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イスラエルとシリアの和平交渉(田中宇 国際情勢分析ニュース)
http://www.asyura2.com/08/wara2/msg/366.html
投稿者 近藤勇 日時 2008 年 5 月 03 日 16:20:39: 4YWyPg6pohsqI
 

イスラエルとシリアの和平交渉
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 中東ではここ数日、イスラエルとシリアとの和平交渉が進展している感じが
強まっている。交渉は、トルコが仲裁している。イスラエルが1967年の第
三次中東戦争でシリアから奪って占領しているゴラン高原を返還する見返りに、
シリアは傘下に置いているヒズボラ(レバノン南部)とハマス(ガザ)という
2つのイスラム武装勢力が南北からイスラエルを攻撃するのを抑止する構想だ。

 仲裁担当のトルコからは、最近外相がシリアを訪問してシリア側と話をまと
め、次はトルコの代表が近くイスラエルを訪問する予定になっている。目下の
問題は、シリアがイスラエルに対し「交渉に入る前に、ゴラン高原からの撤退
を保証すると表明してほしい」と求めていることだ。シリア人はイスラエルを
憎悪している。シリア政府が自国民を説得して交渉に入るには、このぐらいの
前置きが必要ということである。
http://www.hurriyet.com.tr/english/turkey/8800883.asp?gid=231&sz=40500
http://www.haaretz.com/hasen/spages/978432.html

 イスラエルが弱体化させたいレバノンのヒズボラは、シリアだけでなく、イ
ランの影響も強く受け、イランはヒズボラに軍事訓練を施している。イスラエ
ルとイランは強く敵対したままの状態だ。だが、シリアのムアッリム外相は、
先日イランの首都テヘランを訪問時に、イランのモッタキ外相と共同記者会見
を行い、そこで「イスラエルが和解したいのなら、シリアは喜んで交渉に応じ
る」と発言した。シリア外相の発言がテヘランにおいて、イラン外相を横に置
いて発せられたということは、シリアとイスラエルの和解には、イランも賛成
していることを意味している。
http://www.rightsidenews.com/20080429825/global-terrorism/the-shift-toward-an-israeli-syrian-agreement.html

▼テロ戦争に乗って失敗したイスラエル

 イスラエルとシリアが和解交渉する構想は、1990年代からあった。20
00年には、トルコの仲裁によって和解交渉開始の一歩手前まで進んだが、当
時のイスラエルのバラク首相が最後の決断をせず、交渉は見送られた。

 当時、すでにアメリカでは、ウールジーCIA元長官らネオコンが「いずれ
イスラム過激派が米本土でテロを行う。米当局は防ぎきれない」といった発言
を繰り返していた。米政府は1997−98年に、アフガニスタンのイスラム
武装勢力タリバンの政権に対する支持(アフガンを安定させパイプラインを通
す構想)を撤回し、タリバン政権に「ならず者国家」のレッテルを貼り、敵視
に切り替えた。1997年から2001年にかけて、アメリカの世界戦略は
「テロ戦争」の色彩を強め、911事件はその「仕上げ」だった観がある。

 それまでシリアやパレスチナ(アラファト)との和解を模索していたイスラ
エルは、アメリカがテロ戦争をやりそうなのを見て、周辺のイスラム各勢力と
和解するより、アメリカに潰してもらった方が良いと考えを改め、途中まで進
めていたシリアとの和平を打ち切ったのだろう。(アメリカがテロ戦争の戦略
を開始したというより、在米イスラエル右派勢力が頑張って米政界に食い込み、
米政府にテロ戦争の戦略を採らせたと考えた方が良いかもしれない)

 01年の911事件、03年のイラク侵攻を経て、アメリカの「テロ戦争」
「中東民主化」は本格化し、シリアやイラン、ヒズボラ、ハマスなどのイスラ
ム勢力は、いずれアメリカに潰される運命に見えた。しかしその後、米ブッシ
ュ政権はイスラム敵視策を過激にやりすぎてイスラム世界全体を敵に回し、イ
ラク占領はゲリラ戦の泥沼にはまり、アメリカの中東戦略は大失敗している。

 ブッシュ政権は自国を失敗させただけでなく、イスラエルを窮地に陥れた。
06年初めにはイスラエルの反対を押し切ってパレスチナで議会選挙をやらせ、
反米反イスラエルの過激派ハマスが圧勝し、米イスラエルが交渉相手にしてい
たファタハは弱体化した。イラクでは、弱い勢力にすぎなかった反米のシーア
派指導者サドル師を、米軍がことさら敵視した結果、サドルは反米の英雄とし
て有名になり、今やイラクで最も強いゲリラ軍団を持っている。イランのアハ
マディネジャド大統領も、アメリカが過度に敵視した結果、中東全域で英雄視
されている。ブッシュ政権は、表向きはイスラエルを強く支持しているが、実
際にやっていることはイスラエル潰しである。
http://www.tanakanews.com/070724neocon.htm

