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“ドル”は中国の不良債権/上野泰也(みずほ証券チーフエコノミスト)
http://www.asyura2.com/09/hasan66/msg/577.html
投稿者 gikou89 日時 2009 年 12 月 24 日 05:53:23: xbuVR8gI6Txyk
 

(回答先: 米国がサブプライムなら中国は「鉄道危機」か−高速化で債務膨らむ 投稿者 gikou89 日時 2009 年 12 月 24 日 05:50:49)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091222-00000001-voice-pol

◇噴出した「新基軸通貨」構想◇

 中国は、自らが外貨準備として大量に保有する米国債をめぐって、深刻なジレンマに陥っている感が強い。ドルに代わる「新基軸通貨」の構想を、中国は将来的に推し進めたい意向のようである。だが、自らの言動が市場に影響して米国債の価格急落を招く恐れがあるため、中国は自ら保有する外貨準備を大胆に組み替えていくことが現実問題として非常に困難になっている。さらに、米国発の世界同時不況という現実が、中国の行動を強く制約している。

 まず、事実関係を統計数値で整理しておこう。中国の外貨準備高は、国家外貨管理局(SAFE)の発表によると、2009年6月末時点で2兆1316億ドル。同じ時点の日本の外貨準備高1兆192億ドルの2倍を超える、文句なしに世界一の規模である。2006年2月に日本を抜いて世界一になり、同年10月に1兆ドルの大台を突破。そこから2009年4月に2兆ドルを超えるまで、2年半しかかからなかった。

 中国の外貨準備累増は、貿易収支の黒字に加え、外為市場で人民元相場の上昇を抑え込むため人民銀行がドル買い・人民元売り介入を繰り返していると見られること、および運用益の継続的な積み上がりが主因と見られる。米財務省が発表している証券投資統計によると、2009年6月末時点で中国が保有している米国債は7764億ドルである。このほかにも、中国は米国の政府関係機関債やドル建て預金などでも外貨準備を運用しているものと推測される。外貨準備高の通貨別内訳は非公表だが、全体の少なくとも5割はドル建てだろう(約7割という説がある)。

 次に、中国やロシア、ブラジルといった新興諸国がこのところ主導している、ドルに代わる新しい準備通貨(基軸通貨)の構想をめぐる、2009年春以降の主な動きを振り返っておきたい。

 3月23日。中国人民銀行の周小川総裁が『人民日報』に論文を寄稿し、ドルに代わる新たな基軸通貨(スーパーソブリン)の構想を明らかにした。米国が金融を引き締めて国内のインフレ圧力の抑制に動けば、ドルについての国際的な流動性需要が適切に満たされにくくなる。一方、米国が過剰に景気刺激に動くようだとドルの流動性が過剰に供給されて、ドルという通貨の安定が確保されにくくなる。ドルという一国の通貨が基軸通貨になっているという現行体制がそもそも内包している矛盾(いわゆる「トリフィン・ジレンマ」)を周総裁は指摘。ドルに代わるものとして、SDR(特別引出権)の役割を強化するよう主張した。SDRとは、各国の外貨準備を補完するためにIMF(国際通貨基金)に創設された、ドル・円・英ポンド・ユーロから計算される一種のバスケット通貨である。

 翌24日には中国の温家宝首相が、「米国は基軸通貨発行国なので、その通貨は適切に管理すべきだ」と述べて、信認が低下してドルが下落するようなことがないよう、節度ある経済政策の運営を米政府・FRBに対して求める一幕もあった。米国の債券市場は、米国の財政赤字の一部をファイナンスしてきた中国など新興国の「ドル離れ」を警戒して、神経質な値動きを続けた。

 そうした事実上の「ドル退位論」に対して、米政府は強く反発。オバマ大統領は3月24日、「米ドルは現時点できわめて強い」「それは米国経済が世界でもっとも強く、安定した政治体制をもっているからだ」「(新たな基軸通貨を)必要とは思わない」と発言。経済再生諮問会議のボルカー委員長(元FRB議長)は、「(中国は)そもそもドルを買う必要はなかったのだから、問題を自ら助長したという事実を無視している」と述べて、反撃した。

 5月14日。オバマ米大統領は次のように語った。「米国で積み上がった長期的な財政赤字と政府債務は、持続不可能だ。われわれは中国やその他の国々から、このまま借金をしつづけることはできない」「中国などの国々はいずれかの時点で、米国の国債を買うのに疲れてしまうだろう」「そして、そうした事が起こったときには、われわれはお金を借りることができるよう、実際に金利を引き上げなければならないだろう。そしてそれは、誰にとっても金利が上がることを意味している」。この発言は、国債の主要な買い手である中国に対して、米国がいかに気を使わざるをえなくなっているかを、如実に示したものである。ガイトナー米財務長官は5月末から、就任後初めて中国を訪問した。隣の日本には立ち寄らなかった。クリントン米国務長官が最初に日本を訪れたこととは対照的である。経済問題では対中関係、外交・安全保障では対日関係を優先するというのが、オバマ政権の基本方針であるように見える。

