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金融市場をゆがめる国際協力銀行は、財務省天下りの受け皿か(日経ビジネスオンライン)
http://www.asyura2.com/09/hasan62/msg/155.html
投稿者 そのまんま西 日時 2009 年 3 月 18 日 23:46:12: sypgvaaYz82Hc
 

金融市場をゆがめる国際協力銀行は、財務省天下りの受け皿か
(日経ビジネスオンライン)2009年3月18日(水)

吉田鈴香 【プロフィール】
財務省 金融支援 金融危機 日本政策金融公庫 国際協力銀行 日本政策投資銀行 天下り


 「政策金融機関を不要だとしたことは、不況が来ないことを前提とした経済学で、間違いだった」

 3月10日、与謝野馨財務・金融・経済財政相は参議院予算委員会で、政府系金融機関の民営化を否定する意見を述べた。

「小泉純一郎政権時代は世界の同時不況を全く想定していなかったため、民営化という誤りを犯した。これを見直したい」という意味である。

言葉の軽さを取りざたされている麻生太郎首相とは違い、“政策通”の与謝野大臣の発言には重みがある。中川昭一前大臣の後を受けて財務相になったとたん、積極的に民営化反対派になったのは、弟がこの機関の職員だったからだろうか。

 小泉政権が推進した郵政民営化によって、郵貯と郵便保険を原資にしてきた政府系金融機関を改革したことについては、麻生首相も与謝野発言を受けて、3月16日の参院予算委員会で、

「今回のような騒ぎになることを想定していなかった。これは大問題だと思う」と述べ、改革が金融危機などを想定せずに進められたとの認識を示した。

また、鳩山邦夫現総務相は日本郵政たたきを始め、かんぽの宿の売り方見直しや、旧東京中央郵便局の文化財保護を求めるなど、総務省に睨みをきかせている。

 現政権の主要閣僚は、政府系金融機関一元化の見直しに持ち込みたいようだ。“ミスター円”を標榜する元財務官の榊原英資氏は、金融危機前に出版した著書『強い円は日本の国益』で、国際協力銀行を元の公的機関に戻すべしと説いている。政治家も財務省OBも、「政府系金融機関民営化の見直し」マジックにかかっているようだ。


経済・金融秩序の混乱を想定した政策金融改革

 与謝野大臣は、お忘れのようだ。2005年11月29日に経済財政諮問会議の席上、経済財政政策担当の特命大臣として金融危機対応の役割にも言及していることを(議事録は、こちら)。しぶしぶ賛同したのではなく、自ら進んで決定しているのだ。

 そしてまた、2006年6月27日官邸から発表されている「政策金融改革推進本部決定、行政改革推進本部決定」のペーパーでも、与謝野大臣は担当大臣として自ら、政策金融改革推進本部の方針として、政府系金融機関の民営化と特殊会社化を進め、継承される業務として次の5点を挙げている。

(1)国民生活金融公庫の業務
(2)農林漁業金融公庫の業務
(3)中小企業金融公庫の業務
(4)国際協力銀行の業務(重要資源の海外における開発及び取得の促進、我が国産業の国際競争力の維持・向上、国際金融秩序の混乱への対処のためのものに限定)
(5)内外の経済・金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な金融

 上記のうち(4)と(5)が、このたびの与謝野大臣の嘘を証明している。これら5つの業務を引き継いだのが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)である。

 昨年の9月15日以来筆者は、金融危機克服のための政府、金融機関、民間企業などの取り組みを注視してきた。このコラムでも「麻生首相には、『内需拡大』と言ってほしかった」などの記事で意見を述べてきた。

 「100年に1度の経済危機」と言われる金融危機で、日本企業では、株価低迷のために自己資本比率が低下している現在、銀行の貸し渋りや貸しはがしはいっそう厳しさを増している。消費も投資も冷え込んでいる。確かに金融支援は必要だ。

 日本政府は支援策を実行するルートとして、旧政府系金融機関を指定した。旧政府系金融機関とは、日本政策投資銀行(以下、政投銀)、日本政策金融公庫、そして国際協力銀行だ。