▼シリアと和解し、イランの策動を止める

 ブッシュ政権は05年ごろから「米軍はイラクで占領の泥沼に陥っているの
で、代わりにイスラエルがヒズボラやシリア、イランと戦争してくれ。援護す
るから」と何回も持ちかけ、06年8月にイスラエルはヒズボラと戦争したが、
アメリカは大した援護をしなかった。アメリカに騙されていると気づいたイス
ラエル政府は、ヒズボラとの戦争開始から約1カ月後に何とか停戦にこぎつけ
た。だが、国際社会でのイスラエルのイメージは大きく悪化し、中東の世論は
イスラエル敵視の度合いを一気に強めた。ヒズボラはイスラム世界で英雄となった。
http://tanakanews.com/g0727israel.htm
http://tanakanews.com/g0822israel.htm

 その後も、イスラエルの右派(野党リクード右派)は、ブッシュ政権(特に
チェイニー副大統領)と結びついてイスラム敵視を続け、イスラム側との停戦
や和解を進めたいイスラエル政府(オルメルト政権、中道派・現実派)を阻止
する動きを展開した。米イスラエルの右派と、イスラエルの中道派との暗闘は
続き、イスラエルとイスラム側(イラン、シリア、ヒズボラ、ハマス)との関
係は、戦争の扇動と回避の両方の方向性が交錯し続けた。
http://tanakanews.com/070308mideast.htm
http://tanakanews.com/070213iran.htm

 昨年6月には、パレスチナの半分であるガザで、反米のヒズボラが、親米の
ファタハを追い出して政権をとった後、ハマスとイスラエルが戦争になり、そ
れがイスラエル北方のレバノン(ヒズボラ)やシリアとの戦争に飛び火する可
能性が強まった。イスラエルは、戦争を避けるため、再びトルコの仲裁によっ
てシリアとの和解を模索するようになった。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/865421.html
http://www.haaretz.com/hasen/spages/883338.html

 ハマスとヒズボラは、石油やガスの収入があるイランから支援されて軍備を
増強しているが、ハマスもヒズボラも、イランとの連絡はシリアを経由してい
る。シリアがイスラエルと和解すれば、ハマスやヒズボラに代理戦争させてイ
スラエルを潰したいイランの画策は阻止できる。

 だが、イスラエルから和平を持ち掛けられたシリアは「イスラエルだけでな
く、アメリカも同席するなら交渉に応じる」「先にイスラエルがゴラン高原を
返すなら交渉に応じる」と言ってきた。米ブッシュ政権はシリアを敵視し、む
しろイスラエルとシリアを戦争させようとしてきたから、アメリカを交渉の席
に引っぱり出すのは無理だった。ゴラン高原の返還には、イスラエル国内の右
派が猛反対だった。
http://www.dailystar.com.lb/article.asp?edition_id=10&categ_id=2&article_id=83901
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1183980038909&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull

▼緊張関係の背後で交渉模索

 イスラエルのオルメルト首相は昨年7月、シリアに向かって「アメリカの仲
介を期待せず、直接交渉しよう」と呼びかけた。しかしシリアのアサド政権は
現在まで、アメリカ抜きでイスラエルと和解するのを拒否している。中東で最
も嫌悪されるイスラエルと和解したら、シリア内外の世論はアサド大統領を裏
切り者扱いし、イスラム主義勢力が国内で反乱を起こし、政権が転覆されかね
ない。それを防ぐため、アサドはイスラエルだけでなくアメリカとの和解も同
時に実現し、欧米に経済制裁を解除させ、国際社会への復帰を成し遂げ、シリ
アの経済と国際的地位を上向かせることで、国民の反感を抑えたい。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/880335.html
http://en.rian.ru/analysis/20080430/106262366.html

 イスラエルをシリアやヒズボラと戦争させたい米ブッシュ政権は、イスラエ
ルとシリアの交渉を潰そうと画策した。その一つが昨年9月、イスラエル空軍
機にシリアを空爆させることだったと思われる。空爆の経緯は機密のままだが、
イスラエル政府が空爆について報道官制を敷いて沈黙した半面、米政府筋やネ
オコンは「空爆対象は作りかけの核兵器用原子炉だった」と、証拠もほとんど
示さず言いふらし続けた。
http://www.abcnews.go.com/International/story?id=3601746&page=1
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/II20Ak06.html

