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哲学がない民主党、「知恵者」はいないのか
http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/451.html
投稿者 Orion星人 日時 2009 年 8 月 19 日 13:10:13: ccPhv3kJVUPSc
 

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090817/174312/?P=1

2009年8月18日

 民主党はすでに発表ずみの衆院選マニフェスト(政権公約)にいくつもの修正を加え、11日に確定版を発表した。地方分権で「国と地方の協議の場」の法制化明記、子ども手当創設に伴う財源確保の補足説明など何項目にも及ぶが、今回は日米の自由貿易協定(FTA)修正を軸に話を展開したい。
 前回公開した「わたしのマニフェスト」を読んでいただければわかるが、マニフェストには「この国をどうしたいのか」という哲学を明確にし、「何が問題でどう解決するのか」を示してなければならない。しかし、民主党のマニフェストはそれが欠けているのである。
FTAの「締結」から「交渉を促進」へ、民主党のチグハグな動き
 7月21日に鳩山由紀夫代表が発表したマニフェストでは、生活不安の解消を掲げ、子ども手当の月2万6000円支給(来年度は月1万3000円)や公立高校の授業料無償化など、平成22年度だけで総額7.1兆円規模の政策が盛り込まれていた。また、こうした主要政策の実行時期と予算額を示す工程表を初めて明らかにした。
 しかしその後、批判が強かった米国とのFTAの締結については、菅直人代表代行が「締結」から「交渉を促進」に修正する方針を表明。それに対して、小沢一郎代表代行は「農家には戸別所得補償制度の導入を提案しており、食糧自給体制の確立と自由貿易は何も矛盾しない」と持論を展開した。結局、マニフェストの確定版では、日米のFTAの「締結」を「交渉を促進」に修正している。このような民主党の動きにチグハグさを感じたのはわたしだけではないだろう。
 民主党のマニフェストのベースになるのは「INDEX 2009」である。彼らはそれを政策集と呼んでいるが、INDEXを辞書で引けば「索引、見出し」という意味で、要するに「思いつき集」に過ぎない。だからマニフェストに本来あるべき全体を貫く思想・哲学が感じられず、ただ思いついた政策を並べただけのものに見えてしまう。
 また思いつき集だから、過去に出していた古い政策などが散見される。本来ならそういうものを集めた段階で、だれかが体系立てたもの、系統だったものに組み立てる必要がある。しかし残念ながら、民主党の中にはそれだけの「知恵者」がいないのだろう。そのため、このマニフェストを巡って民主党は多方面から攻撃されるハメになっているのだ。
 当然、自民党も攻撃の手綱を緩めない。民主党を批判する自民党の姿を見ていると、どちらが野党でどちらが与党なのかわからなくなる。曲がりなりにも自民党は現在までほぼ一貫して政権を取ってきた政党だ。どっしりと構えて、自分たちの過去の実績や考えを総括して述べればいいのに、必死になって民主党のアラ探しをして攻撃を仕掛けている。自民党はまるで野党のようで、まことに「滑稽」である。自分たちが予算の裏付けもなく、無駄遣いとばらまきの限りを尽くしてきたことなど、すっかり忘れたかの如き、である。

【FTAを締結したところで効果は何もない】

 話をFTAに戻す。皆さんもご存知のようにFTA(Free Trade Agreement)とは、物の関税やサービス貿易の障壁などを取り除いて自由貿易地域をつくろうという国際協定のことだ。これと似たものとしてEPA(経済連携協定)がある。両者を比較したものが下の図だ。

 こういう協定は日本もすでにいろいろな国と結んでいる。協定を結んだ圏内では、商品だけでなく、人的交流、投資その他、知的財産の交流なども進んでいる。しかし、その効果や成果となると、ありのままに言えば「何もない」。ただ政治家が自分の実績を残すために喜んでやっているだけのこと、と断じてもいいだろう。
 ところが、さも有効な政策であるかのように粋がって民主党は言うものだから、全国農業協同組合連合会(全農)などはイラ立ってくるわけだ。前回の2007年参院選では農家票を大量に取り込んで成功した民主党だが、今回は全農を敵に回せば不利になる。民主党もFTA締結をマニフェストに入れることが、これほど全農を怒らせるとは予想していなかったのだろう。
 小沢代表代行が「FTA締結と食糧自給体制の確立は矛盾しない」と述べたのも、煎じ詰めれば「FTAに効果はないから、農家にとって影響はない。心配しなくてもいい」ということに他ならない。見事な心配りというべきであろうが、よくよく考えれば経済効果が望めないものをマニフェストに入れること自体がおかしい。では、なぜマニフェストに入っているか? 察するに、前回の参院選マニフェストの記載がそのまま残っていたのだろう。だとすれば、この点においても民主党の「知恵者」不在が透けて見えようというものだ。


