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税率1%の一般取引税を導入することにより,消費税増税が不要になるばかりか消費税そのものを廃止できる.
http://www.asyura2.com/09/idletalk37/msg/395.html
投稿者 馬場英治 日時 2009 年 9 月 08 日 21:10:20: dcAX/x0KhXeNE
 

(回答先: 静かなる革命:2009年熱月30日一発の銃声もなく一滴の血を流すこともなく民主一票革命なる 投稿者 馬場英治 日時 2009 年 9 月 06 日 21:06:47)

税率1%の一般取引税を導入することにより,消費税増税が不要になるばかりか消費税そのものを廃止できる.

税率1%の一般取引税を導入することにより,消費税増税が不要になるばかりか消費税そのものを廃止できる.いや,他のすべての租税を廃止して一般取引税に一本化することすら可能である.実際2008年度の税収は39兆2939億円にとどまり,この金額なら一般取引税率2%で十分まかなうことができる.つまり,所得税,相続税,法人税,固定資産税,物品税,地方税・・・これらすべてを廃止することが「現実的」に可能である.これらの税制を廃止するだけでどれだけのコスト削減になるか測り知れないものがある.個人が所得税を申告するときの時間コストもゼロになる.源泉徴収・所得税申告から解放された世界をあなたは想像できるだろうか?

一般取引税はほとんど欠陥のない税制であり,むしろ「痛税感」のないことが(本来はその最大の長所であるのだが)問題になるかもしれない.一般取引税によって他のすべての税制を廃止できるというアイディアはウィスコンシン・マジソン大学経済学部名誉教授のエドガー・L・フォイゲらが提唱するAPT (Automated Payment Transaction) Tax という概念にも共通している.APTという名称が文献に初めて現れたのは2000年前後である.全銀ネットが稼動し始めたのは1973年だが,ATMが本格的に普及し始めたのは1990年代であり,銀行の窓口業務がほとんどATMで代替されるにはさらに10年を要した.21世紀に至って初めて一般取引税導入の条件が整ったと見ることができる.

もう一度前回エントリボトムのパラグラフに戻ることにしよう.

問い:消費税率を上げる以外の方法で10兆円の追加財源を得ることは可能か?
答え:消費税に代わる徴税手段としてより公正な一般取引税を導入すればよい.

一般取引税(ジェネラル・トランザクション・タックス)は商取引※の決済の時点で決済にかかる金額に一定の税率をかけて徴収する課税方式でありもっとも公正かつ効率的な究極の徴税方式である.現在の日本の経済環境を前提に試算すると,1%の税率で20兆円の税収を得ることができる.消費税による方法では税率1%に対し約2兆円の税収実績があるが,一般取引税は同一税率で消費税の10倍の税収を得ることのできる極めて優れた理想的課税方式である.

※ここでは「商取引」の意味を一般的な「通貨の移転」の意味に拡張して用いる.

一般取引税の課税ベースは全銀ネット(内国為替決済システム.日本国内の信用金庫,信用協同組合,農業協同組合等を含めたすべての民間金融機関を結ぶ電子的決済システム.ゆうちょ銀行は2009年1月に参加)上の日々のトランザクション(取引/決済)である.この中にはATMを操作して他行口座に送金する振替えなどの業務も含まれる.現在全銀ネット上では1営業日当りおよそ10兆円のトランザクションが処理されている.仮に1年=200営業日としても,全銀ネット上のトランザクション総額は年間で2000兆円に上り,この1%を取引税として徴収することによって,20兆円の税収を得ることができる.現行の消費税率5%による税収が10兆円であるとすると,税率1%の一般取引税を導入することによって10兆円の追加財源を確保できるばかりではなく,現行の消費税そのものを完全に廃止することが可能である.

消費税は徴税方式の選定基準としてもっとも重要なポイントである「簡明さ」を欠き,調整困難な多くの欠陥を持ついびつな税制である.一般消費税(付加価値税)は1954年にフランスに導入されたのを皮切りに欧州各国に導入されたが,食品を非課税にすることを含めて課税品目ごとに税率を変えるなど納税義務者に会計上の大きな負担(経費)を強いるきわめて複雑な税体系になっている.現在欧州諸国ではスウェーデン,デンマーク,ハンガリーの25%を筆頭に平均20%程度の高税率が課されている.米国連邦政府は消費税を採用していないが,州ごとに独自の消費税体系が導入されている.