 政投銀、日本公庫、国際協力銀行は、昨年10月に行われた政策金融の民営化で誕生した政府系の金融機関だ。政投銀は、旧日本政策投資銀行を継承して設立された特殊会社であり、5〜7年後に完全民営化されることが決まっている。日本公庫は前述のように4つの機関が統合してできた公的機関であり、民営化に向けて走り出している。

 だが、国際協力銀行は、旧国際協力銀行のうち国際協力機構(JICA)に統合された政府開発援助(ODA)の円借款を扱う海外経済協力基金分を除いた、旧輸出入銀行業務を行う金融機関である。つまり、日本公庫の中に入っているにもかかわらず独立して銀行を名乗り、組織も業務も資金調達も統合前の状態を貫いている、ゆがんだ状態にある。

 金融危機後、財務省が打ち出した緊急危機対応のうち、比較的規模の大きなものは次の通りである。(1)から(4)までは昨年中、(5)から(7)は今年3月に発表された。

(1)日本公庫を通じて中小企業に「セーフティネット貸付」10兆円を低利貸し付けする
(2)商工中金、政投銀による金融危機対応業務を発動する
(3)日本企業の海外における事業に対する貸し付けの拡充(日本公庫のうち旧国際協力銀行を活用。現状では旧国際協力銀行の貸付先は中堅・中小企業のみ対象だが、特例として国内大企業を通じた途上国における事業を対象とする)
(4)日本公庫が3月末まで最大2兆円の政府保証つきコマーシャルペーパー(CP)を発行し、それを政投銀に融資して中堅・大企業のCP買い取りに充てる
(5)年1.5兆円の最大融資枠を設定し、政投銀を通じて大企業、中堅企業に低利融資する
(6)外国為替資金特別会計から外貨準備の50億ドルを、国際協力銀行に融資する
(7)財務省が国際的な金融秩序の回復のため、国際通貨基金(IMF)に上限1000億ドル融資する

 総務省も、自治体を通じて中小、零細企業への融資を発表している。無利子融資を25%に引き上げ、限度枠を1.5倍に拡大する意向だ(3月3日発表)。経済産業省の下部機関である全国信用保証協会も、地方自治体を窓口にして10月から信用保証を提供している。

 上記の対応の途中経過を見てみると、
 借りる側の企業の対応に差が生まれ始めている。

 (1)については、2月末に日本公庫の10兆円融資枠のうち、9200億円だけが利用された。不人気、つまり金余りだったことが分かる。ところが(6)については、3月3日に50億ドルの外貨準備の借り入れとして、トヨタ自動車の100%子会社、トヨタファイナンシャルサービスが2000億円融資を要請した。「待ってました」といわんばかりの、素早い行動である。金余りの現状を無視して、わざわざ外貨準備を借り入れた。しかも本来の中堅・中小企業向けの業務はなおざりにしておき、(6)では素早く動いた。

 企業が是が非でも外貨準備を借りたいと懇願したというよりも、貸す側、つまり国際協力銀行側があらかじめ企業の了解を得てスキームを創設した、と考えられないだろうか。

 「100年の1度の危機克服」を合言葉に繰り出される財務省の一連の施策を見て、どうにも理解できないことがある。それは、財務省による国際協力銀行の特別扱いだ。

 民間企業向けの金融危機対応にふさわしい金融機関は、政投銀だ。なぜなら、政投銀は完全民営化が決まって以来、改革によって、国内のみならず国外の事業も手がけられる機関へと生まれ変わった。グローバリゼーションによって国のボーダーがなくなっているからだ。

政投銀に資金を注入すれば、政府が国の内外を指定することもなく、民間企業のニーズによって包括的な借り入れ計画を立て、必要なところに行き渡らせることができる。また、民営化された政投銀が実施できる事業だということは、ほかの民間金融機関もできるという意味を持っている。だから、政投銀は国際協力銀行よりも日本公庫よりも優先されるべきと筆者は考える。

 しかし、なぜか国際協力銀行を通したルートをわざわざ設け、その存在を維持しようとしている。しかも、国際協力銀行は日本公庫の一部門だ。

金融支援自体はよいとして、支援のためのルートが重複しており、金融市場をゆがめているのだ。公的金融機関を通じた金融支援で、政府が取れる支援ルートを分類してみた(表)。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090316/189067/pop01.html


