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統計データでは見えないところに存在する問題・根が深い中国の水環境問題(1)(日経エコロミー)
http://www.asyura2.com/09/china02/msg/283.html
投稿者 賢者の石 日時 2009 年 10 月 20 日 02:29:57: Qf5ShLuWtoZHs
 

http://eco.nikkei.co.jp/column/eco-china/article.aspx?id=MMECcj000025092009&page=1
(本文中《クリックで拡大》の所にはリンク先に画像有り、また図もリンク先に有り)

中国の水質汚染問題については、このコラムでも各種話題を紹介しながら何回も取り上げてきたが、今回は中国全体の水質汚染の状況について少し詳しく取り上げたい。水質汚染は、数ある中国の環境問題の中でも最も根本的であり深刻な問題のひとつである。

■水資源の絶対量が不足している中国

茶色に濁った黄河(中流域)<撮影:小柳秀明>

中国の水質汚染問題を理解するには、水量と水質の両面からとらえる必要がある。中国は水資源大国(水資源総量約2兆8000億立方メートル)といわれているが、実際は13億以上の人口を有しているため1人当たりに換算すると世界平均(約7000立方メートル)の3割程度(約2150立方メートル)しかない。図1は2008年の中国全土の降水量分布を見たものだが、北西部は雨が少なく(年間100ミリ以下)、南東部が多い(年間1500ミリ以上)。日本の年平均降水量は図2のとおりだ。実際、長江以南に水資源総量の約8割が偏在しているという。このように地域偏在、さらには季節偏在も存在するから水資源を安定的に利用するのは難しい。

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また、年による変動も大きい。図3は全国平均年降水量の暦年変化を見たものであるが、渇水年と洪水年とでは2倍以上の開きがある。最近では06年に四川省、甘粛省、重慶市などで干ばつが激しかった。

甘粛省の省都蘭州市では観測始まって以来の少雨で、緑化事業も大打撃を受けた。過去6年間にわたり植樹した7万ヘクタール余りのうち、6割以上に当たる4.3万ヘクタールの樹木が枯死するなどの大きな被害を受けた。

一方、08年初めには南部地域を中心に記録的な大雪に見舞われるなど気候が安定していない。08年末から09年初にかけては北方地域で大干ばつだった。

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水資源量が絶対的に少ない北方地域では慢性的な水不足だ。特に北京、天津など人口1000万人以上を抱える大都市では、周辺地域から水を集めるのも既に限界に達している。南方地域の豊富な水資源を渇水で悩む北方地域に運ぼうという大計画がいわゆる「南水北調」事業である(図4)。

1952年に毛沢東が構想を発表して以来、50年間にわたり調査研究が行われた。東ルート、中央ルート、西ルートの3線が計画され、このうち、東ルートが02年に、中央ルートが03年に着工された。一部完成し、導水が開始されている。

中国の環境白書(08年中国環境状況公報)によれば、全国の地表水の汚染は依然として厳しい状況にあるとしている。また、湖沼およびダムの富栄養化の問題も深刻だ。

 主要な七大水系(長江、黄河、珠江、松花江、淮(ワイ)河、海河、遼河)では、08年に支川を含む200の川の409ポイントで国レベルのモニタリングが行われているが、I〜III類(飲用に適した水質)55.0%、IV〜V類24.2%、劣V類(V類より劣る)20.8%となっている(注1参照)。南部の降水量が多く水量が豊富な珠江、長江の水質は全体的に良好で、最北部の松花江は軽度の汚染、黄河、淮(ワイ)河、遼河は中度の汚染、海河は重度の汚染となっている(図5)。

 (注1)中国でも日本と同じように、水域の使用目的と保護目的に応じた環境基準が定められている。水域は表1のようにT類からX類までに分類されており(X類の基準を満足できない水質の場合は劣X類と表現される)、T類からIII類までは飲用に適した水質。

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湖沼やダムの汚染は河川以上に深刻だ。国が重点的に監視している28の重点湖沼(ダムを含む)のうち、II〜III類を満足する湖沼はわずかに6つ(I類はゼロ)で、IV〜V類が11、劣V類は11となっている(図6)。

江蘇省の太湖、安徽省の巣湖及び雲南省のデン池は重点対策を講ずべき3湖沼として有名だ。90年代後半から重点的に対策がとられるようになった。いずれも周辺地域の飲用水源として利用されているが、巣湖がV類、太湖及びデン池が劣V類の水質になっており、飲用水源として利用するには極めて劣悪な水質になっている。

