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ネット時代とジャーナリズム不信の関係を考える(1) ―北野誠「永久追放」事件などから見えてきた問題― (桂 敬一)
http://www.asyura2.com/09/hihyo9/msg/302.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 5 月 07 日 11:19:10: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.news-pj.net/npj/katsura-keiichi/20090503.html

  4月23日から3日間、草g剛全裸事件情報でメディア・ジャック状態が生じた。彼を懲らしめるどんな顛末がもたらされるのか、と見ていたら、何のことはない、警察から釈放後の記者会見は、彼に対する同情と好感度を、かえって高め、幕引きになってマスコミは、逆に大団円を提供した感じだ。この騒ぎの影で、やがてこの国に大災厄をもたらしかねない 「海賊対処法案」 が24日、何事もなく衆院を通過した。新聞もテレビも、こちらはほとんどまともには報じなかった。いや、草g事件が発覚した23日の午前中、NHKだけは予定どおり、海賊対処法案審議の衆院特別委員会を生中継した。しかし、多くの視聴者は、並行した民放のニュース・情報番組の草gフィーバーのほうに引き寄せられた。巨大なみえざる手が、実に巧妙にメディアを操り、このような状況をつくり出したようだ。郵政民営化選挙のときの 「小泉劇場」 は、その名のとおり、小泉首相のパフォーマンスが生み出したもので、メディアは他愛なくその手に乗せられたものの、劇場の仕組みは、みえみえだった。だが、「草g劇場」 と海賊新法隠しとなると、それがまるで見えない。目立つのは、いいようにあしらわれたメディアと視聴者の人のよさ、だらしなさだけだ。

  芸能人をめぐる騒ぎとしては、もう一つ、タレント・北野誠 「永久追放」 事件が気になる。正確にいえばこの場合は、メディアが沈黙をつづけていることが不可解なのだ。ことの発覚は、草g事件よりずっと早い4月14日、ニフティの 「最新ニュース」 で知った。21年もつづいていた、関西で人気の深夜ラジオ番組、「誠のサイキック青年団」 (ABC=大阪朝日放送) が3月8日の放送分で打ち切られていたが、所属芸能事務所、松竹芸能が4月13日、今度は彼を、レギュラーのテレビ番組5本、ラジオ番組2本のすべてから降ろし、無期限の謹慎処分にした、という。わからないのはその原因、理由だ。松竹芸能も、また降板のきっかけをつくった、彼の持ち番組が多いABCも、ともになにも処分理由を説明せず、本人に弁明の機会も与えなかった。そして表現の自由に敏感なるべきマスコミが、この出来事にまるで触れないのだ。こうなると騒ぎだすのがネットの住人たちだ。さまざまなブロガー、たくさんの2ちゃねらーたちがいろいろな噂や意見を書き込んでいた。それをみて気がついたのは、追放した側、追放された側のどちらに味方するかは問わず、この件を知っているくせに、また日ごろは表現の自由について大口をたたくくせに、大きなメディアほどなにもいわないことに、彼らが共通して怒っていることだった。

  彼らのいうことすべてを鵜呑みにはできない。だが、ネットのなかを飛び交う噂のなかに、毒舌で人気を博してきた北野が、メディアの世界や芸能界に巨大な影響力を及ぼし得る組織、あるいは団体の逆鱗に触れる言動を示し、その世界から追放の目に遭ったのだとする、まことしやかな情報が相次いで飛び出してくるのが、気になった。実際、ブロガーたちが採録した番組 「サイキック青年団」 中の北野の発言メモを読むと、彼がその手のエグイしゃべくりをけっこうやってきた経緯が、よくわかった。そして、大きな力を持つ組織・団体の存在としては、芸能マスコミに睨みを利かせる大手プロダクション 「バーニング」、芸能人会員を多数擁するといわれる 「創価学会」 の名前が、書き込みに頻出していた。前者の名は、4月16日発売の 『週刊文春』・『週刊新潮』 にも、出現した。不思議なのは、タレントのゴシップ、スキャンダル好きの芸能マスコミ、テレビのワイドショーが、それでもなにもいわなかったことだ。週刊誌2誌のあと、内外タイムス・日刊ゲンダイがようやく少し報じたが、大手一般マスコミは気付いてもいない風をつづけた。本当に知らないのか、知ってはいても、下賎な今様河原乞食ごとき、たった一人のために、貴重な電波も紙面も使えないと、無言の態度を貫いて、りっぱな見識を示したということか。

