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中国農村の内需とプライドに点火した「家電下郷」政策___ 「農民に戻りたい」逆流が始まった --(日経ビジネス)
http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/504.html
投稿者 ミスター第二分類 日時 2009 年 9 月 12 日 11:37:30: syFUAx3Wc1pTw
 


http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090831/203858/?P=1

中国農村の内需とプライドに点火した「家電下郷」政策

「農民に戻りたい」逆流が始まった 遠藤 誉


 中国は今「家電下郷」に沸いているのは、ご存じの通りだ。
 もともとは農民と都市住民の所得格差を緩和し、社会不安を軽減させようとして始まった。農村を中心とした低所得層の家電購買欲を高めるために「家電を購入すれば政府がその価格の13%をキャッシュバックしてあげますよ。さあ、今のうちに早く買いなさい」という国策だ。

 中国語では「城」は都市のことを指し、「郷」は故郷の意味もあるが、この場合は田舎とか農村のことを指す。日本語の上京に近い「田舎から都市に入ること」は「進城」で、その逆方向の田舎に下ることを「下郷」という。

 したがって「家電下郷」は「家電が田舎にやってきた」という意味である。

 「家電下郷」が政府の正式な号令として発令されたのは2009年4月16日。【財建〔2009〕155号】文書として、財政部、商務部、工業と信息(情報)化部、国家発展改革委員会、中宣部、農業部、環境保護部、供銷総社、税務総局、質検総局等の中央行政省庁に対して発布した。まさしく「国家総動員」である。

 世界を襲う金融危機を乗り越えるために、中国もまた4兆元(55兆円前後)の財政出動を決意して内需を高めようとしていた。「家電下郷」が成功すれば、金融危機だけでなく、農村と都市の格差対策としても有効だ。中国の経済成長は主として安価な労働力を利用した輸出に頼ってきた。しかし金融危機で中国以外の国の景気が悪化すれば、輸出は落ちる。輸出が落ちれば中国の経済発展は突然頓挫する。それを救うのは内需だ。他国の経済が悪化しても中国国内で安定して成長し、しかもそれが中国のネックであるところの貧富の格差を埋めてくれる。ならば、この財政出動は、大いに「家電下郷」に注ごうではないか。

 中央政府は、そう号令をかけた。

 しかし、実際にはそこまでしても、農民たちは最初のうちは動かなかった。

「キャッシュバックをしてくれるなんて言ったって、どうせまた騙されるのが落ちだ」

 そう思っている農民が多かったのだ。

■ 政府、わざわざキャッシュバック用の口座まで作らせる

 そこで政府は「一卡通(イーカートン)」という政策を実施した。

 これは農家の家庭に一つずつ口座を作らせ、キャッシュバックする金は全てその口座の中に政府から直接送金する、という方法である。

 家電販売店までの距離が長すぎて、行くまでに数時間もかかれば、ガソリン代だけでかなりの金額を消費してしまう。それも、活気づかない理由の一つだった。これに対しては、村々の近くに「家電下郷站」(站はステーション)という出店を設置させて、家電商品をそのステーションに集め、短時間で購入できるよう、便宜を図った。

 この二つの施策により、「家電下郷」は一気に活気づいた。

 中央電視台(CCTV)などでも、毎日のように家電を買いあさる農民の熱気が映し出されて買い気をあおった。「一卡通」で、遅くとも1週間以内に通帳に購入金額の13%に相当する現金が振り込まれる、という安心感、そしてステーションが出来上がったことによって購入に行く時間が短縮されたことの便利さを伝え続けた。

 この優遇策は、農民にとってただの家電購入補助策以上の意味を持つ。

 「家電下郷」は、「農業戸口」を持った人に対してのみ適用される。非農業戸籍、すなわち都市戸籍の者にはない優遇策なのである。

 それが、新中国誕生以来、まるで二等国民のように扱われ、「平等な人民」としての位置づけをされてこなかった農民たちの自尊心をくすぐる。自分が農民であることに対する誇りが生まれてきたのである。

 これはすごい力を持つ。家電が増えたとか、内需が成長したといった経済効果とは比べものにもならない力を、この「誇り」と「自尊心」は生み出すことになるだろう。


 新中国が誕生してから10年ほど後の1958年、都市に住む人民(非農業戸口。戸口は戸籍の意味。通称城市戸口)と農村に住む人民(農業戸口。通称農民戸口)を完全に分け隔てる戸口条例ができた。それからというもの、農業戸籍の家で生まれた子供は、永遠に農業戸籍として生きていかねばならなかった。

 いや、「人民」として生きていけるならまだいい。非農業戸籍(都市戸籍)が都市で受けることのできるもろもろの社会保障は一切受けることができず、結果、「人民」として平等に扱われたことがない。

 毛沢東は中華人民共和国が誕生するための革命戦争において、牛馬のようにこき使われ生涯結婚することさえできなかったような農奴たちを啓蒙して革命に参加させ、血なまぐさい地主との戦いに彼らを駆り立て、革命を成功に導いた。

 だから新中国誕生後、農民は革命の主人公として讃えられたのだったが、その期間は10年にも満たなかった。

 改革開放が進み始めた1980年以降は、都市に出稼ぎに出た農民は「農民工」として再び農奴のような生活に追いやられる。医療保障も老後保障もなく、都市で子女を学校に通わせるには「借読費」(あなたの都市の教育の場を借りますね、という経費)を払わなければならない。

 それでも、農民の子が唯一、都市戸籍を持つことのできる手段があった。それは都市の大学に入学することである。昔は国家培養と言って国が全ての教育費を負担し、学生は全員大学の寮に入って共同生活を行い、その大学を管轄する国営企業のサイクルの中に組み込まれていたので、大学に入学すれば、その大学が所在する都市の戸籍をもらうことができるという制度が出来上がり、これは今も続いている。卒業後も、大学が分配する職場の所在地の戸籍を与えてもらえた。