ペンキを溶かしたように富栄養化で真緑と化したデン池<撮影:小柳秀明>

春から夏にかけて毎年のようにアオコが大量に発生して利水障害を起こしている。湖面が緑色のペンキを流したように色づき、浄水場取水口で取水停止になることもしばしば起こっている。07年春に太湖で大発生したアオコは大きな社会問題にもなった。

七大水系および重点三湖の主要な汚染物質は表2のように発表されている。生物化学的酸素要求量(BOD)や過マンガン酸塩指数はいずれも有機汚濁を表す指標であり、窒素およびりんによる汚染は富栄養化していることを示している。

以上のようなマクロ的な統計データを眺めてみただけではわからないこともたくさんある。例えば比較的水質が良好とされている長江を例にとってみよう。国が実施している長江水系のモニタリングポイントはわずかに104カ所だけだ。中国最大の河川である長江は全長約6300キロメートル、その主流は10の省・直轄市(青海、四川、雲南、重慶、湖北、湖南、江西、安徽、江蘇、上海)を通過して流れる。

 この長江に流入する支流の数は計り知れない。たとえば、長江中流域にある湖北省を通過する長江の長さは1046キロメートルあるが、湖北省内で両岸からこの長江に合流する中小河川(湖を通して長江に合流する河川も含む)は合計で3596本にも及ぶ。

 長江主流の水質が比較的良好だからといって長江流域全体が問題ないわけではない。水質汚染の問題は長江本流でなく、これらの中小河川で問題になっている場合が多いということに注意しなければならない。逆に長江本流で問題が顕在化するようになったらもう手のつけようがない。

製紙工場からの汚染物質で汚れた白河<撮影:小柳秀明>

長江の二次支流、さらには三次支流以下にどのような問題が存在するかは国の発表データを見ただけではわからない。以前のコラムでも紹介した(「がんの村」抱える中国、水俣を視察――公害・健康問題と向き合い始めた中国(上)(08/01/21))が、07年3月、私は長江中流域の湖北省にあるジャイ湾村という(注:「ジャイ」は「曜」から「日ヘン」をとったもの)「がんの村」(がん患者が多く発生している村)を訪ねた。

この村ではかつて付近を流れる「白河」(長江の二次支流)の水を直接飲用水として利用していたが、80年代にこの河の汚染がひどくなってからは深さ10メートル余りの浅井戸を掘って飲用していた。90年代になるとその浅井戸も河川の汚染の影響を受けるようになり発がん性のある六価クロムやベンゼン、メチルベンゼンが検出された。

この白河の支流「ディアオ河」(長江の三次支流に当たる)の汚染はもっとひどく、黒く濁り泡立っていた。地元の説明によれば、主な汚染原因は製紙工場からの排水と上流地域の生活排水だ。このような地域の汚染は国の発表データには反映されていない。

真冬の氷で覆われた白洋淀<撮影:小柳秀明>

北方の渇水地域では問題はもっと深刻だ。河北省にある白洋淀という湖は上述の重点湖沼の1つだ。もともとは366平方キロメートルほど(琵琶湖の約半分)の大きさの華北地域最大の淡水湖であったが、干ばつ続きで水位が徐々に下がり、面積は100平方キロメートルまで縮小した。水深は1メートル程度で、流入水がなければ1年で湖の水がなくなってしまう危機的状況にある。この湖には9本の河・水路が流れ込むが自然流水はほとんどゼロ、下水処理場からの処理水や生活排水、工場排水などが流れ込むばかりだ。

もともと自然流水がほとんどなかったわけではない。上流に飲料水源・農業灌漑(かんがい)用のダムを4つも造って水を堰(せ)き止め、ただ1本残っていた自然流水のある河川の水は北京市へ持っていかれてしまったため、断流状態になったのだ。

こんな状況だから現状劣V類の水質が改善される見込みは立たない。水質の良し悪しを論ずる前に水そのものがなくなりつつある。

それでは、このような水質汚染問題を解決するために中国政府はどのような措置をとってきたのか。90年代半ば頃から問題意識が高まり、本格的に対策を講じるようになった。その詳しい内容は次回紹介する。  

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