  高度にシステム化された芸能界にあって、北野のような芸人の生殺与奪の権は、所属事務所やメディアががっちり握っている。そこに見限られたら、退路も進路もすべて断たれ、文字どおり生きていけなくなる。むごいことをするものだ。事実を調べ、処分の是非を問うとともに、彼にも弁明の機会を与え、処分する側・される側それぞれに問題があれば、両者の責任の取り方や償い方についても議論を起こすぐらいのことをやるのは、メディアの責務ではないかと思っていた。芸人もアーチスト、表現者の仲間だ。彼らの表現の自由を守ることは、ジャーナリストの独立やその表現の自由を守ることと通底している。それに、芸能界やマスコミは巨大な組織・団体の力を恐れて触らぬ神に祟りなしの態度をとっている、とするネットの無責任な非難に対しても、それは根拠のないものだと、調査報道を通じて進んで証明していくべきであろう。そうすることは、ネットに充満するマスコミ不信を解消するためにも、そこに名前が出てくる組織・団体の名誉のためにも、有益なことではないか、という思いが頭から離れなかった。そう思っていた矢先、4月21日発売の 『週刊朝日』 (5月1日号) がこの事件を大きく扱った。朝日の新聞本紙ではないが、同誌はさすがにある程度の斬り込み方はしており、注目された。

  だが、結論的には、これもまた失望するものだった。同誌は、朝日放送が3月8日の放送打ち切りは、「あの団体」 から抗議されたためだ―「あの団体」 とは 「音自協」 (日本音楽事業者協会。全国約100の芸能プロダクションが正会員、約40の放送・出版・レコード・広告会社が賛助会員) である、と認めたことを報じた。そして、同誌が音自協から 「朝日放送と松竹芸能に抗議書を送付した」 と記された文書を入手したことも、明らかにした。これで巨大な力を持つ組織・団体が音自協だということはわかった。だが、同誌の報道は関連取材も踏まえ、北野誠のこれまでの発言が 「芸能界のドンといわれる (バーニングプロダクションの) 周防郁雄社長を激怒させた」 ようで、「これが業界を 『大騒動』 へと突き動かしたようだ」 と伝えるものだったのだ。これではネットの噂の 「バーニング」 説を裏付けるだけだ。これでは、ネット内に氾濫する <「バーニング」 と 「創価学会」 はさまざまなかたちでつながっている> とする類の噂も、払拭されるどころか、かえって疑惑の影を濃くするばかりではないか。そこをさらに追及しないで、「長きにわたる 『発言』 と引き換えに、北野は追放され」、音自協を退会した (させられた?) 松竹芸能はさらに社内で 「見せしめの処分を下し」、朝日放送は音自協に 「企画番組」 を提供することになった、と幕引きを告げるこの記事は、空しささえ感じさせるものだった。その最後の付け足しの部分は、どう読んでも、自業自得なのだからしょうがない―でもなんとか頑張れ、と北野にいうだけのもののようにしか読めなかった。見殺し同然ではないか。

  ネットのなかに後日、同じ芸能人仲間では、関西の落語家、桂ざこばが朝日放送の4月14日深夜のテレビ番組に登場した際、「北野、がんばれよ」 と叫び、局側スタッフを凍り付かせた、とする情報を見つけた。また、その録画が動画サイトに投稿されているというので、ユーチュブとニコニコ動画を開けてみた。たしかに該当する投稿動画のトップ画面に、高座に上がった着物姿のざこばがマイクに向かっている姿が、発見できた。ところが、再生マークをクリックしたけれど、画面は動かず、音声も出ない。代わりに文字メッセージが出てきた。「朝日放送株式会社さんから著作権に抵触するとの申し入れがあったので、この映像は削除しました」。普段は、自社の番組がどのぐらい投稿サイトで引用されているかのランクを気にし、自社番組の投稿動画がつぎからつぎに投稿を生む、ねずみ算的な増え方を歓迎するテレビ局としては、異例の措置といえる。著作権違反が削除申し入れの本当の理由ではなかろう。都合の悪いものは消したい、だから消させた、というだけの話ではないか。こういう身勝手なダブルスタンダードは、ネットのなかの住人たちには、もうばればれだ。それだけにかえってこのような姑息なやり方は、ネットの住人、メディア問題に関心を寄せる、とくに若者のマスコミ不信を、いっそう募らせるだけに終わる。

