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トロイの木馬   西岡昌紀
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投稿者 西岡昌紀 日時 2009 年 2 月 26 日 08:03:23: of0poCGGoydL.
 

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最近、かんぽの宿を巡る報道の中で、この事件(リクルート事件)で中心的役割を演じたリクルート・コスモスの人脈が見え隠れして居ますが、今から20年前、そのリクルート事件のさ中に、或る人が、次の様な事を書いて居ます。私は、当時、この文章をこれが連載されて居た月刊誌(『公論』)で読んだのですが、それを単行本から引用して御紹介したいと思ひます。

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 本書を書いている段階では、リクルート事件は真藤恒前NTT会長が起訴された段階で、まだ特定の政治家に司直の手が伸びてはいないが、しかしすでに大物政治家数十名がリクルート・コスモス新株の不当な割当を受けていた事実は明らかになっている。そこで国民一般はこれら政治家本人のみならず、自民党に対して強い失望と怒りの感情を持つようになった。これは竹下内閣の支持率が10%以下に急落した事実にも明白に現われていて、また地方選挙でも従来の例からは考えられない敗北を喫している。
 このことは本事件の一般への影響が、ロッキード事件なそとは違うことを示している。この事件の中心人物田中角栄は、今日まで引き続き高得票で当選しているし、これが自民党の評価にとくに悪影響を与えたとも考えられない。むしろアメリカ筋に嵌(は)められたとして同情的な人もいる有様だ。ではなぜリクルート事件だけがこのような裾野の広い反応を惹き起したのだろうか。
 民衆の反応から逆算すると、これら両事件は全く別の範疇に属することになる。表面的には両者は請託を受けて収賄したという点では全く同じであり、異なっているのはその収賄が広く薄く行なわれていたことである。庶民はこれによって自民党の金銭感覚のあいまいさに驚き憤慨したのであろう。

(馬野周二『嵌められた日本』(プレジデント社・1989年)339〜340ページより)

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 筆者の筆誅は続きます。

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 しかしそれだけでこの民衆の、従来の汚職に対するのとは様変わりな反応を、十分に説明することはできない。この事態はもっと深いところから考察しないと解けては来ないと思われる。本事件に対して大衆が無意識にせよ心の奥底から嫌悪を感じ、巾広い関係者を許せないと感じているのは、贈収賄関係者が日本人の深奥にある道徳心に傷みを与えているためだと思われる。金で何でもできるとする考え方、平然と嘘をついてそれが次次とバレていく高官たちの姿、これは真面目な人たちに当然やり切れない思いを与える。
 さらに日本人の心の深層にある思いは、中曽根首相登場以来煽られていた企業万能、金銭全能的風潮に対する反発、この疑獄のバックグラウンドミュージックとも評すべき自由化、国際化囃しに対する違和感、警戒感であろう。それはこの全体の総指揮官、前首相に対する評価の反転に現れている。

(馬野周二『嵌められた日本』(プレジデント社・1989年)340ページより)

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 私は、当時、この文章をこれが連載されて居た月刊誌(『公論』)で読んだのですが、その時、最も印象に残ったのは、この後に続く、次の部分です。


 


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 私は思うのだが、今日の状況はちょうど大正デモクラシーの末年によく似てきた。当時財閥は巨富を擁し、巷(ちまた)は金銭で汚れ、道義は堕ちていた。そこに出るべくして出たのが軍部を中心とする昭和維新の動きであった。当時の民衆はそれら青年将校の心情に非常に同情していたのだ。今日それらの革新将校たちは全く忘却されているけれども、彼らの心は今でも日本人の中に保たれている。リクルート事件に、この心は疼(うず)くのだ。今日の自民党の行状に対する庶民の拒否反応は、この日本人の深奥の感情から出ていることを悟らねばならない。

 大正デモクラシーに踊った財閥の背後には国際秘密勢力があった。開戦時に押収した上海、シンガポール、マニラのフリーメーソン機関の文書はそのことを実証していた。今日の実態はいろいろな状況証拠からして、当時を幾層倍する外国秘密勢力の浸透があると見るべきであろう。庶民はそんなことを知っているわけではない。けれども日本人であることの本然の感覚から、中曽根一派のマヤカシを見破り、それを拒否し始めたのだ。
 慧眼にもそのことを見破ったのは、英誌「エコノミスト」である。89年3月18〜24日号にFor the honor of Japan's politicsと題する巻頭論説を掲げ、中曽根逮捕に日本政治の名誉がかかっていると書いている。残念ながら私の知人友人には正義と金銭を峻別できる者が少ない。過去に泥(なず)んでいるのだ。 
 しかし聖フランシスコ・ザヴィエルが1549年、日本列島の端鹿児島に上陸した時、直ちに感じたのは、下層底辺の人民にまで及んでいる名誉の感覚であった。それは今日もなお我々の心の中に脈脈と生きていると私は信じている。これこそが「トロイの木馬・中曽根とその生と徒党」を排除し、真正の日本を復元する力である。
 敗戦の惨状から這い上る過程で、我々はあまりに物質一辺倒に傾き、企業万能の世態に泥(なず)み、営利至上の思想に陥った。そこに飛び込んだのが国際秘密勢力の「トロイの木馬」であった。
 中国もフィリピンも、中南米諸国も、そして今やアメリカも、この「トロイの木馬」にやられてしまった。ここで日本までもその後を追うならば、世界は暗黒と化する。
 私はここ二年来、「これからの日本は政治の時代だ。経済の時代はおわった」と言ってきた。まさしくこれからの日本では、再び政治の出番が来る。現在の形の保守自民政権の命脈はない。新しい指導者は草もうから立ち現われるであろう。自民党政府に対する民衆の無言の静かな拒否反応は、2・26事件の青年将校たちの、今日の型をとった再来だ。私はそう見ている。

(馬野周二『嵌められた日本』(プレジデント社・1989年)340〜342ページより)

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 目から鱗が落ちる様な思ひがした事を覚えて居ます。そして、これを読んで、2・26事件に対する考え方が大きく変はった事が忘れられません。


 2・26事件の背景は今も謎ですが、もしかすると、彼らには、上の文章の筆者と同様の問題意識が有ったのかも知れないと、今では思って居ます。

 ただし、残念ながら、リクルート事件の捜査は不発に終はった様に思はれます。そして、この文章が書かれた後も、政治の腐敗は続き、まさに「大正デモクラシーの末年」の様な状況は、小泉(=財務省)政権の時代を経て、今も続いて居る事は、皆さんが御存知の通りです。


 しかし、昨夜、上に引用した文章を久し振りに読んだ時、この文章が、20年前、この文章が書かれた時以上に、今の日本について書かれて居ると感じられました。私の個人的な思ひ入れでしょうか?・・・


平成21年2月26日(木)

2・26事件から73年目の朝に


                 西岡昌紀

http://nishiokamasanori.cocolog-nifty.com/blog/


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