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【経済教室:効果のない政府紙幣発行】日経新聞2009年(平成21年)2月10日
http://www.asyura2.com/09/hasan61/msg/514.html
投稿者 Ddog 日時 2009 年 2 月 11 日 12:00:19: ZR5JcjFY1l.PQ
 

日経新聞の経済教室は毎度素晴らしい記事(論文)が載りますが、これは政府発行紙幣論議の発行反対派を擁護する素晴らしい記事(論文)でした。

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日経新聞2009年(平成21年)2月10日1火曜日23面
【経済教室:効果のない政府紙幣発行】

<ツケは将来の国民に。無利子国債も問題多く>
※政府紙幣は通貨発行益の先取りにすぎず
※.日銀に還流した政府紙幣の扱いが難問
※無利子国債も「打ち出の小づち」たり得ず

深尾光洋 日本経済研究センター理事長

世界経済は深刻な景気後退に直面しているが、財政赤字拡大やゼロに近づく市場金利など、政策面では手詰まり感も強い。そこで政府紙幣や無利子国債の発行による財政出動が議論され、政府・与党内でも注目する向きがある。

政府紙幣が注目されるのは、日銀による日銀券発行の利益認識と政府によるコイン(貨幣)発行の利益認識に違いがあるため、政府紙幣を発行する方が通貨発行益が大きく見えることが原因と思われる。

これは単なる会計方式の違いにすぎず、政府と日銀を連結して利益認識時点を調整すれば、政府紙幣発行は利益を生まず、むしろ財政赤字を小さく粉飾するものにすぎない。相続税を免除するタイブの無利子国憤の発行も、将来の相続税減免損を見返りに金利負担を減少させるもので、同様に一種の粉飾である。

現在の日本では、通貨発行益を認識するのに二つの方法を採用している。日銀が市場から国債を買い入れ、代金として日銀券を売り手に渡す揚合、購入した国債を日銀の資産、発行した日銀券を負債に計上する。日銀はこの段階では日銀券発行の利益を認識せず、国憤からの金利収入が入った段階で日銀券製造費や経費などを差し引いた残額を利益計上する。

一方コイン発行では、政府は発行増加額の95%を発行益として認識し、五%を将来回収する際の準備金として積み立てる。このため発行増加額の95%から貨幣の鋳造コストを差し引いた額が、財政収入として計上されている。

なおコインは日銀経由で発行されているが、新しく鋳造されたコインを日銀が受け取った時点では利益認識されず、日銀から市中に発行された時点で発行益が認識される。

この計上方法の違いは、日銀では、将来、日銀券需要が滅少した際に国債を売りオペして回収することも考慮し、利益を保守的に計上しているからだと考えられる。実際、
政府のコイン発行でも、1982年度までは発行額の100%を準備金として積み立て
て、準備金の運用収益だけを歳入としていた。だが準備金は83年度に10%、95年度に5%に引き下げられた。

財政事情の悪化で、将来の運用益発生を先取りして歳入に計上する会計変更がなされてきた(詳しくは、大久俣和正氏の「政府紙幣発行の財政金融上の位置づけ」、財務総合政策研究所、2004年参照)

日銀が日銀券を発行して将来回収しない覚悟なら、日銀券発行額から製造費を差し引いた額をそのまま利益計上してもよいだろう。その場合、利益の計上はコイン発行に近くなる。だが将来の電子マネーの普及や、金利上昇などで日銀券残高が減少する可能性を考慮すれば、保守的な会計方式採用は当然だろう。

以下では、現在の政府と日銀による二通りの通貨発行益の会計方式を前提に議論を進める。

政府紙幣発行で、政府は本当に将来返済しなくてよい追加歳入を手にできるのか。結論からいえば、将来のどこかでインフレにして物価を上昇させ、通貨に対する取引需要を増大させることができれば、答はイエスである。だが国民には、「インフレタックス」という負担が発生する。つまり物価上昇で通貨価値が下落するという負担である。

逆に、政府紙幣を発行してインフレにしない場合、政府は発行時点で紙幣発行益を計上できる。だが日銀収益減少による日銀から政府への納付金の減少が発生するため、政府は将来増税が必要になる。

さらに巨額の政席紙幣を発行する場合には、日銀収益が赤字になり、政府から日銀への補助金が必要になることも考えられる。このように、政府紙幣発行は、将来の日銀収益を先取りするだけに終わる。