  大メディアにおける、問題発生後の北野本人の登場は、ようやく4月28日。同日夕方、本人が安倍彰松竹芸能社長に伴われ、大阪で記者会見に臨んだからだ。当日のテレビ報道は未見だが、翌29日の在京新聞朝刊では、朝日が写真入りで第3社会面に小さく報じたのをみかけた。また、テレビ朝日の朝のワイドショー、「スーパーモーニング」 はかなり長い時間を費やして話題にしていた。しかし、ネットを使わない読者、視聴者は、いきなりこんな本人の泣きじゃくる記者会見、「自分が悪かっただけなんです。すみませんでした。問題となるような、どんなことをいったかは、ここでいうとまた迷惑をかけることになるのでいえません」 という話ばかりを繰り返し、社長も 「外部からの圧力はありません。自主的に行った処分です」 というだけの場面を見せられみせられても、なにがなんだか、まるでわからないのではないか、と思わせられた。だが、この記者会見が、草g剛の24日夜の記者会見の3日後である点を考えると、関係者のこの会見時期の選び方は偶然でなく、謝罪記者会見で好感度を回復し、5月1日の起訴猶予や、さらには近い将来の番組復帰も見越せるようになった草g周辺の空気の変化を読み取り、これに学んで設定したものではないか、と思えた。いってみれば便乗懺悔だ。しかし、大メディアのいくつかが、惻隠の情からこれに協力してやっても、彼ら自身が自分の手で北野舌禍事件の、表現の自由に関わる本質的な問題の解明に力を尽くそうとしないのでは、ネット利用者はもちろん、新聞読者・テレビ視聴者をも、やがてマスコミ不信に追いやるのみではないか、と心配だ。

  新聞の読者離れ、テレビの視聴者離れの進行は、凄まじい。競争相手はいわずと知れたネットだ。これを新聞社・テレビ会社は、閲読・視聴時間をネット利用に奪われ、購読料・広告費もまたネットに奪われるとする局面だけで問題にし、自分たちもネットに進出して失地を回復しよう、と大わらわだ。だが、果たしてそれですむのか。むしろ、北野舌禍事件に対してみられるように、大メディアがやるべきことをやらず、不作為のままに闇のなかの巨大な力をもつだれかを利し、独りぼっちの弱者を見捨てるような態度しかみせないことに、苛立ちや不信を募らせ、読者や視聴者がマスコミそのものから離れていっているのではないか。マスコミよりは、少なくともそうした問題についてより多くの情報に接することができ、話し合いに参加もできるこちらのほうがましだと、彼らはネットに向かうようになっているのではないか。実際、草g剛全裸事件の発覚当初にも、あのマスコミの、みずからつくり出したようなメディア・ジャック状況に対して、ネットのなかには、ソマリア海自出動をめぐる政府与党の、「海賊対処法案」 国会審議強行の画策を隠蔽する援護行動だと、メディアを批判する書き込みが多数出現していた。メディアの側の意図はどうあれ、客観的にはそうみられてもしょうがない状況は生じたのだ。

  憂慮すべきは、「もうマスコミは信じない。相手するだけ損だ。ネットのなかで信じられそうな情報を探してものを考え、自分と同じような関心をもつ人と議論したほうが役に立つ」 と思いだしている人、とくに若者が多くなっていることだ。私の憂慮は、それでは新聞もテレビも、それに出版も、やっていけなくなるとする体の心配ではない。それらがなくなってもやっていけるのなら、それでもいいと、私も思う。しかし、それではやっていけないのだ。相互に異なる感性や価値観をもつ多くの人間が取材・制作・編集に携わり、一つの報道・言論媒体、文化的な表現媒体をまとめあげ、不特定多数の人にほぼ同時的に同様のメディア体験を、日常的、習慣的に提供できるマスメディアの役割は、たとえなにがしかの欠点はあっても、他をもって代えられるものではない。マスメディアがなくなり、あるいは多くの人間がほとんどマスメディアを利用しなくなり、ネットに依存するものばかりが増えれば、人々は、せっかく築き、保ってきた総合的で全体性をもったメディア・リテラシーを崩壊させ、他者と共生する社会や運命を共にする歴史を、感じたり、認識する力を大きく欠くことになるのだ。そうなれば、多くの人が自分独り、あるいは小集団に立て籠もるだけの存在となり、情報を一手に握れる巨大な組織・団体、権力の支配・介入の前に、一丸となって抵抗することもできなくなる。思うがままの分断と支配を許すだけに終わるだろう。今必要なのは、マスメディアとネット、両方のよき部分、優れたところを相補的に結合、いかにして自分たちの力にするかだ。それは、マスメディアの危機を自覚する人にとっても、ネットをもっと積極的に発展させていくことを目指す人にとっても、共通の課題となるはずだ。次回も、別の事例によって、そのことを考えてみたい。

 

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