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天安門事件とテレサテン
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投稿者 野田隼人 日時 2009 年 4 月 04 日 20:01:30: rgym1W9ZU3nMk
 

天安門事件とテレサテン

40代以上の世代の人たちのなかには、テレサ・テンのファンが大勢いると思います。私もテレサ・テンの歌はデビュー当時から時々耳にしていました。そして、その後大分時間が経ったある日、カミさんが持っていたCDから歌声のきれいな日本語の歌が流れてきたことがあります。最初は日本人だとばかり思っていたところ、昔聞いたはずのテレサ・テンの歌でした。そして、改めてテレサテンの歌声に惚れ直し、「テレサ・テン ベスト全曲集」(Polydor)を購入、今では気が向くと「時の流れに身をまかせ」、「つぐない」、「別れの予感」などを聞きながら仕事(翻訳)をしています。

さて、半年ほど前に有田芳生氏が著した『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』(文春文庫、以降『私の家は山の向こう』)に関心を持ち、オンラインで購入しました。そして、同書の中でテレサ・テンが漢詩を詠ったCD「淡淡幽情」の存在を知ったのです。(サンプルですが、アマゾンドットコムで試聴できます)

ちなみに、同CDに載っている漢詩は以下のとおりです。

1. 獨上西樓(ひとり西楼に登る)
2. 但願人長久(長寿を願って)
3. 幾多愁(悲しみが流れていく)
4. 芳草無情(無情な草の緑)
5. 清夜悠悠(寂しい夜に)
6. 有誰知我此時情(この心は誰も知らない)
7. 臙脂涙(涙は赤い花びら)
8. 萬葉千聲(離別の哀しみ)
9. 人約黄昏後(彼と契った黄昏)
10. 相看涙眼(別れの涙)
11. 欲説還休(憂愁)
12. 思君(あなたを偲ぶ)

http://www.amazon.co.jp/%E6%B7%A1%E6%B7%A1%E5%B9%BD%E6%83%85-%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%B3/dp/B00005FOTN/ref=sr_1_10?ie=UTF8&s=music&qid=1234679483&sr=8-10

 上記のアマゾンドットコムでも、テレサ・テンのCD「淡淡幽情」を某読者は以下のように高く評価していました。


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 本作は83年に発表された、南唐・宋詞に新しく曲をつけてテレサが歌ったもの。このような傑作が存在することを今まで知らずにいたとは、自分の不明を恥じるばかりです。詞は中国の古典・韻律詩ですが、詩とちがって、元来詞牌というメロディーとともに歌うことを目的としたもの。残念ながら今となってはその詞牌がどのようなものであったか復元できないようですが、それを現代の曲で蘇らせようと考えたスタッフのアイデア、そしてそれに見事に応えたテレサの歌唱の見事さに脱帽します。千年も前の詞がこのように瑞々しく歌われようとは驚くばかり。もちろん厳選した詞ばかりなので、当然ではあるのですが、各曲の詞の素晴しいこと。是非ブックレットに印刷された詞を読み下し文で読んでみて下さい。昔の詩人の心が胸に響くでしょう。知らない詩人もいますが、南唐後主、蘇軾、歐陽修、朱淑真等の有名詩人の詞も含まれています。中でも南唐後主の詞を三作採用しているのは、外省人として台湾で生まれ育ったテレサの大陸への思いを反映したものでしょうか。

 曲はどれも聴きやすく、古典の詞を歌ったものだから堅苦しいだろうなどと心配する必要はありません。千年前の古典を現代に蘇らせることに成功した破格の傑作に対し、同じ漢字文化圏の人間として、本作に限りない共感を覚えることは間違いないでしょう。
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『私の家は山の向こう』は、筆者である有田氏のテレサ・テンに対する温かい思いやりで溢れており、等身大のテレサ・テンを伝えてくれる本であると思います。また、「テレサ・テンはスパイであった」とか、「テレサ・テンは中国に暗殺された」などという噂は、単なるデマに過ぎなかったことも同書を通読することで納得できるのではないでしょうか。

ところで、『私の家は山の向こう実』に以下のような記述があります。


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 天安門事件の衝撃はとくに香港では深刻な波紋を呼んだ。1997年にイギリスから中国に返還されることになっていたからだ。民主主義を求める声が軍事力で弾圧されるならば、同じ運命を香港がたどらない保証など何もない。テレサ・テンもそう思っているひとりだった。
 テレサは「血の弾圧」のニュースを涙を流しながら見ていた。悲しさと衝撃で言葉も出なかった。何度も大陸で歌わないかと誘われて、そのつもりにもなっていた。しかし父母の祖国は、民主主義を戦車の力で踏みにじるような国だった。行かなくてよかったと思った。6月4日の事件はテレサ・テンから歌う気力を奪ってしまった。
『私の家は山の向こう』p.179
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また、有田氏も天安門事件について同書の中で以下のように書いています。