以下では、この結論に至るメカニズムを考えてみよう。

政府が政府紙幣発行による歳入を、現在のコインと同じ方法で会計処理すると仮定しよう。また現在の日銀券と額面が同じ政府紙幣は、法的に日銀券と同じ価値があると仮定しよう。ここで、政府紙幣が日銀の手元に戻ってきてしまった場合の処理が問題になる。政府が日銀から政府紙幣を回収する場合、政府から日銀への支払いが必要になり、その額だけ政府紙幣発行益が使えなくなる。そこで、日銀の手元に回収された政府紙幣は、日銀に保有を義務づけ一切回収しないと仮定しよう。

政府が新しいデザインで政府紙幣を発行した場合、その大半はすぐ日銀に持ち込まれて流通しないと予想される。
これはATMや自動販売機が対応できる紙幣の種類に限度があるためだ。このため、発行した政府紙幣は大半が日銀に還流し、日銀は政府紙幣を「無利手永久国債」として保有することになる。これは、将来の日銀収益を減少させ、日銀納付金を減少させる。

では政府が、現在の日銀券需要である約76兆円を上回るほど大量に政府紙幣を発行するとどうなるだろうか。
日銀が市場金利を0.1%に維持するには、76兆円を超える過剰な政府紙幣をすべて回収する必要がある。それには、金利の付いた日銀売り出し手形を発行するか、日銀の当座預金に利息を付けて吸収する必要がある。

いずれにせよ、日銀の資産の大部分が無利子の政府紙幣となり、負債側には利払いを要する手形や預金を抱えることになり、日銀は赤字になる。日銀が金融政策を遂行し続けるには、政府が日銀に毎年補助金を与え続ける必要が出るだろう。

最後に、政府が民間にATMや自動販売機の対応を義務づける場合を考えてみよう。

その場合、日銀券の需要が減少し、日銀は売りオペによる日銀券の回収を余儀なくされる。そうなれば、日銀の保有国債残高が減り日銀収益は減少する。このため、政府紙幣発行が日銀収益に与える影響は、政府紙幣が日銀に還流する場合と同じになる。政府紙幣が大量に発行され、日銀券の残高がゼロになれば、日銀は消滅し、政府自らが金融政策を行うことになるだろう。

では政府紙幣が大量に日銀に還流しても、日銀が損失を被らずにすむ方法はないのか。それには売り出し手形や日銀当座預金の金利がゼロであればよい。景気が低迷するデフレ経済では、ゼロ金利政策を続けることができる。

だが将来、景気が回復し物価が上昇し始めると問題が起きる。日銀が損失を被らないためには、売り出し手形や日銀当座預金に金利を払うことはできない。これは、景気回復で物価が上昇を始めてもゼロ金利政策を維持することを意味する。これは非常にインフレ的である。これを放置し物価水準が上昇すると、日銀券や政府紙幣に対する取引需要が増大する。そうなれば、日銀は買いオペを再開することで収益を回復できる。

だが国民は、インフレによる日銀券や政府紙幣の価値の下落というインフレタックスを負担することになる。毎年のインフレによる課税額は、国民が保育するゼロ金利の日銀券、政府紙幣、コインの残高にインフレ率をかけたものだ。08年末の日銀券とコインの残高は八十六兆円であり、仮に物価が10%上昇すると、8.6兆円の見えない課税が行われることになる。

最後に、無利子国債にもふれておこう。よく「無利子国債の発行で、国民の手元に現金で眠っているお金を動員する」といわれる。しかしこれは誤りである。国民の手元に「現金で眠っているお金」には、日銀が発行した日銀券が対応しており、その資金は日銀が国債や金融機関に対する貸し出しなどで運用している。このため、国民が現金を保有している限り、そのお金は眠ったりはしていない。

無利子国債を国民に保有してもらうには、相続税減免など、相当の甘味剤を付ける必要がある。国民は、課税上の甘味剤の価値が、無利子による逸失利益を上回らない限り、無利手国債を保有しない。

残念ながら、政府紙幣も無利子国むも打ち出の小づちにはなり得ないのである。

ふかお・みつひろ51年生まれ。ミシガン大博士。慶応義塾大教授。専門は国際経済学
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これは保存版です。

私は、政府紙幣発行には、反対の立場をとっていますが、これを読んで、ますます強く反対の立場をとります。

日銀に還流した政府紙幣の扱いがいかに難問であるか、ATMなど民間の負担が大きいばかりで、目先の経済的効果がほとんど期待できず、インフレになった場合、国家が破綻するリスクを抱える事になる政府紙幣の発行は、どう考えても止めたほうがいいと思う。

 

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