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 田中 宇  「世界がドルを棄てた日(3)」  2009年3月24日
http://www.asyura2.com/09/hasan62/msg/248.html
投稿者 新世紀人 日時 2009 年 3 月 29 日 13:03:51: uj2zhYZWUUp16
 

[新世紀人のおことわり」
この論文は「無料扱い」とされていましたので転載させていただきました。


http://www.tanakanews.com/090324dollar.htm

世界がドルを棄てた日(3)


2009年3月24日  田中 宇

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 この記事は「世界がドルを棄てた日(2)」の続きです。

 全米各地で「ボストン茶会」が開催されている。

 ボストン茶会とは、米国が英国からの独立を目指す運動の象徴的な事件のひとつで、英国が自国の東インド会社を儲けさすため、北米植民地にお茶を輸出する独占権を与えて課税したことに怒ったボストンの市民団体が、1773年12月、英国からボストン港に到着していた課税品のお茶の葉(インド産)約45トンを樽から出して海に投げ捨て、課税に抗議した事件である(お茶の葉は、その後何日も港の海面に固まったまま浮かび、運動家以外の市民は競って拾い、お茶をいれたという。お茶は当時、高級品だった)(Boston Tea Party From Wikipedia)

 当時のボストン市民が怒っていたのは、自分たちが本国の英議会に代表を送れる選挙権を持っていないのに、お茶に課税されて間接税を取られたからだった。英国の憲法では「代表なくして課税なし」という考え方が認められており、北米植民地の人々はこれを主張し、米国は事件の3年後に独立宣言した。米国では独立後も、政府が民意を無視して課税することに反対する運動に「ボストン茶会」の名称がつけられるようになった。(Angry Citizens Revive Boston Tea Party Protest)(Taxpayers Gather To Protest Spending, Taxes, Growing Debt)

 今、全米各地で起きている「ボストン茶会」の運動は、昨秋以来、金融危機対策と称して米政府が巨額の公金を金融機関に救済融資しているのに、金融危機がおさまるどころかひどくなるばかりであることに、米国民が怒っていることから起きている。大手保険会社AIGが、米政府から巨額の公金注入を受けて救済されているにもかかわらず、役員に多額のボーナスを払っていることを米政府が黙認したため、米国民の怒りが扇動された。(Editorial: A.I.G. Bailout)

 全米各地で「連邦政府に税金を払う必要はない」「政府は腐敗した銀行家を税金で助けるな」と主張する、ボストン茶会の運動が始まっている。「新しいアメリカの茶会」(New American Tea Party)という市民組織が作られ、3月から4月にかけて全米150カ所で市民集会やデモ行進が予定されている。(Fed-up Americans mobilize: More than 150 tea parties)

▼合衆国は茶会に始まり茶会に終わる?

 AIGに対しては、オバマ大統領や側近のサマーズ経済顧問も「激怒している」と報じられたが、これは国民の怒りが大統領に向かわないようにする怒りの演技だろう。("Getting Tough" with Predator Financial Institutions)

「悪いのはすべてAIG」という話にされて、最終的にAIGは潰されるかもしれないが、AIGは今回の金融危機の根幹にあるCDS(債権破綻保険)を何十兆ドルも引き受けている。AIGの倒産はCDSの崩壊となり、CDSがうまく機能すれば救われるはずの他の金融機関の連鎖破綻を招きかねず、金融危機をますます悪化させる。(Fed Refuses to Release Identity of Credit Default Swap Counterparties)

 米国の失業率は上がる一方で、半失業状態の人を加えた失業率(U6)は、すでに13・5%になっている。ミシガン、カリフォルニア、オレゴンなどの各州では、U6失業率は20%だ。今回の大不況は、1930年代の大恐慌よりひどい状態になりつつある。(Unemployment in 7 States May Have Exceeded 20% in February)

 連邦政府は、連銀にドルを刷らせて米国債を買わせてしのいでいるが、地方の州政府はそうはいかない。イリノイ州は、年収5万6千ドル(5百万円強)以上の人々に対する所得税を50%増やすと発表した。こんな具合だから、米国民の多くを占める中産階級も怒っており、納税拒否運動や暴動が起きそうな気配は高まる一方だ。税金が集まらなくなると、米政府は窮する。国債の償還が危うくなるので外国人も米国債を買わなくなり、米国は財政破綻が近づき、ドルは世界の基軸通貨として使えなくなる。(Illinois Income Tax May Jump 50 Percent)

 18世紀のボストン茶会は、米国の英国からの独立と建国という偉業につながったが、21世紀のボストン茶会は、18世紀に作られた米国という連邦国家の崩壊を引き起こしかねない。合衆国は「民主主義」という国民の権利と「納税」などの義務とが明確な契約関係になっている。大多数の国民が今の連邦体制に不満を持つようになると、合衆国の連邦は解体しうる。すでに、伝統的に政治に敏感なニューハンプシャー州の議会では、米国からの「独立宣言」を模索する動きが続いている。(New Hampshire in uproar over US Administration)

 島国で、国家や民族のあり方が「天然」に近い日本とは対照的に、合衆国は「人々が作った国」であり、それだけに内政の混乱には弱い。合衆国は、茶会に始まり茶会に終わるかもしれない。(Tea Partyは「茶会」ではなく「茶党」と呼んだ方が良いとの説もあるが)

▼メキシコに武器を流入させた上で侵攻?

