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「優しいおとな」 近未来…希望か、悪夢か 「私の小説は、愛なき世界に向かうのかもしれません」 桐野夏生(きりのなつお) 
http://www.asyura2.com/09/bd57/msg/186.html
投稿者 愚民党 日時 2009 年 8 月 13 日 21:29:39: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 映画  昼の散歩  2 投稿者 愚民党 日時 2009 年 8 月 13 日 20:59:08)

近未来…希望か、悪夢か

「私の小説は、愛なき世界に向かうのかもしれません」

 土曜朝刊で2月7日から始まる桐野夏生(きりのなつお)さんの「優しいおとな」は、真冬の寒空の下、都心の炊き出しに並ぶホームレスらの情景から幕を開ける。少し先の未来に作家が予見するのは、希望なのか悪夢なのか。子供の視点で描く新境地への意気込みを、インタビュー中心に紹介する。

 ――魅力的で意味深な題名です。

 桐野 母親から見た子供の喪失を書いた『柔らかな頬』から10年たって、子供の側から見た大人って何だろうと最近考えるんです。だから、「子供と大人」の関係を考える小説にしたい。子供は、本能的に優しい大人とそうでない大人を選別しているから、「優しいおとな」とつけてみた。皮肉も少しこめてね。

 ――子供と大人の関係?

 桐野 社会人にならない幼い人たちと、社会との緊張関係を描いた小説ってあまりないと思う。私が読みたい話でもある。

 ――子供が気になるのはなぜ?

 桐野 家族、特に母親がすごく変わってきているからです。働く女性も増え、父親も家事や育児を手伝うようになった。一方で、子供を自分をよく見せるための道具や、自分を投影した分身にしてしまう親もいる。お互いの人生が噛(か)み合わず、子供の目に親が理不尽な存在に映っているのでは。一番難しい問題に足を踏み入れたのかもしれませんが……。

 ――桐野さんも子育てを経験していますね。

 桐野 娘はもう20代後半ですが、私が育児に時間を取られた時期に比べても、育児に、モデルケースも、正解も見えなくなっている気がします。

 ――主人公は15歳の少年イオン。福祉制度が崩壊し格差が拡大した近未来の渋谷を生き抜く、ストリートチルドレンの一人として登場します。

 桐野 サバイバルの社会に置かれた無力な子供の目で、世界がどのくらい残酷で、何が過剰で、また何が欠けているのか知りたい。今でも17、18歳のネットカフェ難民はいそうですし、現実の厳しさを、1、2年先に置き換え虚構として膨らませています。

 ――イオンは人への「愛着」を知らない。自分を助けてくれる大人モガミにも、冷たくしてしまう。彼の過去には何があったのか、大きなミステリーとなって読者を引きつけそうです。

 桐野 今はネットがあるから、一人でも何となく人とつながっているような幻想が社会にあふれている。でも他人とのつながりがなくて、人間は、生きていけるんでしょうか。親子や兄弟がどういうものか知らないイオンは、かつて一緒に育った双子を探すことになるはずです。顔形がそっくりな双子にこだわって、血縁というものを目で見て確認したいと思うのです。人は愛がなくて生きていけるのか。結局、それを書くことになるのでしょう。

 ――『柔らかな頬』での直木賞受賞からも今年で10年になります。その間、見えない差別や人の悪意を物語に描いてきた。10年を経て作家として意識の変化はありますか。

 桐野 一時、排除しようとした物語の虚構性を強めて、今はその快楽や心地よさを味わいたいという気持ちが強くなっています。

 ――特にこの数年、毎年のように文学賞を受賞し、純文学、エンターテインメントの両サイドから評価されているのも稀有(けう)なことです。

 桐野 両方できる立場にあるのはすごく恵まれたこと。最近は少し純文学寄りだったので、今度はエンターテインメントの難しさにもう一度挑戦するつもり。面白い小説にしたいですね。