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 天安門事件は、意外な破門を世界に及ぼしていた。東欧諸国の社会主義体制が崩壊する象徴となったベルリンの壁の撤去である。そこに至る発端となったのは、東ドイツの中国大使館に対する抗議デモだった。テレサはベルリン市民が壁を破壊するシーンをニュースで見ていた。11月11日のことである。
『私の家は山の向こう』p.186
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残念ながら、有田氏もテレサ・テンも天安門事件の背景について誤解しています。確かに、表層的には1989年6月4日の天安門事件を起こしたのは、ケ小平ら党内の長老グループを中心とした保守派とされています。しかし、実質的な犯人はアメリカ(CIA)でした。また、有田氏はベルリンの壁の撤去の発端は、東ドイツの中国大使館に対する抗議であったと述べていますが、これも違います。

このあたりを明白に書いているのが故坂口三郎氏です。少し長くなりますが、以下に同氏の『世界騒乱の本質 天安門の黒い主役』(明窓出版、以降『世界騒乱の本質』)から引用しておきます。


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 昨年(1989年)5月、北京の天安門広場の騒ぎは、元CIA長官、中国通、ブッシュの悪知恵から出たものである。
 このため、30年間断絶していた中ソ国交回復のために北京を公式訪問したゴルバチョフは北京に入ることもできず、空港で形だけの式典を済ませてモスクワに帰らねばならぬことになった。
 ブッシュの知謀はみごとに成功した。
 それから半年後、ベルリンの壁が撤去された。これが北京におけるブッシュの仕打ちに対するゴルバチョフの応答であった。
 これは、春の天安門事件よりも深刻な衝撃を欧米、特にフランスとイギリスに与えた。
 あわてたのはブッシュ、恐怖したのはミッテラン、困惑したのはサッチャー、歓喜したのは全ドイツ国民、戸惑ったのは日本の政治家、気をよくしたのは北京の首脳達であった。
 天安門広場におけるスローガン“自由と民主化”には実体はない。しかしベルリンの壁の撤去は40年間にわたってドイツ民族を苦しめてきた民族の血を喜びに沸かし、東欧諸民族を解放し、米、英、仏、の占領体制を崩壊させるものであった。
 第一次大戦におけるカイゼルの敗北はドイツにベルサイユ体制という苛酷な重圧を押しつけ、ヒットラーが出てこれを破壊したが、その破壊と共に、ヒットラー自身もその業績も消滅して、ソ、英、米、仏の戦勝国四ヶ国による占領体制がつづいたのであったが、その四ヶ国の中の最もドイツに対して強力な実力を持つゴルバチョフがこれを解放したのである。英も、仏も、米も、これに対して有効な打つ手はない。それで、全ヨーロッパの国家とその権力者達は動乱した。
 超大国の迫害と弾圧に苦しんできた全世界の弱小諸民族は解放と自由に奮起した。
 世界の現状を見て、共産主義の終焉失敗、資本主義の成功勝利、と考えるものが多い。しかしそのようなことはあり得ない。
 すでに明らかにしたとおり、四次元時空の宇宙の大法則により現在が過去化することはない。第二次大戦後の世界の現実は、共産主義よりも先に資本主義が滅びているのである。資本主義は、全体主義の王国、大英帝国の衰退から始まり、第二次大戦後のアメリカの金本位帝国によってその余暇を維持してきたが、ジョンソンとニクソンのベトナム制服の失敗によって昭和45年(1970)金ドルの交換は停止され、8月15日から資本主義は機能を喪失、脳死したのである。
『世界騒乱の本質』p.33
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基本的に私も坂口氏の上記の主張に同意します。ゴルバチョフのソ連とケ小平の中国は、中ソ国交回復に水を注されただけでなく、中国は深刻なイメージダウンにつながりました。そして、それに対する報復が半年後に起こったベルリンの壁の撤去という形になって現れたことになります。爾来、20年の歳月が流れ、すでに1970年に壊死していた資本主義は、誰の目からも明らかな形でを2008年9月16日(リーマンブラザーズの倒産)に臨終を迎えるに至りました。

現在の世界的な経済危機は百年に一度どころではなく、数百年に一度の割りで起こる、欧米主導型の資本主義の「リセット」であるという点に注意が必要です。これは今年の1月に久しぶりに会った脱藩道場の道友が主張していた点であり、私も正にその通りであると思います。巷では欧米型資本主義の終焉とか、中国の時代になるとか、日本が世界の牽引車になるとか色々と言われていますが、数百年のタイムスパンから見れば、やはり今度台頭するのも形を変えた欧米主導型の“新資本主義”のはずです。

それに加えて、産業革命が人類の思考・行動様式を根底から変えてしまったように、現在進行中の情報革命が間もなく完成し、誰の目にも明らかな形で登場した時点で、またもや人類は新たな大転換期を体験し、今までになかった全く新しい思考・行動様式を身につけていくことになると思います。リセットされた “新資本主義”と情報革命とが組み合わさって、どのような時代を迎えるのかと思うと、つくづく凄い時代に生まれ合わせた幸運に天に感謝したい気持ちで一杯です。  

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