◇中国が陥っているジレンマ◇

 7月5日。サミット出席のためイタリアを訪れた胡錦濤国家主席に同行した何亜非外務次官は、周人民銀行総裁の論文はあくまで私的な構想であり、「中国政府の立場ではない」と明言。「ドルは世界でもっとも重要な準備通貨であり、当面そうありつづける」と述べた。このころから、新基軸通貨構想について中国はいったんトーンダウンした。

 9月4日。ロイター通信は、IMFが発行するSDR建て債券の購入代金として、中国は外貨準備のドルではなく人民元を使うことになった、と報じた。仮に中国がドルで支払っていれば、中国の外貨準備運用における「ドル離れ」の思惑が市場で強まるきっかけになり、ドルと同時に米国債も売られる可能性があった。9月4〜5日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議では、基軸通貨の議論を中国が持ち出すようなことはなかった。

 多額の米国債などドル建て資産を外貨準備で保有する中国にとってみれば、「新基軸通貨」構想への言及などを通じて、市場に漂う「ドル離れ」の憶測を刺激して、米国債やドルの売り圧力を強め、結果として自国の運用資産が含み損を抱えるような事態をわざわざ引き起こすのは、けっして得策ではない。

 実際、6月10日には、ロシアの高官による市場の「ドル離れ」観測を刺激する発言を材料に米国債が売り込まれ、10年債利回りが4%近くまで急上昇する場面があった。具体的には、ロシア中央銀行のウリュカエフ第一副総裁が、同国の外貨準備における米国債残高(米財務省統計によると6月末時点で1199億ドル)の比率引き下げ方針に言及しつつ、IMF発行のSDR建て債券を100億ドル規模で購入すると表明したことである。

 しかし、ロシアはただちに米国債を売却するつもりはなく、満期償還まで待ってから緩やかにほかの資産への入れ替えを進めていく方針だと表明しており、市場にショックを与えるような動きではない。また、中国に比べると、米国債保有の絶対額はかなり小さい。にもかかわらず、市場はかなり大きな反応をみせたわけである。当時の市場センチメントが需給に関連した悪材料に対して極度に過敏になっていたという、一時的ないし一過性の要素があったと考えることもできる。だが、少なくとも中国の当局者にとって、ロシアの事例は「他山の石」になりうる話だろう。

 こうした中国の立場について考える際に、筆者は、大口取引先向けの貸し出しが不良債権化してしまったメインバンクをイメージしてしまう。追加融資を打ち切ってしまうと、その大口取引先は経営が破綻し、銀行側が処理しなければならなくなる損失額が非常に大きくなる。自己資本の厚みが不足していれば、その銀行自体の存亡にかかわる事態にもなりうる。かといって、取引先の経営状況が抜本的に改善する見通しが立たないまま、漫然と追加融資(いわゆる追い貸し)を続けていると、問題の解決にはまったくつながらないのみならず、かえって銀行が抱えるリスクは大きくなり、その企業が経営破綻する際に被る損失額も膨らんでしまう。ちなみに、中小企業向けの貸し出しについてはドライに打ち切る一方で、大企業向けについては追い貸しを続けるという、公的資金による支援を受けて不良債権の抜本処理を行なうよりも前に邦銀がとっていた行動がはらむ矛盾については、銀行員出身の作家である池井戸潤氏のミステリー小説を読んでいると、登場人物の口を借りて、しばしば登場してくる。

 また、現時点でそれ以上に重要なことは、中国自身を含む世界の経済が本格回復するためには、バブルの重い後遺症に苦しむ米国の経済と金融システムが立ち直ることが肝要だということである。そこで世界一の外貨準備を保有する中国が米国債購入をためらう姿勢をみせれば、はたしてどうなるか。米債券市場が不安定化して、長期金利が上昇しやすくなってしまい、米景気回復の足を引っ張ることになりかねない。ドル不安を煽って米国経済の足を引っ張るのはよくない、というのが合理的な判断であろう。

 さらに、より長期的な視野からいうと、為替・資本取引の自由化が進展しているだけに、基軸通貨がドル以外の通貨へと将来シフトする場合でも、それはおそらく、ある日突然トップダウンで人為的に決まるという話ではなく、ドル以外の通貨が基軸通貨にふさわしいと市場が判断し、貿易取引の決済通貨や、原油など商品取引の建値通貨、外貨準備の保有通貨として選好されるようになることを通じて、徐々に固まっていくプロセスであろう。結局、「新基軸通貨」というのは、中長期のタイムスパンで議論していくべきテーマだというのが、筆者の考えである。

 むろん、中国の指導部には、21世紀のアジアひいては世界のスーパーパワーとして地歩を固めていきたいという意向はあるだろう。経済の面で陥っているジレンマを彼らがどう解消していこうとするのか。米国の経済がバブル崩壊の後遺症を脱して本格的な回復軌道に乗り、「新基軸通貨」構想を阻んでいる大きな要素が1つ消えたときが、その答えがおぼろに見え始めるときだということになりそうである  

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コメント
 
01. 2009年12月24日 16:39:14
日本の財務省は米国債を不良資産としているから、政府が保有する米国債の分まで日本国民の借金としてカウントしとるのとちゃうんですか?

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