【農業は世界の最適地でやるべきだ】

 民主党が当初、FTA締結を持ち出した背景には、「仮にFTA締結で日本の農業が破壊されたとしても、農家は守る」という所得補償の政策を持っているからだ。この狭い国土の日本で農業という産業を守り続けることは容易なことではなく、多額の税金を投入し続けなくてはいけない。それを懸念した民主党は所得補償を打ち出すことで、「農業を辞めるなら辞めてもいい」「辞めるなら早く辞めてほしい」と言っているのである。それでFTAによって世界最適地の農産物を日本に持ってくればいい。当然安くて安心な農産物、という前提であろう。
 わたしの考えも基本はその路線上にあるのだが、その次のステップに大きな違いがある。以前からわたしは「農業は世界最適地でやるべきだ」と主張している。その真意は「日本の農家よ、自ら世界の最適地に行って、その技術を発揮して農場経営をやりなさい」ということだ。農家が、あるいは農業団体が自ら国外の農業最適地に出向き、納得のいく農業をすればいい。日本の農業を世界化して生活者の胃袋を守る。それが日本の農業を守るということに他ならない。残念ながら、民主党にはそこまで踏み込んだ考えはないようだ。
「お手つき」しなければ民主党は政権を取れるのだが……
 政権交代が目の前にぶら下がっている民主党にとって、大事なのは「お手つき」をしないことだ。もう細かいことは言わずに、「いい国を作ろう。その決意は固い」とだけ訴えれば、政権は手に入る。にもかかわらず、FTAを筆頭に民主党のマニフェストは「お手つき」だらけだ。
 子ども手当、高速道路の無料化、高校の授業料無償化などを挙げて、自民党に「財源の裏付けがない」と非難されているのもその一例であろう。しかし考えてみれば、自民党こそ財源の裏付けのない政策を長年やってきたのである。
 民主党が「お手つき」ばかりやってしまうのは、政権を取ったことがない未熟さゆえだろう。民主党が懸念すべきは、自民党による民主党批判である。不思議なことに、自民党の民主党批判を聞いていると、妙な説得力がある。自民党は民主党の「お手つき」を突いているだけなのに、「自民党の言うのももっともだ。その通りかもしれない」と思えてくる。
 解散時点では自民党惨敗は必至と思われたが、長期間にわたってサンドバッグのように叩かれ、その都度微妙に主張を変えてしまう民主党の姿を国民の目に晒すという戦略は、意外と功を奏するかもしれない。おもしろい現象だ。麻生首相はそれを考えに入れて、衆議院解散から投票まで40日という期間を設けたとしたら、多少は政局を読む目があったと言えるかもしれない。

【首相退任後は政界を引退、これを立法化してほしい】

 民主党にも評価したい点はある。「総理大臣を終えた後は政界に残ってはいけない」という鳩山代表の主張だ。これは非常に重要な提案だと思う。
 実はそれをすでに実行している国がある。カナダでは首相経験者は次の下院(日本でいう衆議院)には立候補できない。首相を退任したら終わりで、「首相の任期中は、その仕事で燃焼し尽くしてくれ」ということだ。1年やって成果が出なかったからと首相を辞任し、議員生活を続ける。しかも辞任した首相が院政のような体制を敷いて、森元首相のように発言力を持ち続けるような日本とは大違いである。鳩山代表はその弊害をなくすため一歩進んで、「首相退任後は政界引退」を法律で定めるところまで突き進むべきだ。そうすることによって首相の重みは増すし、また仕事に全力を傾け、燃え尽きることもできるだろう。
 海外では若くして辞めた国家元首が政界を去った例はいくつもある。米国のクリントン元大統領が職を辞したのは50代で、政治家としてまだまだ続けられる年齢だった。しかし政治家としての活動からきれいに身を引いた。カナダにもトルドーという若くして首相を務め、辞めた後は政界を去った人物がいる。もちろん「才能のある人材が政界を去る」ことに、もったいないと思う気持ちはある。しかしこれは、首相という仕事を全うするためには必要なことではないだろうか。元首相なら海外の重要な期間で活躍する機会もたくさんあるだろうし、重鎮が政局を支配するよりも、日本の行く手に対する大きなアドバイス、国民の啓発、などでも力を発揮するはずだ。トニー・ブレア英元首相はいまアラブへの特別大使として活躍しているが、10月にリスボン条約が成立すれば、初のEU大統領(EU議長)に就任する可能性が高い。これまた世界的には極めて重たい、元首相ならではの役割である。
 政治家の若返りという面でも意味がある。自民党を中心に高齢の政治家が多すぎる。特に首相経験者に多く、退任した後はあまり活動しない人も見受けられる。その仕事量は、首相時代と比べると非常に見劣りする。民主党にも首相経験者として羽田孜氏がいる(海部俊樹氏は首相辞任後、新進党党首、自由党および保守党の最高顧問などを経て自民党に復党。また、村山富市氏は首相退任後、社民党党首、同特別代表として政界にしばらく残った)。その仕事ぶりは不明だが、マスコミに登場することも最近はとみに少なくなっている。だからこそ、わたしは「首相を辞めるときには成仏してほしい」と思うのだ。「首相退任後は政界引退」というルールは、日本の首相がその任期にしっかりした実績を残すためにも重要な提案だ、とわたしは考えている。鳩山代表にはこのルールを自分だけのことにせず、ぜひ立法化してほしい。

