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【「黒船」グーグルが日本に迫るデジタル開国】 日本の出版社を突如襲った“想定外”の和解問題 (弁護士:村瀬拓男さん)
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投稿者 passenger 日時 2009 年 5 月 02 日 17:24:38: eZ/Nw96TErl1Y
 

【「黒船」グーグルが日本に迫るデジタル開国】 日本の出版社を突如襲った“想定外”の和解問題 (弁護士:村瀬拓男さん)


 
 


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http://diamond.jp/series/google/10001/

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村瀬拓男(弁護士)
【第1回】 2009年04月30日

日本の出版社を突如襲った
“想定外”の和解問題


 ここ1か月あまり、出版界の話題は「グーグル和解問題」で持ちきりです。この業界に長年身を置き現在法律を生業としている筆者も、行く先々でこの問題についての質問を受けます。これほど出版界を揺るがす「グーグル和解問題」とは何か。この問題の本質は何かを見ていきましょう。


●「グーグル和解問題」とは何か?

 事の発端は、2004年にグーグルがアメリカ国内の図書館などと提携して、書籍の本文を電子的にコピーしデータベース化したことでした。これを「グーグルライブラリプロジェクト」と名づけ事業をスタートさせたのです。これに対し、2005年9月、米国作家組合は、著作権侵害を理由としてグーグルを相手に訴訟を提起しました。追って主要出版社も同様な訴訟を提起しています。

 グーグルはこの事業を、公正な利用すなわち「フェアユース」であると位置づけ、権利者の許諾なく進めてきました。それに異議を唱えたのがこの訴訟だということになります。この訴訟の結果は、著作物をフェアユースの名の下にどこまで自由に使えるのか、という問題に一定の判断が下されることになるので、衆目を集めることとなりました。その結果が昨年10月の和解ということでした。つまりグーグルも作家協会らもフェアユースの問題に結論を出すことなく、和解することで合意したのです。

 和解案は150ページ以上に及ぶ長大なものですが、その骨子をかなり乱暴に要約すると、

(1)すでにデジタル化されている書籍については、作家などの権利者に1冊あたり60ドルをグーグルが支払う。

(2)今後グーグルが運営する「書籍データを利用したサービス」の全収益の63%を権利者に分配する。

(3)書籍の権利者は、データベースからの削除や使用方法の一部禁止をグーグルに対して求めることができる。

というものです。

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http://diamond.jp/series/google/10001/?page=2


●「黒船」グーグルに揺れる日本の著者・出版社

 この和解について、一部のマスコミは「黒船」と表現しました。この和解をもって、グーグルが日本に対し「デジタル開国」を求めたというわけです。この比喩は当たらずといえども遠からずというレベルでしょう。

  なぜなら、日本の書籍であってもアメリカでの和解案が影響するうえに、今年の5月5日までに和解に対する態度を決定せよ、というのです。つまり、ほとんどの権利者がこれまで具体的に考えることがなかった「自分の本がインターネット上でデータベース化され、いろいろな形で利用される」ということを認めるのか認めないのかが迫られたということなのです。

 日本語の「言葉の壁」は地理上の国境とほぼ同じであり、海外での翻訳出版を別とすれば、日本の権利者たちは日本国内だけを見ていればよかったのです。これを「鎖国状態」と評するならば、インターネットでの利用の是非判断を強制することは「デジタルによる開国を迫る」ことに等しいとも言えます。

 またこの和解案では、グーグルは和解金として4500万ドル、今後のデータベース利用による収益を権利者に分配する組織の設立と維持コストとして3450万ドルを拠出することになりますが、グーグルが約8000万ドルという金の力を背景とした要求は、武力を背景とした「黒船」を彷彿とさせます。


●なぜアメリカでの和解が日本に及ぶのか


 このようにアメリカ国内の和解が日本(実は日本だけではなく世界中)に影響を及ぼすことになるのには、二つの法律上のロジックが介在しています。和解は本来当事者のみを拘束するものだからです。

 一つめは「集団訴訟(クラス・アクション)」です。これはもともと公害訴訟のように、被害者が平等に救済されることが求められる事件において、一部の人が他の人から訴訟遂行を委任されていなくても、全体の代表として訴訟をすることができる、という制度です。この制度のもとでの和解や判決の効力は、当事者と同様の立場にいる全員に及びますし、まさにそれを狙った制度です。

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http://diamond.jp/series/google/10001/?page=3

 グーグルはこの訴訟において被告でしたから、集団訴訟として扱われると、和解金についても訴訟に参加していなかった者に対しても払わなければなりません。普通に考えれば避けたい処理でしょう。しかし集団訴訟にしてしまえば、訴えてこなかった権利者に対しても和解の効力を押し付けることができます。金銭的負担さえ覚悟すれば獲得したい権利を短期間で全て獲得できるのですから、もしこの処理をグーグル側が求めたのであれば、技をかけてきた作家組合らに返し技をかけて一本とりにきた、という印象です。

 こうして、集団訴訟によってすべての権利者にこの和解の効力が及ぶことになりましたが、これが海外の権利者にまで効力を及ぼすことになったのは、二つめのロジックである「ベルヌ条約」です。