 以前の記事( http://tanakanews.com/080415korea.htm )に書いたように、
シリアが核兵器を開発しているという米政府の諜報分析はでっち上げの可能性
が高い。推察するに、ブッシュ政権はイスラエル空軍機にシリアの施設を爆撃
させ、シリアとイスラエルの仲を裂こうとしたのだと思われる。イスラエル政
府や軍の内部には、右派が多く入り込んでいる。米政府から「シリアが建設中
の原子炉を空爆してくれ」と言われ、中道派のオルメルト政権中枢は、アメリ
カの情報の根拠や真意を疑ったが、政府内の右派から「空爆しなければアメリ
カとの関係が絶たれる」と突き上げられ、空爆せざるを得なかったのだろう。

 昨年秋には、イスラエルでロシア系の大金持ちが右派の頭目ネタニヤフ(リ
クード党首)に巨額献金してテコ入れしたり、イラクで米軍が親米ゲリラに渡
したはずの膨大な武器が、シリア経由でレバノンに密輸され、イスラエルの敵
であるヒズボラに流れたりして、好戦的な形勢作りも進んだ。
http://news.independent.co.uk/fisk/article3075730.ece
http://www.salon.com/news/feature/2007/10/09/gaydamak_bibi/

 今年に入って緊張感はさらに高まり、4月上旬にイスラエルが建国以来の大
規模な軍事演習を行った際、演習に紛れてヒズボラに本物の戦争を仕掛けるの
ではないかとの見方が中東などで広がり、演習中にはイスラエル政府の右派の
閣僚らが「イランを潰す」と発言するなど一触即発の雰囲気となった。私は開
戦を予測したが、実際には戦争は起きなかった。イスラエルは水面下でシリア
との予備的な和平交渉を開始しており、一触即発の軍事演習は、シリアを威嚇
して交渉を有利にするためか、もしくはアメリカに対する目くらましだったよ
うだ。
http://www.debka.com/headline.php?hid=5171
http://tanakanews.com/080406mideast.htm

▼異例な「もうすぐ和平」の感じ

 米ブッシュ政権は、イスラエルをイスラム側と戦争させて自滅させたい。イ
スラエルは、その罠から逃れるため、イスラム側の中で最も和解しやすいシリ
アと和解したい。だがイスラエルは、軍事・経済・外交の全面でアメリカの支
援に頼って国家存続しているので、アメリカの反対を押し切ってシリアとの和
解に踏み切ることはできない。またイスラエルにとっては、自国だけが戦争に
入ると破滅だが、アメリカがイランやシリアを戦争で潰し、イラクのように軍
事占領してくれるのなら、和平よりそっちの方が好都合だ。

 そのためイスラエルは、表向きはアメリカと歩調を合わせ、今にもシリアや
イランを攻撃しそうな雰囲気を醸しつつ、裏ではシリアとの和平を模索してき
た。世界の報道界を主導する米マスコミを操る力は、米政府だけでなくイスラ
エルも持っている(米マスコミにはユダヤ系が多く、シオニストもかなりいる)。
中東情勢に関する世界のマスコミ報道は、戦争と和平の両方のプロパガンダが
交錯し、何が事実か見極めが難しい状況が続いている。
http://tanakanews.com/g1228mideast.htm

 4月上旬のイスラエルの軍事演習でシリアやヒズボラとの緊張が高まったも
のの開戦しなかった後、4月下旬になると、今度はシリアとイスラエルが和平
交渉をしているという話が流れてきた。ここ2−3年間、シリアとイスラエル
の両方が、断続的に和平の意志を表明していたが「もうすぐ和平が実現するか
もしれない」と感じられる状況は、今回が初めてだ。「もうすぐ戦争」は何度
もあったが「もうすぐ和平」はなかった。

 今回の和平話も、イスラエルが醸し出す幻影なのかもしれないが、今回の話
が異例である一つの点は、アメリカが長年イスラエルに課してきたシリアとの
交渉禁止を撤回したことだ。4月29日、アメリカ・ユダヤ委員会(American
Jewish Committee)の年次総会に出席したライス国務長官は「シリアとイスラ
エルが和平を求めるのなら、アメリカは決して和平には反対しない」と述べた。
米シンクタンクの研究者は「(シリア・イスラエル和平交渉に対する)アメリ
カの政策は、赤信号(反対)から黄信号(容認)に変わったが、まだ青信号
(支持)ではない」と述べている。
http://www.forward.com/articles/13288/

