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「『財政出動』に向かう米国論調の留意点」(2009/01/22)【リチャードクーのKoo理KOO論】
http://www.asyura2.com/09/hasan61/msg/257.html
投稿者 Ddog 日時 2009 年 1 月 23 日 22:41:54: ZR5JcjFY1l.PQ
 

「『財政出動』に向かう米国論調の留意点」(2009/01/22)
【リチャードクーのKoo理KOO論】
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20090120d8000d8&p=1

 それでは、このような巨額な資金を米国政府は実際にファイナンスできるのだろうか。実際、私が国内外で米国の財政出動の必要性の話をすると、世界最大の経常黒字国であった日本はともかく、世界最大の経常赤字国である米国が、本当に日本と同じようにファイナンスができるのかという質問を非常に多く受ける。

国内過剰貯蓄使えば財政赤字のファイナンス問題なし

 しかし、これまでの4.8兆ドルに至る議論のなかで述べたように、この4.8兆ドルは、米国の家計が新たに貯蓄を増やそうとすることで発生するデフレギャップである。逆に言えば、もしも米国の家計が4.8兆ドルも貯蓄を増やそうとしなかったら、最初からデフレギャップは発生せず、政府が景気対策を打つ必要もない。

 ということは、バランスシート不況下でデフレギャップが発生した時には、デフレギャップと同額の過剰貯蓄が同国内で発生していることになる。従って、バランスシート不況下での財政出動は、国内に新たに発生した民間貯蓄を政府が借りて使えば良く、新たに海外から資金調達する必要は、基本的には無い。つまり、経常収支が赤字であるか、黒字であるかにかかわらず、バランスシート不況下での景気対策に必要な資金は、その国の中で発生している民間の過剰貯蓄でまかなえるはずなのである。

 実際、日本でも経済がバランスシート不況に突入し、財政赤字が急拡大していく局面では、多くの財政再建論者が高金利の到来を予測し、日本経済はそこから破滅に向かうと警告していた。しかし、現実は全く逆で、政府債務がGDP比で急増する一方、金利は大幅に下落し、現在も国債の利回りは人類史上最低水準のままである。
これは当然の結果であり、民間が一斉にバランスシート修復に回り、お金を借りて投資をする人が激減しているなかでは、民間貯蓄を運用しなければならない立場にある銀行や生保のファンドマネジャー達は、資金量に比べ運用先がなく本当に困ってしまう。そこに政府が国債を発行する形でお金を借りに来れば、これら民間のファンドマネジャー達は喜んでこの最後の借り手にカネを貸すことになり、だからこそ国債の価格は高くなり、その利回りは低くなるのである。

バランスシート不況下の低金利は「自然の摂理」
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20090120d8000d8&p=2

 つまり、一回バランスシート不況が発生すると、政府は通常では考えられないくらい低い金利で資金調達が出来るのであり、またこれは経済という生き物が市場という場を使って、自分たちの救済を政府にお願いしている声と言えよう。

 その意味で、バランスシート不況下に金利が下がり、市場が政府に財政出動を促すのは、経済が何とか生き残ろうとする「自然の摂理」とも言えるのである。これは、民間が元気な時に政府が財政赤字を出そうとすると、市場が国債金利の上昇を介して、その政府の行動にブレーキをかけようとするのと全く同じ摂理である。

 実際、直近の米国の予想財政赤字額は、わずか数カ月前と比べても著しく増加しているが、米国債の利回りは急低下している。これは15年前の日本で起きたことが今の米国でも起きているということの証であり、米国の債券市場は、ここにきて完全に「バランスシート不況モード」に入ったと言える。そういったなかで、新大統領に財政出動を辞さないとしたオバマ氏が就任したことは不幸中の幸いであったと言えよう。

バーナンキ、クルーグマン両氏も財政出動の必要性にようやく気づいた

 また、これまでは金融政策重視の姿勢だったバーナンキFRB議長やクルーグマン・プリンストン大教授までもが、財政出動の必要性に言及し始めている。これらは彼等が10年前に日本に対して言っていたことと完全に逆であり、注目に値する変化である。

 例えば、クルーグマン教授が10月17日付けのニューヨーク・タイムズ紙に載せたコラム“Let’s Get Fiscal”は、これを読んだ何人もの人から「実はリチャード・クーが書いたのではないか」と言われたほど、これまでの彼の主張とは違っていた。

そのコラムの中で、彼は、バーナンキ議長が経済のためにできることは限られており、利下げをしても経済をわずかに押し上げることぐらいしかできないが、財政政策にはまだ十分にその余地があるとし、また今は、財政赤字の規模を気にする時期ではないとさえ述べている。これは、1999年11月号の文藝春秋で同教授と対談した時の私の主張とそっくりである。

