて1000回に及び、国防総省はおよそ6000万ドルを支払ったということです。
アメリカ政府がブート容疑者の関連企業の協力を得ていた事実は、当時のウォルフォヴィッツ国防副長官が3年前に議会に提出した書簡の中で認めています。

(岩淵)
Q5:ブート容疑者はどのようにして旧ソビエト製の武器を入手したのですか。

(山内)
A5:ロシアやウクライナなど旧ソビエト諸国にある軍の武器庫から不法に入手したと見られています。
旧ソビエトの軍事基地には大量の武器が保管され、そうした武器はロシアだけでも貨車にして75万両以上にのぼると見られています。しかも軍は腐敗し、武器は組織的に横流しされていると見られています。
一方、旧ソビエト諸国では軍の武器庫が爆発する事故が相次いでいます。私も連邦崩壊直後に極東のウラジオストクに2年間勤務しましたが、太平洋艦隊の武器庫が爆発する事故が2回も起きています。
当時は不注意による事故とされましたが、実は武器の横流しの証拠を隠すためにわざと爆破したものではないかという見方も出ています。
ブート容疑者も連邦崩壊後の混乱の中、軍内部の協力を得て武器をひそかに入手したものと見られています。

(岩淵)
Q6:ブート容疑者のような有力な武器商人はまだほかにもいるのですか。

(山内)
A6:ロシアのメディアによりますと、世界の武器のヤミ市場を支配している有力な武器商人はブート容疑者を含めてあわせて7人いるということです。そして、7人全員が旧ソビエト諸国の出身者だということです。
ヤミ市場で取り引きされる武器は年間50億ドルから100億ドルにのぼっています。国連によりますと、世界の銃の4分の1がヤミ市場で売買されているということです。ブート容疑者は7人の中で最も目立った存在で、武器の輸送のため50機の輸送機と貨物船の船団を持っているということです。
しかし、世界中の警察が行方を追っているのに捕まるのはまれで、7人の武器商人のうち捕まったのはブート容疑者が3人目だということです。

(岩淵)
Q7:世界に出回っている武器の多くは武器商人が密売したものなのでしょうか。

(山内)
A7:そうではありません。武器商人が売りさばくものは一部に過ぎません。
これはおととしの主な武器の輸出国を表したものです。
世界最大の武器輸出国はアメリカで、冷戦終結後一貫して第1位を占めています。目覚ましい成長が続くロシアも急速に武器の輸出を伸ばしています。
上位にならんでいる国のほとんどが国連安保理の常任理事国であることが注目されます。
一方、主な武器の輸入国は中国が第1位です。次いでアラブ首長国連邦、インド、ギリシャ、韓国などとなっていて、アジアの国々が上位を占めています。
武器商人はもちろん非難されるべきですが、最大の武器商人はアメリカやロシアなどの大国であるという事実を忘れるべきではないと思います。

(岩淵)
Q8:ブート容疑者がこれまで捕まらなかったのはなぜでしょうか。

(山内)
A8:まず彼がこれほど大がかりな武器の密輸を行なっていることがあまり知られていなかったことがあります。
注目されたのは国連が2001年に内戦の続くリベリアとの武器取り引きの関連で彼をブラックリストに乗せたのがきっかけです。
▼またアメリカの対応も首尾一貫したものではありませんでした。
アメリカはブート容疑者を国際手配する一方で、イラク戦争では彼の関連企業の協力を受けていました。背景にはアメリカが武器のヤミ取り引きの取締りよりもイラク戦争の方に関心を向けていたことがあります。
▼さらにブート容疑者はロシアの軍需産業やプーチン政権の要人と深く結びつき、特別の扱いを受けていたと見られています。
彼が逮捕を免れてきた背景にはこうした事情があったと思います。

(岩淵)
Q9:そのブート容疑者がついに逮捕されたわけですが、今後どうなるでしょうか。

(山内)
A9:タイで裁判にかけられたあと、アメリカに身柄を移して捜査が続けられる見通しで、有罪になれば、最高15年の懲役刑になる可能性があります。しかし、ロシア政府がタイ政府に対して身柄の引き渡しを求めていると伝えられ、仮にそうなれば、重い罪に問うのは困難になることも予想されます。
冷戦終結後の混乱の中で台頭したブート容疑者は「ポスト冷戦の産物」とも言える存在です。
今回の逮捕で彼が違法な武器取引を行なうのは不可能になりましたが、残念ながら、その空白は長くは続かず、すぐに別の人物によって埋められることになるだろうと思います。


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