 だから、村から都市の大学に合格するような者が現われると、村では祭のような大騒動。銅鑼や太鼓の鳴り物入りで、村人全員が祝福し、親は鼻高々であった。他の親は、自分の子供に「あの子のようになりなさい」と説教して、村の模範となったものだ。

 それが今では、大学を出ても就職先がない。
 むしろ、村で、その模範生を見習わなかった子供が、中学もろくに出ずにブルーカラーとして都市の建築現場などで働いて、それなりの賃金をもらっているとなると「何のために都市戸籍を渇望したのか」ということになる。

 ■ 逆流__農民戸籍に戻ろうとする都市の大卒生

 大卒生就職難という現象が出てから数年経つが(日経ビジネスオンライン「ニュースを斬る」、2009年2月17日「中国の就職難、農村からの出稼ぎ向け求人に大学卒が殺到」参照)、今ここに来て、「非転農」という現象が潮流となり始めた。

 「非転農」とは、「非農業戸口から農業戸口に転じる」という意味である。

 大学を卒業したら、誰もが都市戸籍を失うまいと、必死で都市にある企業に就職できる道を模索したのだったが、なんと、卒業と同時に、昔の「農業戸口」に戻りたいと、役所に長蛇の列ができるというほどの熱気なのだ。

 なぜか――。

 それは、中国政府が農民と都市住民との格差に危険を感じ、農民に優遇策を次々に講じ始めたからである。税金制度や医療制度、そして養老福祉方面に関しても、さまざまな改善がなされるようになり、義務教育も無料化されたりしている。

 そして、農民の戸籍には他のメリットもある。「土地分紅」だ。

 これは、たとえば住宅建設やその他の開発のために国や企業が農民から土地の使用権を買った際に、農民側が得る代金のことを指す。農村では土地そのものが、たとえ「使用権」ではあっても売買できるということだ。


 2億にも及ぶ農民工の存在を無視できなくなった政府は、戸口条例そのものに関する見直しを始めている。農民戸籍と非農民戸籍の区別を無くす動きが、あちこちの地方で散見されるようになった。北京や上海等の大都市ではまだまだ先のことになろうが、小さな都市では「農業戸口」か「非農業戸口」かの区別をしない「居民戸口」に変わりつつあるのだ。

 となると、今のうちに急いで「農業戸口」に切り替えて、農民が享受できる優遇策を頂いてしまおう、という心理が働きだす。

 そこへ「家電下郷」とか「汽車(車)下郷」(農民が車を買う際にも一定額のキャッシュバックを行うという優遇策)などという、「農業戸口に限る」新たな優遇策が打ち出されたものだから、非農業戸籍(都市戸籍)から農業戸籍に戻ろうとする「非転農」現象が、新潮流として現れ出したわけだ。今年だけで200万の大学新卒生の就職先がない、という都市における状況も影響しているかもしれない。

 「非転農」潮流は、格差をなくす良い傾向だと私も思っていたのだが、どうも、またもや権力との結びつきが芽生え始めているらしい。

 ■ 問題もあるが、画期的な出来事

 都市には、都市戸籍を一時的に取得した学生以外にも、その昔大きな国営企業で働いていたが国営企業の倒産により解雇され、「待業」という形での失業生活を送っている者が少なくない。一般失業者もいれば、元中央政府に勤務していて、それなりの手当てをもらっている者もいる。そういった都市戸籍を持つ者の一部が、昔の党組織の人間関係等をたどって村の共産党幹部と結びつき、混乱に乗じる形で農業戸籍を獲得して、農民が持っている「土地分紅」のメリットを今のうちに享受し、そこから利益を得ようとする。そんな現象が現れ始めているというのだ。

 中国はどこででも商売が始まり、どこにでも金権が結びつく傾向があるが、こういう話を聞くと、「ああ、またしてもか・・・」と情けなくなる。こんな状態になってもなお、権力と金銭的利益が結び付く構造と土壌がうごめき始めるというのだろうか。

 しかしそれでも、農民が社会制度上優位に立ったというのは、中国の歴史上、ほんの短期間の事件や運動を除けば、実に画期的な出来事である。

 今年は中華人民共和国60周年記念。そのうち、毛沢東の革命路線による計画経済の時代が30年、改革開放が始まってからの中国も、同じ30年。中国は後半の30年で未曽有の発展を遂げてきた。その結果生まれた、社会主義国家らしからぬ貧富の格差を埋めようとして始まった「家電下郷」は、実は内需により中国経済を発展させるという経済構造の変化よりも、農民が優位に立つかもしれないという歴史的な地殻変動をもたらす可能性において、大きな意味を持っている。

 もちろん、貧困にあえぎ家電下郷の優遇にさえあやかれない農民もまだまだ多い。しかし「非転農」の逆流は、改革開放に劣らない効果を今後発揮する可能性を秘めていると、私には思えるのだ。

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(コメント)
 中国の恐ろしい事はこういった人工的な需要創造が簡単にできてしまう点です。社会制度を変える事でいとも簡単に需要や価値を作り出してしまう。
 中国はバブルと良く言われますが、内陸部を開発する事で需要を掘り起こす事は充分に可能と見ています。

 大きな経済成長の流れなのか、一時的なバブルなのかは後になって見ないと分かりません。
 中国の経済成長がバブルで終わるか、あるいは成長し続けるかは「格差を是正」する事による「需要喚起」ができるかどうかにかかっていると見ています。  

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