 北朝鮮がシリアに核兵器技術を供与したという話をでっち上げていることな
どから考えて、ブッシュ政権はまだ本心では、イスラエルがシリアと和解して
国家存続することを何とか阻止したいと思っている。それにも関わらず、米政
府がイスラエルとシリアとの和平を容認する姿勢を見せ始めたということは、
和平交渉は幻影ではなく、本当に交渉に入りそうな段階に来ていると考えられ
る。交渉開始後も反対し続けると、米議会などで「ホワイトハウスは中東の平
和を望まないのか」と批判されかねない。

▼北朝鮮を使ってイスラエルの和平を潰す

 イスラエルとシリアは、3月から4月にかけて水面下で和平交渉への準備を
進めたと思われるが、この時期はちょうど、ブッシュ政権が北朝鮮に「シリア
に核兵器技術を供与した」と認めさせる買収工作を行った時期と重なっている
(4月8日のシンガポールでの米朝交渉で買収話がまとまった)。

 北朝鮮からシリアへの核供与は事実ではなく、アメリカがでっち上げた話を
北朝鮮に認めさせることによって、事実であると見せかけている。おそらくブ
ッシュ政権は、シリアとイスラエルの和平交渉を阻止するため「北朝鮮がシリ
アに核技術を供与し、イスラエルはシリアの建設途中の原子炉を空爆した」と
いう話を蒸し返したのだろう。
http://tanakanews.com/080415korea.htm

 米政府は4月30日に発表した2007年度のテロ支援国家リストから北朝
鮮を除外しなかったが、韓国の朝鮮日報は、5月中に北朝鮮が核事業の廃棄開
始を宣言し、それを受けて米政府は北朝鮮をテロ支援国家リストから除外する
だろうと書いている。国交正常化を準備するためワシントンと平壌に相互の連
絡事務所を置く構想も出てきた。
http://www.state.gov/s/ct/rls/crt/2007/103711.htm
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200805/200805020009.html
http://english.yonhapnews.co.kr/national/2008/05/01/41/0301000000AEN20080501005700315F.HTML

 同時に米議会は「米政府が北朝鮮をテロ支援国家リストから外す場合は、事
前に議会で詳しい説明を行わねばならない」という新しい法律(新条項)を作
るべく動いている。米議会がこのような抑止的な動きをするということは、米
政府は本気で北朝鮮をテロ支援国家リストから除外するつもりだろう。
http://ap.google.com/article/ALeqM5iplfPvIKEHbAUiY7XjLwrQ6MdQvQD90CGG4G0

 ブッシュ政権は、でっち上げによってイスラエルとシリアの和解を阻止し、
でっち上げに協力する北朝鮮には、制裁解除という「ご褒美」を与えようとし
ている。イスラエル潰し(イラン強化)と、北朝鮮(とその後見人の中国)へ
の優遇を同時にやるのは、米英イスラエル中心の世界システムを壊して世界を
多極化しようとするブッシュ政権の戦略の一環に見える。

▼和平交渉の目的は米政権交代までの時間稼ぎ

 イスラエルとシリアの和平は実現するかどうかまだわからないが、かりに実
現しても、中東における敵対関係に大した変化をもたらしそうもない。

 イスラエルは、シリアにゴラン高原を返す見返りに、シリアからヒズボラ、
ハマスへの援助を止め、シリアとイランの関係を切ろうとしているが、イスラ
エルの要求がかなう可能性は低い。シリアは、表向きヒズボラなどへの支援を
停止し、イランとの関係を疎遠にするふりをするかもしれないが、非公式には
支援や関係を続けるだろう。イスラエルはシリアを非難するだろうが、シリア
は非難は事実無根だと言うだろう。イスラエルがシリアを制裁したければ戦争
しかないが、イスラエルはそもそもシリアと戦争したら自滅だから和平交渉す
るのであり、戦争は不可能だ。

 シリアにとっては、ほとんど失うものなくゴラン高原を得られる。シリアと
イランの関係も実質的には失われないから、イランが和平に賛成するのは納得
できる。イランはシリアにかなりの軍事経済支援を行っており、もともとシリ
アはイランとの関係を切れる状況にない。

