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原田武夫   「大転換の時代――10年後に笑う日本人が今すべきこと」(ブックマン社)
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投稿者 新世紀人 日時 2008 年 12 月 31 日 11:08:38: uj2zhYZWUUp16
 

(回答先: 原田武夫   自民党再編―――「富と繁栄」を巡る本当の対立軸とは? 投稿者 新世紀人 日時 2008 年 12 月 31 日 11:04:19)

http://www.haradatakeo.com/company/library015.html

「大転換の時代――10年後に笑う日本人が今すべきこと」(ブックマン社)

(2009年1月22日発売予定)

 2008年8月9日夜。私は、スイス・チューリッヒ空港に降り立ちました。成田からJAL便で飛び立ち、パリ経由での到着です。
 傍らには私の妻、そして8歳になる息子。5歳の時から夏は決まって欧州旅行へ連れ出しているせいか、息子も飛行機の中ではすっかりリラックス。お小遣いとしてもらったスイス・フランの対円レートの動向を気にして電卓をいじっては、シートテレビで得意の将棋。息子ながら旅慣れたものです。
 ところが、パスポート・コントロール(入国管理)の前でそんな息子の顔がにわかに引きつりました。それには訳があります。
「いいかい、パスポート見せながら、“気をつけ”をしてちゃんと自分の名前を大きな声で言うんだよ。そうじゃないと、一人だけスイスに入れないよ」
意地悪な父親が機中でそう言い含んでいたのです。背伸びをしながら、ヒゲをはやした係官におずおずとパスポートを差し出す息子。ちょっと涙目になっています。係官はというと、パスポートをなれた手つきで開き、氏名を確認します。―――するととんでもないことが起きました。
「タツオ!コンニチハ!」
空港中に響く朗らかな大声で日本語の出迎え。これにはさすがに家族一同、唖然としました。そして次の瞬間思いました。「なんて余裕がある国なんだ。」
 空港の入国管理といえば国境そのものです。開放的な欧州とはいっても、域外からの入国者たちを受け付ける場所には、たいていの場合、いかついタイプの国境警備兵。機関銃を両手で持ってこちらを睨みつけています。
 しかし、チューリッヒ空港はというと、平和そうな係官以外に警備の人物すら見当たりません。よもや国境警備を止めたのではとすら思ってしまう位、のどかな光景です(ちなみに一週間後の出国時、今度は「タツオ!サヨナラ!」と別の係官が笑顔で送り出してくれました。これまた余裕の態度に唖然としたのは言うまでもありません。)。
 成田を飛び立つ際、私の頭の中は真っ暗でした。「サブプライム問題」、「混乱する国内政局」、そして丁度始まった「グルジアでの血みどろの紛争」。何もかもが暗黒で、もはや救いようの無いくらい傾いた世界。そんなイメージが私の頭を支配していました。
 しかし、このチューリッヒ空港の光景は一体何なのでしょう。圧倒的な余裕。呆けているのではないかとこちらが心配になってしまうくらいです。
 空港を抜けて街へ出ます。チューリッヒ中央駅前にあるホテル・シュヴァイツァーホーフで泥のように眠った後、翌朝、チューリッヒ湖畔に向けて散歩しました。欧州独特の落ち着いた街並み。しかし、他の街と違うのは、そこかしこに名だたるプライヴェート・バンクやらアセット・マネジメントやら、大小取り混ぜた金融機関がブランド品のフラッグ・ショップと競い合うように軒を並べていることです。日本人にとって、「国際金融」といえば何といってもNY。それとは違う金融資本主義の「総本山」が眼の前に広がっています。
 週末が明け、全ての店舗がその扉を開き始めると、街は圧倒的な豊かさを披露し始めました。街角にある何気ないスーパーに入ってみます。すると品揃えが信じられないほどすごい。他の欧州諸国では、あのドイツであっても、そこまで豊かではないでしょう。日本の海苔巻きまでもがパックで売られていたのには驚きました。
 そして極めつけが本屋です。ずらりと並ぶ新刊本の中で、真っ先に目立つ場所。そこにズバリこんなタイトルの本が置かれていました。
「私たちはなぜこんなに豊かなのか(Warum wir so reich sind)」
著者はルドルフ・H・シュトラーム。日本では全く知られていませんが、スイスでは経済政策のプロとして政界で長年活躍してきている人物です。淀んだ日本を飛び出し、心機一転、スイス人がなぜこんなに明らかなほど豊かなのかを知りたかった私は、思わずページをめくりました。―――

