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【日経ビジネス】オバマ大統領はイラクから撤退できるのか;引き起こされる悲劇は“最悪の前例”を超える可能性も
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投稿者 passenger 日時 2008 年 6 月 16 日 04:43:18: eZ/Nw96TErl1Y
 

【日経ビジネス】オバマ大統領はイラクから撤退できるのか;引き起こされる悲劇は“最悪の前例”を超える可能性も


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080612/161839/

NBonlineトップ>国際>山崎養世の「東奔西走」  

オバマ大統領はイラクから撤退できるのか
引き起こされる悲劇は“最悪の前例”を超える可能性も

      2008年6月16日 月曜日 山崎 養世
      国際  米国  大統領選挙  ベトナム戦争  オバマ  イラク 

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 「オバマという若手のすごい政治家が現れた」とジャーナリストの船橋洋一氏に教えていただいたのは3年前のことでした。それ以来注目していたバラック・オバマが、ヒラリー・クリントンを抑えて、ついに民主党の大統領候補になりました。

 大統領選挙は米国を映す鏡のようです。今、米国国民は大きな変化を求めているのでしょう。白人の母親とケニア人の父親の間に生まれ、インドネシアやハワイで育った、オバマという存在そのものが“CHANGE”を体現しています。

 「われわれは白人ではない。黒人でもない。米国人だ」という言葉は、オバマの口から出てこそ訴える力がありました。ハーバード大学を優秀な成績で卒業した弁護士で、シカゴで地域改善運動に取り組んだオバマが「米国人すべてに、教育や医療や仕事のチャンスがあるべきだ」と主張した時に、多くの国民が支持しました。


●オバマが直面する “超難題”

 明らかに、21世紀の世界では、西洋支配、白人支配の構造が崩れつつあります。19世紀から台頭した日本に続き、大国中国やインドが復活に向かい、ブラジルや中東が急成長を続けます。そんな中、超大国米国に有色人種の血を引くオバマ大統領が誕生すれば、世界の変化を体現するでしょう。人種や宗教や文化の壁を超えた新しい世界を作る指導者として、オバマは歓迎されるかもしれません。

 そんな希望を持たせる力を、オバマは持っています。

 でも、仮にオバマが米国大統領になった場合に直面する現実は、極めて厳しいものでしょう。今の米国の限界がオバマを押し上げるのですから、当然かもしれません。

 オバマが約束した、世界第2の産油国イラクからの米国軍の撤退は、中東地域全体を巻き込む大きな紛争を引き起こしかねません。ただでさえ高騰し続ける石油の供給に致命的なダメージを与え、世界経済の大混乱が予想されます。

 地域紛争がテロや戦争のかたちでどれだけ世界にショックを与えるかは今の時点では予想もできません。かといって、米国軍が撤退しなければ、オバマ新大統領は重大な公約違反を問われ、信頼性に大きな疑問符がつけられることになるでしょう。


●イランと妥協すれば核抑止力はなくなる

 米国軍がベトナムから撤退してから、インドシナ半島には恐ろしい殺戮と恐怖の時代が10年も続きました。イラクからの米国軍の撤退はさらに複雑で大規模な恐怖と破壊の可能性を秘めています。

 16万の米国軍が撤退すれば、イラク南部のシーア派地域は、最大のシーア派国家イランの事実上の支配下に入るでしょう。かといって、イランとの妥協なくして米国は撤退もできません。そうなれば、イランの原子力開発に反対する米国の力は大きく後退し、イランが核兵器の開発に走っても、米国にはもはや抑止力はなくなります。

 イランが核兵器を持てば、インド、パキスタン、イスラエルと核保有国が連なる核ベルトができます。そうなれば、シリア、サウジアラビア、エジプトも核保有に走る可能性が濃厚になります。シーア派のペルシア人国家イラン対スンニー派のアラブ諸国の対立の構図も鮮明になるでしょう。

 イスラエルがイランやシリアに先制攻撃を仕掛ければ、また中東戦争が勃発する危険があります。今は米中両国に抑えられている北朝鮮の立場も、パキスタンやイランとの関係強化によって、核武装の脅しに参加するかもしれません。日本はテポドン以上の脅威にさらされるかもしれません。

 トルコとの国境にまたがってイラク北部に400〜600万人が暮らすクルド人たちも、独立を求めて立ち上がるかもしれません。石油資源を握る彼らがオイルマネーを使って武装を強化し、独立戦争を仕掛けるかもしれません。

 もちろん、南のシーア派、北のクルド人に対して、最大の人口を持ち、しかし、石油を持たないスンニー派アラブのイラク人たちは、米国の撤退と同時に勢力拡大のための内戦を仕掛けるかもしれません。

 さらに、イラクに入り込み様々なテロ活動を展開してきたアルカイーダなどのゲリラ・テロ組織も勢力拡大のための闘争を展開するでしょう。


●ブッシュの幻想が残した、とてつもなく高いツケ

 イラク戦争を始めることで米国はパンドラの箱を開けてしまったのです。サダム・フセインにまたお願いして統治してもらうしかないだろう、と皮肉を言いたいところですが、米国はサダムを処刑させてしまったのです。