 事態は、2月末に書いた記事「反乱の夏になる」で予測した方向に進んでいる。あの記事で書いた「メキシコの麻薬戦争がひどくなり、米国がメキシコに介入しうる」という状況は、その後も続いている。メキシコは銃規制を厳しく行っているが、米国は銃規制が甘く、米国からメキシコへの武器密輸も簡単で、取締りはほとんどない。

 メキシコ国境に接する米国の4つの州では、メキシコの麻薬組織が代理人を通じて銃砲店でさかんに武器を調達している。メキシコ政府は昨年、麻薬組織から2万丁の武器を押収したが、そのほとんどは米国から調達されたものだった。(世界的な「反乱の夏」になる?)

 メキシコ政府は米政府に、メキシコへの武器流入を抑止してくれと頼んだが、米側はほとんど何の対策もとっていない。その一方で米政府は、メキシコの麻薬組織を「米国の国家安全を脅かす組織」とみなし、米軍がメキシコに越境攻撃するかもしれないと宣言している。(The drug cartels' right to bear arms)

 これは、イラクやアフガンで、米軍がゲリラを取り締まる一方で米軍の武器や資金が行方不明になっていつの間にかゲリラに流れ、ゲリラ戦がひどくなった状況と似ている。イラクやアフガンでは「米軍は恒久的な占領が目的でゲリラ戦を扇動している」と思われているが、もし米当局が同じことをメキシコでもやろうとしているのなら、大変なことになる。イラクやアフガンは米国から遠いが、メキシコはすぐ隣である。

 米政府は1980年代以来、中南米から米国への麻薬流入を止める目的の「麻薬戦争」をやって、逆に麻薬流入増と中南米諸国の不安定化を誘発してしまっている。こうした歴史から見ても、米当局によってメキシコがアフガンやイラクのような状況に陥らされる懸念はある。(麻薬戦争からテロ戦争へ)

 経済面でも、米メキシコ間は対立が激化している。両国はNAFTAの自由貿易協定に基づき、2000年から実験的に、メキシコのトラックが国境を越えてそのまま米国内まで貨物を輸送できる体制をとっていた。(Protectionist - small and dangerous spat)

 だがオバマ政権は、先日発表した景気対策の一環として、米国内の輸送会社をテコ入れするため(メキシコのトラックは運転が荒く危険だという表向きの名目で)、メキシコとのトラック越境協定を事実上終わらせてしまった。メキシコ政府はNAFTA協定違反だと怒り、報復措置として、米国からの90品目の輸入に制裁関税をかけると表明した。(Obama Starts a Trade War with Mexico)

 米国の議会や政府は、未曾有の大不況と失業増を受けて強まる一方の米国民の不満をそらすため「経済難は外国のせいだ」とする保護主義やナショナリズムの傾向を強めている。

 米政府から救済融資してもらっているシティやバンカメといった大手銀行が最近、中国の銀行や中東ドバイの政府機関に資金を融資したことが米議会で問題になり「シティやバンカメは、米国民に融資せねばならないときに、敵対的なアラブ人や中国人に融資している。けしからん」という話になっている。政府から救済融資を受けた銀行は、国際金融ビジネスをしてはならないというわけだ。(Treasury told to make bail-out banks invest in US)

▼戦争を誘発する軍事費削減

 財政難の影響で、米政府は軍事費の削減を計画しているが、これも逆に事態を「戦争」へと導きかねない。軍事産業が、政府に軍事費の削減を思いとどまらせる最強の方法は、世界のどこかで戦争を誘発することだからである。過去40年間、米国の軍事産業にとって最大の知恵袋はイスラエル右派だったので、戦争が誘発されるとしたら、イランとイスラエルの戦争に米国が巻き込まれる形になる可能性が最も高い。

 ロシアの英語版「プラウダ」は「米国が財政破綻し、ドルが崩壊する可能性はすでに高い。米政府は、財政破綻を宣言せずにすませようと思ったら、戦争を誘発するしかないだろう」と書いている。(USA has two options to save its economy: declare default or trigger off war)