 なぜこんなにも暢気な夏の旅行日記からこの本を始めたのかといえば、私たち日本人が知っているようで知らない「もう一つの世界」があることを示したかったからです。もはや詐欺まがいの金融商品であったことが明らかとなっている「サブプライム証券」の行き詰まりをきっかけとした米国発の金融危機は、世界中を席捲。日本から見る限り、もはやどこにも逃げ場が無いように見えます。
 しかし、だからといって全てが暗転し、全てが潰えようとしているわけではないのです。日本では戦後、圧倒的な米国化によって、外国といえば、ほぼイコール米国ということになってしまっています。実際、不思議な風習や料理を伝えるエンタメ番組を除けば、米国以外の国々の様子について逐一リアルタイムで伝えてくれる大手メディアは日本において皆無です。そのため、私たち日本人はといえば、米国が世界の全てであり、その経済の崩壊は世界経済全体の崩壊であるかのように思い込んでしまいます。手本であったはずの米国による「覇権の終焉」は、従順なる生徒であった日本にとってやりようの無い喪失感の始まりとしても受け止められています。
誰も口に出しては言わないが、今、日本社会のすみずみまで広がっているそこはかとない喪失感は、元はといえばそうした「偉大なる教師・米国」の没落から来ているのです。最後は「対日年次改革要望書」なる外交文書まで突きつけられて「構造改革」という無間地獄にも似た課題を課された日本。時に反発はありつつも、着実にこれをこなしてきたというのに、褒めてくれるはずの米国、絶対的に強かったはずの米国はもはやそこにいないのです。これでは肩透かしに他ならないではないでしょうか。
だから、私は思います。私たち日本人は、今こそ、もはや受身となって逃げるのを止め、むしろ積極的に「歴史を回す」役割を担うべきなのです。米国による「覇権の終焉」は世界の終りを意味しません。飛行機に乗って十数時間もすればすぐ見ることができるスイスの圧倒的な豊かさは、金融国家・多民族国家として米国とは全く別の成功モデルがあることを教えてくれます。まずは価値観を相対化させること。これが何よりも必要です。
「分散化」「2020年」―――これが今、歩み始めようとするニュータイプの日本人にとってのキーワードです。インターネット化が加速度的に進み、もはや大手メディアであってもその他大勢を圧倒できなくなった今、密かにこうした流れを強引にも逆転させようとする動きを米国、そしてロシアが見せつつあります。しかも、このまま行けば、日本を含む東アジアが悲劇の舞台となる危険性が高いのです。
 だから、今こそ、日本人は立ち上がらなければならないのです。奪われたとはいえ、依然として圧倒的な力を誇るその富を握り締め、新しい発想、果断な行動力を持ってして。そのことを、実は世界が待ち望んでいます。そのことを知らないのは、他ならぬ私たち日本人だけです。

 この本は、ありきたりな外交論でも、投資の指南本でもありません。また、ただひたすら過去を振り返り懐かしむ本でも、技術革新による明るい未来を何の留保もなく喧伝するための本でもありません。
 今の日本を取り巻く本当の問題が何であり、それはどうやったら解決できるのでしょうか。そのために一人ひとりの日本人が一体何をすれば良いのでしょうか。そうやって変身を遂げる日本人の先に待ち受けるのは「幸福」なのでしょうか、「悲劇」なのでしょうか。これからの世界は一体どうなっていくのでしょうか。
 このことを知りたい全ての日本人のために、この本を書き綴っていくことにしたいと思います。


(2008(平成20)年12月 原田武夫記)

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