 ――「週刊新潮」で昨年12月から始めた「ナニカアル」では、『放浪記』の作家、林芙美子の知られざる戦時中の姿を描き、単行本の最新刊『女神記』(角川書店)では、日本神話を桐野流の解釈で読み替えた。視点もテーマも異なる多彩な活動ですね。

 桐野 「ナニカアル」の場合は、人間がものを書くことは何だろうという疑問が最初にあって、時代に翻弄(ほんろう)されながら壮絶に生きた芙美子を追究したいと思っています。『女神記』は、古事記のイザナキイザナミの話を大和朝廷の支配の及ばない南方の島に移し、男女の愛憎劇を芯にしています。神話を核にして、自分の物語でくるむ方法をとっていて、大変難しい仕事でした。

 ――その中で、今回の「優しいおとな」はどういう位置づけになるのでしょうか。

 桐野 子供の視点で描くことはあまりしていないので、一つの挑戦です。それから男女の煮詰まった関係は出てこない。もう書き飽きましたから(笑)。世の中の人間関係がどんどん薄くなり若い人も恋愛をあまりしなくなっていて、子供は欲しいけれど夫はいらない、いっそ卵で産めればいいという女性もいる。その意味で、男女の愛憎は時代に求められていないと思うし、私の小説は、愛なき世界に向かうのかもしれません。

(聞き手・佐藤憲一)


題字・挿絵はスカイエマさん 陰影と大胆構図、物語に奥行き

 題字と挿絵を担当するスカイエマさんは30代の新進気鋭のイラストレーター。陰影が深い色彩と大胆な構図で子供たちの世界を描き、注目されている。「原稿を読んで、透明感とシャープで不安定な感性とを持ち合わせている子供たちの世界に引き込まれています。フィクションであるとか近未来であるとかを忘れてしまうくらい、リアリティーがあるのも驚きです」と語る。

 美術関係とは違う仕事をしていたが、美術鑑賞が趣味で約10年前、自身のホームページにイラストを公開。次第に出版社から仕事の依頼が相次ぐようになり、2005年に、ミステリー小説の装画でデビュー。以来、児童書など約20冊の本の装画や雑誌のカットを手がけてきた。「生活感のある、子供の風景を描くのが好き。奇麗だしなんともいえない魅力があるんです」

 新聞連載は初めてで不安もあるというが、「外からの観察者としての姿勢を保って、頑張りたい」と話す。空虚さと切なさが同居するような独特のタッチは、「優しいおとな」の世界を一層深めてくれそうだ。

◎桐野夏生ヒストリー◎

【1993年】
――『顔に降りかかる雨』で第39回江戸川乱歩賞受賞。作家「桐野夏生」の出発点に
「重い扉が開いたと喜んだのも束(つか)の間、スタートに過ぎませんでした」

【1998年】
――『OUT』で第51回日本推理作家協会賞
「パート労働に喘(あえ)ぐ主婦の実状を知ってもらいたくて書きました」

【1999年】
――『柔らかな頬』で第121回直木賞
「失踪(しっそう)した子供を捜し求める、悲しい物語です」

【2003年】
――『グロテスク』で第31回泉鏡花文学賞
「評価という重荷を背負って苦しむ女の人たちに捧(ささ)げる小説です」

【2004年】
――英語版『OUT』が日本人作家初のエドガー賞ノミネート
「たいへん光栄に思っています」

――『残虐記』で第17回柴田錬三郎賞
「谷崎潤一郎の同名小説から、インパクトのあるタイトルを拝借しました」

【2005年】
――『魂萌(たまも)え!』で第5回婦人公論文芸賞
「なるべく身近な題材で淡々とした日常を書くことに挑戦しようと思ったのです」

【2008年】
――『東京島』で第44回谷崎潤一郎賞
「4年という長い連載でした。グロテスクなシチュエーションなので、戯画化して書いたのがよかったのでしょうか」

(2009年2月2日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20090202bk16.htm




 

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