【アジア共通通貨の創設はどのように実現するのか】

 その鳩山代表の主張について、あと二つ取り上げてみたい。一つは、アジア共通通貨の創設である。この話は決して斬新なものではなく、1998年の新宮沢構想でも取り上げられている。だが当時は、米国に叩かれて実現しなかった。今回も米国が警戒しているのはわかっているので、鳩山代表も慎重になっている。しかし現在、日本の円と中国の元が一つの通貨になったら、ASEAN(東南アジア諸国連合)の各国通貨もそこに入る可能性が高く、ドルの弱体化を懸念している米国が放っておくはずがない。
 この話は少なくともドルとユーロが一体化する話が具体化する前でなければ意味がないが、拙速は禁物である。今の中国の(唯我独尊的)態度からみれば実現の可能性は低いが、鳩山政権が実現したら米国と距離を置くとしているし、中国との距離は近くなると予想されるので、まるで空論、ということでもなくなる可能性がある。アメリカとの距離測定が不十分なうちに、インド洋の給油活動、沖縄の米軍基地移転の問題などと立て続けにやれるものではないことを肝に銘じておくべきだろう。
鳩山代表は道州制の意味を理解していない
 もう一つは、基礎自治体に関する考えである。基礎自治体とは人口30万人規模の地域のことだ。これは市長村合併をさらに進め、日本全体を400くらいの自治体で構成するように組み直そうとするものである。鳩山代表は、「日本という国家があり、その下に300の基礎自治体がぶら下がる」という考え方のようだ。残念ながら、そこに当の民主党が標榜している道州制という概念は欠如している。
 国家と基礎自治体の間には、道州が必要だ。なぜなら30万人規模の基礎自治体では、産業基盤を作り、雇用を創出することができないからだ。国家と道州、基礎自治体では役割が違う。基礎自治体はコミュニティーを形成し、安全安心の生活圏をつくる。道州は産業や雇用創出の基盤となる。前者が生活基盤、後者が産業基盤を受け持つ。そして、国家は防衛など国単位でなければできないことを担う。
 しかし、鳩山代表には自分の党が長年主張してきた道州制に関して頭の中でしっくりいっていないのかも知れない。したがって、彼の発言を聞いていると「雇用をつくる責任はどこにあるのか」という発想が不足していることに気が付く。彼もばらまき主義なので、富を創出するのは国だ、と考えているのかもしれない。しかし、北海道と九州、東京では産業の質がまったく異なる。だから中央集権を打破し、官僚依存から日本を解放するために道州という単位で産業基盤をつくっていくのだ、という明確な理解が欠けているように見える。道州こそが世界から資本や企業を誘致して産業を興し、雇用を生み出し、そのために必要な人材の育成を行う。基礎自治体と道州の形成は表裏一体、不可分のものである。こうした考え方を「思いつきリスト集:マニフェスト2009」から昇華してつくり出していく「知恵者」が今の民主党には必要だと思うのだが……。
 ともあれ、今日から本格的な選挙戦に突入し、8月30日には投票が行われる。皆さんはどのように判断して政権選択をするのだろうか。
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大前研一の「「産業突然死」時代の人生論」は、09年4月7日まで「SAFETY JAPAN」サイトにて公開して参りましたが、09年4月15日より、掲載媒体が「nikkeiBPnet」に変更になりました。今後ともよろしくお願いいたします。また、大前氏の過去の記事は、今後ともSAFETY JAPANにて購読できますので、よろしくご愛読ください。  

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