 表にある大企業とは、先進国にも工場や子会社などを持つ優良上場企業のこと。今回の金融危機の特徴は、大企業への支援必要性がかつてないほどに急浮上したことにある。例えば、米国に工場を持つトヨタ。ここが流動性に苦しむというくらいだから、確かに未曾有の危機であると言えよう。


政投銀と日本公庫で十分な融資に、国際協力銀行が割り込み

 しかし、この支援ルートには理解できないゆがみがある。第1に、国際協力銀行の出番がやたらに多い。本来、国際協力銀行の本体である日本公庫が外貨の借り入れを行い、それを政投銀に貸し付ければ済むことだ。CPの発行が、そうなっている。ところが、外国為替資金特別会計の受け皿機関がなぜか、国際協力銀行に限定されている。政投銀も日本公庫もできることなのに、なぜなのだろうか。

 外貨準備を貸し出してもらえる機関は滅多にない。特例中の特例、名誉ある業務だ。その特権を、政投銀でもなく日本公庫でもなく、国際協力銀行が独占した。

 第2に、優良企業たるトヨタファイナンシャルサービスは、なぜ日本公庫や政投銀から直接融資を受けたりCPを買ってもらったりせずに、国際金融秩序が目的の国際協力銀行から借りているのだろうか。

 第3に、国際協力銀行は、本来業務である国際秩序維持のための融資をせずに、トヨタファイナンシャルサービスへの融資のような、大企業であり先進国への投資をする企業を融資先にしているのはなぜか。

 本来は前述の(3)にあるように日本公庫の他部門と協力しながら、中堅中小企業はもとより途上国へ投資する企業への融資をすることも、政府から求められているはずだ。

 国際協力銀行は日本公庫の国際部門なのだから、国際金融安定のための融資を行うのが筋だ。国際金融と経済の安定をもたらす融資とは、個別企業のリテール部門だけではなく、IMFにも融資、出資を行い、そこから各国の中央銀行、企業や民間金融機関に融資をするというルートを作らねばならない。その肝心なIMFへの融資は、財務省がじかに行っており、国際協力銀行は絡んでいない。業務を選り好みしているのでは、との見方ができる。

 国際協力銀行の本来業務とはイスラム金融と資源金融であり、これを業務にするために、政策金融の再編時に国際協力銀行と名乗ることが許された。ところが、昨年10月以後、これらの業務に関連した動きは一切なく、本体である日本公庫と政投銀の仕事を奪っている状態なのである。


 改めて、先ほどの表を見てほしい。日本の大企業への円調達、ドル調達のルートに国際協力銀行が入っている。先進国に投資する日本企業は、金融業界から見れば垂涎の融資先だ。一時的に流動性の調達に困っているだけで、もともとは内部留保もあり株主配当も怠っていない優良企業だから、今回の危機が去れば再び復活することは明らかだ。国際協力銀行は、このような貸し倒れがない大企業だけを相手に融資をし、してもよいはずの中小企業への支援はしない。

 そして何より、国際金融危機への対応として、最も求められているはずの貧困国、脆弱国への流動性供給のための融資には、着手していない。国際協力銀行は、平成13年11月に、IMFの貧困削減成長ファシリティーへ10億ドルの貸し付けを行っているが、今回こそ、こういうことを行うべきなのだが…。

 手がかかる中小企業支援と途上国支援を敬遠し、おいしい業務をさらっていく国際協力銀行のやり方には、納得できない。

 大企業への支援は、すでに政投銀と、日本公庫が通常業務として行っているのである。両社は役割分担があるようで、融資先がどこであれ、どちらかの機関で対応できる。政投銀はすでに完全民営化に向けて走り出し、盤石ではないかもしれないものの、大企業と地方の基幹産業を中心に金融業務を行っている。国際協力銀行を除く日本公庫も同様で、中小零細企業には政投銀よりも地の利があり、支援を行っている。政投銀と日本公庫の声が公になったことはないが、両社とも「腑に落ちない」と思っていることだろう。

 金融支援は一本化した方が、取引費用が軽減されて効率的なのである。例えば1兆円を2機関に分けてそれぞれ融資先を求めるよりも、1機関が決める方が迅速だ。融資を受ける民間企業の方も、2カ所から借りるための文書作成や、金融機関によるモニタリングを受ける準備など、ダブルの取引費用をかけることになる。


