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多喜二とゲバラ――時代を超えて愛されるヒーロー(加藤登紀子)
http://www.asyura2.com/09/senkyo58/msg/1319.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 2 月 18 日 19:05:27: mY9T/8MdR98ug
 

http://eco.nikkei.co.jp/column/katohtokiko/article.aspx?id=MMECz2000002022009

 社会体制に抑圧される人々を思い、その主張を代弁し、権力に立ち向かった英雄が2人。1人は日本を代表するプロレタリア文学作家の小林多喜二。もう1人は、キューバ革命の指導者、チェ・ゲバラだ。志半ばで散ったこの2人が、その死から年月を経て俄かに脚光を浴びている。
 多喜二の『蟹工船』はベストセラーになり、漫画化もされた。チェ・ゲバラはその人生をたどる映画が順次公開中だ。なぜ人々は多喜二とゲバラを求めるのか――? ジーナに思いを綴ってもらった。

多喜二とゲバラ

 小林多喜二とチェ・ゲバラ。
この二人が再びヒーローとして、
にわかに浮上している。

マンガ雑誌で多喜二の「蟹工船」が連載され、
以来、じわじわと「蟹工船」ブームが
若者の間で起こっている、
そういわれた去年。
そして今年の年明け、映画「蟹工船」が
上映開始と同時に立見の出る盛況というニュース!
何と、一九五三年に作られた映画の再上映だというのに。

遅まきながら正月休みに、原作の本を読み、映画を見、
そしてマンガ本を読んだ私。
映画もマンガも原作を裏切らず、なかなかいい。
特に映画の迫力には、驚いた。
今の時代には出来そうもないすごい映画だ。
五三年と言えば、朝鮮戦争、レッドパージ、
アメリカでも「赤狩り」と言われた、
マッカーシー旋風の吹き荒れた時代。
よくぞ、創ったなあ、
と感嘆の想いでいっぱいだった。

多喜二は一九三三年二月に拷問死した。
その見るも無残に痛めつけられた遺体の写真を、
中学のころの教科書で見た記憶がある。
その姿は今も私の心に消えない。

そしてチェ・ゲバラ。
キューバ革命をカストロと共に勝利に導いた英雄。
けれど一九六七年、ボリビアの山中の村で、
ボリビア政府軍によって銃殺された。
わずかに微笑をたたえたその最期の写真は、
世界中に配信され、当時の若者の心を揺さぶった。
それは、私にとって人生の原点ともいえる。

奇しくも「蟹工船」と同じこの時期に、
ゲバラの映画が上映されている。
「チェ28歳の革命」。そして「チェ39歳別れの手紙」だ。
二十八歳、輝くばかりのゲバラもいいが、
見終わってずしりと重いのは、
三十九歳のゲバラだ。
星のついたベレーを被ったゲバラの肖像は、
世界中の若者の偶像だが、
この映画のゲバラは掛け値なしの実像であり、普通の男だ。
そのあまりにリアルな敗北の姿に打ちのめされた。

生きることも、戦うことも、絵空事ではない。
現実の難問を突きつけられ、それを必死で超えていくこと。
その惨めさや不安や恐ろしさが、まざまざと伝わってくる。
まっとうな愛が、無残に殺されて死んでいく。
それはやりきれなく哀しいことだ。
けれどその瞬間、その死は権力者の無様さをもあぶりだす。

二人が残した死の伝説が、
今、私たちに投げかけているのは何だろう。
あいまいな豊かさの中で、
知らず知らずのうちに忘れかけていた、
この社会の理不尽な構造。
この世界が、
暴力と金を欲しいままにする人たちに
振り回されていることを、
国や権力が、
こうした非情な搾取の上に成り立っていることを、
「決して許してはいけない」
と、言い続けた二人の叫びが心に響く。

彼らが残したものは絶望ではない。

「蟹工船」は、
漁夫たちが起こした反乱がむざむざと鎮圧された後に、
残された漁夫たちが心に誓った、「もう一度」と言う言葉で終わっている。
そしてさらに附記として記されたのは、
二度目の「サボ」(ストライキ)が、
「マンマと成功した」という勝利の顛末だ。

ゲバラ亡き後、
革命から五十年も持続しているキューバの理想社会。
ソ連の崩壊やアメリカの経済封鎖による危機を乗り越え、
今も、教育と医療が無料で受けられ、
オーガニック農業で食糧自給を目指す、
夢の国であり続けている。
「社会主義国家であっても、
搾取国家であることは許されない」
とするゲバラの永久革命の思想は、
キューバの人々を守り続け、世界中の貧しい人々を勇気づけて来た。

一九三三年、一九六七年、そして二〇〇九年。
今も、理不尽に殺されていく人々は後をたたず、
未来は決して明るくはない。
けれど、これだけは、はっきりして来た。
主人公は、金や国ではなく、
生きているすべての命、愛によって結ばれた人々のくらし。
その当たり前のことが遂げられないはずはないと、
信じてよいと言うことだ。

                      加藤登紀子

 

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