「ベルヌ条約」は著作権に関する国際条約であり、ほとんどの国が加盟しています。著作権は本来創作された国の著作権法により保護されていますが、「ベルヌ条約」の加盟国間では自国の著作物と同等の保護が求められますので、日本の著作物でも、アメリカにおいてはアメリカの著作物と同じように保護されることになります。逆にアメリカの著作物に対して許されている使用方法は、日本の著作物に対しても許されることになります。このことにより、日本の著作物にもアメリカ国内においてこの和解の効力が及ぶことになったのです。


●「和解以外は現実的でない」出版業界の行く末とは

 このように、日本の著作物であってもこの和解の効力が及ぶことになったため、権利者は和解に参加するのか、それとも離脱(オプト・アウト)するのかという選択肢を迫られることになりました。期限は今年の5月5日です。何の行動も起こさなければ和解に参加したことになり、離脱するならば、和解管理ウェブサイトを通してその旨を通知しなければなりません。

 和解に参加した場合、すでにグーグルによってデジタル化されている書籍1冊あたり60ドルを和解金として受けとるほか、2011年4月5日までに通知することによって、グーグルのデータベースから書籍データを除去することを請求できます。また、データベースはいろいろな形で利用されることになっていますが、画面上で本文を読むことができるような使い方については、いつでも使用停止を請求することができます。データベースの利用方法についてはいくつか考えなければならない問題がありますので、回を改めてレポートしていきます。

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http://diamond.jp/series/google/10001/?page=4

 和解から離脱した場合、和解案には拘束されませんが、当然のことながらグーグルに対する異議申立て、訴訟などの手続は独自に行わなければなりません。グーグルはフェアユースという主張のもとに、和解対象外の書籍についてはこれまで通り電子的にコピーしてデータベース化し、ユーザーに提供していくでしょうから自らの労力と費用をもって対抗しなければならない、ということになるのです。乱暴なようですが、フェアユースの主張のもとに著作物が使用された場合は、異議がある権利者は裁判手続によって対抗し、司法の場でフェアユースの限界が作られていくのが、アメリカにおけるルールです。

 そこで日本の出版社は、和解から離脱したくても膨大な労力と費用を負担しなくてはならず、現実的な選択肢となりにくいという状況なのです。これが日本の出版社が直面しているジレンマです。

 このように、今日本の著者、出版社は、グーグル和解問題への対応を迫られています。しかしこの問題は、単にアメリカにおけるグーグルのサービスを容認するのかどうか、ということに止まりません。フェアユース規定についても、現在日本において導入の可否が検討されていますし、デジタル化された著作物の流通についての法制度も不十分であり、特に出版物については欠落しているとしか言いようがない状況です。

 グーグル和解問題の対応は、実は日本においてまだ議論が整理されていない著作権の問題について判断をしなければならないということに他なりません。本コラムではそれらの問題を具体的に考えていきたいと思います。

(なお、文中にある和解離脱期限とされていた5月5日は、4月末に9月4日に延長されました)

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http://mainichi.jp/life/electronics/news/20090501ddm012040173000c.html

書籍デジタル化:グーグル問題 和解案、谷川俊太郎さんら拒否

   (毎日新聞 2009年5月1日 東京朝刊)

 インターネット検索サービス大手の米グーグルが進める書籍データベース化問題で、詩人の谷川俊太郎さんら日本の著作権者180人が同社の和解案を拒否する通知を送ったことが30日、分かった。データベース化を巡っては、期限までに和解案を拒否しなければ、自動的に日本の著作権者にも和解内容が適用される、としている。

 拒否したのは、日本ビジュアル著作権協会(曽我陽三理事長)の会員。文部科学省で同日、会見した代理人の鈴木淳司弁護士は「和解案はあいまいで、なし崩し的に日本の著作権が侵される恐れもある」と指摘。谷川さんは「納得できる仕組みづくりを」と訴えた。

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毎日新聞 2009年5月1日 東京朝刊
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http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090425ddm012040133000c.html

書籍デジタル化:グーグル問題、日本ペンクラブが抗議声明

    (毎日新聞 2009年4月25日 東京朝刊)

 インターネット検索サービス大手の米グーグルが進める書籍デジタル化を巡り、グーグルと米国の作家団体側が合意した和解案が日本の著作権者にも及ぶ問題で、日本ペンクラブ(阿刀田高会長)は24日、「表現の自由と出版文化の発展に大きな影を落とす。安易に容認できない」と抗議する会長声明を発表した。

 和解案は、グーグルによるデジタル化やデータベース販売などを認める見返りに作家側へ収益を分配することが柱。5月5日までに除外を申し出ない限り、日本を含めた「著作権に関するベルヌ条約」の加盟国にも及ぶ。

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グーグル日本版格下げ、ページランク「9」から「5」に
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毎日新聞 2009年4月25日 東京朝刊
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http://mainichi.jp/life/electronics/news/20090416ddm041040055000c.html

書籍デジタル化:米グーグルに対し文芸家協会が抗議声明

   (毎日新聞 2009年4月16日 東京朝刊)

 インターネット検索サービス大手の米グーグルが進める書籍デジタル化問題で、社団法人・日本文芸家協会(坂上弘理事長)は15日、同社に対し「無断複製は承服できない」とする抗議声明を発表した。

 声明では、デジタル化を「日本の著作権法上、許されない行為」と指摘。米国の訴訟で提示された和解案についても、著作権者が具体的な行動を取らなければ自動的に複製を承認したとみなされる点を問題視している。同協会は会員に「最低限の防衛策」として、和解に応じたうえでデータの削除を要求するよう勧めている。

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毎日新聞 2009年4月16日 東京朝刊
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