天下り目的の融資スキーム

 このように、国際協力銀行が特別扱いされる理由として、考えられることは1つ。財務省の天下り先確保のためである。

 国際協力銀行の経営責任者以下、取締役は財務省出身者で占められている。3年ほど前に交わされた政策金融の民営化議論の際に、最も激しく抵抗したのが国際協力銀行の国際金融業務部門(旧輸銀)であり、財務省であった。そして、国際協力銀行の存在意義を確保するために、イスラム金融と資源融資業務を掲げ、通った。これに関わる業務を行う企業ならば、規模の大小を問わず融資できる。しかし前述の通り、国際協力銀行は一向にこれらの業務に手をつけない。もはや用済みの組織を財務省が懸命に延命させる理由は、財務省官僚の天下り先がなくなっては困るからである。

 世界銀行の東京事務所長は、かつて財務省出身者が就任し、ワシントンの本部の理事に1席持ってもいた。ところが世界銀行は、財務省出身者があまりに仕事ができないことにほとほと嫌気が差し、これをやめたようである。そこへもってきて、民営化が進んでしまうと、天下り先が皆無になってしまう。それは困る、ということで是が非でも国際協力銀行を手元に置こうとしている。

 財務省の官僚たちは、国際協力銀行のように、大企業好き、外国好きな外聞の良い金融機関に、天下りしたいのである。中小・零細企業への貸し付けは、金融機関側も汗まみれになって働かねばならなくなる。財務官僚には、それが耐えられない。それがために、国際協力銀行の業務内容を、大企業相手に限定し、ワシントンやニューヨーク、ロンドンなど先進国に頻繁に出張できる特権を楽しめる業態に置く。

 天下りが廃止されるべきである理由としては、恣意的な資源配分による便益の独占などがよく挙げられるが、さらに筆者は、経営に必要な理念、技術の浸透、人材の育成などは、民間で鍛えた経営陣に優位性がある、と言いたい。

経営陣が決まりきった公的機関は、社内に通用させる「言葉」が少ない。なぜ、自分たち企業は存在できるか、何がコア・コンピタンシーか、どんな人材が欲しいか、経営陣の得意、不得意は何か、新しい技術と市場は…といったことを、社員たちに説いていく力は、役人出身者では弱いのである。

 既存の独立行政法人の中に、こういったケースはたくさんある。緒方貞子氏率いるJICAも、ご他聞に漏れない。彼女はそのカリスマ性によって組織を統治し、どこからも批判は出ていない…というのは表向きの姿。JICA職員たちは、誰も彼女の顔を間近に見たことがないというのが現状だ。つまり緒方氏は、職場という現場を見ていない。

 緒方氏が持ち込んだ、ODAの重要な目的である「人間の安全保障」に至っては、その概念も手法も不明だ。これでは知見の共有も意識の向上も望めない。外部評価と内部評価とのギャップは相当である。

 やはり、組織の経営には民間企業出身者がふさわしい。民間企業では、トップが率先して唱える「言葉」や「概念」を、自ら社員に説明し、分かるまで研修を施す。社員から知恵を募ることもある。社外の人脈を総動員させて新市場の開拓にも励む。それらが十分にできない企業は市場退出、つまり廃業する。これが市場原理というものだ。

 天下りでは市場原理が働かず、その機関はダラダラと存命する。金融危機だからと政府が財政出動したところで、天下り機関に優先的に資源配分されるため、市場全体をゆがめてしまう。

 日本が金融に不得手な国になってしまった遠因は、財務省が民間金融機関を締めつけ監督するばかりか、金融の原資である財政投融資資金を一手に握り、民間企業が豊富な資金を市場調達し貸し付ける道を塞いできたことにもある。つまり民業圧迫だ。天下りが今後も続けば、民間の金融機関が資金調達、貸し付けにおいて能力を向上させる道を閉ざされることになる。

 今大事なことは、健全な競争市場を作り、技術と知識、継続的な成長意欲を持つ企業が育つ環境を作ることである。金融もまた、近代における国力強化のポイントなのである。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090316/189067/  

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