 イランのアハマディネジャド大統領は、イラク戦争後、中東全域で強くなっ
たイスラエルへの憎悪に乗って、反イスラエル的な発言を繰り返し、イラン内
外での人気を高めた。アハマディネジャドがイスラエルと和解したら、人気は
失墜し、イラン人は彼の経済政策のひどい失敗を非難し、失脚させてしまうか
もしれない。アハマディネジャドは、イスラエルと和解するわけにはいかない。
イランを巻き込んだ和平はあり得ない。

 イスラエルは和平してもイスラム側の敵対を崩せず、ゴラン高原を返還する
だけ損なのに、何故にシリアと和平交渉をしたいのか。私が見るところ、イス
ラエルが得ようとしているのは「時間的猶予」である。

 ブッシュ政権は「隠れ多極主義」で、米英イスラエル中心の世界システムを
崩壊させる一環として、イスラエルに自滅的な戦争をやらせようとしている。
だが来年1月にブッシュ政権の任期が終わり、次の政権になったら状況が変わ
るかもしれない。もっと素直にイスラエルの言いなりになる米政権ができる可
能性がある。だから、それまでの約9カ月間、何とかしてヒズボラやハマスが
イスラエルを攻撃してこないように時間稼ぎする必要がある。その時間稼ぎの
方策として、イスラエルはトルコに仲裁を頼み、シリアとの和平交渉を準備し
ているのではないか。

 和平交渉に入っても、実際に和平が締結され、ゴラン高原からイスラエルの
軍と入植者が撤退するまでには、かなりの時間がかかる。その間、シリアはヒ
ズボラやハマスにイスラエルを攻撃させないだろう。イスラエルは、ブッシュ
政権の残りの9カ月間、ゆっくり交渉を進め、交渉の途中で次の米政権になっ
たら、アメリカを和平に参加させるなどして、シリアに対してもっと強硬な姿
勢に転じられる。もしくは、米軍にイランを潰させたり、レバノンやガザに米
軍を駐留させてイスラエルを防衛させることも夢ではない。

▼米大統領選挙を操る

 米大統領選挙は、民主党でオバマとクリントンがぎりぎりの選挙戦を続けて
いる。米政界に強大な影響力を持つイスラエル系の圧力団体が民主党のどちら
かの候補を隠然と応援する見返りに、その候補は当選後にイスラエルのために
イランを潰す戦争をすることなどを誓うといった戦略があり得る。イランを潰
せれば、シリアやヒズボラやハマスは後ろ盾を失う。
http://www.forward.com/articles/12998/

 もしくは、共和党のマケイン候補がイランとの戦争をイスラエルに誓った見
返りに、イスラエル系の団体は民主党の側でオバマとクリントンの共倒れを誘
発しているのかもしれない。すでに3人の大統領候補は昨年から、競って何度
もイスラエル支持を公約しており、その卑屈な姿は哀れだ。イスラエルが大統
領を決めるアメリカが民主主義のモデルとされているのは、現代世界の巨大な
偽善の一つである。
http://news.yahoo.com/s/afp/20080416/pl_afp/usvoteisraeldemocratobama
http://www.haaretz.com/hasen/spages/969882.html

 現在のブッシュ大統領は、2000年に当選する前に、イスラエルに対して
「イラクに侵攻してフセイン政権を潰します」と約束し、当選後にそれを履行
したと考えられる。イスラエルは今年、同じ戦略をやっている。約束を履行し
なければ、イスラエル系の団体が米議会やマスコミを動かし、スキャンダルを
大騒ぎに発展させて大統領を弾劾する。ウォーターゲート事件で辞任したニク
ソン(冷戦を終わらせようとした)や、モニカ・ルインスキー(ユダヤ系)と
の不倫で弾劾されたビル・クリントン(イラク侵攻を拒否した)の前例がある。
パパ・ブッシュはイスラエルに和平を強要したので再選を阻まれた。

 とはいうものの、イスラエルは現ブッシュ政権にイラク侵攻を約束・挙行さ
せて安泰になるはずが、ブッシュ政権の「政権転覆の約束を過剰に挙行する」
という隠れた戦略によって、逆にイスラエルは窮地に陥れられている。次の米
大統領が誰になるにしても、イスラエルがその人物に何を約束させたとしても、
結果はイスラエルの思い通りにならないかもしれない。

 イスラエルがシリアと和平交渉に入り、ヒズボラやハマスがイスラエルを攻
撃するのを延期させても、まだブッシュ政権にはイスラエル潰しの次の手があ
る。それは、アメリカ自身がイランの核施設などを空爆し、イランが報復的反
撃をイスラエルに対して行うように仕向けることである。中東の緊張は、まだ
まだ続くと予想される。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/080502syria.htm

★音声訳
http://www.voice-news.net/

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