 オバマ政権のゲイツ国防長官は、前ブッシュ政権時代からの留任者で、前政権時代に「巨額の費用をかけて開発していた最新鋭の戦闘機やハイテク探査装置は、911後の世界の戦争の主力であるテロやゲリラ戦には役立たない。次期政権は、ハイテク兵器開発費の大幅削減が必須になる」と言っていたが、まさか自分が次期政権まで留任するとは思っていなかっただろう、とニューヨークタイムスは書いている(冷戦派出身のゲイツは共和党に顔が利くのでオバマは留任させたのだろう)。ゲイツは3月中に、F22戦闘機など6つほどの巨額な兵器開発費の削減を発表するだろうと、同紙は報じた。(Pentagon Chief Readies Big Cuts in Weapons)

 米国には軍産イスラエル複合体の息がかかっている政治家が多く、軍事費の削減は簡単ではない。軍事産業の工場は全米各州に分散しており、軍事費削減は各州の失業増になる。軍産複合体からの献金で生きている議員たちは、軍事費削減への反対は「民意」だと叫べる。

 しかし、米政府は急速に資金不足になっている。しかも、史上最高額の開発物であるミサイル防衛システムなど巨額ハイテク兵器の多くは、実際には使いものにならないことが暴露されてきている。開発を長引かせ、予算を予定外に拡大するために、意図的に使いものにならない開発が展開されてきたのだが、その構図自体が問題にされつつある。軍事費削減はやむを得ない話になってきている。(Soaring Costs Jeopardize Missile Defense Systems)(Missile Defense Success Questioned)

 また米政府は、退役軍人が、現役時代の戦場での負傷を退役後に治療し続ける場合の医療費を、これまでの政府の健康保険から、民間の保険会社の健康保険に切り替えることを画策している。退役軍人医療保険を民営化して財政負担を減らすつもりらしいが、サービス低下になるので退役軍人から猛反対されている。軍人も、政府からはしごを外されている。(Senators slam plan for wounded vets to use private insurance)

 レーガン政権以来の約30年間の米国は、軍人や軍産イスラエル複合体にとって恵まれた時代だった。米国は圧倒的な軍事力によって世界を支配し、増え続ける軍事費は米経済の下支えとなり、イスラエルは「正義」でアラブは「テロリスト」だった。しかしこの構図は911事件を頂点として、この3年ほどの間に急速に全崩壊している。米財政が破綻に向かっていることは、この崩壊に拍車をかけている。

 オバマ大統領は、アフガンやイラクでの窮地から脱するため、軍事ではなく外交に頼る傾向を強め、アフガンとイラクの間にあるイランを、これまでの敵国から味方に転換させ、米国に協力させようとしている。オバマは3月20日、イランのペルシャ暦の正月(ノールーズ)に合わせた「新年の挨拶」として、イランに対して協調を呼びかける演説の映像を発表した。この演説の中でオバマは、イランを「イスラム共和国」と、イラン革命以来の正式な国名で呼んだ。米国が公式にイランをこの名称で呼んだのは初めてで、これまでのイランに対するテロ組織扱いをやめる姿勢を見せた。(Obama offers a fresh start to Iran)

 米国とイランは和解していくかのように見えるが、私には現状が非常に危険なものに感じられる。米国がイランを許したら最も困るのはイスラエルだが、イスラエル右派は、予算を減らされて困窮する米軍事産業を誘い込み、イランとの戦争を誘発しかねない。戦争が確実に起きるとはいえないが、イスラエルの新首相となるネタニヤフは「数カ月以内に大戦争が起きる」との予測を表明している。(Mr. Iran envisions 'major' war in coming months)

 しかしイランと戦争したところで、長期的には米国の崩壊は回避できない。むしろパキスタンからパレスチナまでの全域が戦争になって米軍が巻き込まれる度合いが増し、原油や金が高騰し、イスラム世界やロシア、中国などの非米同盟の結束が強まって、米国の覇権を崩壊させようとする方向性が強まる。戦争してもしなくても、ドルが基軸通貨でなくなる事態がいずれくる。

 3月23日、ニューヨークの株式は、オバマ政権が発表した金融救済策を好感して金融株が買われ、ダウ平均株価は7%も高騰し、一部には「金融危機は終わりつつある」という見方が出ている。しかし当のバンカメの投資担当幹部は「金融株を持っている人は、この上昇を利用して売り逃げた方がいい」と述べた。オバマの金融救済は、一過性の対策でしかない。(Bank of America's Bernstein Says Sell Bank Stocks After Rally)

 また、中国当局(人民銀行)は同日、ドルを基軸通貨として使い続けることを危険性を明確に指摘し、IMFの特別引出権(SDR)を活用して新たな基軸通貨とすることを提案した。これらの動きを見ると、やはりドルはすでに棄てられていると感じられる。(Falling greenback fuels BRIC dollar reserve rethink)

【続く】


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