国内導入に際しても長い議論が必要だった.日本には1978年大平内閣のときに入ってきたが79年の総選挙で大敗を喫したため撤回された.1988年竹下内閣のときにようやく法案が成立し89年から税率3%で施行されたが,1997年に税率5%への引き上げを図った橋本内閣は翌年の税収が逆に減少したため退陣を余儀なくされた.現在国内では財界を中心に消費税率を10〜20%程度に引き上げるプレッシャーが高まっているが,導入以来21年間で累計213兆円の税収をもたらした消費税は同じ時期に法人税減税などで大幅な減収となった法人三税の減額分182兆円にほぼ相当する.つまり,法人税の減額分をそっくり消費税が肩代わりしているという構図が伺える.民主連立政府は4年間税制論議を凍結し消費税の増税を行わないことを宣言した.現在日本の経済環境でさらなる国民負担が不可能であることは明らかだ.まずなによりも特別会計を切開し癌を完全に摘出する作業を先行させることが必要である.

ノアの箱舟

一般取引税の先駆けとして1978年にノーベル経済学賞受賞者ジェームス・トービン(連邦準備銀行のエコノミスト,ハーバード・イェール大学経済学部教授,ケインズ主義者)が外国為替取引に課税するトービン税というアイディアを提起している.トービン税は外国為替取引の投機性を抑制し国際通貨の安定を図ることを目的としているが,それによる税収を途上国の貧困対策などに使おうというNGOの活動などもある.トービン税を実施するためには,少なくとも完全な国際協調が必要である.一部地域で実施したとしてもクロスボーダーの資金移動が起こってしまうからだ.デリバティブ市場というのは基本的にカジノ(賭博場)であると考えられるから,仮に完全な国際協調が成立したとしても完全に捕捉することは事実上困難である.EU内にはトービン税を支持する国も多く,ベルギーでは2004年にトービン税法案が議会に提出された.

米国では2004年第108合衆国議会でファタ民主党議員が一般取引税の実現可能性調査を求める法案(H.R. 3759)を下院に提出している.(ファタ議員は2009年にも同様趣旨の法案H.R.1703)を提案しオバマ大統領にタスクフォースの立ち上げを要請する書簡を送っている.)ファタ議員の提案趣旨は主に2点に要約される.一つは一般取引税を導入することによって米国の「世界一」複雑な税制(米予算局の推定によれば現行税制の徴税コストは時間にして6400万時間,2億6千5百万ドルに相当する.96年間に累積した税制関連法規は66000ページに及ぶと言う)を整理すること.もう一つはそれによって財政赤字のこれ以上の増加を食い止め,国家債務を完済することである.

(米国議会図書館の調査部門はこの提案と独立に予備調査を行い議会にレポートを提出している.それによれば米国政府の税収を一般取引税で完全に立て替えるためには4.3%の税率を要すると結論している.この報告では"broad-based transaction fee or tax"という表現が使われているが,この"broad-based..."の範囲は必ずしも明らかではない.)

ファタ議員の提案では現金取引,小切手・クレジットカード,証券・債券の取引など「すべての金融取引」が課税対象となっている.500ドル未満の現金取引および給与は非課税としているが,預金の引き出しでは通常の2倍以上の税率を課するとしている.非常に徹底した提案ではあるが,実際問題としてこれを文字通り実現することは著しく困難であると評価せざるを得ない※.もしこれらを完全に徴収しようとすれば,徴税コストはおそらく今よりもはるかに高止まりとなり,ブラックマーケットの成長を促進することにさえなり兼ねない.筆者が本エントリで提案している一般取引税はこれに比較するとずっと控えめなものであり,全銀ネット上の為替送金(自行口座間の資金移動を含む)以外は原則としてすべて課税対象外である.