 残酷な独裁者が力で統治していた地域を民主主義で統治できるという幻想を抱いたブッシュの米国が、とてつもなく高いツケを新大統領に払わせる時期が近づいているのです。

 核兵器を中心とした軍事超大国であるという米国の強みは、イラクの地を核攻撃で人の住まないところにするという悪魔のような決意でもなければ発揮できるものではないことは最初から分かっていたはずでした。米国は世界一の民主主義国家であり、中東民主化のための聖戦としてイラク戦争を国民にも世界にも宣伝した時点で、かつて日本に原爆を落とした米国の軍事優位は封印されました。占領軍としての米国の統治の成否は、イラク国民の判断に委ねられるわけですから、軍事ではなく、政治と文化と受容の問題になることは、イラク戦争開戦の時には世界の多くの人には自明のことでした。

 太平洋戦争開戦に当たってはあれほど謙虚に日本という国の歴史と日本人を研究し、戦後統治に成功した米国が、信じられないほどイラクについても中東についても無知な指導者たちによってイラク戦争に突き進んでいったさまは驚くべきことでした。

 もともと、イラクは微妙なバランスの上に成り立つ国家でした。北部を支配するクルド人と南部を占めるシーア派イスラム教徒のアラブ人地域には石油資源が出ます。

 ところが、バグダッドを中心とした最大のスンニー派イスラム教徒の住む地域では石油は出ません。サダム・フセインはこうした複雑で利害が対立する勢力を力で抑えつけていました。


●中東の現実は“ネオコン”には関係なかった

 20世紀の初めまでは、イラクはオスマン帝国の一部でした。ところが、中東に巨大な石油資源が眠ることを知った英国などの欧州諸国は、衰退期に入っていた600年の歴史を持つ大帝国オスマンからの独立運動を各地で支援し、帝国各地での権益を狙いました。

 第1次大戦でドイツ帝国の側に立ったオスマン帝国は、敗戦とともについに崩壊しました。オスマン帝国は、ケマル・アタチュルクが指導するトルコ共和国として日露戦争でロシアを破った日本を範とした近代国家として刷新しました。

 しかし、オスマン帝国の崩壊は、今に続く中東の混乱と殺戮の始まりでした。ローマ帝国の倍の長さも存続したオスマン帝国は、優れた統治政策を持っていました。東欧から中東、さらにエジプトまでを領土とし、多民族、多宗教の共存を許し、被支配者の東欧の優秀な人材を宰相に任じる伝統さえありました。

 ローマ帝国と同じく、帝国臣民となることが平和と安全と文明の享受というメリットがあったからこそ、大帝国が続いたのでした。民族自決、独立の美辞麗句の裏で資源と植民地の獲得に奔走した英国などの欧州諸国によって、バルカン半島も中東も見事なまでに民族と宗教の対立の絶えない地域に変わったのです。そこでは、独裁権力以外に権力の安定基盤が存在しません。

 そんな中東の現実など、ブッシュ政権のネオコンには関係のないことでした。米国と地域唯一の民主主義国イスラエルと共存し得る中東を作るという夢想にとらわれたのでした。イスラエルがパレスチナ人の土地を強奪して成立し、何度となく国連決議を破る国家であることは米国には不問にされてきたのです。


●日本は世界平和のために主体的に行動できるか

 米国軍の撤退には最悪の前例があるのです。

 1970年代に、米国がベトナム戦争から撤退した後にインドシナ半島は、戦乱と殺戮の地になりました。北ベトナム軍はベトナム全土を制圧し、南ベトナムの支配層だけでなく資産家や知識人や一般国民まで数十万人を強制収容所に送りました。

 圧制を逃れた数百万のベトナム人が船で南シナ海を渡って香港などに流れ着き、ボートピープルと呼ばれました。もちろん、命を落とした人も多くいました。人民の解放というベトコンのスローガンは、全くのウソと分かりました。

 さらに、戦火は拡大しました。統一ベトナムは隣のカンボジアに侵攻し戦争が始まりました。戦火の地となったカンボジアでは、毛沢東主義を標榜したポル・ポト派によって、ベトナムを上回る数百万人の国民の大虐殺が行われました。

 ただ、ベトナムの悲劇はインドシナ半島に限られました。しかし、イラク撤退で生まれるかもしれない悲劇は世界的な規模になるでしょう。

 もし新大統領がイラク撤退を実行するなら、こうした危険を承知で実行する必要があります。そして、世界最大の危険地域であり、世界最大のエネルギー生産基地であり、世界最大の宗教・民族紛争地域での大混乱に対処しなくてはいけないことになります。

 ただ、希望がないわけではありません。皮肉にも、希望を生むのは恐怖の巨大さです。

 ベトナムをはるかに上回りかねない地域紛争と世界経済への影響とテロの恐怖こそが、世界の主要国に、いくら米国が引き起こしたこととはいえ、責任を引き受けて解決のために協力させるかもしれません。また、戦乱がもたらす政権転覆や経済崩壊の恐怖が、中東諸国の指導者に強い自制心を起こすかもしれません。

 米国のイラク撤退がわが身に及ぼす巨大な悪影響を知れば、EU、中国、ロシア、インド、中東諸国などの主要な関係国が、ようやく平和への共同行動をとり、テロ組織への支援を控えるかもしれません。今度こそ、米国が無視した国連の役割も重要になるでしょう。

 米国の新大統領が、イラク侵攻の過ちを認め、世界に協力を求めるのであれば、政権交替の意義がはじめて出てくるかもしれません。

 日本にとっても他人事ではありません。今から様々なシナリオに備え、事態が起きれば主体的に行動しなくてはいけません。世界の平和なくして日本の繁栄はないのです。

(編集部注:都合により月曜日の掲載となりました)

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