 つまり10年前は、バーナンキ氏やクルーグマン氏は、日本は積極的な金融緩和で不況を乗り切るべきであり、一向にそうせず、財政出動ばかりに頼っている日本を強く批判していた。例えばクルーグマン教授は、私との10年前の対談の中で、当時の日本について「財政には余裕がないと思います。いま問題のカギを握るのは、現在の状況で求められていることがわかっているのに、積極的な金融緩和策をとることを拒否している頑迷固陋(がんめいころう)な日銀だ」とし、「マネーサプライが拡大していくと約束することによってインフレは起こせる。経済が回復基調に乗ったあとも、引き続き量的緩和策を取り続けると約束する。それが最も重要なポイントだ」と述べている。

 またバーナンキ氏も、当時は日銀の政策委員のなかで話を聞くに値するのは(金融緩和を主張している)一人だけだとまで言っていたが、そのバーナンキ氏自身が当時の日銀と同じ立場に置かれ、巨額の流動性供給も史上最速の金融緩和も、当時の日本と同様に全く景気浮揚効果がないと知った今、今度は、当時の日本政府が採っていた財政出動が必要だと言い出したのである。

 この2人が金融政策重視から財政政策重視へと180度スタンスを変えたことは、これまでの日銀の主張が正しかったことを認めたことになり、このことは、これまで金融政策万能論に傾斜していた米国の経済学界が間違っていたことを認めたことになる。

 米国経済学界の主流派を自負していたこの2人が、金融政策は万能ではなく財政出動も必要な時があることに気付いたことは、今後の日本の経済学界の論調にも影響を与えよう。日本の経済学界は米国の受け売りをする傾向が非常に強いからだ。

IMFもマスコミも財政出動の必要性を主張し始めた
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20090120d8000d8&p=3

 また、ここにきてIMFも大きく変わった。これまでのIMFは、その名前が“It’s Mostly Fiscal”の頭文字をとってできたと言われるくらい、財政再建一辺倒だったが、ここに来て、IMFの「組織全体」が財政出動の必要性を認めるようになったからだ。

 このIMFの「組織全体」というのは極めて重要な点である。かつて、このコラムでも触れたように、IMFの事務理事であるストロスカーン氏は、今年の1月から財政出動の必要性、しかも全世界的な財政出動の必要性を繰り返し訴えてきた。

 ところが同氏の主張は、それまで60年間全く逆のことを言ってきたIMFのスタッフ達にはなかなか理解されなかったようである。実際、IMFのスタッフのなかには、同専務理事の主張を「あれは単にストロスカーン氏がフランスの社会主義者だから言っているだけだ」と軽視していた者も少なからずいたのである。

 ところが10月に、私がワシントンで会ったIMFの高官は、IMFが「組織」として財政出動の必要性を認識していると言い、これまでとは流れが大きく変わったことを認めた。実際、11月6日に発表されたIMFによる世界経済見通し下方修正のプレスリリースのなかで、IMFのチーフエコノミストであるオリビエ・ブランシャール氏は、「現時点では世界的な財政出動が必要不可欠である」とコメントしている。

 また、マスコミでも大きく論調が変わってきており、私が前回10月〜11月に米国に行った時には、例えばCNNテレビでは「今回もWPAのようなプログラムが必要なのか」といった議論がなされていた。WPA(Work Progress Administration:就業促進局)とは大恐慌時にルーズベルト大統領がニューディールの一角として打ち出した政策であり、ここだけで800万人の労働者を雇って公共事業の建設を進めた組織のことである。

 そのテレビ番組では、WPAの具体的な内容や、当時実際にWPAで働いたことがある老人のインタビューまで含まれており、これは、アメリカ国民の財政出動に対する期待が急上昇していることを意味する。

ただ「景気が悪いから財政出動」では不況は長引く

 ただ彼等の議論を聞いていて気になるのは、その大半は単に「景気が悪いから財政出動」であり、まだ彼等の認識は「バランスシート不況だから財政出動」にはなっていないという点である。

 この違いがなぜ重要かというと、前者の場合、財政出動で景気が良くなればすぐそこで財政出動はカットされる可能性が高いが、後者の場合なら、民間のバランスシートが回復するまでは財政出動は続けなければならないという意識が働くからである。

 実際にバランスシート不況を経験した日本でも、その当初はバランスシート不況という概念自体がなかったので、これまでの発想で財政出動を実施したが、それで景気が上向くと今度は皆が財政再建を言い出し、それで景気が悪くなると再び財政出動に走るということを繰り返した。この「ストップ・アンド・ゴー」の政策をやってしまったことで、不況は必要以上に長引いて、経済の体力も大幅に減少し、人々の景気回復への期待も大きな失望へと変わっていった。

 これと同じことが米国で起きる可能性は極めて高く、その意味では今回、財政出動があって景気が一時的に上向いても、決して安心してはいけないことになる。少し景気が上向けば、日本と同様、財政再建論者が再度台頭して来て、景気の回復を潰してしまう可能性があるからだ。その意味では、米国内の論調が財政出動に向かっていることは歓迎すべきことであるが、これが一過性のものなのか、それとも、バランスシート不況であるということを認識した上で実施されたものかは、しっかり見極める必要があるのである。


(談・BizPlus 太田盛明まとめ)

 

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