※「欧州諸国の大半および日本では,小口決済において送金・振込の利用が主体となっている一方、オーストラリア、カナダ、米国、少数の欧州諸国は、小切手決済にかなり依存している。」(主要国における小口決済:比較調査,BIS,1999)ことがファタ議員の提案と我々の提案の分かれ道となっているのかもしれない.世界中で銀行口座を持たない人口は57%に上ると言われるが,アメリカ市民4000万人(主に中南米からの移民)がその中に含まれる.

ファタ議員の提案と区別する意味で我々の提案する「一般取引税」を今後は「電子的実取引税(エレクトロニック・リアル・トランザクション・タックス)」と呼ぶことにしよう.電子的実取引税では額の多寡を問わず,現金取引は一切課税対象外である.また,市中銀行間の取引にも課税しない.証券取引所,手形交換所・電子マネー,外国為替決済システム,債券決済システムなどの「クリアリング・システム」における内部トランザクションに関しては原則として課税を行わない.ただし,これらのクリアリング・システムから銀行口座を介して外部(たとえばそのクリアリング・システムの参加者の銀行口座)に送金するか,外部からの送金を受けた時点での課税は免れない.つまり,「現金化したとき(現物経済に戻ったとき)」に課税されると言える.

たとえば,日銀ネット(インターバンク)と呼ばれる日銀が統括し国内の主な金融機関すべてが加入している当座預金決済システム※では1営業日当り100兆円のトランザクション(全銀ネットの10倍に当たる)が処理されているが,非課税とする.インターバンクを課税対象としない理由は,このシステムが本来的に「システミック・リスク(個別金融機関の支払不能等や特定の市場または決済システム等の機能不全が,他の金融機関,他の市場または金融システム全体に波及するリスク)」を有しているため税収を金融システムに依存しないものとする必要があることに加え,トランザクションの大きな部分を占めるオーバーナイトのコール資金決済などの利率が一般取引税の税率として想定されている数字より何桁も小さいなどの事情による.

※日銀に当座預金口座を有する銀行,証券会社,短資会社,東京銀行協会(内国為替制度,外国為替円決済制度,手形交換制度)その他各地銀行協会(手形交換制度),東京証券取引所,大阪証券取引所,東京金融先物取引所などが参加している.コール資金取引の決済,国債等の証券取引の決済,内国為替制度=全銀ネット,外国為替円決済制度などの交換尻の最終決済,金融調節上のオペレーションや貸出,国庫金の受払などの業務を行う.

電子的実取引税は基本的に市中銀行の口座間の資金移動(ATMから現金を直接自行・他行口座に送金する「振替え」を含む)に対し課税する徴税システムである.電子的実取引税の納税義務者は資金の受取人であり,受取人口座を有する銀行は入金額から所定税率の徴税額を差し引いた金額を受取人口座に移動し,差分として徴収した金額を毎日定時に日銀内の国庫当座預金口座に送金するものとする.口座名義人本人の預金および出金には課税しない(個人ないし法人が複数口座を持つ場合,異なる口座への資金移動については課税対象になる).また,外国への送金および外国からの入金についても課税しない.銀行が実取引税の徴収を代行するのは「国民的義務」であり一種の「役務としての納税」と解釈される.

この徴税システムを「実取引税」と呼ぶのは課税ベースがほぼ完全に「実物経済」の領域と重なると考えられるからである.我々の「実物経済」は「健全な政府」を支えるのに十分である.「実取引税」はこの「健全な政府」が国民に提供する「公共サービス」の原資であり,「実物経済」はそれをくびきとしてではなく共助共生の重くない責務として軽々と担うことができるだろう.

一般取引税はほとんど欠陥のない税制であり,「経済」に対し完全に中立かつ透明な税制である.一般取引税のもっとも重要な特性は「匿名性」にある.税務当局と納税者の永遠の敵対関係が終わり,政府と国民の間にも麗しい調和が生まれることだろう.このシステムを実施するときには「例外」を認めてはならないというのはもっとも重要な準則である.一つでも「例外」を認めればそこから「公正」は歪められ,あらゆる古き悪しきものが侵入する突破口になることだろう.しかし,システムの移行に当たってはある特定のセクタに無視できない影響が出る可能性も考えられる.次エントリでは電子的実取引税の得失について考えてみることにしよう.

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